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遊部↓
18話「恋する乙女は、いろいろとうるさい」(比率:男2・女2)
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・役表
笹原:♀
暁:♂
母:♀
男:♂
ーーー
夏祭り当日。ほんのりと空は赤く染まり、気温も徐々に落ち着き出した頃、浴衣姿の女性たちがちらほらと姿を見せ始め、町中を明るく華やかに色づかせていく。
家のリビングにいる笹原も、町中を歩く女性たちと同じように浴衣を着て、夏祭りへと行く準備を着々と進めている。
母「うんうんうん! いいじゃんいいじゃん、すっごく似合ってる!」
笹原「ほ、ほんと? よかった~!」
母「写真撮っていい?」
笹原「えぇ~どうしようかな~?」
母「いいじゃない! 浴衣なんて滅多に着るもんじゃないんだから、撮らせてよ!」
笹原「それもそっか。はいはい、ぱぱっと撮ってくださいよ~」
母「いいわねいいわね~! 最高に可愛いわよ、冬華! めちゃくちゃに可愛い!」
笹原「わ、わかったから! あんたはモデル撮ってるカメラマンか!」
母「なによ、可愛いって言われて嬉しくないの? 嬉しいでしょ?」
笹原「そりゃまぁ、どちらかと言われたら嬉しいけども」
母「可愛い可愛い可愛い! 最高よ! 最高に可愛いわ~!」
笹原「流石に恥ずかしいっての! ってか、いつまで撮ってんの!」
母「別にいいじゃない。可愛い娘の写真はね、何枚でも撮りたくなんの。あんたも母さんの立場になったら、気持ちが痛いほどわかるわよ」
笹原「はいはい、そうですか」
母「そういえば、あんた今日は秋斗くんと行くのよね?」
笹原「うん、そうだよ」
母「ふ~ん。もしかして、二人きり?」
笹原「……と、友達もいる!」
母「もぉ~恥ずかしがっちゃって~! あんたたち、いつの間にそんな仲になってたのよ~!」
笹原「へ、変な勘違いするな! お互いに友達と行けなくなったから! 別に、そんな仲じゃない!」
母「そんな強く否定しないの。秋斗くんが可哀想でしょうが。まぁ、あんたたち小さい頃からずっと一緒だったもんね。ところで、なんで夏帆ちゃんは来ないの? いつも一緒じゃない」
笹原「夏帆はお祭りとか人多いの苦手だから。誘ったんだけど、行かないって」
母「あら、そうなのね。とかなんとか言って、あんたたちのこと思って行かないんじゃ~? 夏帆ちゃんってば、できる女の子ね!」
笹原「そ、そんなことないわ! た、たぶん! もぉ、行くからね!」
母「気をつけてね。帰り遅くならないように。祭りだからって、はしゃぎすぎたらダメだからね」
笹原「わ、わかってるってば!」
母「秋斗くんのとこ泊まるんだったら、一応連絡入れてね~」
笹原「と、ととと泊まるか、バカ!」
母「はしゃぎすぎたらダメよ? しっかりちゃんと準備はしなさいね?」
笹原「どういう意味よ⁈ 何もしないわ!」
母「冬華」
笹原「なによ?」
母「あんた今、最ッッ高に可愛いから、自信持って行きなさい。わかった?」
笹原「うん、わかった! 行ってくる!」
母「いってらっしゃい」
元気よくリビングを出ていく娘に小さく手を振る母。娘の姿が見えなくなると、不思議そうな顔をして右手を頬に当てる。
母「……あの子たち、まだ付き合ってなかったのね。そこに驚きなんだけど」
ーーー
母との撮影会を終えた笹原は、玄関の扉を開け外へと出ていく。
笹原家の前で待っていた暁は、扉が開く音に反応しスマホから視線を上げる。
笹原「お、おっす。お待たせ」
暁「おっ、浴衣じゃん! めちゃ気合入れてんじゃん!」
笹原「せ、せっかくの夏祭りだし、気合入れるのは当たり前でしょ」
暁「お前のその心意気、素晴らしいっ! 拍手っ!」
笹原「も、もぉ~照れますぅ~! やめてください~!」
暁「いいないいな~! 夕暮れ時、浴衣姿の女の子……くぅ~! 祭りって感じだわ~! テンション上がるぅ~!」
笹原「……ね、ねぇ」
暁「ん? なんだ?」
笹原「……ど、どう?」
顔を少し赤く染め、目を逸らしながら髪をいじる笹原。
暁「最高に可愛いですよ、笹原冬華さんっ! いよっ、浴衣美人! 世の男たちはメロメロでっせ!」
笹原「も、もぉ~! そんな言われると照れますよぉ~! 気分いいんで、後でリンゴ飴を奢ります~!」
暁「マジですか⁈ ありがとうございます!」
笹原(う、嬉しい……! ニヤけそう……! 浴衣着てきてよかった~!)
暁「ってか、浴衣着てくるなら言ってくれよ~。そしたら俺も、甚平とか着てきたのに」
笹原「え、いいじゃんいいじゃん! なんで着てこなかったのさ!」
暁「いやだってさ、俺、甚平。お前私服。なんか嫌じゃね? 一人だけ気合入れすぎじゃね?」
笹原「私、今もれなくそれなんですけど? 私、浴衣。お前私服」
暁「気合充分ですね、冬華さん!」
笹原「やめい! なんか恥ずかしいわ! 今から着替えてきたら?」
暁「いやでも、今から家帰って着替えてってなったらさ、待たせるじゃん?」
笹原「気にしない気にしない! むしろ着てこい! 待ってるから! 家近いし、着替えるって言ってもそんな時間かかんないでしょ!」
暁「うーん、そこまで言われると……」
笹原「お客さん、カッコいいからすごくお似合いだと思いますよ! どうですか?」
暁「え、えぇ~? ホントですか~? そんな言われると……ど、どうしよう~?」
笹原「ほらほら、夏祭りなんて一年に一度ですよ! それなのに私服なんて、もったいないですよ~! 絶対に似合いますから、自信持ってください!」
暁「そ、そこまで言われたら、着る以外の選択肢、なくないですか⁈ よし、予定変更! 俺ん家までいくぞ!」
笹原「よっしゃ~! 行きましょ行きましょ~!」
ーーー
笹原は玄関前で、暁が出てくるのを今か今かと待っている。
笹原(なんか……なんと言うか……いいなぁ~、待つって! こう、ワクワクとドキドキが入り混じってるというか? ってかてか、浴衣と甚平でお祭りって、なんだよ! いや、もう、なんだよ、それは! テンション上がんないわけないじゃん! 上がりすぎてニヤけるわ! やめろやめろ、ニヤけさすな馬鹿野郎! ありがとう! わ~……!)
暁「お待たせしました~!」
笹原「きゃ~! すごくカッコよくて素敵です~!」
暁「そ、そうですか~? さすがにお世辞ですよね~?」
笹原「お世辞なんかじゃありませんよ! 心の底から出た言葉です! すごいお似合いで、えぇ~カッコいいぃ~!」
暁「あぁ、気分がいい……! すごく気持ちいい……! この服、買います! いくらですか?」
笹原「お買い上げ、ありがとうございま~す! 税込で15万円となりま~す!」
暁「くっっそ高ぇな、おい!」
笹原「ふっ、ふふふ……!」
暁「服は変わっても、ノリはいつもと変わらずだな!」
笹原「だね! んじゃ、行こっ!」
暁「おうよ! 年に一度の夏祭り、楽しもーぜ!」
笹原「おぉー!」
ーーー
浴衣と甚平を着た男女が、夏祭りが行われている場所へ楽しげに話しながら向かっている。
笹原(あぁ……私、すごくすごく幸せだ……! めちゃくちゃに幸せだぁぁ……! もう、なんか、あぁぁぁぁぁ、幸せぇ~! 二人きりで夏祭りってだけでも幸せなのにさ、こんなの……あぁぁぁぁ~!)
暁「あっ、そうだ! 冬華!」
笹原「ふぁい⁈ な、なんでしょうか⁈」
暁「スマホ、貸して!」
笹原「え? スマホ? なんで?」
暁「写真、撮ってやるよ!」
笹原「へ?」
暁「おいおいおい、せっかくの浴衣だぜ? 可愛い可愛い浴衣だぜ? それなのに写真撮らないは、もったいないだろうが! ほら、貸せ貸せ! 俺が可愛く撮ってやるから!」
笹原「秋斗さん、気が利きますね! できる男ですね! 素敵!」
暁「だろだろ? よ~し、にっこり笑えよ~!」
笹原「ちょいちょいちょい、待て待て待て!」
暁「ん? なんだよ?」
笹原「いや、私単品はなんか恥ずかしいんだけど! 単品はやめましょうに! 単品は!」
暁「いやでも、せっかくの浴衣だぜ?」
笹原「だからこそよ! ほら、一緒に撮ろ! 私が可愛く撮ってやるから!」
暁「え? 俺も入っちゃって大丈夫なんですか?」
笹原「もちろんもちろん! 秋斗さんなら大歓迎ですよ~!」
暁「そんなこと言われちゃ断れませんよ~! 可愛く撮ってくださいね~!」
笹原「お任せくださ~い! さぁ、寄って寄って! 行きますよ~?」
暁「夏祭りっ!」
笹原「なんだよ、その掛け声⁈ ちょっ、もう一回!」
暁「次はちゃんと合わせろよ~?」
笹原「任せな! 行くぞ~? せーのっ!」
暁・笹原「夏祭りっ!」
笹原「はい、どうでしょうか?」
暁「え、えぇ~⁈ これが、私ぃ⁈ 可愛いぃ~! さすが冬華さん、すご~い!」
笹原「でしょでしょ? さすがでしょ? 送っとくね!」
暁「サンキュー!」
笹原(まさかまさかのツーショット! しかも、普段とは違う服装の! あとでホーム画面……は、あれだから、トーク画面に……いーや、ホーム画面にも設定決定っ! おめでとうございまーすっ!)
