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64話「イケメンは、なんかズルい⑤」
しおりを挟む張間「あぁ~もう飽きた~~!」
30分後ーーー机を対面にくっつけ、黙々と勉強をしていた張間だったが、ペンを放り投げるとダラリと椅子に背を預け、ズルズルと下がっていく。
西田「飽きたって...まだ30分しか経ってないよ。」
張間「私にとって30分は、とても長い時間なのであります! 脳が疲れたであります、隊長!」
西田「じゃあ、少し休憩しよっか。」
張間「よっしゃぁぁ! 一時間休憩じゃぁぁ!!」
西田「五分だけね。」
張間「えぇ!? 西田くんの鬼!」
西田「甘やかすと、関先輩に怒られそうだからね。」
張間「あーあ...まさか、部長が勉強しろしろって言ってくるとは思ってもなかったよ...。あぁ...勉強、嫌だなぁ...。」
西田「赤点とったら、部活停止になるでしょ? だから先輩たちは勉強してほしいんだよ。張間さんと部活したいからさ。」
張間「そうなのかなぁ...?」
西田「きっとそうだよ。ねぇ、張間さん。」
張間「なーに?」
西田「部活、楽しい?」
張間「うん、楽しいよ! すっごく楽しいよ!」
西田「それはよかった。張間さん、なんでも探偵部っていう、よくわからない部活入ったからさ。どうなのかなって思ってたんだ。」
張間「私も、よくわかんないところだなぁって思ってたけど、部長と間宮先輩といるのがすごく楽しくて、入ってよかったって思ってるよ! 西田くんは? サッカー部、どう?」
西田「練習めちゃくちゃキツイけど、レギュラー取れるように頑張ってるよ。」
張間「ほうほう! 一年でレギュラーとったら、マジかっこいいぜ! キャプテン西田だ! かっこいい~! 惚れてまうで!!」
西田「......。」
張間「ん? どうしたの、西田くん?」
西田「ううん、なんでもないよ。」
張間「あっ、レギュラー取れたら教えてね!「一年ながらレギュラーを勝ちとった、めちゃ強い西田くんにサッカーで勝ったことがある、張間 彩香です!」って、自己紹介するようにするからさ!」
西田「それ、中一の時の話でしょ? いつまで引っ張ってるの?」
張間「だって、事実だもーん!」
西田「今、勝負したら、勝つ自信しかないけどね。」
張間「ほうほう? じゃあ、今からやっちゃう?」
西田「今からはダメだよ。ほら、勉強しよ。」
張間「けち! 西田くんのけち! それと、まだ五分経ってないから! おトイレ行ってきます!」
西田「一分で帰ってきてね。」
張間「鬼! ちゃんと戻ってきますよーだ!」
ベーッと舌を出しながら、張間は教室を出て行く。西田は張間を目で追いかけ、張間の姿が見えなくなった後も、ジッと張間が出て行った場所を見つめている。
西田「...なんでも探偵部、か。一体、何する部活なんだろ?」
西田「...まだ一ヶ月くらいなのにさ、あんなに仲良いとか...正直、少し嫉妬しちゃうな。」
ボソボソと、自分にしか聞こえない音量で呟く。西田の頭には、先ほどの楽しそうに部活のことを語る張間の顔がーーーそして、自分に向けて言ってくれた、あの言葉が浮かぶ。
張間「かっこいい~! 惚れてまうで!!」
西田「...惚れてくれよ。」
小さく小さく呟いた願いは、誰にも届くことなく、窓から吹き込む優しく温かい風に乗って、どこかへと消えていった。
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