「声劇台本置き場」

きとまるまる

文字の大きさ
上 下
121 / 159
五人台本↓

「勇者サカモトは、プー太郎である。」(比率:男2・女2・不問1)約30分。

しおりを挟む


・登場人物

 サカモト:♂ 27歳。独身。ギャンブル大好きなプー太郎。

 ハヅキ:♀ 18歳。巫女の力を受け継ぐ少女。心優しき少女だが、サカモトには容赦ない。


・役表
サカモト:♂
ハヅキ:♀
女の子、警察C、女、巫女:♀
ゴブリンA、警察A、男、魔王:♂
ゴブリンB、警察B、マキアール、手下、ディーラー:♂♀



ーーーーー



 とある森の中。
 女の子がゴブリンに追われている。


女の子「はぁ、はぁ、はぁ……!」

ゴブリンA「待つゴブ~!」

ゴブリンB「オイラたちから逃げられると思うなでゴブよ~!」


 女の子は、躓き転けてしまう。


女の子「きゃぁ!?」

ゴブリンA「転けたゴブ!」

ゴブリンB「今がチャンスゴブ!」

女の子「あ、あぁ……! こ、来ないでぇ……!」

ゴブリンA「ゴブブブ……!」

ゴブリンB「さぁ、大人しくしていろゴブ!」

女の子「きゃぁぁ!? 離してぇぇ!」

ゴブリンA「ゴブブブ! 離せと言われて離すバカはいないゴブよ!」

ゴブリンB「暴れるなでゴブ! お前は大人しくオイラたちに──」

サカモト「その子を離せ! ゴブリンども!」

ゴブリンA「なっ!? だ、誰ゴブ!?」

ゴブリンB「なんだお前! オイラたちに逆らう──」


 サカモトは、ゴブリンの顔面を思い切り殴る。


サカモト「せいやぁぁぁ!」

ゴブリンB「ゴブゥァァ!?」

ゴブリンA「ゴブリンBぃぃぃ! てめぇ、まだオイラたちのセリフ途中でゴブよ! ちゃんと話は最後まで──」

サカモト「はいやぁぁぁ!」

ゴブリンA「ゴブボガァァ!?」

サカモト「女の子を怖がらせるやつの話なんて、聞く価値もない」

サカモト「お嬢さん、大丈夫ですか?」

女の子「は、はい……。ありがとうございます……! あ、あなたは……?」

サカモト「名乗るほどの者ではありません。しかし、あなたがどうしても聞きたいと言うのならば名乗りましょう。私の名は──」


 女の子は、サカモトをよーく見る。
 身につけている衣服は、パンツのみである。


女の子「いやぁぁぁぁ!? パンイチの変態ぃぃ!」

サカモト「え?」

女の子「来ないでぇぇ! 私に近寄らないでぇぇぇ!」

サカモト「ちょっ、お嬢さん? 待って、落ち着いて」

女の子「一難去ってまた一難とは、まさにこのこと! いやぁぁぁ! 助けてぇぇぇ!」

サカモト「助けましたよ! 俺、あなたを助けましたよ! それなのに、なんでまた助け呼ばれて──」

警察A「どうしました!? 大丈夫ですか!?」

女の子「警察の方ですか!? 助けてください! あそこにパンツ一丁の変態が!」

サカモト「お嬢さんんん! さっきの出来事、もう忘れちゃったんですかぁぁぁ!? 俺は、あなたの命を救った恩人ですよ! 警察に突き出すよりもやる事が──」

警察A「貴様、そこを動くなよ! 大人しくしていろ!」

サカモト「ちくしょうがぁぁぁ! なんでこうなるんだよぉぉぉ!」



ハヅキ[勇者サカモトは、プー太郎である。]



