「声劇台本置き場」

きとまるまる

文字の大きさ
上 下
94 / 158
三人台本↓

「千堂卓士の選択肢」(比率:男1・女2)約30分。

しおりを挟む

登場人物

 千堂 卓士せんどう たくし:♂ 19歳。大学生。

 真子まこ:♀ 26歳。社会人。弟大好き。

 美奈みな:♀ 14歳。中学生。思春期なう。

役表
卓士:♂
真子、Na、お母さん、幼馴染、後輩:♀
美奈、Nb、妹、先輩、謎の女の子:♀


*所要時間:約30分




ーーーーー




卓士(M)皆さん、どうもこんにちは。千堂卓士せんどうたくし、19歳です。よろしくお願いします。


Na「ちなみに、彼女はいません」


卓士(M)おい、いきなりとんでもないことを暴露するな。


Nb「ちなみに、彼女いない歴=年齢です」


卓士(M)やめろよ! 始まって数秒で悲しい目で見られるだろうが! 少し黙ってろ!

卓士(M)えー皆さま、今さっき聞こえていたナレーションどもの声は、全て記憶から抹消してください。

卓士(M)改めまして、皆さんどうもこんにちは。千堂卓士、19歳です。よろしくお願いします。

卓士(M)私は、千堂家の長男として産まれ、7つ上の姉、5つ下の妹に挟まれ、息苦しい生活をしております。

卓士(M)え? 言葉だけ聞くと羨ましい? おいおいやめておけ。姉と妹がいて『最高じゃぁぁぁ!』って言えるのは、漫画やアニメの世界だけだぞ。俺の生活を見てたらわかる。


Na「千堂家の食卓」


卓士・美奈「いただきます」

真子「いっぱい食べてね~」

美奈「お兄ちゃん、とって」

卓士「え? なにを?」

美奈「はぁ? ご飯食べてるんだから、とってって言ったら醤油以外になにがあるの? 少しくらい自分で考えたら? ホント使えない」

卓士「……」

美奈「なにぼーっとしてんの! 早くとって!」

卓士「はいはい……」

卓士(M)こいつは、妹の美奈みな。中学生。見てわかる通り、思春期真っ盛り。髪は紺色。身長少し小さめ、胸も小さめ、しかし態度はかなりでかめ。『ツンデレじゃん、羨ましい!』などとほざいているやつ、聞いて驚け。ツンツンツンだ。デレなどどこにも見当たらない。

卓士(M)こいつは兄貴である俺のことを、かなり下に見ている。こいつの中では、俺は地面に頭を擦り付け『ははぁ~美奈様~!』と言っているに違いない。なにかあるたびに俺にぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー言ってくるし、度々暴力もふるってくる。こっちがでるとこでたら勝つぞ、こんちくしょう。

卓士(M)しかし俺は逆らわない。いや、逆らえないと言った方が正しいか。もし俺がこいつに何か言おうものなら……。


 美奈は、嘘泣きする。


美奈「うわーん! お母さーん! お兄ちゃんがいじめてくるぅぅぅ!」


卓士(M)などと、平気で嘘を吐き。


お母さん「卓士ぃぃぃぃ! 一週間タンスの中にぶちこむわよ!」


卓士(M)この世でもっとも強い弁護士が召喚される。こちらの勝ち目は0%、有罪確定、タンスの刑なのである。あ、出たとこ出ても勝てなかったわ。だから俺は逆らわない。


美奈「べーっだ!」


卓士(M)ちくしょうが! 末っ子という立場を最大限に活かして攻撃してきやがる! さらに、スキル『お母さんのご機嫌とり』のレベルがほぼMAXであり、母さんからの信頼ゲージもほぼMAX! もうどうしようもないのだ。


真子「たっくん、おかわりあるから遠慮しないでね~!」


卓士(M)こちらは姉の真子まこねぇ。この態度を見てわかる通り、妹とは全くと言っていいほど逆である。デレデレデレである。26歳社会人、黒髪ロングでお胸もボイン。ナイスバディなお姉さんなのである。

卓士(M)え? デレデレデレでナイスバディとか羨ましいこと山の如し? 何言ってんだお前? デレくらいならいいが、デレデレデレまでいくとやばいぞ。


真子「たっく~ん、お風呂沸いたから、一緒にはいる~?」


卓士(M)などと平気で言ってくる。もう一度、年齢をおさらいしておこう。俺19歳、姉26歳。誰が入るか! いや、入れるかばかやろう!

