「声劇台本置き場」

きとまるまる

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二人台本↓

「私の王子様は女の子です」(比率:女2)約25分。

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・登場人物

 早乙女 真里亞さおとめ まりあ:♀ 高校一年生。心も脳内もうるさい女の子。

 仁王 遥におう はるか:♀ 高校一年生。よく男性と間違われるルックスをしている女性。


・役表
早乙女、隊長、ちび早乙女:♀

仁王、N、幸せ、天使:♀



ーーーー



早乙女(M)皆さま、ごきげんよう。私は、早乙女 真里亞さおとめ まりあと申します。以後、お見知り置きを。

早乙女(M)……え? こんな可愛くて美しい子、一目見たら忘れられるはずないですって? そこのあなた、よくわかっていらっしゃいますね。素直な方、私は嫌いではありませんことよ。


N「誰もそんなこと言っていない。」


早乙女(M)あ"……? こほんこほん、失礼しました。気管になにやらおかしなものが入り込み、とんでもない音が発せられてしまいました。皆さまも、突然気管に入り込む悪魔たちには充分にご注意を。

早乙女(M)話が逸れてしまいましたね、申し訳ございません。私は、今年の四月から高校生となりまして、楽しい楽しい学園生活を過ごしております。通学中も授業中も、さらには廊下を歩くだけで、あまりの可愛さに誰もが私を見てしまう……私に釘付けになってしまう……! 何もしていないのに、男性諸君からチヤホヤされてしまう生活……楽しくないわけがないじゃない! おーっほっほっほ!


N「これがまた現実なのが腹立たしい。扉に足の小指をぶつけてほしい」


早乙女(M)あ"ぁ"……⁈ こほんこほん。いけませんわ。本日は、厄日でございます。これほどまでに気管を攻撃されるなど……まぁ、私は心が広い優しい子。これくらいのことで怒りなどしません。

早乙女(M)優しくて、勉強もできて、顔も良くて、さらには胸も大きくて、全てに置いてパーフェクトな私ですが……あっ、失礼しました。私、運動だけはどうしても苦手で……。いつもいつも、へんちくりんなことをしてしまいます。でも、そこが可愛いとか言われちゃって。もぉ、皆さん本当に酷いお方です。私は、いつもいつも本気でやっているというのに……。


N「この女、実際はとんでもなく動ける。可愛い私を演じているだけで──」


早乙女(M)おいこら、そこぉぉぉぉ! さっきから黙って聞いてりゃ、なにペラペラペラペラとんでもないこと言っとんじゃい! 口の中に出来立てホヤホヤの熱々鶏がらスープ注ぎ込むぞ! 口の中をでろんでろんにただれさせてやろうか⁈


N「脅し方のクセがとんでもない女である」


早乙女(M)こほんこほん。失礼いたしました。そんな学園のアイドルと表現してもおかしくはないというか学園のアイドルである私ですが、なんと今、恋をしております。そう、恋でございます。正確には恋ではないとは思いますが、好きが好きすぎてなんかもうわけわかんなくなりまして、四捨五入切り上げしたら恋なんでございます。つまり、恋でございます。

早乙女(M)え? 学園のアイドルである真里亞ちゃんは、誰に恋してるのって? 知りたいですか? 知りたいですよね? 誰にも言わないと誓えるのなら、教えてあげますわ。あなたと私、二人だけの秘密ですわよ? 


N「いいから早く言え」


早乙女(M)とりあえず、後であのナレーションはぶっ飛ばすとして……! では、教えてあげましょう。学園のアイドルである私が、恋しているお相手……それは!



 通学路。男の制服を着た仁王が歩いている。早乙女は物陰に隠れて、仁王をジッと見つめている。


仁王「おはよう。今日も、いい天気だね」

早乙女(はぁ~! 本日も素敵でございます、仁王 遥におう はるか様……! 受けた挨拶を返すだけではなく、さらに一言付け加えて我々庶民と会話を続けてくださる、その優しきお心! 好きでございます!)