 警察署、取調室。


サカモト「あのぉ、すいません」

警察A「なんだ、変態」

サカモト「その呼び方やめてください。あの、なんで俺は取調室に連れてこられたのですか?」

警察B「え? 君、何で連れてこられたのかわからないの?」

サカモト「わかりません」

警察A「もしかして君、今の自分の姿を見てないの? 今の自分の格好わかってないの?」

サカモト「パンイチですけど。それがなにか?」

警察A「パンイチでなんでそんな堂々としていられるの?」

警察B「服と一緒に羞恥心しゅうちしんも脱ぎ捨てたの?」

警察A「なんでそんな格好しているのかは追々聞くとして。君、名前と年齢と職業は?」

サカモト「サカモト ユウイチロウ。27歳。勇者をやっています」

警察A「えっと……サカモト ユウイチロウ。27歳。無職ね」

サカモト「おいぃぃぃぃ! 勇者だって言ってんだろうが! 誰が無職だ! ちゃんと仕事してるわ!」

警察B「あのね、27歳のパンイチ野郎が勇者なわけないでしょ。現実を見たくない気持ちはわからなくもないけど、しっかりと見なきゃダメだよ。プー太郎」

サカモト「誰がプー太郎だ! ユウイチロウだって言っただろうが! 名前間違えんな!」

警察A「想像以上にダメなやつだな」

警察B「聞けば聞くほどダメな部分が出てきそうですよ? どうします?」

サカモト「聞こえてんぞ、てめぇら! 聞かせてやろうか!? 俺様の素晴らしい武勇伝を聞かせてやろうか!?」

警察A「どうせ、あれでしょ? 『強そうなヤンキーを拳一つで倒してやったぜ!』ってやつでしょ?」

警察B「『気づいたら目の前が血まみれになってた』ってやつね。あーはいはい、すごいすごい」

サカモト「てめぇら今すぐにボコボコにして──」

警察C「尋問中じんもんちゅうに失礼します」

警察A「おう、どうした?」

警察C「その男の連れだと名乗る女性が来たのですが」

警察A「え? 連れ? しかも女性?」

警察B「あんたパートナーがいるんなら、もっとしっかりしなさいよ」

サカモト「いません」

警察A「え?」

警察B「ん?」

サカモト「俺に連れなどいません。俺は一匹狼です」

警察A「何言ってんの、あんた?」

サカモト「やだなぁ~もぉ~! こんな27歳無職のプー太郎にパートナーなんているわけないじゃないですか~! 面白い冗談っすね~! あははは~!」

警察B「驚くほどに自分を肯定し出したよ。さっきまで声荒げて否定してたお前はどこにいった?」

サカモト「とにかく、俺は独り身です。なので、その連れだとか嘘吐いている女性には速やかに帰宅してもらうようにお伝え──」

ハヅキ「やっぱりサカモトさんだ! もぉ、心配したんですからね!」

サカモト「ぎょへぎゃぁぁぁ!?」

警察A「この子が連れの子? めちゃくちゃ可愛いね」

警察B「プー太郎にはもったいないですよ」

警察C「今すぐにプー太郎から離れるように説得しましょう」

ハヅキ「サカモトさん、なんでパンイチなんですか? なんでこんなところにいるんですか?」

サカモト「それは、そのぉ……こ、これには深い理由わけがありまして……」

ハヅキ「どれくらい深いんですか?」

サカモト「俺の腰あたりくらいです」

ハヅキ「あせぇな、おい。その深ーい理由わけは後で聞きますよ。とりあえず、いきますよ」

サカモト「は、はい」

警察A「二度とここにくるなよ」

警察B「その子に迷惑かけるなよ」

警察C「プー太郎からユウイチロウにさっさと就職しろよ」

サカモト「さっきから思ってたんだけど、あんたら口悪すぎない?」

ハヅキ「あなたがちゃんとしてないからですよ。それじゃ、いきますよ~」


 ハヅキは、思い切りサカモトを蹴り飛ばす。


ハヅキ「おんどらぁぁぁぁ!」

サカモト「タベブゥゥゥ!?」

警察A「蹴ったぁぁぁ!?」

警察B「飛んだぁぁぁ!?」

警察C「いくって、そういういくぅぅぅ!?」


 ハヅキは、床に転がるサカモトの頭を思い切り踏みつける。


ハヅキ「ふんっ!」

サカモト「おぶしぃ!?」

ハヅキ「さてさて……では、深ーい理由わけを聞きましょうか」

サカモト「ハヅキ様ぁぁぁぁ! 足を、足を退けてくださいませぇぇぇ! 頭が床にめり込みますぅぅぅ!」

ハヅキ「あぁ……? 私が聞きたいのはそういうことじゃねぇよ……! 今まで、何してたんですかぁ……?」

サカモト「森の中でゴブリンに襲われていた女の子を、助けましたぁぁぁ!」

ハヅキ「もっと詳しく」

サカモト「ギャンブルで大負けして身ぐるみがされ、ハヅキ様の元に帰れなくなり、森の中をフラフラしていたら、ゴブリンに襲われている女の子がいたのでお助けしておりましたぁぁぁ!」