笹原(なんだよ、ちくしょう! こんなん、ニヤけんなって言われても無理だわ! いや、無理でしょ! ニヤけるわ、こんなん! だってだってさ、二人きりだし、甚平秋斗めちゃくちゃかっこいいし……あぁぁぁ~良いです、すごく良いです! 前、普段着ないもん着たらドキッとするどうこうの話されたけど、それは逆もですよ、馬鹿野郎! こんなん、惚れんなって言われる方が無理っ!)
暁「おい、なにボーッと突っ立ってんだ? 早く行こうぜ!」
笹原「う、うん!」
笹原(あぁ~めちゃくちゃに幸せだなぁ~! ずっとこんな日が続けばいいのにぃ~!)
ーーー
大小様々な屋台が立ち並ぶ道路沿い。どこもかしこも賑わいを見せている。
笹原と暁は、次第に多くなる人混みに合わせるようにテンションを上げていく。
暁「おぉ~! きたきたきたぁぁ!」
笹原「ついに来ました夏祭り! さぁ、まずはどうしますか!」
暁「とりあえず、端から端まで屋台巡り! 途中で気になったところは、迷わず止まる!」
笹原「イエッサー!」
暁「冬華! 本日の軍資金は⁈」
笹原「普段から貯めていたものに、母親からのお祭りお小遣いがあり、とても潤っています! 隊長は⁈」
暁「同じく! でも、油断はするなよ! 祭りはすぐに金が溶ける恐ろしい場所でもある! 何を買うかは、しっかりちゃんと考えて買うように!」
笹原「了解しましたぁ!」
暁「では、行くぞ! しっかりついてこい!」
笹原「言われなくともわかって……って、隊長? その差し出された手は、なんですか?」
暁「いや、言わなくてもわかるだろ?」
笹原「言われないとわかりませ……はっ! もしかして『財布は俺が預かる!』ってやつですか⁈ 子ども扱いしないでください! 私は、立派な高校生ですよ! お金は自分で管理──」
暁「違ぇよ! 財布は、むしろ俺が預かってほしいくらいだわ! 落としそうだし!」
笹原「じゃあなによ?」
不思議な顔をする笹原。暁は上げたテンションを比例させるようにニヤつきを強める。
暁「祭りでめちゃくちゃ人多いし、手ぇ繋いでないとさ、冬華ちゃんは迷子になっちゃうだろ~?」
笹原「なっ……! なななななによ、それ⁈ バカにするな! 子ども扱いするな! バカじゃないの! ほんと、バーカ!」
暁「とかなんとか言って、迷子になったのはどこの誰でしたっけ~? 『私は手を繋がなくても大丈夫だから!』とか自信満々に言ったくせして迷子になったのは、どこの誰でしたっけ~?」
笹原「いつの話をしてんのよ! そんなことありませんでしたし!」
暁「忘れもしない、あれは小学生の頃! 俺と冬華、夏帆、そして両親たちと、みんなで夏祭りに行った時の話──」
笹原「わーー! やめろやめろやめろ! 思い出させるな! 恥ずかしいでしょうが! 口を閉じんかい!」
暁「『あ、秋斗くぅん……! わ、私、私ぃ……! ごめんなさいぃぃ……!』って、鼻水垂らして大泣きして──」
笹原「あんた記憶力よすぎない⁈ やめろって言ってんでしょうが! あー恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいぃぃぃ!」
暁「恥ずかしがんなよ~! あれも今となっちゃ、良い思い出だろ?」
笹原「良くないわ! 次その話したら、引っ叩くからな!」
暁「怒んなっての! せっかくの祭りが台無しだぜ?」
笹原「うっさいわ!」
暁「わりぃって。後でリンゴ飴奢ってやるから、機嫌直せよ~!」
笹原(M)そういや、そんなこともあったっけ? 言われるまで忘れてたわ。まぁ、小学生の頃の話だし、覚えてなくても不思議じゃない。
笹原(M)でも、彼は覚えててくれた。何年も前の出来事なのに、鮮明に覚えててくれた。事が事だけに、ちょっぴり恥ずかしいけど……それ以上に、嬉しかった。
暁「さぁ、行こうぜ! 楽しもうぜ、夏祭り! 俺たちの夏は、ここから始まるぜ!」
笹原「……」
暁「ん? どした、冬華?」
急に静かになった笹原へ視線を送る。
笹原は俯き、顔を真っ赤に染めて、静かに右手を差し出している。
暁「……どした?」
笹原「……ん」
暁「ん?」
笹原「ん」
暁「え? なに?」
笹原「……あ、あんたがさ、言ったんでしょ?」
暁「ん? なにを?」
笹原「い、言わせんな! 言わせんな……」
リンゴ飴のように真っ赤に染まる笹原の顔。暖かくなる、差し出した手。
暁「迷子になりたくなかったら、手ぇ離すなよ?」
笹原「う、うん」
暁「俺、スマホ持ってきてないから。マジで迷子になったら終わりだからな?」
笹原「……え? マジ?」
暁「マジマジ。着替えた時に机の上置きっぱなしにしてきた」
笹原「バカか⁈ いや、バカでしょ! マジで逸れたらどうすんのさ!」
暁「だからこうして手ぇ繋いでんだろ? よっしゃ、行くぞ~! ソロ夏祭りが嫌なら、死んでも離すな! わかったな?」
笹原「う、うん!」
笹原の返事を聞き、ニコリと微笑む暁。
二人はギュッと手を握り合い、屋台へと駆け出していく。
笹原(M)高校生。二人きり。夏祭り。浴衣。これだけ揃っていたら、意識するなと言われても無理がある。意識するなは無理でしょ。ドキドキが止まらない。少しでも気を抜けばニヤけてしまう。幸せだ。私は今、とてもとても幸せだ。
笹原(M)でも君は、私とは違う。高校生。二人きり。夏祭り。浴衣。これだけ揃っていても、君はいつもと変わらない。いつもと何も変わらないんだ。
暁「おぉ、スーパーボールすくい! やるっきゃねぇだろ!」
笹原「やるしかないですね!」
暁「よーし、では……あっ、ちょっと待って! あれやろうぜ、あれ!」
笹原「ん? なに?」
暁「えぇ~ん"ん"っ! 冬華、あれを見ろ!」
笹原「ん? え、えぇぇぇぇぇ⁈」
暁「そこで冬華が見たものとは……! 沢山のスーパーボールに群がる、沢山の人々ォ! 冬華、これがスーパーボール祭りだ!」
笹原「いや、祭りっちゃ祭りだけども! ってか、恥ずかしいわ! 変なことさせるな!」
暁「んなこと言って、お前もノリノリで驚いてたじゃねぇか。さすが大輔さんだわ」
笹原「誰が大輔じゃ、アホォ!」
暁「そこまでやってくれるとは……! これがお祭りのテンション……!」
笹原「祭りだろうがなんだろうが、私はノリがいい女だからやるわよ!」
暁「だな! さすが冬華さんですわ! さぁ、スーパーボール祭りで勝負じゃ!」
笹原「やってやろうじゃねぇか、こんちくしょうが!」
笹原(M)衣装が変われど、やることはほぼ一緒。場所が変われど、やることはほぼ一緒。祭りだろうが学校だろうが、変わることのない私たちの距離感。それが悔しくもあり、嬉しくもある。幼馴染という、憎たらしい距離感。幼馴染という、ありがたい距離感。
暁「リンゴ飴、見つけましたぁ!」
笹原「でかした、秋斗ォ! さぁ、行くぞ!」
暁「そんな急がなくてもリンゴ飴は逃げねぇし、ちゃんと奢るっての! 少しは落ち着きなさい、冬華さんよ!」
笹原「ん? あれ? リンゴ飴は私が奢るんじゃないの? ほら、浴衣褒めてくれたお礼にさ」
暁「そういやそんなことあったな。でも、俺もなんかでリンゴ飴奢るって言った記憶はあるぞ」
笹原「なんかってなんだよ! 一番重要なとこでしょ! あんたには任せられないわ。私が思い出す!」
暁「なんだっけ? もうちょいで思い出せそうだ……!」
笹原「あれだ、あれ! 私の恥ずかしい話の件! だから思い出さなくてよき! いくぞ!」
暁「あと少し、あと少しで……!」
笹原「思い出さなくていいって言ってんでしょうが! ほら、いくぞ!」
暁「はいはい、わかったから! 引っ張んなって!」
笹原「カッコいいお兄さん! リンゴ飴一つください!」
男「おっ、なんだい可愛いお嬢さん! それでまけてもらおうってか? さすがにそれだけじゃぁまけらんねぇなぁ!」
笹原「えぇ~! ダメですか~?」
暁「イケメンお兄さん、俺にもリンゴ飴一つくださいな!」
男「お嬢さん、そいつと俺、どっちがイケてる?」
笹原「そんなのもちろん、お兄さん!」
暁「おぉい! なんでやねん!」
男「はっはっはっ! いいねいいね、まけてやんよ! 半額でいいぞ!」
笹原「ホントですか⁈ カッコいい~! ありがとうございます!」
暁「お兄さん、俺は!」
男「カッコいい男ってんなら、お嬢ちゃんの半額分プラスで支払えるよな~? イケてるお兄さん?」