早乙女(M)私の目の前で女子生徒と会話をする彼こそ、私が恋焦がれている存在、私の王子様『仁王 遥様』である。

早乙女(M)後々説明するのがめんどくさいので、先に言っておきます。爽やかイケメン王子様オーラバリバリ全開の彼ですが……女性です。スカートではなく、パンツスタイルの彼ですが……女性です。正確には、彼ではなく彼女です。

早乙女(M)我が校は、女子でも男性と同じ制服を着ても構わないという校則なので、小さい頃からお兄様たちのお下がりを着続けてきたらしい遥様は、当然のようにスカートではなく男性と同じくズボンを履き生活しています。なので、見た目と服装から男性と間違われることが多々ありますが、女性です。周りから王子様と言われていますが、女性です。もう一度言っておきます、女性です。


早乙女(でも、私には関係ありません! 男性だろうが女性だろうが、スカートだろうがズボンだろうが、遥様は遥様! 私の王子様であることには変わりありません! あぁ、遥様ぁ……!)


早乙女(M)私は、一目見ただけで彼女に心を奪われてしまい……クラスの自己紹介以降、ずっとこうして見つめ続けているのです。


N「ようは、ストーカーである」


早乙女(遥様……! 遥様は、どうしてそんなにカッコよくて美しくて、セクシーなのですか……? 私の網膜を、焼き切ってしまいたいのですか……? あぁ、あのお顔! の男性諸君が、ぽんぽこたぬきに見えてしまうほど整ったお顔! 好きです、大好きです! 好きすぎて ずっと見ちゃうよ 遥様。早乙女 真里亞、心の一句でございます……! 届け、この句……! 届け、この想い……!)

早乙女(うふふ……! 本日も、朝から遥様と出会えて、私、早乙女 真里亞は幸せ者でございま──)

仁王「あっ、愛華あいかちゃん! おはよ!」

早乙女(なっ……⁈ あ、愛華ですってぇぇ!)


早乙女(M)遥様に声をかけてもらったにも関わらず、平然とした顔をしているあの凡人女は、私、そして遥様と同じクラスである、二ノ宮 愛華にのみや あいか

早乙女(M)彼女は、なぜかわからないが遥様に好かれており、遥様からお近づきになる数少ない存在。一体、いくら積んだのよ……! きぃぃ……! 憎い、あの女が憎いぃ……!

早乙女(M)そして何より憎たらしいのが、あの遥様に声をかけてもらえたというのに『え? 当たり前のことですけど、なにか?』みたいな表情で会話しているところ! きっと心の中で私たちを嘲笑い、高笑い、見下しているに違いないわ! きぃぃ! 頬を引っ叩いてやりたい! 私たちの、いえ、私の遥様を独り占めしやがってぇぇぇぇ!


N「二ノ宮 愛華が、仁王 遥に話しかけられ実際はどんなことを思っているのか気になる方は『私の王子は女の子』をお読みください」


早乙女(憎い……あの女が憎いぃぃ……! 私の王子様の隣を、あんな平然とした顔で居座り続けて……! 奴に毒リンゴを食わせてやりたいぃぃぃ!)

N「憎しみに包まれ、心が悪き魔女と化し始めている早乙女の存在なんか知ることもなく、仁王は二ノ宮と長々と会話を続け、手や頭を触るなどのスキンシップを始め、あろうことか休日に遊ぶ約束までし──」

早乙女(きぇぇぇぇぇ! 憎い憎い憎いぃぃぃ!)

N「こうして、日本に新たなヴィランが誕生したのであった」

N「時刻は進み、学校。お昼休み」


早乙女(さて、お昼の時間ですわ。お昼といえば、お食事をされる遥様を横目でチラリと──)

仁王「愛華ちゃん、今日お弁当持ってきてないんだよね? 一緒に購買部いこうよ」

早乙女(な、なんですってぇぇぇ⁈ 一緒に購買部へ買い物だなんて……! このまま二ノ宮 愛華を放置しておけば、何をしでかすかわかりません! 後をつけ、監視しなければ!)

N「ヴィランと化した早乙女の思考は、ありもしないことを平気で考えるようになってしまった。ヴィランとは、恐ろしい」

早乙女(きぃぃぃ……! 憎い憎い憎いぃぃ! あの遥様の隣を歩き、遥様と会話をし……! 私なんて、片手で数えられるほどにしかお話ししたことないのにぃぃ……! この憎しみ、いつぶつけてやろうか……⁈)

早乙女(って、一体なにを考えているのかしら、私……。一旦、冷静になりなさいよ。憎しみをぶつけるなんて、そんなこと……!)

早乙女(いつじゃなくて、思い立ったらすぐよ)

N「もう一度言おう。ヴィランとは、恐ろしい」

早乙女(けけけけ……! 二ノ宮やつがこの階段を降りている最中に、上から上履きをぶん投げてやるわ! 足が滑ったってことにすれば、バレるわけがない! そう、悪いのは私ではない。私の足を滑らせた床が悪い!)