警察A「プー太郎だ」

警察B「想像以上にプー太郎だ」

警察C「360度どっからどう見てもプー太郎だ」

ハヅキ「なるほどなるほど。女の子を助けたということで今回は見逃してあげましょう。次ギャンブルしたら、六発中六発弾が入ったロシアンルーレットさせますからね」

サカモト「ハヅキ様、それは100%死にますよ? 遠回しに殺すって言ってますよね?」

ハヅキ「死にたくなかったらギャンブルをやめろ。わかったな?」

サカモト「へい! 承知しやした!」

ハヅキ「このダメのプー太郎が。皆さん、このダメ男でクズのプー太郎が、本当にご迷惑をおかけしました」

警察A「プー太郎のレベルがどんどん上がっていくね」

警察B「ダメ男でクズまでついたら、もうおしまいですよ」

警察C「ハヅキちゃん、だっけ? 早くそのプー太郎から身を引きなさい」

ハヅキ「いえ、それはできません。この方はこれでも勇者ですから。魔王を退治するまでは、巫女みこである私が付き添わなければいけないのです」

警察A「君、巫女様だったの?」

警察B「というか、勇者って本当だったんだ」

警察C「その男が勇者で本当に大丈夫なのですか?」

ハヅキ「プー太郎はこう見えて意外と強い子なので、ご心配なさらず。では、私たちは世界の平和を守るというお仕事がありますので、そろそろ失礼します」


 ハヅキは、サカモトに首輪をつけ始める。


ハヅキ「さ、いくよプー太郎」

警察A「ちょいちょいちょちょい、ちょっと待って!」

ハヅキ「どうしました?」

警察B「私たちが聞きたいんですけど! どうしたんですか、巫女様!? その男に首輪をつけて、どうしたんですか!?」

ハヅキ「え? 逃げないようにですよ。こうやってちゃんと首輪をつけておかないと、フラフラどこかいってしまうんです」

警察C「いけませんよ巫女様! あなたは巫女様なのですよ! そんなけがれた行為をしてはいけませんよ!」

サカモト「そうだぞ! とっとと首輪を外せ! 人として扱え!」

ハヅキ「外してほしかったら指定した額を私に納めろって言ってるでしょ。何度も言わせないで。ほら、いくぞプー太郎。さっさとこい」

サカモト「ぐげぇぇ!? 苦しい苦しいぃぃぃ! 引っ張らないでぇぇぇ!」

警察A「い、行ってしまった……」

警察B「どうして巫女様は、あのような者を勇者として選んだのだろうか……?」

警察C「これ以上、巫女様のお心がけがれないことを祈ってるわ……」



ーーー



 警察署から出てきた二人は、街中を歩いている。


ハヅキ「サカモトさん、私に迷惑かけないでって何度言ったらわかるんですか?」

サカモト「もう迷惑はかけませんから、首輪を外してくださいませんか? 周りからの視線が痛いんですけど」

ハヅキ「それは首輪じゃなくて、あんたがパンイチでいるせいよ」

サカモト「どっちもだよ! パンイチ2割、首輪8割くらいだわ! だからさっさと首輪を外して!」

ハヅキ「プー太郎、キャンキャン吠えないの。周りの方にご迷惑でしょ。すいませ~ん! うちの子、人見知りな者で~! 知らない人がいると、キャンキャン吠えちゃうんです~!」