暁「クソがぁぁぁ! てめぇら、いつのまに手を組んでやがった⁈」
男「冗談だよ! ただ、おめぇは通常料金だ! てめぇの分の割引も、全部お嬢ちゃん行きだ! 男なら、そんくらい我慢しろよ!」
暁「わかりましたよ! 持ってけ、泥棒!」
男「泥棒はオメェらだろうが! 毎度!」
笹原「ありがとうございます! また来年も来ますね!」
男「約束だぞ! こなきゃ倍額だからな! そこの兄ちゃんが!」
暁「いや、なんでやねん!」
男「文句言わずにとっとと去ね! 幸せにな! 祭り、楽しめよ~!」
笹原「は~い! ありがとうございま~す!」
暁「あざま~す!」
笹原「さぁてと、ではでは……はい、リンゴ飴! 喜べ、私の奢りだ!」
暁「ありがとうございます! んじゃ、俺も……俺の奢りだ! ほら、受け取れ!」
笹原「わーい! ありがと~!」
暁「いや、なにやってんだか! バカか、俺たちは!」
笹原「今更でしょ!」
暁「だな! さぁ、まだまだ祭りは終わんねぇぞ~!」
笹原「おぉ~!」
笹原(M)ベタベタと口周りにまとわりつくリンゴ飴やら綿飴やら、いつもの倍近くの値段で売られる飲み物やら焼きそばやら……何度引いても当たりゃしないくじ引き、すぐに崩れる型抜き、当たってもなかなか倒れない射的、すぐに破けて負けてしまったスーパーボールすくい……どれもこれも『なんじゃこりゃ⁈』って言いたくなるようなものばっかり。
笹原(M)でも、どれもこれもが愛おしい。どれもこれも、もっともっとやりたくなる。買いたくなる。これが、祭りだ。夏祭りだ。楽しい楽しい夏祭りだ。人が多くて思うように歩けなくても、楽しいんだ。どれだけ歩いても、疲れないんだ。夏の蒸し暑さも、笑って許せちゃうんだ。どれもこれも、祭りだから楽しく感じてしまうんだ。
笹原(M)秋斗が隣にいるから、どれもこれもが幸せに感じてしまうんだ。
ーーー
祭りが始まってから数時間後……屋台に夢中だった人々は、屋台から目を背け、足を止め、皆が皆、屋台の光が届かぬ真っ暗な空へと顔を向けている。
小さな星しか映さぬ真っ黒なキャンパスを、キラキラと星に負けぬほどの輝きを放つ瞳で、今か今かと心待ちに見上げ続けている。
暁「そろそろだぞ~! 来るぞ来るぞぉ……!」
笹原「わかったから! 何度目だ、そのセリフ!」
暁「待ちきれないんだよ! わかるだろ、俺の気持ち!」
笹原「わからなくないけども! 小学生じゃないんだから、落ち着きなさい! あんたはもう高校生でしょ!」
暁「身体は高校生、心はいつでも小学生です!」
笹原「どこぞの探偵、逆バージョン! 逆にしたらとんでもない問題児!」
暁「真実は、いつも一つだと思いたい!」
笹原「はっきりせい! バカなことしてると見逃すよ?」
暁「ジッと空見続けてるから大丈夫~」
笹原「少しは私とアイコンタクトしろ!」
暁「おっ? 来たぞ来たぞ!」
笹原「え、嘘⁈」
夜空に打ち上がる、一筋の光。高く高く上っていき……ふと、皆の視界から消えてなくなる。
刹那──真っ赤な光と爆音を発しながら、四方八方、暗闇のキャンパスに大きく大きく華開く。
暁「おぉ……! すげぇ……!」
笹原「綺麗……!」
笹原(M)毎年毎年見る花火、今年は一段と綺麗に見える。今まで見たどの花火よりも……単純な女だ、私は。
笹原(M)小さい頃、強がって、手を繋がなくてもいいとか言って、逸れて、迷子になって、泣いて泣いて泣いて……もう二度とお父さんとお母さんに会えないんじゃないかって思って、お祭りなんて大っ嫌いになろうとしてた。
笹原(M)そんな単純な私を、君は見つけてくれたんだ。花火を見てるその顔で、ニコニコ明るい眩しい顔で『見つけたぞ、冬華!』って。今みたいに、ギュッと手を繋いで『行くぞ!』って、笑いながら泣いている私を引っ張ってってくれた。今思えば、私を不安にさせないようにずっと笑っててくれたんだろうな。いい男だよ、ほんと。
笹原(M)君が見つけてくれたから、君が手を握ってくれて笑ってくれたから、私は祭りが好きなままなんだ。恥ずかしくてどうしようもない思い出も、いい思い出として思い出せるんだ。君がいてくれたから、あなたが私を助けてくれたから。
笹原(M)……今思えば、この時に好きになっていたのかもしれない。というか、そんなことされたら好きになるよ。なるに決まってるよ。だって私、単純だもん。単純なんだもん。
笹原(M)ねぇ、秋斗……あなたは、覚えてる? 小さい頃、私がお祭りで迷子になって泣いてた時に、秋斗が助けに来てくれて。でも、秋斗も親の言うこと聞かずに走ってきちゃったから、親がどこにいるのかわかんなくって、二人で人混みかき分けて、必死になって探し回った時のこと。
笹原(M)全然見つからなくて、また泣きそうになる私の手を、あなたはギュッと握り直して……言ってくれたよね? あの時の言葉、あなたが言った言葉、覚えてる?
笹原(M)多分、あんたは覚えてないよね。だってあんたは、可愛くて綺麗な浴衣女子が隣にいるってのに、空ばっか見てるバカで、アホで、超鈍感な、どうしようもないバカアホ野郎だからさ。
笹原(M)でもね、あんたはなんにも悪くないよ。誰がなんと言おうと、あんたは悪くない。悪いのは、私。私なんだ。バカで、アホで、超鈍感でどうしようもないあんたを、どうしようもなく好きになっちゃった私が悪いの。超超超、めちゃくちゃにめちゃくちゃに好きになっちゃったんだ。あんたに好きな人がいようが、私のこと見てくれないってわかってても……好きなんだ。大好きなんだよ。バカだってわかってたのに、アホだって、超鈍感だって、どうしようもねぇやつだって、わかってんのに……それでも、好きなんだ。わかってんのに好きなんだ。だからさ、悪いのは私だよ。私が悪いんだよ。
笹原(M)私が悪いんだ……そう、私が……。こいつを好きになっちゃった私が悪い……。私は、悪い……悪い子なんだ……悪い子……。
笹原(M)……だからさ。
笹原は打ち上がる花火を見続けたまま、握る手を緩める。
一つ一つ、指を暁の指に絡めていく。
笹原(M)これは、あれだ。小さい頃の真似事。あの時の、手を握った時と同じ握りにしただけ。そう、真似事だ。真似ただけ。悪いことではない。怒られるようなことはしていない。ってか、神様はどうせ花火に夢中だ。私なんか見ていないだろう。だから、例え悪いことだとしても、気づかれるはずもない。
暁「おい、今の見たか⁈ ヤバくね、今の! めちゃくちゃ綺麗だったな! もう一回上がんねぇかな~!」
笹原(M)超鈍感な君も気づかない。というか、気づいたところでなんともないだろう。どうしようもなくバカで、アホだから。でも、いいんだよ、それで。君は悪くないさ。悪いのは、私。私なんだ。私が悪い子さ。だから、言ってやるよ。言ってやる。思ってること、全部ぶちまけてやる。
笹原「花火も綺麗だけどさ、君の方が何倍も綺麗だよ、秋斗さん」
暁「え……? と、冬華さん……!」
笹原「おい、せめてこの時くらいは私の目を見てくれない⁈ ボケがスルーされたみたいで恥ずかしいんだけど!」
暁「ちゃんと答えてやったろ~? ほらほら、綺麗な花火見逃すぞ!」
笹原「バカバカバカ! 秋斗のバーカ! アホ! バカ! 鈍感野郎! てめぇはとんでもねぇバカやろうだ!」
暁「やめろやめろ! 綺麗な花火が汚くなんだろうが! 綺麗な言葉を使いなさい!」
笹原「バーカ! バーカバーーカ! アホ! バカ! アホバカやろ~! 花火と共に爆発しちまえ~!」
暁「お口チャックしなさい! 花火は静かに見ましょうね!」
空いた手で暁に口を塞がれた笹原。声を発することなく暁の肩に頭をぶつける。暁はやめろと言わんばかりに、塞いだ手で笹原の両頬をムニムニと摘む。
無理やりにおちょぼ口へと形を歪ませられるが、笹原は嫌がる様子もなく、静かに暁の腕へと身体を寄せ、何度も何度も打ち上がる花火へと視線を向ける。
暁「綺麗だな~花火! いつ見ても最高だな~!」
笹原「うん。すごくすごく、綺麗だね」
笹原(M)花火ばかりで、全然私を見てくれない君。なんだかほんのちょっぴりだけど、悔しい気持ち。花火に嫉妬すんなって? うるせぇ。そんだけ好きなんだよ、馬鹿野郎。
笹原(M)あーあ、私は本当に悪い子だ。汚ねぇ女だ。綺麗な綺麗な花火を、君との思い出話に華咲かせたいがために……ただそれだけのために見てるんだからさ。