卓士(M)うちは、父親がいない。病気で亡くなってしまった。だから、母さんと姉ちゃんが俺たちを一生懸命育ててくれた。母さんが美奈をよく見て、姉ちゃんが俺を。つまり姉は小さい頃からずっとずっと面倒見てきた弟が、可愛くて可愛くて可愛くて仕方ないのである。彼女の中で、俺はまだ精神年齢小学生で止まっているのである。


真子「たっく~ん、今日一緒に寝る?」


卓士(M)もう一度年齢をおさらいしよう。俺19歳、姉26歳。寝るかバカ!


美奈「大学生にもなって……マジきも」


卓士(M)俺が一体なにをしたというのだろうか? こんな息苦しい生活はもう嫌だ……逃げ出したい……! そうだ、いいことを思いついた! 俺はもう大学生だ、19歳だ。もう立派な大人だ。つまりは……!


 卓士の部屋。卓士はエロゲを手にしている。


卓士(M)エッチなゲームが堂々とできる。


Na「どうしてそうなる? 今の流れは完全に『一人暮らししよう!』の流れだろう?」


卓士(M)これで逃げ出せる、この息苦しい生活から。


Nb「家を出ろ。二次元に逃げるな」


卓士(M)初めての……初めてのエロゲ……! 興奮が最高潮である。


Na「こいつ、もうダメだ」

Nb「ダメ人間だ」


卓士(M)しかし、この時の俺はまだ知らなかった。このエロゲが、俺の人生を大きく変えることになるなんて……!



Na「第一章『妹、襲来』」


 卓士の部屋。卓士はヘッドフォンをしてパソコンの前に座っている。


卓士(M)千堂卓士、19歳。ただいま、エロゲなうです☆

卓士(M)いやはや、今まで恥ずかしくて手を出せなかったエロゲだが、こんなに素晴らしいものだなんて思いもしなかった。なんで俺は、もっと早くプレイしなかったのだろう? 全く、エロゲは最高だぜ。

卓士(M)このゲームは、五人の女の子が攻略対象となっている。まず一人目は、主人公の妹。


妹「お兄ちゃん! だーいすき!」


卓士(M)『妹がいるのに妹に手を出すのか?』と思ってる、そこのあなた。ゲームと現実を一緒にしちゃいかんぞ。それに、こっちの妹はうちの妹と比べ物にならないくらいかわいい。そりゃ手を出しちゃうよ。

卓士(M)そして二人目は、主人公の幼馴染み。


幼馴染み「ほら、早く学校いこ!」


卓士(M)こんな可愛くて俺思いの幼馴染みがいたら、ものすごい勢いで恋に落ちるだろう。ドッキリに引っかかって、落とし穴にものすごい勢いで落ちていく芸人さんを想像してくれ。それくらいの勢いだ。とにかく可愛い。


卓士(M)三人目は、学校の先輩。


先輩「困ったことがあったら、先輩に任せな!」


卓士(M)面倒見がよくて優しくて、可愛い。そしてなにより『先輩!』と呼ぶと少し照れる、喜ぶ。なんだこの生き物は? 先輩と呼ぶだけでそんなに喜んでくれるんですか? 俺でよければ何千何万回でも先輩と呼びますよ? いや呼ばせてください。先輩という単語を生み出した人に金一封を差し上げたい。この人の笑顔は、あなたが生み出したと言ってもいい。ありがたやありがたや。