サカモト「ハヅキ様、あなたはそれでいいんですか!? 今のこの状況、恥ずかしくないんですか!?」

ハヅキ「もう慣れました」

サカモト「やれやれ、うちの巫女様は精神がお強いんだから」

ハヅキ「誰のせいだと思ってんだ、このクソ野郎が……!」

サカモト「きゃいぃぃん!? くさりを引っ張らないでぇぇぇ! 苦しいぃぃぃ!」


ハヅキ(M)千年ほど前に封印された魔王が復活し、はや数年……世界の平和は、乱れてしまった。

ハヅキ(M)乱れた平和を正すためには、もう一度魔王を封印、もしくは討伐しなければならない。だが、魔王の力は強大なものだ。そこら辺にいる一般人にはどうしようもできない。

ハヅキ(M)私たち『巫女』と呼ばれる女性には、特別な力が宿っている。魔王を封印した『アマネ様』の血を受け継いだ私たちには、魔を打ち消し、封じる力がある。そして、その特別な力を共有できる人間がごく稀に存在する。その者たちは『勇者』と呼ばれ、巫女と共に魔王を倒すべく旅に出るのだ。そう、私の隣にいるプー太郎は、巫女の力を共有できる特別な人間なのだ。


サカモト「あーちくしょうが……。あの時、赤に賭けてたらなぁ……。んぉ? めちゃくちゃデケェ鼻くそとれた。ちょっ、見てみて。これヤバくな──」


 ハヅキはサカモトの顔面めがけ、容赦なく足を振り抜く。


ハヅキ「ふんぬぅ!」

サカモト「いぶしぃぃ!?」

ハヅキ「えぇ、とってもヤバいわね。こんな可愛い女の子に鼻くそ見せるやつは、とんでもなくヤバいわよ」

サカモト「自分で自分のこと可愛いとか、恥ずかしくないですか……?」

ハヅキ「てめぇの姿のが恥ずかしいわ。鏡持ってきて見せてやろうか?」

サカモト「これ以上、俺を傷つけないで……」

ハヅキ「はぁ……。どうしたらサカモトはプー太郎じゃなくなるのだろうか……?」

サカモト「あのさ、プー太郎って呼ぶのやめてくれない? 俺だって頑張ってるんだよ? もうちょっと優しい対応してくれない?」

ハヅキ「そうだ! 一度殺して、転生させればいいんじゃない! なんでこんな簡単なことに気づけなかったのかしら」

サカモト「とんでもないこと言ってるよ、この子! 若いからとかでは許されない発言よ! 考え直して、ハヅキ様!」

ハヅキ「プー太郎~こっちにいらっしゃ~い♡」

サカモト「いやぁぁぁぁ!? 助けてぇぇぇ!」

ハヅキ「もぉ~暴れないの♡ 安心して。苦しいのは一瞬だから♡」

サカモト「助けてくださぁぁぁぁい! 誰でもいいから、この少女を止めてくださぁぁぁぁい! 見て見ぬふりは絶対にやめた方がいいと思いますぅぅぅ! だから、助けろ! そこのお前! お前でもいい! おい、こらぁぁぁ! 逃げるなぁぁぁ!」