笹原(M)ホント、とんでもなく幸せもんだなぁ、私は。
ーーー
花火が打ち終わり、夏祭りが終わる。笹原たちは人混みに紛れ帰路を歩いている。
目的地へと近づくにつれ、騒がしかった人の群れが少なくなっていく。強く握られていた手は既に離れており、距離も人一人は余裕で通過できるほどに離れてしまっている。が、二人は屋台を巡っている時と同じくらい楽しそうに会話をしながら歩いている。
暁「な~んで夏祭りって一回だけなんだろうなぁ? もっとやってくんねぇかなぁ?」
笹原「そんなに祭りが好きなら、別のところにいけば? ほら、他のとこはまだこれからのとこあるでしょ? たぶん」
暁「はっ! その手があったか! 冬華、交通費くれ!」
笹原「ふざけんな! 自分でなんとかしろ!」
暁「酷い! そんな冷たいこと言わなくてもいいじゃないの! 私、泣いちゃう!」
笹原「あーはいはい。ご自由に泣いてどうぞ~」
暁「あれ? マジで冷たくない? 祭りの時のノリはどこに行ったの?」
笹原「もう祭りは終わりましたので。残念でした~」
暁「ふざけんな! ってか、何言ってんだ! 祭りってのはな、家に帰るまでが祭りなんだぞ!」
笹原「ふ~ん。ってことは、まだまだお祭り中ってことでぇ~……私、迷子になっちゃいそう……! 怖いなぁ~? 手、握ってほしいなぁ~?」
暁「あーあ、そのセリフ、凪先輩に言われてぇなぁ~」
笹原「ほほぉ? 私では不満があると? よかろう……その言葉、私への宣戦布告として受け取った!」
暁「さぁ、お嬢様、私のお手をお取りになってください。決して離してはいけませんよ?」
笹原「いいわ、暑苦しい。それに手汗でベトベトしてそうだし、遠慮します」
暁「てめぇ、俺の優しさになんてことしやがる! 許しちゃおけねぇ!」
笹原「はいはい、仕方ないから握ってあげますわよ。ほら、これで満足?」
暁「なんで俺が握ってほしいみたいになってんだよ! さっさと離さんかい! 暑苦しい!」
笹原「離すか! 私と手を握れること、感謝感激喜べ!」
暁「うるせぇ! だまらっしゃい!」
笹原「ふ、ふふふ……!」
暁「笑うな、バカ」
笹原「うるせぇ、バーカ」
暁「ホント、いつもと変わんねぇな、俺たちは」
笹原「だねぇ~」
暁「そういや、今更かもだけどさ、足大丈夫か? 普段履いてないもんだから、しんどくないか?」
笹原「ううん、平気だよ。ありがと、心配してくれて。そういうところ気にできる秋斗さん、ホント素敵ですわ!」
暁「だろ? 優しさの塊秋斗ってよく言われます」
笹原「語呂がいいんだか悪いんだか微妙ですね、優しさの塊秋斗って」
暁「微妙言うな!」
笹原「ホントのことでしょ。優しさの塊秋斗さん」
暁「微妙って言うくせに使ってんじゃねぇか! 本当は気に入ってるくせによぉ!」
笹原「気にいってませーん! デタラメ言わないでくださーい!」
暁「デタラメじゃありませーん! ホントのホントでーす!」
笹原「ホントのホントのホントに~?」
暁「ホントにホントにホントにホントに~♪」
笹原・暁「ライオンだぁ~♪」
有名なCMソングを口にし、繋がれた手を空高く上げる二人。
自分たちでもわかるバカバカしい行動──思わず笑みが溢れる。
笹原「あぁ、もぉ~……! なにこれ、ホントバッカみたい!」
暁「夏帆がいたら『仲良過ぎて気持ち悪い』って言ってるな~」
笹原「言ってそう~。ってか言う、絶対~」
暁「よ~し、夏帆に俺たちの仲の良さを見せつけてやろうぜ! 動画撮って送るぞ!」
笹原「絶対に嫌~。既読無視されるのがオチ~」
暁「俺が送った場合は100%そうなる。しかし、冬華が送れば……さぁ、やろう!」
笹原「嫌です~! 夏帆に変な目で見られたくないで~す!」
暁「俺との動画だぞ! 温かい目で見られるに決まってんだろうが!」
笹原「それもそれで嫌だわ!」
暁「と、なんとかんと言ってる間に、冬華家に到着~!」
笹原「ありがと、送ってくれて」
暁「礼なんていいって。こんな夜遅くに女の子を一人で帰すなんて、できるわけがないだろ?」
笹原「さすが、優しさの塊秋斗さん! 素敵です!」
暁「やっぱ気に入ってんじゃねぇか!」
笹原「気に入ってません~! って、冗談はこれくらいにして。ほんと、ありがとね。すごく楽しかった!」
暁「俺も! だが、まだ気を抜くなよ、冬華! 祭りは、寝るまでが祭りだからな!」
笹原「あれ、帰るまででは⁈ 長くなってません⁈」
暁「そういうこともある! ってことで、じゃあな! おやすみ!」
笹原「うん! おやすみ! 気をつけてね!」
暁「おうよ! またな~!」
笹原(M)ニコニコと、笑いながら手を振ってくれる。つられて私も手を振りかえす。少しずつ、少しずつ小さくなっていく。離れていく。楽しかった思いも、幸せだった思いも。
笹原(M)ふと浮かんだ、愛海の言葉……キュッと心臓が掴まれたような感覚。まだ離れたくない。ずっと一緒にいたい。もっとそばにいたい。私……私は、あんたと──
笹原「ね、ねぇ!」
暁「ん? なんだ?」
笹原の声に足を止めて振り返る。静まり返る夜道。笹原の耳に届くのは、心音。ただそれだけ。
笹原「……」
暁「冬華? どうした?」
笹原「……あ、あの……あのさ……その……わ、わ、私……私ね……!」
暁「ん? なんだよ?」
首を傾げ、ゆっくりと戻ってくる暁。心音がさらに加速する。
笹原はギュッと目を閉じ、拳を強く握り──
笹原「……ら、来年もさ、また一緒に、夏祭り行こ! 今度は、遊部のみんなと一緒に!」
暁「おっ、いいね! 次こそはリベンジだな!」
笹原「うん! 次こそは!」
暁「もちろん、夏帆もだよな?」
笹原「もちろん! みんな来るっていったら、夏帆も来るでしょ!」
暁「だな! 祭りは大人数のが楽しいもんな!」
笹原「おうよ! 今日は、ほんとありがとね!」
暁「あいあい、こちらこそ! じゃあな~!」
笹原「気をつけてね~!」
無理やり笑顔を作り大きく手を振る。暁が背を向けた後も、ずっと大きく手を振り続ける。
暁の姿が見えなくなると、笹原は腕を下ろし、顔を俯かせ、ギュッと口をつむぐ。
笹原(M)これ以上はダメだ。これ以上の幸せを望めば、きっと神様は怒るだろう。『あんなに幸せな思いしたのにまだ足りないというのか! この贅沢者め!』とか言われるよ。この世はキチっとバランスが取れるように作られてるんだ。だから次は不幸な目に遭うはずだ。きっと。たぶん。
笹原(M)だから、これでいいんだ。これがいいんだ。寂しくても、苦しくても、悔しくても、今はこの距離がいいんだよ。
帰宅後、シャワーを浴び終えた笹原は、部屋へと戻り流れるようにベッドへと倒れ込む。
笹原「あぁ~布団がめちゃくちゃに気持ちいい~! やばいって、これは……すぐ寝る、これは……」
笹原「……」
笹原(M)彼は言ってた『寝るまでがお祭り』と。だから、寝てしまえば終わってしまう。楽しい楽しい、幸せだったお祭りが。秋斗と二人……大好きな人と二人きりだった、幸せなお祭りが……。
笹原「ダメだ……寝る……もう寝る……。これ以上は、無理……」
ウトウトする中で、笹原はスマホを手に取りホーム画面を開く。整理された様々なアイコンの後ろで、浴衣姿の自分と甚平姿の暁が、見ているこちらも笑顔になってしまうくらい眩しい笑顔で笑っている。
笹原「……ふふふっ。バカアホ秋斗め……カッコよすぎんだろうが……。バーカ……」
笹原「……私も、絶対に離さないからね……。もし、みんなと会えなくなったとしてもさ……ずっとずっと……そばに……」
眠気に負け、幸せの時間を終わらせる笹原。顔のそばに置かれたスマホは、若野からのメッセージを絶え間なく受信し光り続ける。が、笹原は気づくことはなく、幸せそうな顔で、静かに静かに寝息をたてた。
笹原:♀
暁:♂
母:♀
男:♂
ーーー
夏祭り当日。ほんのりと空は赤く染まり、気温も徐々に落ち着き出した頃、浴衣姿の女性たちがちらほらと姿を見せ始め、町中を明るく華やかに色づかせていく。
家のリビングにいる笹原も、町中を歩く女性たちと同じように浴衣を着て、夏祭りへと行く準備を着々と進めている。
母「うんうんうん! いいじゃんいいじゃん、すっごく似合ってる!」
笹原「ほ、ほんと? よかった~!」