早乙女(二ノ宮 愛華……! 私の、全遥様ファンの憎しみを……受け取りやがれぇぇぇぇ!)

N「ヴィランと化し、まともな思考ができなくなった早乙女 真里亞はとんでもない行動を始める。しかし、こんな悪い奴を神様が放っておくわけがなく。早乙女は本当に足を滑らせ──」

早乙女「え……? あっ……⁈」

N「上履きという武器を手から落とし、そのまま階段下へと落下していくのであった」

早乙女「嘘でしょぉぉぉぉぉ⁈」

早乙女(あぁ……もしかして私、このまま──)

仁王「ん? あっ、危ないっ!」




ーーー



 保健室のベッドで、早乙女は横になり眠っている。


早乙女「……う、うぅーん……あ、あれ? ここは……ほ、保健室? 私、なんで……?」

早乙女(はっ⁈ そうだわ! あの憎き二ノ宮 愛華に天罰を与えようとしたら、私が天罰を与えられたんでしたわ! どうしてこんなことに⁈)

早乙女(……どうしてだなんて、わかってるくせに。あんなことしようとしたのだから、当たり前ですわ……。私、なんてことを……。というか、遥様は友人が傷付いたらとんでもなく悲しむに違いない。私、もう少しで遥様をも傷付けるところでした……)

早乙女(彼女のことは憎い。でも、それで遥様を悲しませてしまったら、私は私自身をぶん殴ってやりますわ。我慢しなさい、私……! これからは、どれだけ憎くても遥様のことを想い、心を入れ替えて生活しなさい……!)

早乙女「というか、一体誰がここまで運んでくれたのかしら?」

仁王「あっ、気がついたみたいだね」

早乙女「え?」

仁王「よかった。声かけても反応しなかったから、心配したよ」

早乙女「え⁈ は、は、はははは遥様⁈ どうして、ここに⁈」

仁王「どうしてって、僕が運んできたから」

早乙女「え……? わ、私、遥様に……?」

仁王「階段で足滑らせたみたいだけど、大丈夫? どこか痛むところない?」

早乙女「え、あ、あぁ……! も、申し訳ありません! 私、遥様にご迷惑をかけて、本当に申し訳ございません!」

仁王「いやいや、気にしないでよ。事故なんだし。僕はなんともないからさ。むしろ、受け止められてよかったよ」

仁王「というか、遥様って。様なんてつけなくていいよ。僕ら、同い年なんだから。遥って呼び捨てでいいよ」

早乙女「そ、そんなそんな! 呼び捨てだなんて──」

早乙女(いや、待つのよ私! これは、心を入れ替えた私への神様からのギフトよ! そうに違いない! 神からのプレゼントを自ら捨てるなど、そんなことあり得ない! 距離を縮めるチャンス! 逃してたまるかぁぁ!)

早乙女「そ、そうですよね! 私たちは、同い年ですしね! で、では、えっと……は、は、は、はははははははははは……るか……」

仁王「なに、どうしたの? 真里亞」

早乙女「うぐぅぅ⁈」

早乙女(く、苦しい……胸が、苦しい……! 名前を呼ばれて嬉しいはずなのに、どうして胸がこんなにも……!)