卓士(M)四人目は、学校の後輩。


後輩「せーんぱいっ! 頼りにしてますよ!」


卓士(M)彼女の気持ちがとてもわかる。先輩と呼ばれるのはこんなにも気持ちがいいものなのか。先輩と呼ばれただけで、なんでもしたくなる、頑張りたくなる。『先輩』と君が呼んでくれるだけで、可愛い君がまたさらに可愛く見えてしまう。これが先輩マジック、これが後輩の罠。中高と帰宅部だった自分を死ぬまで殴りたい。

卓士(M)そして最後は、謎の女の子。


謎の女の子「ふふっ……。私はあなたを、ずっと待ってたんだよ」


卓士(M)まだ始めたばっかりなので、謎に包まれすぎてわからない。でも、謎に包まれた女の子って、なんかいいよね。このゲームは男たちの気持ちをよく理解している。謎だからこそ、彼女の正体を知ろうと彼女をずっと見てしまう。そしてその魅力にいつのまにかハマってしまい、知れば知るほど抜け出せない。底のない沼の中へ、アイルビーバッグ。

卓士(M)さて、この中でまず誰を攻略するか……悩みに悩み、出した結論は……。


妹「おにーちゃん! 起きてー! 朝だよー!」


卓士(M)俺の妹はこんなに可愛いわけがない? 馬鹿野郎、かわいいぞ。可愛くないのはうちの妹だけだ、馬鹿野郎。

卓士(M)せめて二次元の中だけでも妹に優しく扱われたい。お兄ちゃんとして扱ってもらいたい。だから、俺は妹に手を出す。そう決めたのだ。


Na「お前に罪悪感はないのか?」


卓士(M)ない。


Na「言い切りやがった」


卓士(M)むしろ、興奮すら覚えてきたところだ。これがエロゲの力。


Na「男を最低な人間に変えてしまう、エロゲとは恐ろしい」


卓士(M)違う。『男を最高の人間に変える』それがエロゲだ。ここテストに出るぞ、覚えておけ。


Na「こうして、妹に手を出しはじめ……ついに、あのイベントが起こってしまった」


卓士「……」

卓士(千堂卓士、19歳。エロゲ経験はこれまでゼロだ。しかし、ゼロの俺でもこれはわかる……!)

卓士(次、エッチなシーンだ!)

卓士(落ち着け、落ち着け……。一旦ストップしよう、ヘッドホン外そう。よし、気持ちを落ち着かせろ、落ち着かせるんだ。ついにここまできたぞ、妹をめちゃくちゃにしてやる時が……! な、なんだ、この胸の高鳴りは……⁈ これがドキドキ、これが興奮……⁈ これで俺は妹に目覚めてしまい、我が妹にも興奮を覚えるなんてことはないよな⁈ そうなったら、このエロゲを作った会社を訴えてやる! 絶対に)

卓士(……なんかよくみたら、この妹、うちの妹に似てなくもないな。髪の色一緒だし、ショートカットだし……まぁ、性格が全然違うし、胸なんて、うちの妹がよく言って『みかん』だとしたら、こっちの妹は『スイカ』これがお胸の格差社会。まるで皇帝と奴隷。これから始まるイベントに、ざわざわざわ……!)

卓士(さて、気持ちもいい感じにざわざわして盛り上がってきたので、そろそろいきましょうか! 千堂卓士、19歳! 初エロゲ、初エッチシーン! 卓士、イッきまーす!)