母「写真撮っていい?」
笹原「えぇ~どうしようかな~?」
母「いいじゃない! 浴衣なんて滅多に着るもんじゃないんだから、撮らせてよ!」
笹原「それもそっか。はいはい、ぱぱっと撮ってくださいよ~」
母「いいわねいいわね~! 最高に可愛いわよ、冬華! めちゃくちゃに可愛い!」
笹原「わ、わかったから! あんたはモデル撮ってるカメラマンか!」
母「なによ、可愛いって言われて嬉しくないの? 嬉しいでしょ?」
笹原「そりゃまぁ、どちらかと言われたら嬉しいけども」
母「可愛い可愛い可愛い! 最高よ! 最高に可愛いわ~!」
笹原「流石に恥ずかしいっての! ってか、いつまで撮ってんの!」
母「別にいいじゃない。可愛い娘の写真はね、何枚でも撮りたくなんの。あんたも母さんの立場になったら、気持ちが痛いほどわかるわよ」
笹原「はいはい、そうですか」
母「そういえば、あんた今日は秋斗くんと行くのよね?」
笹原「うん、そうだよ」
母「ふ~ん。もしかして、二人きり?」
笹原「……と、友達もいる!」
母「もぉ~恥ずかしがっちゃって~! あんたたち、いつの間にそんな仲になってたのよ~!」
笹原「へ、変な勘違いするな! お互いに友達と行けなくなったから! 別に、そんな仲じゃない!」
母「そんな強く否定しないの。秋斗くんが可哀想でしょうが。まぁ、あんたたち小さい頃からずっと一緒だったもんね。ところで、なんで夏帆ちゃんは来ないの? いつも一緒じゃない」
笹原「夏帆はお祭りとか人多いの苦手だから。誘ったんだけど、行かないって」
母「あら、そうなのね。とかなんとか言って、あんたたちのこと思って行かないんじゃ~? 夏帆ちゃんってば、できる女の子ね!」
笹原「そ、そんなことないわ! た、たぶん! もぉ、行くからね!」
母「気をつけてね。帰り遅くならないように。祭りだからって、はしゃぎすぎたらダメだからね」
笹原「わ、わかってるってば!」
母「秋斗くんのとこ泊まるんだったら、一応連絡入れてね~」
笹原「と、ととと泊まるか、バカ!」
母「はしゃぎすぎたらダメよ? しっかりちゃんと準備はしなさいね?」
笹原「どういう意味よ⁈ 何もしないわ!」
母「冬華」
笹原「なによ?」
母「あんた今、最ッッ高に可愛いから、自信持って行きなさい。わかった?」
笹原「うん、わかった! 行ってくる!」
母「いってらっしゃい」
元気よくリビングを出ていく娘に小さく手を振る母。娘の姿が見えなくなると、不思議そうな顔をして右手を頬に当てる。
母「……あの子たち、まだ付き合ってなかったのね。そこに驚きなんだけど」
ーーー
母との撮影会を終えた笹原は、玄関の扉を開け外へと出ていく。
笹原家の前で待っていた暁は、扉が開く音に反応しスマホから視線を上げる。
笹原「お、おっす。お待たせ」
暁「おっ、浴衣じゃん! めちゃ気合入れてんじゃん!」
笹原「せ、せっかくの夏祭りだし、気合入れるのは当たり前でしょ」
暁「お前のその心意気、素晴らしいっ! 拍手っ!」
笹原「も、もぉ~照れますぅ~! やめてください~!」
暁「いいないいな~! 夕暮れ時、浴衣姿の女の子……くぅ~! 祭りって感じだわ~! テンション上がるぅ~!」
笹原「……ね、ねぇ」
暁「ん? なんだ?」
笹原「……ど、どう?」
顔を少し赤く染め、目を逸らしながら髪をいじる笹原。
暁「最高に可愛いですよ、笹原冬華さんっ! いよっ、浴衣美人! 世の男たちはメロメロでっせ!」
笹原「も、もぉ~! そんな言われると照れますよぉ~! 気分いいんで、後でリンゴ飴を奢ります~!」
暁「マジですか⁈ ありがとうございます!」
笹原(う、嬉しい……! ニヤけそう……! 浴衣着てきてよかった~!)
暁「ってか、浴衣着てくるなら言ってくれよ~。そしたら俺も、甚平とか着てきたのに」
笹原「え、いいじゃんいいじゃん! なんで着てこなかったのさ!」
暁「いやだってさ、俺、甚平。お前私服。なんか嫌じゃね? 一人だけ気合入れすぎじゃね?」
笹原「私、今もれなくそれなんですけど? 私、浴衣。お前私服」
暁「気合充分ですね、冬華さん!」
笹原「やめい! なんか恥ずかしいわ! 今から着替えてきたら?」
暁「いやでも、今から家帰って着替えてってなったらさ、待たせるじゃん?」
笹原「気にしない気にしない! むしろ着てこい! 待ってるから! 家近いし、着替えるって言ってもそんな時間かかんないでしょ!」
暁「うーん、そこまで言われると……」
笹原「お客さん、カッコいいからすごくお似合いだと思いますよ! どうですか?」
暁「え、えぇ~? ホントですか~? そんな言われると……ど、どうしよう~?」
笹原「ほらほら、夏祭りなんて一年に一度ですよ! それなのに私服なんて、もったいないですよ~! 絶対に似合いますから、自信持ってください!」
暁「そ、そこまで言われたら、着る以外の選択肢、なくないですか⁈ よし、予定変更! 俺ん家までいくぞ!」
笹原「よっしゃ~! 行きましょ行きましょ~!」
ーーー
笹原は玄関前で、暁が出てくるのを今か今かと待っている。
笹原(なんか……なんと言うか……いいなぁ~、待つって! こう、ワクワクとドキドキが入り混じってるというか? ってかてか、浴衣と甚平でお祭りって、なんだよ! いや、もう、なんだよ、それは! テンション上がんないわけないじゃん! 上がりすぎてニヤけるわ! やめろやめろ、ニヤけさすな馬鹿野郎! ありがとう! わ~……!)
暁「お待たせしました~!」
笹原「きゃ~! すごくカッコよくて素敵です~!」
暁「そ、そうですか~? さすがにお世辞ですよね~?」
笹原「お世辞なんかじゃありませんよ! 心の底から出た言葉です! すごいお似合いで、えぇ~カッコいいぃ~!」
暁「あぁ、気分がいい……! すごく気持ちいい……! この服、買います! いくらですか?」
笹原「お買い上げ、ありがとうございま~す! 税込で15万円となりま~す!」
暁「くっっそ高ぇな、おい!」
笹原「ふっ、ふふふ……!」
暁「服は変わっても、ノリはいつもと変わらずだな!」
笹原「だね! んじゃ、行こっ!」
暁「おうよ! 年に一度の夏祭り、楽しもーぜ!」
笹原「おぉー!」
ーーー
浴衣と甚平を着た男女が、夏祭りが行われている場所へ楽しげに話しながら向かっている。
笹原(あぁ……私、すごくすごく幸せだ……! めちゃくちゃに幸せだぁぁ……! もう、なんか、あぁぁぁぁぁ、幸せぇ~! 二人きりで夏祭りってだけでも幸せなのにさ、こんなの……あぁぁぁぁ~!)
暁「あっ、そうだ! 冬華!」
笹原「ふぁい⁈ な、なんでしょうか⁈」
暁「スマホ、貸して!」
笹原「え? スマホ? なんで?」
暁「写真、撮ってやるよ!」
笹原「へ?」
暁「おいおいおい、せっかくの浴衣だぜ? 可愛い可愛い浴衣だぜ? それなのに写真撮らないは、もったいないだろうが! ほら、貸せ貸せ! 俺が可愛く撮ってやるから!」
笹原「秋斗さん、気が利きますね! できる男ですね! 素敵!」
暁「だろだろ? よ~し、にっこり笑えよ~!」
笹原「ちょいちょいちょい、待て待て待て!」
暁「ん? なんだよ?」
笹原「いや、私単品はなんか恥ずかしいんだけど! 単品はやめましょうに! 単品は!」
暁「いやでも、せっかくの浴衣だぜ?」
笹原「だからこそよ! ほら、一緒に撮ろ! 私が可愛く撮ってやるから!」
暁「え? 俺も入っちゃって大丈夫なんですか?」
笹原「もちろんもちろん! 秋斗さんなら大歓迎ですよ~!」
暁「そんなこと言われちゃ断れませんよ~! 可愛く撮ってくださいね~!」
笹原「お任せくださ~い! さぁ、寄って寄って! 行きますよ~?」
暁「夏祭りっ!」
笹原「なんだよ、その掛け声⁈ ちょっ、もう一回!」
暁「次はちゃんと合わせろよ~?」
笹原「任せな! 行くぞ~? せーのっ!」
暁・笹原「夏祭りっ!」
笹原「はい、どうでしょうか?」
暁「え、えぇ~⁈ これが、私ぃ⁈ 可愛いぃ~! さすが冬華さん、すご~い!」
笹原「でしょでしょ? さすがでしょ? 送っとくね!」
暁「サンキュー!」
笹原(まさかまさかのツーショット! しかも、普段とは違う服装の! あとでホーム画面……は、あれだから、トーク画面に……いーや、ホーム画面にも設定決定っ! おめでとうございまーすっ!)