 早乙女の脳内。小さな早乙女たちが、てんやわんや右へ左へ慌てふためいている。


ちび早乙女「た、隊長ぅぅ!」

隊長「どうした、私ぃ!」

ちび早乙女「遥様に名前を呼ばれたことにより、大量の幸せが押し寄せてきております! 数千、いえ、数万の軍勢で押し寄せてきています!」

隊長「なんだとぉ! もし幸せがこの脳内にまで達してしまったら、私は正常な判断ができなくなってしまう! それだけは絶対に阻止しろ!」

ちび早乙女「はいぃぃ!」

隊長「くっ……! 名前を呼んだだけで、これほどの幸せを……! 仁王遥様、なんて恐ろしくて美しくて素晴らしい存在なんだ……!」


仁王「真里亞ちゃん、大丈夫? 水、飲む?」

早乙女「あ、ありがとうございます……いただきます……!」

仁王「はい、どうぞ」


 早乙女は仁王から水の入ったペットボトルを受け取るや否や、ごくごくと豪快に飲み始める。


仁王「あっ、飲んでからでごめんだけど……それ、僕の飲みかけだけど許してね」


 早乙女の脳内。


隊長「な、なにぃぃぃぃ⁈ 仁王遥様の飲みかけだとぉぉぉぉ! つ、つ、つまり、私は遥様と間接……⁈」

幸せ「幸せ~。幸せ~。幸せぇ~。」

隊長「ぎゃぁぁぁ⁈ 幸せが、脳内にまで押し寄せてきたぁぁぁぁ! このままではいかん! なんとしても押し返せぇぇぇ!」


 現実の早乙女は、ペットボトルから口を外し、ボーッと前だけ見つめている。ペットボトルからはドバドバと水が垂れ流れ続けている。


仁王「あ、あの、真里亞ちゃん、大丈夫……? 水、溢れてるけど……」

早乙女「あ、は、はいぃ……大丈夫でござりんす……」

仁王「とにかく、そのままジッとしててね。拭いてあげるから」

早乙女「え……?」

仁王「口元もベタベタじゃん。真里亞ちゃんって、もしかしてドジっ子さんなのかな? ふふっ、可愛いね」

早乙女「え……?」

仁王「それじゃ、拭いてあげるから。動いちゃダメだよ」


 タオルを手にした仁王が、早乙女の口元を拭おうと迫ってくる。


隊長「だぁぁぁ⁈ やめろぉぉぉ! 顔を近づけるなぁぁぁ! 近づけるのは、タオルだけにしてぇぇぇ! これ以上は、幸せが──」

幸せ「幸せ~」

隊長「ぐわぁぁぁぁ⁈ 幸せが、脳内にまでぇぇぇぇ! うわぁぁぁ⁈ 幸せに呑まれるぅぅぅ!」

隊長「私ぃぃぃ! 私本体は大丈夫か⁈ 息しているか⁈ 応答しろぉぉぉ!」


 早乙女は鼻から血を流し、思考停止している。


早乙女「……」

隊長「鼻血を出して思考停止してやがる! ちくしょぉぉぉぉ! うわぁぁぁぁ! 幸せすぎるぅぅぅ! これ以上は、やめてくれぇぇぇ!」

仁王「真里亞ちゃーん、大丈夫ー? 真里亞ちゃーん」

早乙女「あ、ふぁ、ふぁい……幸せでござりまする……」

仁王「幸せ? よくわかんないけど、鼻血止まらないからティッシュ丸めて鼻に突っ込むよ。いいよね?」

隊長「やめてぇぇぇ! 遥様、やめてくださいぃぃぃぃ! いくら可愛いきゃわわな私でも、鼻にティッシュ詰めてる姿は可愛くないですぅぅぅ! お願いですからぁぁぁぁ!」

仁王「えい」

隊長「あぁぁぁぁぁ! 鼻にティッシュがぁぁぁぁ! しかも、両穴にぃぃぃぃ! でも、遥様に詰めてもらえて、幸せぇぇぇぇ! 感情が暴走しとるぅぅぅ! 助けてぇぇぇぇ!」

仁王「ふふ、鼻にティッシュ詰めてる真里亞ちゃん、可愛いね」

隊長「何をどう見たら可愛いんですかぁぁぁ⁈ どっからどう見てもアホ面ですけどぉぉぉ! でも、遥様に可愛いって言ってもらえて、嬉しいぃぃぃ! 好きぃぃぃ!」

仁王「あっ、大丈夫だよ。他の人には見られないように、鼻血止まるまでは僕が見張っててあげるから。鼻にティッシュ詰めてるところ見られたら、恥ずかしいもんね」

仁王「これは、僕と真里亞ちゃん、二人だけの秘密だよ?」

隊長「うわぁぁぁ! 幸せだけじゃなくて、好きまで脳内にぃぃぃ! 好きぃぃぃぃぃ! 遥様、大好きぃぃぃ!」


 興奮しすぎて、詰めていたティッシュがポンポンッと勢いよく抜け落ちる。


仁王「あっ、落ちた。真里亞ちゃん、鼻で呼吸したらティッシュ落ちちゃうから、今は口で呼吸しなきゃだよ」

隊長「今、本体は呼吸するだけで精一杯なんですぅぅぅ! 呼吸していることを褒めてもらいたいくらいなんですぅぅ!」

隊長「いやぁぁぁ! 詰め戻さないでぇぇぇ! これ以上、私に触れないでぇぇぇ! あばぁぁぁ⁈ 脳内が、幸せと好きでパンクしそうですぅぅ……! もう、これ以上は入りませんんん……! あ、溢れる……これ以上は、私が壊れる……! 苦しいぃぃ……幸せと好きに押し潰されるぅぅ……!」

