「声劇台本置き場」

きとまるまる

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遊部↓

10話「催眠術にかかる人はスッとかかるから気をつけて」(比率:男3・女3)

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・登場人物

 立花 涼介たちばな りょうすけ:♂ 高校一年生。ごくごく普通な男の子。

 笹原 冬華ささはら とうか:♀ 高校二年生。元気で可愛くて人気者な女の子。

 暁 秋斗あかつき あきと:♂ 高校二年生。明るいムードメーカー的な存在。なんだかんだ顔はいい男。凪先輩のことが大好き。

 不知火 夏帆しらぬい かほ:♀ 高校二年生。小さくて物静かな女の子。なぜか立花には攻撃的。

 五十嵐 賢也いがらし けんや:♂ 高校三年生。遊部の部長。よく下ネタを口にして百瀬に殺されかける人。

 百瀬 凪ももせ なぎ:♀ 高校三年生。いつもニコニコしているおっとりお姉さん系な女の子。お胸がとても大きい。下ネタが大嫌い。


・役表
立花:♂
笹原:♀
暁:♂
不知火:♀
五十嵐:♂
百瀬:♀



ーーーーー



 放課後、遊部の部室。


立花「こんにちはー」

笹原「あなたはだんだん眠くなる~! 眠くな~る~!」


 笹原は5円玉に糸をくくりつけて、椅子に座っている暁の前でゆらゆらと揺らしている。


立花「……なにしてるんですか?」

笹原「あ、立花くん。こんにちは!」

五十嵐「おいっす~」

百瀬「こんにちは」

不知火「今日も地味な顔してるわね」

立花「で、今日はなにしてるんですか?」

五十嵐「なにって、催眠術だよ」

百瀬「立花くんは、昨日の催眠術特集見ました?」

立花「見ましたよ。僕は正直、胡散臭いなと思いましたけど」

笹原「やれやれ、ここにも催眠術を信じていない奴がいますよ、部長」

五十嵐「これだから夢のない奴は。おい秋斗、どうだ? 眠くなってきたか?」

暁「びっくりするくらいお目めぱっちりです」

笹原「えぇ~つまんなぁ~!」

五十嵐「お前なぁ……今の流れは寝る所だろうが。空気を読め、空気を」

暁「すみません。俺は常に真実を伝える男なので」

笹原「くそぉ~! 次は夏帆、いくわよ!」

不知火「いや、私かからないと思うけど……」

暁「やれやれ、全く。催眠術なんてできたら、便利すぎる世の中になっちまうだろ」

立花「なんでもやり放題ですよね」

暁「気になるあの子も、簡単に振り向かせちゃうぜ!」

立花「偽りの愛はいりません」

笹原「夏帆、この5円玉をジッと見つめてね!」

不知火「うん」

笹原「いくわよ……! あなたはだんだん眠くなる~! 眠くな~る~!」

百瀬「かかりますかね?」

暁「凪先輩、かかるわけないじゃないですか」

百瀬「でも、夏帆ちゃんは純粋な女の子ですから、もしかしたらがあるかもですよ?」

立花「凪先輩、夏帆先輩が純粋だなんて面白い冗談は言わないでください」

暁「立花、お前殺されても文句言えねぇぞ?」

笹原「さぁ、どうだ夏帆!」

五十嵐「眠くなってきただろ!」

不知火「……」

笹原「あれ? 夏帆?」

五十嵐「どうした?」

不知火「……」

暁「ま、まさか……⁈」

立花「ほ、本当に……⁈」

不知火「……(寝息)」

笹原・五十嵐「催眠術、かかっちゃったよ!」

立花・暁「信じてた人が驚くな!」

笹原「か、夏帆~! 夏帆ってば~!」


 笹原は不知火の肩を揺さぶるが、不知火は一向に目を覚ます気配がない。


五十嵐「こんな単純なのにマジでかかるとは……!」