笹原(なんだよ、ちくしょう! こんなん、ニヤけんなって言われても無理だわ! いや、無理でしょ! ニヤけるわ、こんなん! だってだってさ、二人きりだし、甚平秋斗めちゃくちゃかっこいいし……あぁぁぁ~良いです、すごく良いです! 前、普段着ないもん着たらドキッとするどうこうの話されたけど、それは逆もですよ、馬鹿野郎! こんなん、惚れんなって言われる方が無理っ!)
暁「おい、なにボーッと突っ立ってんだ? 早く行こうぜ!」
笹原「う、うん!」
笹原(あぁ~めちゃくちゃに幸せだなぁ~! ずっとこんな日が続けばいいのにぃ~!)
ーーー
大小様々な屋台が立ち並ぶ道路沿い。どこもかしこも賑わいを見せている。
笹原と暁は、次第に多くなる人混みに合わせるようにテンションを上げていく。
暁「おぉ~! きたきたきたぁぁ!」
笹原「ついに来ました夏祭り! さぁ、まずはどうしますか!」
暁「とりあえず、端から端まで屋台巡り! 途中で気になったところは、迷わず止まる!」
笹原「イエッサー!」
暁「冬華! 本日の軍資金は⁈」
笹原「普段から貯めていたものに、母親からのお祭りお小遣いがあり、とても潤っています! 隊長は⁈」
暁「同じく! でも、油断はするなよ! 祭りはすぐに金が溶ける恐ろしい場所でもある! 何を買うかは、しっかりちゃんと考えて買うように!」
笹原「了解しましたぁ!」
暁「では、行くぞ! しっかりついてこい!」
笹原「言われなくともわかって……って、隊長? その差し出された手は、なんですか?」
暁「いや、言わなくてもわかるだろ?」
笹原「言われないとわかりませ……はっ! もしかして『財布は俺が預かる!』ってやつですか⁈ 子ども扱いしないでください! 私は、立派な高校生ですよ! お金は自分で管理──」
暁「違ぇよ! 財布は、むしろ俺が預かってほしいくらいだわ! 落としそうだし!」
笹原「じゃあなによ?」
不思議な顔をする笹原。暁は上げたテンションを比例させるようにニヤつきを強める。
暁「祭りでめちゃくちゃ人多いし、手ぇ繋いでないとさ、冬華ちゃんは迷子になっちゃうだろ~?」
笹原「なっ……! なななななによ、それ⁈ バカにするな! 子ども扱いするな! バカじゃないの! ほんと、バーカ!」
暁「とかなんとか言って、迷子になったのはどこの誰でしたっけ~? 『私は手を繋がなくても大丈夫だから!』とか自信満々に言ったくせして迷子になったのは、どこの誰でしたっけ~?」
笹原「いつの話をしてんのよ! そんなことありませんでしたし!」
暁「忘れもしない、あれは小学生の頃! 俺と冬華、夏帆、そして両親たちと、みんなで夏祭りに行った時の話──」
笹原「わーー! やめろやめろやめろ! 思い出させるな! 恥ずかしいでしょうが! 口を閉じんかい!」
暁「『あ、秋斗くぅん……! わ、私、私ぃ……! ごめんなさいぃぃ……!』って、鼻水垂らして大泣きして──」
笹原「あんた記憶力よすぎない⁈ やめろって言ってんでしょうが! あー恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいぃぃぃ!」
暁「恥ずかしがんなよ~! あれも今となっちゃ、良い思い出だろ?」
笹原「良くないわ! 次その話したら、引っ叩くからな!」
暁「怒んなっての! せっかくの祭りが台無しだぜ?」
笹原「うっさいわ!」
暁「わりぃって。後でリンゴ飴奢ってやるから、機嫌直せよ~!」
笹原(M)そういや、そんなこともあったっけ? 言われるまで忘れてたわ。まぁ、小学生の頃の話だし、覚えてなくても不思議じゃない。
笹原(M)でも、彼は覚えててくれた。何年も前の出来事なのに、鮮明に覚えててくれた。事が事だけに、ちょっぴり恥ずかしいけど……それ以上に、嬉しかった。
暁「さぁ、行こうぜ! 楽しもうぜ、夏祭り! 俺たちの夏は、ここから始まるぜ!」
笹原「……」
暁「ん? どした、冬華?」
急に静かになった笹原へ視線を送る。
笹原は俯き、顔を真っ赤に染めて、静かに右手を差し出している。
暁「……どした?」
笹原「……ん」
暁「ん?」
笹原「ん」
暁「え? なに?」
笹原「……あ、あんたがさ、言ったんでしょ?」
暁「ん? なにを?」
笹原「い、言わせんな! 言わせんな……」
リンゴ飴のように真っ赤に染まる笹原の顔。暖かくなる、差し出した手。
暁「迷子になりたくなかったら、手ぇ離すなよ?」
笹原「う、うん」
暁「俺、スマホ持ってきてないから。マジで迷子になったら終わりだからな?」
笹原「……え? マジ?」
暁「マジマジ。着替えた時に机の上置きっぱなしにしてきた」
笹原「バカか⁈ いや、バカでしょ! マジで逸れたらどうすんのさ!」
暁「だからこうして手ぇ繋いでんだろ? よっしゃ、行くぞ~! ソロ夏祭りが嫌なら、死んでも離すな! わかったな?」
笹原「う、うん!」
笹原の返事を聞き、ニコリと微笑む暁。
二人はギュッと手を握り合い、屋台へと駆け出していく。
笹原(M)高校生。二人きり。夏祭り。浴衣。これだけ揃っていたら、意識するなと言われても無理がある。意識するなは無理でしょ。ドキドキが止まらない。少しでも気を抜けばニヤけてしまう。幸せだ。私は今、とてもとても幸せだ。
笹原(M)でも君は、私とは違う。高校生。二人きり。夏祭り。浴衣。これだけ揃っていても、君はいつもと変わらない。いつもと何も変わらないんだ。
暁「おぉ、スーパーボールすくい! やるっきゃねぇだろ!」
笹原「やるしかないですね!」
暁「よーし、では……あっ、ちょっと待って! あれやろうぜ、あれ!」
笹原「ん? なに?」
暁「えぇ~ん"ん"っ! 冬華、あれを見ろ!」
笹原「ん? え、えぇぇぇぇぇ⁈」
暁「そこで冬華が見たものとは……! 沢山のスーパーボールに群がる、沢山の人々ォ! 冬華、これがスーパーボール祭りだ!」
笹原「いや、祭りっちゃ祭りだけども! ってか、恥ずかしいわ! 変なことさせるな!」
暁「んなこと言って、お前もノリノリで驚いてたじゃねぇか。さすが大輔さんだわ」
笹原「誰が大輔じゃ、アホォ!」
暁「そこまでやってくれるとは……! これがお祭りのテンション……!」
笹原「祭りだろうがなんだろうが、私はノリがいい女だからやるわよ!」
暁「だな! さすが冬華さんですわ! さぁ、スーパーボール祭りで勝負じゃ!」
笹原「やってやろうじゃねぇか、こんちくしょうが!」
笹原(M)衣装が変われど、やることはほぼ一緒。場所が変われど、やることはほぼ一緒。祭りだろうが学校だろうが、変わることのない私たちの距離感。それが悔しくもあり、嬉しくもある。幼馴染という、憎たらしい距離感。幼馴染という、ありがたい距離感。
暁「リンゴ飴、見つけましたぁ!」
笹原「でかした、秋斗ォ! さぁ、行くぞ!」
暁「そんな急がなくてもリンゴ飴は逃げねぇし、ちゃんと奢るっての! 少しは落ち着きなさい、冬華さんよ!」
笹原「ん? あれ? リンゴ飴は私が奢るんじゃないの? ほら、浴衣褒めてくれたお礼にさ」
暁「そういやそんなことあったな。でも、俺もなんかでリンゴ飴奢るって言った記憶はあるぞ」
笹原「なんかってなんだよ! 一番重要なとこでしょ! あんたには任せられないわ。私が思い出す!」
暁「なんだっけ? もうちょいで思い出せそうだ……!」
笹原「あれだ、あれ! 私の恥ずかしい話の件! だから思い出さなくてよき! いくぞ!」
暁「あと少し、あと少しで……!」
笹原「思い出さなくていいって言ってんでしょうが! ほら、いくぞ!」
暁「はいはい、わかったから! 引っ張んなって!」
笹原「カッコいいお兄さん! リンゴ飴一つください!」
男「おっ、なんだい可愛いお嬢さん! それでまけてもらおうってか? さすがにそれだけじゃぁまけらんねぇなぁ!」
笹原「えぇ~! ダメですか~?」
暁「イケメンお兄さん、俺にもリンゴ飴一つくださいな!」
男「お嬢さん、そいつと俺、どっちがイケてる?」
笹原「そんなのもちろん、お兄さん!」
暁「おぉい! なんでやねん!」
男「はっはっはっ! いいねいいね、まけてやんよ! 半額でいいぞ!」
笹原「ホントですか⁈ カッコいい~! ありがとうございます!」