 美奈が部屋に入ってくる。


美奈「ねぇ、お兄ちゃん」

卓士「くぁwせdrftgyふじこlp!」


 卓士は、パソコンを抱いて画面を隠す。


美奈「……頭、大丈夫?」

卓士「心配どうもありがとう! 珍しいな、お前が俺の部屋にくるなんて! 一体どうしたんだ⁈」

美奈「ってか、パソコン抱いてなにしてんの?」

卓士「パソコンが愛おしくなって、抱きしめてるんだ! はっはっは!」

美奈「キモすぎてキモい」

卓士「俺のことはどうでもいいんだ! で、なにしにきたんだ⁈」

美奈「パソコン貸して」

卓士「……え? 今?」

美奈「今すぐ」

卓士「な、な、な、なにすんの……?」

美奈「動画見たいの」

卓士「ど、ど、動画なら、スマホで見ればいいじゃないか!」

美奈「好きなアイドルのLive映像なの! だから、少しでも大きな画面で見たいの! それくらいわかってよ! ホント使えない!」

卓士(ど、ど、どうする⁈ どうする、千堂卓士19歳! このままでは、まずい! 確実にバレる! この性格最悪な妹に! 妹とエッチしてると! 下手すりゃ刑務所行き! ぎえぇぇぇぇ! 神さま仏様エロゲさま、助けてくださいぃぃぃ!)

卓士(ん? 待て待て、よく考えろ。もしかしたら、もしかしたらだ。こうなる可能性もあるんじゃないか? 正直に堂々と見せたら……!)


 卓士の妄想。


美奈「お、お兄ちゃんも、男の子だもんね……! ね、ねぇ、お兄ちゃん……お兄ちゃんは、美奈とそういうこと……したい?」

卓士「美奈……!」

美奈「お兄ちゃん……」


 二人の唇が、徐々に近づいていく。



卓士(なんてことに!)

Na「なるわけないだろ。エロゲのしすぎだ、今すぐ頭を氷水につけてこい」

卓士(どうする⁈ どうするんだ、千堂卓士! 俺は、どうしたらいいんだぁぁぁ⁈)

Na「千堂卓士の選択肢は……堂々と見せる! 正直に話そう! 隠し通そう!」

卓士(俺は……俺はぁぁぁ!)

卓士(正直に、話そう!)

卓士「み、み、美奈!」

美奈「な、なによ?」

卓士「す、すまん。今は、パソコン貸せない……。だから、出てってくれ……」

美奈「はぁ? なんでよ?」

卓士「お兄ちゃんはな……今、あれなんだ」

美奈「あれって?」

卓士「……『男の子の時間』なんだ」

美奈「……は?」

卓士「だから、出てってくれ」

美奈「意味わかんないんだけど」

卓士「美奈、お前は中学生だろ? 察してくれ」

美奈「意味わかんないから。いいから早く──」

卓士「美奈! 男の子が! 必死にパソコンを隠して! 女の子に部屋から出て行ってほしいと言っている! わかるだろ⁈」

美奈「だから、意味わかんないって!」

卓士「お兄ちゃんは今! 男の子の時間なんだ!」

美奈「だーかーら! 男の子の時間ってなによ⁈ 意味わかんな……い……」

美奈「……」


 状況を察した美奈の顔が、どんどん赤くなっていく。


美奈「も、も、もしかして……?」

卓士「察してくれたみたいだな、美奈。すまん、男の子の時間が終わり次第、すぐ貸してやる。だから、もう少しだけでいい……待っててくれないか?」

美奈「あ、いや、え、えっと、その……だ、だ、大丈夫! ス、スマホで見るから! 画面ちっちゃくても大丈夫! うん!」

卓士「え? いいのか?」

美奈「うん! 大丈夫! うん! じゃ、じゃあね!」

卓士「お、おう」

美奈「……お、お兄ちゃん」

卓士「な、なんだ?」

美奈「え、えっと、その……お、お、男の子の時間を、邪魔してごめんね……。次からは、ちゃんとノックします……」

卓士「美奈……! わかってくれて嬉しいよ。お前みたいな妹がいてくれて、俺は幸せさ」

美奈「ほ、ホントにごめんね……」


卓士(M)そう言って、美奈は出て行った。これでよかったのだろうか? まぁ、妹に手を出しているってことを知られなかっただけマシだろう。それに、あいつももう中学生なんだし、男は性欲のかたまりだってわかっているだろうしな。兄がエロゲやってるって知っても、なんも思わんだろ。そうさ、男は性欲の塊。エロがあるところに男は転がる。これこそ、塊魂かたまりだましい