百瀬「夏帆ちゃんは純粋な女の子ですから」

立花「そんな……! 僕は、夏帆先輩が純粋だということを受け入れないといけないのか……⁈」

暁「そのことはどうでもいい」

笹原「ど、どうしよう……? どうやって起こそう……?」

五十嵐「目の前で手を叩けば、起きるんじゃね?」

百瀬「よくやってますよね、それ」

笹原「よ、よーし! 夏帆~起きろっ!」

不知火「はっ⁈ あ、あれ?」

笹原「よ、よかったぁ~!」

五十嵐「お帰り、夏帆」

不知火「え? は? え? お帰り? なにが?」

立花「覚えてないみたいですね」

暁「マジでかかってたんだな……」

百瀬「びっくりですよね」

不知火「ん? あれ? 私、さっきまでなにしてた?」

笹原「いや、うん、えっと……寝てた」

不知火「……え? もしかして私、催眠術かかってたの……?」

笹原「大丈夫、もうしないから! 安心して!」

不知火「ま、マジか……」

笹原「おい男ども、わかってるだろうな? 夏帆に催眠術は絶対にするなよ!」

暁「やらねぇよ」

立花「なにかムカつくことがない限りしませんよ。安心してください」

百瀬「立花くん、それは安心できませんよ?」

笹原「部長、あなたが一番やりそうで心配なんです。今ここで約束──」

五十嵐「お前はだんだん猫になる~。猫にな~る~」

笹原「なにしとんじゃ、お前はぁぁぁ!」

五十嵐「いやだって、寝るなんて簡単にできるじゃん? さっきのやつホントなのかなぁ~って思っちゃいまして」

笹原「夏帆が冗談であんなことするわけないでしょ! ここにいる人間なら、誰しもわかることでしょ! バカか、あんたは!」

百瀬「うふふ、猫になったら可愛いですね」

暁「凪先輩、それはさすがにないですよ」

立花「猫になったら、もうマジで信じるしかないですよ。あの夏帆先輩がニャーとか言い出したら──」

不知火「にゃー」

笹原「……」

暁「……」

立花「……」

百瀬「あら」

五十嵐「おぉ、マジかよ」

不知火「にゃー」

立花「か、か、夏帆先輩は……純粋な……女の子……!」

暁「おい立花、無理しなくていいぞ」

五十嵐「あっはっはっは~! 夏帆のやつ、マジじゃねぇかよ!」

暁「笑ってる場合じゃないですよ、部長。さっさと戻してやらないと、このこと夏帆が知ったらぶっ殺されますよ? つーことで冬華、さっさと戻してやれ」

笹原「……」

暁「冬華、どうした?」

笹原「……」

不知火「にゃー」

笹原「か、か、かわ……かわいぃぃ~!」


 笹原は、不知火をギュッと抱きしめる。


笹原「な、な、なにこれ⁈ 可愛すぎない⁈ めちゃ可愛いんだけど!」

不知火「にゃ~お」

笹原「あ~! 可愛い、可愛いよぉ~!」

百瀬「冬華ちゃ~ん、私にも抱かせてくださ~い!」

暁「あーあ、女性陣メロメロじゃん。男性陣は……」

五十嵐「あっははは~! マジで『にゃー』とか言ってるよ! マジで猫化してんじゃん! おもしろっ!」

立花「夏帆先輩は、純粋……純粋ってどんな意味だっけ……? あれ? あれれ?」

暁「やれやれ……。男性陣、集合」

五十嵐「ん? なんだよ?」

立花「なんですか?」

暁「我々は、一刻も早く夏帆を正気に戻さねばならない。なぜなら、夏帆がこのことを知ってしまったら、どうなるかわかるな?」

五十嵐「殺されるな」

立花「確実に殺されますね」

暁「その通り。俺たち男性陣は、血の雨を降らせることになるだろう」

笹原「可愛いよ~! 夏帆、可愛いよ~!」

百瀬「夏帆ちゃ~ん、猫耳つけてあげますね~」

不知火「にゃー」