暁「お兄さん、俺は!」
男「カッコいい男ってんなら、お嬢ちゃんの半額分プラスで支払えるよな~? イケてるお兄さん?」
暁「クソがぁぁぁ! てめぇら、いつのまに手を組んでやがった⁈」
男「冗談だよ! ただ、おめぇは通常料金だ! てめぇの分の割引も、全部お嬢ちゃん行きだ! 男なら、そんくらい我慢しろよ!」
暁「わかりましたよ! 持ってけ、泥棒!」
男「泥棒はオメェらだろうが! 毎度!」
笹原「ありがとうございます! また来年も来ますね!」
男「約束だぞ! こなきゃ倍額だからな! そこの兄ちゃんが!」
暁「いや、なんでやねん!」
男「文句言わずにとっとと去ね! 幸せにな! 祭り、楽しめよ~!」
笹原「は~い! ありがとうございま~す!」
暁「あざま~す!」
笹原「さぁてと、ではでは……はい、リンゴ飴! 喜べ、私の奢りだ!」
暁「ありがとうございます! んじゃ、俺も……俺の奢りだ! ほら、受け取れ!」
笹原「わーい! ありがと~!」
暁「いや、なにやってんだか! バカか、俺たちは!」
笹原「今更でしょ!」
暁「だな! さぁ、まだまだ祭りは終わんねぇぞ~!」
笹原「おぉ~!」
笹原(M)ベタベタと口周りにまとわりつくリンゴ飴やら綿飴やら、いつもの倍近くの値段で売られる飲み物やら焼きそばやら……何度引いても当たりゃしないくじ引き、すぐに崩れる型抜き、当たってもなかなか倒れない射的、すぐに破けて負けてしまったスーパーボールすくい……どれもこれも『なんじゃこりゃ⁈』って言いたくなるようなものばっかり。
笹原(M)でも、どれもこれもが愛おしい。どれもこれも、もっともっとやりたくなる。買いたくなる。これが、祭りだ。夏祭りだ。楽しい楽しい夏祭りだ。人が多くて思うように歩けなくても、楽しいんだ。どれだけ歩いても、疲れないんだ。夏の蒸し暑さも、笑って許せちゃうんだ。どれもこれも、祭りだから楽しく感じてしまうんだ。
笹原(M)秋斗が隣にいるから、どれもこれもが幸せに感じてしまうんだ。
ーーー
祭りが始まってから数時間後……屋台に夢中だった人々は、屋台から目を背け、足を止め、皆が皆、屋台の光が届かぬ真っ暗な空へと顔を向けている。
小さな星しか映さぬ真っ黒なキャンパスを、キラキラと星に負けぬほどの輝きを放つ瞳で、今か今かと心待ちに見上げ続けている。
暁「そろそろだぞ~! 来るぞ来るぞぉ……!」
笹原「わかったから! 何度目だ、そのセリフ!」
暁「待ちきれないんだよ! わかるだろ、俺の気持ち!」
笹原「わからなくないけども! 小学生じゃないんだから、落ち着きなさい! あんたはもう高校生でしょ!」
暁「身体は高校生、心はいつでも小学生です!」
笹原「どこぞの探偵、逆バージョン! 逆にしたらとんでもない問題児!」
暁「真実は、いつも一つだと思いたい!」
笹原「はっきりせい! バカなことしてると見逃すよ?」
暁「ジッと空見続けてるから大丈夫~」
笹原「少しは私とアイコンタクトしろ!」
暁「おっ? 来たぞ来たぞ!」
笹原「え、嘘⁈」
夜空に打ち上がる、一筋の光。高く高く上っていき……ふと、皆の視界から消えてなくなる。
刹那──真っ赤な光と爆音を発しながら、四方八方、暗闇のキャンパスに大きく大きく華開く。
暁「おぉ……! すげぇ……!」
笹原「綺麗……!」
笹原(M)毎年毎年見る花火、今年は一段と綺麗に見える。今まで見たどの花火よりも……単純な女だ、私は。
笹原(M)小さい頃、強がって、手を繋がなくてもいいとか言って、逸れて、迷子になって、泣いて泣いて泣いて……もう二度とお父さんとお母さんに会えないんじゃないかって思って、お祭りなんて大っ嫌いになろうとしてた。
笹原(M)そんな単純な私を、君は見つけてくれたんだ。花火を見てるその顔で、ニコニコ明るい眩しい顔で『見つけたぞ、冬華!』って。今みたいに、ギュッと手を繋いで『行くぞ!』って、笑いながら泣いている私を引っ張ってってくれた。今思えば、私を不安にさせないようにずっと笑っててくれたんだろうな。いい男だよ、ほんと。
笹原(M)君が見つけてくれたから、君が手を握ってくれて笑ってくれたから、私は祭りが好きなままなんだ。恥ずかしくてどうしようもない思い出も、いい思い出として思い出せるんだ。君がいてくれたから、あなたが私を助けてくれたから。
笹原(M)……今思えば、この時に好きになっていたのかもしれない。というか、そんなことされたら好きになるよ。なるに決まってるよ。だって私、単純だもん。単純なんだもん。
笹原(M)ねぇ、秋斗……あなたは、覚えてる? 小さい頃、私がお祭りで迷子になって泣いてた時に、秋斗が助けに来てくれて。でも、秋斗も親の言うこと聞かずに走ってきちゃったから、親がどこにいるのかわかんなくって、二人で人混みかき分けて、必死になって探し回った時のこと。
笹原(M)全然見つからなくて、また泣きそうになる私の手を、あなたはギュッと握り直して……言ってくれたよね? あの時の言葉、あなたが言った言葉、覚えてる?
笹原(M)多分、あんたは覚えてないよね。だってあんたは、可愛くて綺麗な浴衣女子が隣にいるってのに、空ばっか見てるバカで、アホで、超鈍感な、どうしようもないバカアホ野郎だからさ。
笹原(M)でもね、あんたはなんにも悪くないよ。誰がなんと言おうと、あんたは悪くない。悪いのは、私。私なんだ。バカで、アホで、超鈍感でどうしようもないあんたを、どうしようもなく好きになっちゃった私が悪いの。超超超、めちゃくちゃにめちゃくちゃに好きになっちゃったんだ。あんたに好きな人がいようが、私のこと見てくれないってわかってても……好きなんだ。大好きなんだよ。バカだってわかってたのに、アホだって、超鈍感だって、どうしようもねぇやつだって、わかってんのに……それでも、好きなんだ。わかってんのに好きなんだ。だからさ、悪いのは私だよ。私が悪いんだよ。
笹原(M)私が悪いんだ……そう、私が……。こいつを好きになっちゃった私が悪い……。私は、悪い……悪い子なんだ……悪い子……。
笹原(M)……だからさ。
笹原は打ち上がる花火を見続けたまま、握る手を緩める。
一つ一つ、指を暁の指に絡めていく。
笹原(M)これは、あれだ。小さい頃の真似事。あの時の、手を握った時と同じ握りにしただけ。そう、真似事だ。真似ただけ。悪いことではない。怒られるようなことはしていない。ってか、神様はどうせ花火に夢中だ。私なんか見ていないだろう。だから、例え悪いことだとしても、気づかれるはずもない。
暁「おい、今の見たか⁈ ヤバくね、今の! めちゃくちゃ綺麗だったな! もう一回上がんねぇかな~!」
笹原(M)超鈍感な君も気づかない。というか、気づいたところでなんともないだろう。どうしようもなくバカで、アホだから。でも、いいんだよ、それで。君は悪くないさ。悪いのは、私。私なんだ。私が悪い子さ。だから、言ってやるよ。言ってやる。思ってること、全部ぶちまけてやる。
笹原「花火も綺麗だけどさ、君の方が何倍も綺麗だよ、秋斗さん」
暁「え……? と、冬華さん……!」
笹原「おい、せめてこの時くらいは私の目を見てくれない⁈ ボケがスルーされたみたいで恥ずかしいんだけど!」
暁「ちゃんと答えてやったろ~? ほらほら、綺麗な花火見逃すぞ!」
笹原「バカバカバカ! 秋斗のバーカ! アホ! バカ! 鈍感野郎! てめぇはとんでもねぇバカやろうだ!」
暁「やめろやめろ! 綺麗な花火が汚くなんだろうが! 綺麗な言葉を使いなさい!」
笹原「バーカ! バーカバーーカ! アホ! バカ! アホバカやろ~! 花火と共に爆発しちまえ~!」
暁「お口チャックしなさい! 花火は静かに見ましょうね!」
空いた手で暁に口を塞がれた笹原。声を発することなく暁の肩に頭をぶつける。暁はやめろと言わんばかりに、塞いだ手で笹原の両頬をムニムニと摘む。
無理やりにおちょぼ口へと形を歪ませられるが、笹原は嫌がる様子もなく、静かに暁の腕へと身体を寄せ、何度も何度も打ち上がる花火へと視線を向ける。
暁「綺麗だな~花火! いつ見ても最高だな~!」
笹原「うん。すごくすごく、綺麗だね」