Na「そして、この選択が思わぬ結果を生むことになるのだった」

Na「一時間後。美奈の部屋」


 美奈は顔を真っ赤に熱らせながら、ベッドに寝転がっている。


美奈(お、お、お、お兄ちゃんが……お兄ちゃんがエッチなゲームを……! エ、エッチなゲームしてるってだけなら、別にいいんだけど……男の子はエッチなこと好きな生き物だし……!)

Na「妹の美奈は、あの後なんかわかんないけど、兄がどんなものを見ているのか気になってしまい……ダメだとわかっていながらも、こっそりドアを開け、見てしまったのだ」

美奈(お、お、お兄ちゃんがやってたやつ……エ、エ、エッチなことしてたの……い、い、妹だよね? あれ、どう見ても妹だよね? だって『お兄ちゃん』って画面に書いてあったもん……! 『兄妹なのにイケナイコトしてる』とかなんとか書いてあったもん……! 妹以外の何者でもないよ、あの子! そ、そ、それに、髪型も髪色も私そっくり……! も、も、もしかして、お兄ちゃんって……!)

美奈(わ、わ、私のこと! エッチな目で見ちゃうくらい好きなのぉぉぉぉ⁈)

Na「どうしてそうなる?」

美奈(そうだよ! 絶対そうだよ! だって、お前みたいな妹がいて幸せだとかなんとか言ってたし!)

Na「そういう意味で言ったのではない」

美奈(そ、そんな……! お、お兄ちゃんが私のこと、好きだったなんて……! 現実では叶いっこない恋だから、せめてゲームでだけでも叶えようって……そう思って、私に似たキャラが出てくるあのゲームを買って、コソコソやってたに違いない!)

Na「なぜそんな発想ができる? 連想ゲームの天才か?」

美奈「お、お、お兄ちゃんが、私のことを……! うぅ……こ、これから、どんな顔で会えばいいの……?」

Na「こんな感じで、おかしな勘違いをしてくれたことにより……数日後の夕食時」

卓士・美奈「いただきます」

真子「いっぱい食べてね~」

美奈「お、お、お兄ちゃん……と、と、とって」

卓士「え? なにを?」

美奈「お、お、お醤油……」

卓士「おう。ほれ」

美奈「あ、あ、あ、あり、ありがとう……」

卓士「ん?」

美奈(うぅ……か、顔見れないよぉぉぉ!)

卓士(なんか、最近妹が優しくなってきた気がする。もしかして、これがエロゲの力……⁈)

Na「千堂卓士は、妹から優しくしてもらえるようになったのであった。第二章へ進む」


卓士(M)え? まだ続くの?


Nb「第二章『姉の愛はとても重い』」


 卓士の部屋。卓士はヘッドフォンをしてパソコンの前に座っている。


卓士(M)千堂卓士、19歳。ただいまエロゲなうです☆

卓士(M)いやはや、妹を攻略しはじめ、手を出してしまい……俺はいつの間にか、妹という名の沼にどっぷりとつかってしまったようだ。そのおかげなのかわからないが、なんか最近リアル妹が優しくなったというか? キツいこと言ってきてもすぐ謝ってくるようになったり……まぁ、なんか知らんが俺の顔は全然見てくれなくなったが。

卓士(M)あっ、もしかして嫌われた? いやでも、それにしてはやけに話しかけてくるし。この前なんか『手を繋ぐくらいなら、い、いいよ』とか言ってきて。『お前はいつのまに清純派中学生になったの?』って疑問を投げ込みたい気持ちになってる。もうブルペンで何球も投げ込んで肩温まったから、いつでも投げれるよ? 『いつもの悪魔みたいなお前はどこにいったの⁈』って。大谷翔平おおたにしょうへいばりのスピードで投げれるよ? 『オオタニサーン!』って言われるよ? まぁ、優しいのは俺としては嬉しいからいいんだけど。