笹原「可愛い~! 本物の猫みたい~!」

百瀬「癒されますね~!」

立花「暁先輩、女性陣がこちらのことなど気にせずに盛り上がってます」

暁「猫耳はいかんな。二回殺されるぞ」

五十嵐「これ以上女性陣が何かする前に元に戻すか。おーい女性陣、夏帆をよこせ」

笹原「えぇ~! もうちょっとだけ猫夏帆を楽しませてください!」

不知火「にゃ~お」


 不知火は、笹原に頬擦りをし始める。


笹原「あ~♡ ほら、こんなに可愛いのにスッと戻すなんて、もったいないですよ! 可愛い~! 私もスリスリしちゃう! 夏帆~!」

百瀬「冬華ちゃん、こっち向いてくださ~い。写真撮りますよ~」

五十嵐「凪、写真はやめろ! マジでやめろ! 証拠を残すな!」

暁「急いで、部長! これ以上なにかされる前に!」

立花「これ以上罪を重ねないでください!」

五十嵐「冬華! 今すぐに夏帆を渡せ! 早くしろ!」

笹原「嫌です! もうちょっとだけ堪能させてください!」

五十嵐「くっ……! 何を言っても渡さないつもりか。なら、仕方ない。この手は使いたくなかったんだがな……!」

笹原「ちょっ、何する気ですか⁈」

百瀬「部長、変なことはしちゃダメですよ?」

五十嵐「なんだかんだ、夏帆とは一年の長い付き合いだ。そんな俺たちの間には、とてつもない友情が芽生えているはず! さぁ、夏帆! 俺の思いに気づけ! いくぞぉぉ!」


 五十嵐は、眩しいくらいキラキラした笑顔をしながら両手を大きく広げ、不知火へと近づいていく。


五十嵐「夏っ帆ちゃ~ん! 部長のお胸に、飛び込んでおいで~!」


 不知火は思い切り声を荒げ、五十嵐の顔面を容赦なく引っ掻く。


不知火「にゃぁぁぁ!」

五十嵐「にぃやぁぁぁお⁈」

暁「部長ぉぉぉぉ!」

立花「大丈夫ですかぁぁぁ!」

不知火「フシャァァァ!」

五十嵐「ひ、酷い……どうして……? どうしてなんだ、夏帆……!」

笹原「日頃の行いが悪いからですよ。怖かったね~夏帆~!」

暁「やはりここは、俺がいくしかないか。夏帆とは、小さい頃からずっと一緒だった。俺たちは硬く太い友情で結ばれている! だから今の俺には、夏帆が何を求めているのかがわかっている!」

立花「暁先輩……!」

暁「俺たちの友情に、言葉などいらない! さぁ、夏帆!」


 暁は不知火を真っ直ぐ見つめ、大きく両手を広げる。


暁「にゃぁぁ~お!」

立花「……は?」

暁「にゃんにゃんにゃーお!」


 暁は両手を広げながら、ゆっくりと不知火に近づいていく。


暁「にゃーおにゃーお、にゃおにゃーおー! にゃんにゃんにゃん、にゃぁん♡」


 不知火はまたも声を荒げ、容赦なく顔面を引っ掻く。


不知火「にゃぁぁぁぁ!」

暁「にゃおぉぉん⁈」

五十嵐「秋斗ぉぉぉぉ! 大丈夫か、しっかりしろ!」

暁「な、なぜだ……どうして……? 俺たちの友情は……?」

立花「暁先輩、安心してください! にゃーにゃー言いながら近づいてくるアホには、誰だって顔面引っ掻きます! 僕だって引っ掻きますよ! だから今回の件に関しては、友情は関係ありません! だから、気を落とさないでください!」

暁「立花くん……これ以上、俺を傷つけないで……!」

立花(マズい、マズいぞ……! 部長と暁先輩が顔面引っ掻かれるってことは、普段から罵詈雑言ばりぞうごんの嵐を食らっている僕は、四肢ししを引き裂かれてもおかしくは──)

不知火「にゃーお」

立花「ん?」


 立花が鳴き声のする方へ視線を向けると、不知火が立花をジッと見つめロックオンしている。


不知火「にゃー……」

暁(あっ、目があった)

五十嵐(死んだな、あいつ)