笹原(M)花火ばかりで、全然私を見てくれない君。なんだかほんのちょっぴりだけど、悔しい気持ち。花火に嫉妬すんなって? うるせぇ。そんだけ好きなんだよ、馬鹿野郎。
笹原(M)あーあ、私は本当に悪い子だ。汚ねぇ女だ。綺麗な綺麗な花火を、君との思い出話に華咲かせたいがために……ただそれだけのために見てるんだからさ。
笹原(M)ホント、とんでもなく幸せもんだなぁ、私は。
ーーー
花火が打ち終わり、夏祭りが終わる。笹原たちは人混みに紛れ帰路を歩いている。
目的地へと近づくにつれ、騒がしかった人の群れが少なくなっていく。強く握られていた手は既に離れており、距離も人一人は余裕で通過できるほどに離れてしまっている。が、二人は屋台を巡っている時と同じくらい楽しそうに会話をしながら歩いている。
暁「な~んで夏祭りって一回だけなんだろうなぁ? もっとやってくんねぇかなぁ?」
笹原「そんなに祭りが好きなら、別のところにいけば? ほら、他のとこはまだこれからのとこあるでしょ? たぶん」
暁「はっ! その手があったか! 冬華、交通費くれ!」
笹原「ふざけんな! 自分でなんとかしろ!」
暁「酷い! そんな冷たいこと言わなくてもいいじゃないの! 私、泣いちゃう!」
笹原「あーはいはい。ご自由に泣いてどうぞ~」
暁「あれ? マジで冷たくない? 祭りの時のノリはどこに行ったの?」
笹原「もう祭りは終わりましたので。残念でした~」
暁「ふざけんな! ってか、何言ってんだ! 祭りってのはな、家に帰るまでが祭りなんだぞ!」
笹原「ふ~ん。ってことは、まだまだお祭り中ってことでぇ~……私、迷子になっちゃいそう……! 怖いなぁ~? 手、握ってほしいなぁ~?」
暁「あーあ、そのセリフ、凪先輩に言われてぇなぁ~」
笹原「ほほぉ? 私では不満があると? よかろう……その言葉、私への宣戦布告として受け取った!」
暁「さぁ、お嬢様、私のお手をお取りになってください。決して離してはいけませんよ?」
笹原「いいわ、暑苦しい。それに手汗でベトベトしてそうだし、遠慮します」
暁「てめぇ、俺の優しさになんてことしやがる! 許しちゃおけねぇ!」
笹原「はいはい、仕方ないから握ってあげますわよ。ほら、これで満足?」
暁「なんで俺が握ってほしいみたいになってんだよ! さっさと離さんかい! 暑苦しい!」
笹原「離すか! 私と手を握れること、感謝感激喜べ!」
暁「うるせぇ! だまらっしゃい!」
笹原「ふ、ふふふ……!」
暁「笑うな、バカ」
笹原「うるせぇ、バーカ」
暁「ホント、いつもと変わんねぇな、俺たちは」
笹原「だねぇ~」
暁「そういや、今更かもだけどさ、足大丈夫か? 普段履いてないもんだから、しんどくないか?」
笹原「ううん、平気だよ。ありがと、心配してくれて。そういうところ気にできる秋斗さん、ホント素敵ですわ!」
暁「だろ? 優しさの塊秋斗ってよく言われます」
笹原「語呂がいいんだか悪いんだか微妙ですね、優しさの塊秋斗って」
暁「微妙言うな!」
笹原「ホントのことでしょ。優しさの塊秋斗さん」
暁「微妙って言うくせに使ってんじゃねぇか! 本当は気に入ってるくせによぉ!」
笹原「気にいってませーん! デタラメ言わないでくださーい!」
暁「デタラメじゃありませーん! ホントのホントでーす!」
笹原「ホントのホントのホントに~?」
暁「ホントにホントにホントにホントに~♪」
笹原・暁「ライオンだぁ~♪」
有名なCMソングを口にし、繋がれた手を空高く上げる二人。
自分たちでもわかるバカバカしい行動──思わず笑みが溢れる。
笹原「あぁ、もぉ~……! なにこれ、ホントバッカみたい!」
暁「夏帆がいたら『仲良過ぎて気持ち悪い』って言ってるな~」
笹原「言ってそう~。ってか言う、絶対~」
暁「よ~し、夏帆に俺たちの仲の良さを見せつけてやろうぜ! 動画撮って送るぞ!」
笹原「絶対に嫌~。既読無視されるのがオチ~」
暁「俺が送った場合は100%そうなる。しかし、冬華が送れば……さぁ、やろう!」
笹原「嫌です~! 夏帆に変な目で見られたくないで~す!」
暁「俺との動画だぞ! 温かい目で見られるに決まってんだろうが!」
笹原「それもそれで嫌だわ!」
暁「と、なんとかんと言ってる間に、冬華家に到着~!」
笹原「ありがと、送ってくれて」
暁「礼なんていいって。こんな夜遅くに女の子を一人で帰すなんて、できるわけがないだろ?」
笹原「さすが、優しさの塊秋斗さん! 素敵です!」
暁「やっぱ気に入ってんじゃねぇか!」
笹原「気に入ってません~! って、冗談はこれくらいにして。ほんと、ありがとね。すごく楽しかった!」
暁「俺も! だが、まだ気を抜くなよ、冬華! 祭りは、寝るまでが祭りだからな!」
笹原「あれ、帰るまででは⁈ 長くなってません⁈」
暁「そういうこともある! ってことで、じゃあな! おやすみ!」
笹原「うん! おやすみ! 気をつけてね!」
暁「おうよ! またな~!」
笹原(M)ニコニコと、笑いながら手を振ってくれる。つられて私も手を振りかえす。少しずつ、少しずつ小さくなっていく。離れていく。楽しかった思いも、幸せだった思いも。
笹原(M)ふと浮かんだ、愛海の言葉……キュッと心臓が掴まれたような感覚。まだ離れたくない。ずっと一緒にいたい。もっとそばにいたい。私……私は、あんたと──
笹原「ね、ねぇ!」
暁「ん? なんだ?」
笹原の声に足を止めて振り返る。静まり返る夜道。笹原の耳に届くのは、心音。ただそれだけ。
笹原「……」
暁「冬華? どうした?」
笹原「……あ、あの……あのさ……その……わ、わ、私……私ね……!」
暁「ん? なんだよ?」
首を傾げ、ゆっくりと戻ってくる暁。心音がさらに加速する。
笹原はギュッと目を閉じ、拳を強く握り──
笹原「……ら、来年もさ、また一緒に、夏祭り行こ! 今度は、遊部のみんなと一緒に!」
暁「おっ、いいね! 次こそはリベンジだな!」
笹原「うん! 次こそは!」
暁「もちろん、夏帆もだよな?」
笹原「もちろん! みんな来るっていったら、夏帆も来るでしょ!」
暁「だな! 祭りは大人数のが楽しいもんな!」
笹原「おうよ! 今日は、ほんとありがとね!」
暁「あいあい、こちらこそ! じゃあな~!」
笹原「気をつけてね~!」
無理やり笑顔を作り大きく手を振る。暁が背を向けた後も、ずっと大きく手を振り続ける。
暁の姿が見えなくなると、笹原は腕を下ろし、顔を俯かせ、ギュッと口をつむぐ。
笹原(M)これ以上はダメだ。これ以上の幸せを望めば、きっと神様は怒るだろう。『あんなに幸せな思いしたのにまだ足りないというのか! この贅沢者め!』とか言われるよ。この世はキチっとバランスが取れるように作られてるんだ。だから次は不幸な目に遭うはずだ。きっと。たぶん。
笹原(M)だから、これでいいんだ。これがいいんだ。寂しくても、苦しくても、悔しくても、今はこの距離がいいんだよ。
帰宅後、シャワーを浴び終えた笹原は、部屋へと戻り流れるようにベッドへと倒れ込む。
笹原「あぁ~布団がめちゃくちゃに気持ちいい~! やばいって、これは……すぐ寝る、これは……」
笹原「……」
笹原(M)彼は言ってた『寝るまでがお祭り』と。だから、寝てしまえば終わってしまう。楽しい楽しい、幸せだったお祭りが。秋斗と二人……大好きな人と二人きりだった、幸せなお祭りが……。
笹原「ダメだ……寝る……もう寝る……。これ以上は、無理……」
ウトウトする中で、笹原はスマホを手に取りホーム画面を開く。整理された様々なアイコンの後ろで、浴衣姿の自分と甚平姿の暁が、見ているこちらも笑顔になってしまうくらい眩しい笑顔で笑っている。
笹原「……ふふふっ。バカアホ秋斗め……カッコよすぎんだろうが……。バーカ……」
笹原「……私も、絶対に離さないからね……。もし、みんなと会えなくなったとしてもさ……ずっとずっと……そばに……」
眠気に負け、幸せの時間を終わらせる笹原。顔のそばに置かれたスマホは、若野からのメッセージを絶え間なく受信し光り続ける。が、笹原は気づくことはなく、幸せそうな顔で、静かに静かに寝息をたてた。
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