卓士(M)さてさて、そんなこんなで妹と愛を育み、イケナイコトだとわかっていながらも手を出し続け……ついに、この時がやってきてしまったのだ。


卓士(千堂卓士、19歳。エロゲを始め、やり続け、いろんな経験を積んできました。そして、感じとってしまいました)

卓士(次が、妹との最後のエッチだ……!)

卓士(よし、落ち着け。一旦ヘッドホンを置こう。なんだろう、この気持ちは? 興奮はしている、しているのだが……それとは別の感情が俺の中で生まれている。この感情は一体?)


卓士(M)その時、俺の目から一雫の涙がこぼれ落ちた。俺はわかってしまった。もう一つの感情の正体が。


卓士「感動……そうか! 俺は今、感動しているのだ!」


卓士(M)エロゲを始めるまで『エッチなシーンだけあれば良くね?』と思っていた。エロゲ初心者の男たちは、俺と同じ考えをしている人たちが多数存在しているだろう。だが、それは間違いだと気づいた、気づいてしまった……! エロゲにもっとも必要なこと、それは『エロ』ではない。『愛』だ。

卓士(M)『エッチなシーンを見る』この行為だけでも、興奮は生まれる。だがしかし、彼女たちとのストーリーを見て、彼女たちと愛をはぐくんでいき、そしてエッチをする。そう、愛を見ることにより、さらにまた興奮度が増すのだ!


卓士「やられたよ……やられちまったよ……! くそ、エロゲ製作者め……! 俺は、まんまとお前たちにやられたよ!」


卓士(M)なぜ、ここにくるまでそれに気付けなかったのか? それは、ストーリーがあまりにも俺の心に溶け込んでいたからだ。ストーリーを読みながら『いい話だなぁ~』となるのではない。終わり際に、終わった後に『いい話だった』と。幕が閉じる直前にそう思わせる……。俺はゲームをしているのではない。あそこは、あの世界は……現実だ。だから俺は、終わり際まで気づけなかった。作られたストーリーではなく、自分自身が歩んでいたストーリーだと錯覚さっかくしていたからだ。


卓士「エロゲ製作者は、魔法使いなのか……? ちくしょうが……!」


卓士(M)そう、俺は気づいてしまった。もうじき、妹とのストーリーが終わってしまう。終わってしまうのだ……。彼女と育んできた愛も、今まで俺が歩んできたストーリーは、俺自身のものではない……作られた、偽物の……!


卓士「いや、違う! 偽物なんかじゃない! 偽物なんかじゃ!」


卓士(M)そうだよ、なに言ってんだよ千堂卓士! 偽物なんかじゃない! 彼女との、妹と歩んできた道は、育んできた愛は、してきたエッチは、本物だ! 本物なんだ!」


卓士「ありがとう」


卓士(M)ふと、俺の口から感謝の言葉がこぼれ落ちた。まさか、エロゲをしていてこんなことを言うなんて。いや、エロゲをしていたからこそ、言ってしまったんだろうな。自然と『ありがとう』が言えてしまう。『ありがとう』が止まらない。

卓士(M)『お兄ちゃん』と妹が呼んでいる。『わかってるよ。今、いく』俺は彼女に微笑みながら答えた。そして、ヘッドホンを手にし、呟いた。


卓士「ありがとうございます。貴方様たちのエロゲ、別作品も買わせていただきます……!」


卓士(M)さぁ、いこう。妹の待つ世界へ。これはゲームじゃない、現実だ。現実世界へ、リンクスタート!