不知火「にゃぁお」

立花「夏帆先輩、落ち着いてください。落ち着いて話し合いましょう。平和的な解決をしましょう」

不知火「うにゃぁお……」


 不知火は立花の交渉に応じず、ゆっくりと近づいてくる。


立花「じょ、じょ、女性陣、助けて! ヘルプミー!」

百瀬「見てください、冬華ちゃん! これ、すごく可愛く撮れましたよ~!」

笹原「うわ~めちゃかわいい~♡」

立花「お写真に夢中だ! 男性陣んんん! お助けをぉぉぉ!」

暁「すまねぇな、立花」

五十嵐「俺たちはこれ以上傷つきたくない」

立花「そんなこと言わずに助けて──」

不知火「にゃぁぁぁぁ!」

立花「へ? いやぁぁぁぁ⁈」

暁「夏帆が立花に飛びついた!」

五十嵐「こりゃ死んだぜ、あいつ!」

立花「ちょっ、夏帆先輩、落ち着いてください! マジで落ち着いて──」

不知火「うにゃぁ~」

立花「……へ?」


 不知火に飛びつかれ尻もちをついた立花は慌てて起きあがろうとするが、不知火は襲ってはこず、あろうことか頬擦りをしてベタベタ甘えている。


百瀬「あらあら。頬をスリスリして甘えちゃってますね」

笹原「か、か、可愛いぃ~♡」

暁「今だ、立花ぁぁぁぁ! やれぇぇぇ!」

五十嵐「夏帆を正気に戻せぇぇぇ! 急げぇぇぇ!」

立花「はっ⁈ は、はいぃぃ!」


 立花は両手を大きく広げて、手を叩こうとする。が、不知火は立花の右腕に飛びつき、動きを封じる。


不知火「うにゃぁ!」

暁「なっ……! た、立花の右腕が掴まれた!」

五十嵐「腕が引き裂かれるぞ!」

立花「か、夏帆先輩、離してくだ──」

不知火「うにゃ」

百瀬「あらあら、今度は指を咥えて甘噛みし始めましたよ」

笹原「可愛いぃぃぃ♡ 最高に可愛いぃぃぃ♡」

暁「立花ぁぁぁぁ! 夏帆が動きを止めた今がチャンス! 早く正気に戻せぇぇぇ!」

立花「あ、あ、あぁぁ……!」


 立花は突然の出来事に顔を真っ赤にし、たじろんでいる。


五十嵐「くそっ、こちらの声が聞こえていない! 指を咥えられる行為は、おち○ぽを咥えられているのと同じ感覚! 童貞の立花には、刺激が強すぎたか……!」

暁「え⁈ そ、そそそそうなんですか⁈」

五十嵐「知らんっ!」

暁「知らねぇのかよ! ってか、そんなバカみたいなこと言ってないで行きますよ!」

五十嵐「あぁ! 俺は、おち○ぽを咥えられるまで死ぬわけにはいかないからな!」

百瀬「部長~?」


 百瀬は五十嵐の右腕を掴むと、雑巾を絞るように力任せに捻る。


五十嵐「あだだだだだ⁈ 痛い痛い、凪さん痛いってば! 腕ちぎれるって! あぁぁぁぁ⁈」

暁「夏帆ぉぉぉ! さっさと正気に、戻らんかぁぁぁ!」

不知火「うにゃぁぁ!」

暁「いったぁぁぁぁぁ! 噛んだよ、こいつ! 俺の腕を思いっきり! 俺たちの友情はどこに行った!」

不知火「うにゃぁぁぁ!」


 不知火は暁の言葉を無視し、暁に飛びかかる。立花とは違い、暁には引っ掻き引っ掻き引っ掻き回す。


暁「いやぁぁぁ⁈ やめろ、バカ! 痛いってば! 助けてぇぇぇぇ!」

笹原「おっと、いつの間にか騒がしく、いつも通りの部室になっちゃったわね。でも、遊部ここはこうでなくっちゃね!」


 笹原はスマホを取り出しカメラを起動すると、部室の風景を画面に収める。


笹原(M)この騒動は、10分後に収まりました。そして……。


笹原「うぅ……! 可愛い可愛い猫夏帆の写真、全部消された……!」

百瀬「癒しが一瞬でなくなっちゃいましたね。残念です……」


 暁と五十嵐は不知火にボコボコに殴られ、血を流し、床に倒れ込んでいる。


暁「酷い……酷すぎる……。なんで俺たちだけ、ボコボコに……? 俺たち、止めようと必死だったのにさ……」

五十嵐「訴えてやる……! 裁判、起こしてやるぅ……!」

不知火「まぁぁぁてぇぇぇ!」

立花「うわぁぁぁぁぁ! 落ち着いてくださいぃぃぃ!」


 廊下では、顔を真っ赤にし鬼の形相をした不知火が、金属バットを振り回しながら立花を追いかけている。


不知火「止まれや、地味男ぉぉぉ!」

立花「止まりますから! 止まりますから金属バットを投げ捨ててくださいぃぃぃ!」

不知火「お前の記憶という記憶を、全て抹消してやるぅぅぅ!」

不知火「死ねぇぇぇぇ!」
立花「助けてぇぇぇぇ!」




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