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59話「父や母の偉大さは、歳とるたびにわかるもの③」
しおりを挟むとある球場のロッカールーム。
彰文「やれやれ、久しぶりに電話かけてきたから、何事かと思えば...。」
牧本「彩香ちゃん、なんだって?」
彰文「学校の友達で、俺のサインがほしいって言ってる子がいるんですって。」
牧本「へぇ~物好きな子もいるもんだなぁ~。」
彰文「物好きとか言わないでくださいよ! 悲しくなるじゃないですか!」
牧本「だってお前さん、目立った成績残せてないじゃんか。」
彰文「いやいやいや、結構いいとこまでいってた年もありますからね!?」
牧本「いいとこって、結局三番目とかだったろ? 上には上がいるもんだ! がっはっはっは!」
彰文「くそぉ...何も言い返せないのが、悔しい...!」
牧本「でも、よかったじゃねぇか。現役引退した身だってのに、まだ好きだって言ってくれる子がいるなんて。」
彰文「ホント、ありがたいですよ。しかもその子、現役バリバリの野球少年みたいですからね。そんな子に好きだって言ってもらえるのは、ホント嬉しいものですね。」
牧本「あれだろ? きっとその子が小さい時に、たまたまお前がいいプレーして、記憶に深く残ってるって感じだろ? よかったなぁ~! たまたま良い時に見てもらえてて!」
彰文「そんなことないですよ、きっと! 多分!」
牧本「プロ野球ってのは、ファンあってのもんだ。だから、現役引退したからってファンを蔑ろにすんじゃねぇぞ。」
彰文「わかってますよ。」
牧本「つーことで、俺様もその子にサインをプレゼントしてやろう! この、完全試合を三度も達成した、スーパー野球人! ミスターパーフェクトの牧本様のサインがあれば、大いに喜ぶこと間違いなしだからな! がははは~!」
彰文「やめてくださいよ~! 牧本さんのサインあったら、俺のサインが霞む......。」
牧本「ん? どうした、彰文?」
彰文(いや、待てよ...? ここで、俺だけのサインではなく、牧本さんや他の奴らのサインを大量に持って彩香に渡せば...!)
彰文「ただいま、彩香! ほら、サインだぞ~!」
張間「え!? こんなに!? さすがお父さん! カッコいいぃ! ありがとう、だーい好きっ!!」
彰文「こらこら、抱きつくなよ~! はっはっはっは~!」
彰文(なんてことに!?)
牧本「おーい、どうしたー? 彰文ー?」
彰文「牧本さん。」
牧本「なんだ?」
彰文「サイン、書いてください。」
牧本「なんだ、いきなり? まぁ、彩香ちゃんのためだ。別にいいけど。」
佐山「あっ、いた。」
外「彰文さん、聞きたいことがーーー」
彰文「外、佐山! いいところに!! お前ら、サインを書いてくれ!!」
佐山「え? なんですか、いきなり?」
外「嫌ですよ。それよりも、聞きたいことがーーー」
彰文「俺の可愛い可愛い愛娘、彩香のためだ!! そして、この俺...張間 彰文のために!! さぁ、書けぇぇ!!」
外「なんであなたのために、俺がサイン書かなきゃなんですか? まぁでも、可愛い可愛い彩香ちゃんのためなら、仕方ない...!」
佐山「彩香ちゃんのためならば、何枚でも書きますよ。」
大谷「あのーすいませんーーー」
佐山「おっ、大谷! いいところに! お前もサインを書けっ! 可愛い可愛い彩香ちゃんのために!!」
大谷「え?」
間宮(M)こうして「サインを書け!」は、どんどんと広まっていき...監督、コーチ含めたチーム全員のサインを手に入れた甲柱くんは、サイン効果のおかげか、練習試合などでバンバン打ちに打ちまくり...大賀くんと共に、一年生ながら夏の大会のベンチメンバーに選ばれたというのは、もう少し先のお話です。
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