 真子が部屋に入ってくる。


真子「たっく~ん!」

卓士「くぁwせdrftgyふじこlp!」


 卓士は、パソコンを抱いて画面を隠す。


真子「あら、どうしたの? 変な声出して?」

卓士「ま、ま、真子ねぇ! 部屋入る時はノックしてよ!」

真子「あ、ごめんなさい。クッキーが焼けたから、早くたっくんに食べてほしくて♡」

卓士「そ、そ、そうなんだ! あ、後で食べに行くよ!」

真子「今持ってきてるから、食べて♡」

卓士「え⁈ 今⁈」

真子「うん! 出来たてだから、すごく美味しいはずだよ~。あーんしてあげるね、たっくん♡」

卓士「え、あ、え、えっと……!」

真子「ところで、パソコン抱きかかえてどうしたの? 抱いてほしいなら、お姉ちゃんが抱きしめてあげようか~?」

卓士(まずいまずいまずいぞぉぉぉぉ! このままだと、確実にバレる! バレてしまう! どうすれば⁈ いや、待てよ? 真子ねぇは、俺にデレデレのデレだ! つまり、もしかしたら……!)


 卓士の妄想。


真子「あらあら、たっくんったら。まぁ、たっくんも年頃の男の子だから、仕方ないわよね。じゃあ~お姉ちゃんが、手取り足取り、いろ~んなことを、たっくんに教えて……あ・げ・る♡」


 二人の唇が、徐々に近づいていく。


卓士(なんて展開も!)

Nb「だから、あるわけないだろう。いい加減現実に帰ってこい」

真子「たっく~ん? どうしたの?」

卓士(どうする⁈ どうするんだ、千堂卓士! 俺は、どうしたらいいんだぁぁぁ⁈)

Nb「千堂卓士の選択肢は……堂々と見せる! 正直に話そう! 隠し通そう!」

卓士(俺は……俺はぁぁぁ!)

卓士(隠し通そう!)

卓士「ま、真子ねぇ! 今は大学の課題やってるからさ! 終わったら食べに行くよ!」

真子「あら、そうなの? でも、せっかく持ってきたんだし、一口くらい──」

卓士「真子ねぇのクッキーがめちゃくちゃ美味しいのは知ってるから! 一つ食べたらやめられない止まらないのは知ってるから! だから、課題終わってから食べたいんだ!」

真子「そう? なら、下で待ってるわね」

卓士「う、うん!」

真子「たっくん」

卓士「な、なに?」

真子「課題、どんなのしてるの? お姉ちゃんに見せて──」

卓士「ダメです!」

真子「なんで~?」

卓士「ダメだからです! これは秘密事項の課題なのです! 一人で成しげなければいけないものなんです!」

真子「そんなこと言わずに、ちょっとだけでいいから♡」

卓士「ダメです!」

真子「お・ね・が・い♡」

卓士「絶対にダメです!」

真子「もぉ~たっくんのケチ! じゃあ下で待ってるから、終わったらすぐ降りてきてね」


卓士(M)そう言って、真子ねぇは出て行った。これでよかったのだろうか? 真子ねぇは大人だから、俺がエロゲしてるって知っても『男の子だから』と広い心で受け止めてくれるとは思うのだが……なぜだろう? 脳内で小さい俺が『絶対に見せるな! 何があっても隠し通せ!』と命令を出している。とりあえず危機は去った。まずはセーブして、クッキーを食べて、また現実に帰ってこよう。


Nb「そして、この選択が思わぬ結果を生むことになるのだった。数分後、リビング」

真子(うふふ~! たっくんったら、あんな必死に画面を隠して……きっと、エッチな動画を見ていたんだわ。お姉ちゃん似の黒髪ロングでお胸もボイン、ナイスバディなお姉ちゃんとエッチしてる動画を! もぉ~たっくんってば~! そこまでお姉ちゃんのこと好きだなんて~!)