隊長「こうなってしまっては、仕方ない……! 幸せの時間を自らの手で手放すことになるが、こうする他、選択肢はない……! 文句は、後で聞きます! 今は、自分の安全を第一に! 緊急脱出ボタン、ポチッとな!」


 早乙女はプルプルと小刻みに震えながらも、ゆっくりと動き始める。


早乙女「う、あぁ……ぐぅ……! あぁぁ……!」

仁王「ん? どうしたの、真里亞ちゃん?」

隊長「いいぞ、その調子だ、私! ゆっくりでいい! とにかく、その場から離れるんだ! 遥様から、距離をとるんだ!」

早乙女「あ、あがぁ……! おぉぉ……!」

隊長「自分のためだ! 自分のためなんだ! これ以上の幸せは、むしろ毒だ! 逃げろ、逃げるんだ、早乙女真里亞ぁぁぁぁ!」

仁王「真里亞ちゃん、どこか行きたいの? もう少し安静にしてなきゃダメだよ」

仁王「……あっ、そっか。ごめんね、気付けなくて。水こぼしてベタベタだから、移動したいよね」

隊長「……え?」

仁王「じゃあ、隣のベッドに移動しよっか」

隊長「いや……やめて、遥様……! これ以上は……!」

仁王「真里亞ちゃんは、ゆっくりしてていいよ。僕が運んであげるから」

隊長「だ、だめ……やめてぇぇ!」


 仁王は、早乙女を軽々とお姫様抱っこする。


仁王「よっと。やっぱり、真里亞ちゃん軽いね」

隊長「きゃぁぁぁぁぁ♡ わ、わ、私、私、遥様に、お、お、おおおおお姫様抱っ──」

早乙女「こふぅぁぁ……⁈」

仁王「ん? どうしたの? もしかして、僕のこと気にしてくれてる? 僕、力強いから気にしないでいいよ。それに真里亞ちゃん軽いから、全然苦じゃないし」

仁王「だから、真里亞ちゃんがよければ、これからもお姫様抱っこしてあげようか? 僕が、君をどこまでも運んであげるよ」

仁王「なーんてね。でも、言ってくれればいつでもしてあげるのは本当だから。遠慮なく言ってね」

早乙女「……」

仁王「あれ? 真里亞ちゃん? 真里亞ちゃーん? 寝ちゃったのかな?」

早乙女(……あら? どうして遥様より身長の低い私が、遥様を見下ろしているのかしら?)

早乙女(あっ、そっか……私、幸せすぎて昇天してしまったのね。つまり、これから天に昇っていくのね)

早乙女(うふふ。でも、最後の最後にこんな幸せな経験ができたのだもの。後悔なんてあるはずが……)

早乙女(いやいやいやいや、ありまくりですわぁぁぁぁ! このまま天に召されて遥様と会えなくなるなんて、そんなの地獄と一緒ですわぁぁぁぁ! 戻れぇぇぇ! 死に物狂いで戻るのよ、私ぃぃぃ!)

仁王「そういえば、僕みんなから王子様って呼ばれてるし、絵本の王子様みたいにキスしたら、寝てる子起こせるかな? ふふ、なんてね」

早乙女(ぎゃぁぁぁ⁈ 何とんでもないこと言ってるんですか、遥様ぁぁぁ! 小さい子みたいな可愛いこと言っちゃうあなたも好き♡ じゃなくて! そんなことされたら、私は必ずや昇天して──)


 天から、天使が現れ早乙女の腕を掴む。


天使「さぁ、抗うことはやめなさい。私に身を委ねなさい」

早乙女「や、やめ、離しなさい、天使! 私は、まだ昇天するわけには……天に行くわけにはぁぁぁぁ!」

早乙女「あぁぁぁぁ⁈ まじまじと私の顔を見ないで、遥様ぁぁぁぁ! その顔で微笑まないでぇぇぇ! これ以上は、やめてぇぇぇ!」

天使「さぁ、身を委ねなさい」

早乙女「だぁぁぁぁ! この天使、見かけによらず力が強ぃぃぃ……! これ以上、私に幸せを与えないで! 遥様ぁぁぁぁぁ!」










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