Nb「どうしてそうなる?」

真子(お姉ちゃんには見せられないよね。だって見せたら、お姉ちゃんのことが好きだってバレちゃうもんね! んん~たっくんってば、かわいい~♡)

Nb「どんな動画だろうと、見せられないぞ」

真子(もぉ~たっくんってば、可愛い可愛い弟なんだから~♡ 大丈夫だよ、お姉ちゃんにはちゃぁんと伝わってるぞ♡ うふふ~♡)

美奈「お姉ちゃん、どうしたの? ニヤニヤしてるけど、なんかいいことあったの?」

真子「な~んにもないよ~!」

卓士「お、お待たせしました」

真子「あ、たっくん! 大学の課題は終わったの~?」

卓士「ぶ、無事終わりました!」

真子「それはよかった~♡ クッキーいっぱい焼いてるから、いっぱい食べてね♡」

卓士「あ、ありがとう! や、やった~!」


 美奈は、卓士をジッと見つめている。


美奈「……!」

卓士「な、なんだよ?」

美奈「(ボソッと)またエッチなゲーム、してたんでしょ?」

卓士「ぎくっ⁈」

美奈「(ボソッと)へ、変態兄貴め……!」

卓士「(ヒソヒソと)み、美奈! 真子ねぇには絶対に言うなよ! 言わないでくれよ!」

美奈「(ヒソヒソと)わ、わ、わかってるわよ! ってか、顔近い! 離れて!」

卓士「す、すまん……!」

美奈(い、言えるわけないじゃんんん! お、お兄ちゃんが……お兄ちゃんが、私のこと好きだなんてぇぇぇ! 恥ずかしくて、言えないよぉぉぉ!)

真子(最近、美奈ちゃんがたっくんとすごく仲良くなってる気がするんだけど、気のせいかな~?)

真子「こら~! 兄妹だからって、ベタベタしちゃダメよ~」

卓士「真子ねぇ、何言ってんの? ベタベタなんて──」

美奈「ベ、ベタベタなんてしてないよ! な、な、なに変なこと言ってんの⁈ お、お姉ちゃんってば! や、やめてよ!」

真子(この反応……もしかしてこの子……!)

真子「うふふ、うふふふ~♡」

卓士「ま、真子ねぇ、どうしたの……?」

美奈「ほ、ほら、早くクッキー食べよ! きょ、今日も隣座っていいから……!」

卓士「お、おう」

真子「たっく~ん! お姉ちゃんが、あーんってしてあげるね~!」

美奈「お、お姉ちゃん⁈ あんまベタベタしちゃダメだよ! 離れてー!」

Na「卓士がやばいやつだと思っていたが、妹も姉も、なかなかにやばいやつだった」

Nb「千堂卓士の選択は、まだまだ続きそうである」

卓士(あ~早くクッキー食べて、エロゲの続きがしたいなぁ~)





しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

フリー声劇台本〜1万文字以内短編〜

摩訶子
大衆娯楽
ボイコネのみで公開していた声劇台本をこちらにも随時上げていきます。 ご利用の際には必ず「シナリオのご利用について」をお読み頂ますようよろしくお願いいたしますm(*_ _)m

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

フリー声劇台本〜BL台本まとめ〜

摩訶子
恋愛
ボイコネのみで公開していた声劇台本の中からBLカテゴリーのものをこちらにも随時上げていきます。 ご使用の際には必ず「シナリオのご使用について」をお読み頂ますようよろしくお願いいたしますm(*_ _)m

フリー台詞・台本集

小夜時雨
ライト文芸
 フリーの台詞や台本を置いています。ご自由にお使いください。 人称を変えたり、語尾を変えるなどOKです。 題名の横に、構成人数や男女といった表示がありますが、一人二役でも、男二人、女二人、など好きなように組み合わせてもらっても構いません。  また、許可を取らなくても構いませんが、動画にしたり、配信した場合は聴きに行ってみたいので、教えてもらえるとすごく嬉しいです!また、使用する際はリンクを貼ってください。 ※二次配布や自作発言は禁止ですのでお願いします。

処理中です...