ハヅキ「騒がしくしてすみませ~ん! すぐに静かにさせますから~!」

サカモト「力づくで黙らせる気だわ! 巫女様とは思えない行動! 巫女様とは思えない発言! お前、本当に巫女なのか!?」

女「きゃぁぁぁ!? 助けてぇぇぇ!」

ハヅキ「はっ!? 今、助けを求める声が聞こえなかった!?」

サカモト「目の前で助けを求めてる人がいますけど!?」

ハヅキ「うるさい、黙れ! あっちの方から聞こえたわよね!?」

サカモト「あぁ、多分。」

ハヅキ「いくわよ、サカモト!」

サカモト「えぇ、マジですかぁ……?」

ハヅキ「なぁに? 私に口答えする気?」 

サカモト「さぁ、急いで行きましょう! 助けを求めるところへと!」



ーーー



 商人の男がマキアールにボコボコに蹴られ、身体を縮こませ必死に耐えている。


マキアール「ひゃっはっはっは~! おらおら! もっと泣き叫べ! 情けねぇ声で泣き叫べよ~!」

男「うぐっ!? も、もう、やめてくださ……はぐっ!?」

女「やめてください! お願いします! これ以上は主人が死んでしまいます! ですから、やめてください!」

マキアール「あぁ? なんだ、てめぇ? このマキアール様に逆らうのかぁ?」

女「ひぃ!?」

マキアール「言っとくが、僕は女子供にも容赦はしないからな? へっひっひっひ~!」

男「つ、妻には手を出さないでください! 私には、何をしても構いません! ですから、どうか妻には何もしないでください!」

マキアール「おぉ~かっこいいね~! んじゃ、遠慮なく……!」


 マキアールは、思い切り男の腹を蹴り飛ばす。


男「がはっ!?」

女「あなたぁ!」

マキアール「いいか? 今度僕がここに来る時までに『ひんやりぐさ』を百本用意しておけ。わかったな?」

男「ひゃ、百本も!? そんな数、ご用意──」

マキアール「もしできなかったら、君の奥さんに手を出しちゃおうかなぁ?」

女「ひぃ!?」

男「そ、それだけは! ご用意します! ですから、それだけはおやめください!」

マキアール「ちゃぁんと用意できたらね。おい、周りで聞いてるお前ら! お前らも僕が指定したものをちゃんと用意しておけよ。しっかりちゃんと用意できなかったら、これ以上に酷い目にあうからな! 覚えておけ……!」


 マキアールは、もう一度男の腹を蹴り飛ばす。


マキアール「よっと!」

男「がはっ!?」

女「あなた! しっかりして!」

マキアール「ひゃっはっはっはー! この魔王様の手下、マキアール様に逆らうからこうなるんだよ! お前ら下等生物は黙って僕の言うことを──」

サカモト「そこまでだ! クソ野郎!」

ハヅキ「それ以上街の人たちを傷つけるのなら、どうなるかわかってんでしょうね!」

マキアール「あぁん?」

男「こ、この声、もしかして……!?」

女「そうよ! きっとそうよ! 私たちを助けるために、勇者様と巫女様がきてくれたに違いないわ!」


 市民たちは、声のする方へと目を向ける。
 四足歩行状態のパンイチサカモト──その上に恥ずかしげもなくまたがるハヅキ。


ハヅキ「さぁ、私たちが相手よ!」

サカモト「かかってこい!」

女「いやぁぁぁぁ! 変態よぉぉぉ!」

男「四足歩行のパンイチ! それにまたがる女王様! ダブル変態様のご降臨だぁぁぁ!」

ハヅキ「サカモト、敵は一人じゃないみたいよ」

サカモト「あぁ。目の前のクソ野郎と、どこにいるかわかんねぇ変態か。へへっ、腕がなるぜ!」

女「あんたたちよ! 変態はあんたたちよ!」

男「その状態の自分達が正常だと思ってるの!? 変態じゃないって思ってるの!?」

サカモト・ハヅキ「……?」

男「なに、その顔!? その状態で何でその表情ができるの!? 私たちがおかしいの!? それを変態だと思ってる私たちがおかしいの!?」

ハヅキ「え? サカモト、なにかおかしいところある?」

サカモト「いや、いつも通りだと思いますけど」

女「いつも通りぃぃぃ!? あんたたち、そのプレイをいつもしてるの!? 下手したらマキアールよりもあんたたちの方がヤバいわよ!」

マキアール「なんだよ、お前たち。もしかして勇者と巫女か?」

ハヅキ「えぇ、そうよ」

サカモト「よくわかったな」

男「嘘を吐くな、嘘を! お前たちが勇者と巫女様なわけないだろうが!」

女「鏡を見てきなさい! 今すぐに鏡を見てきなさい!」

マキアール「おいお前ら! 僕よりも攻撃的になるな! どっちが敵かわかんなくなるだろうが!」

ハヅキ「どうして私たちのことを疑ってるの……? もしかして、洗脳されてる!?」

サカモト「あのやろう、なんて酷いことしやがる! 絶対に許せねぇ!」

マキアール「なんにもしてないよ! この件に関しては100%お前たちが悪いわ! 僕は一ミリも関与してないわ!」

ハヅキ「やるわよ、サカモト!」

サカモト「あぁ! ハヅキ、首輪を外してくれ!」

ハヅキ「後払いよ!」

サカモト「えぇ!? タダじゃないの!?」

マキアール「僕がお前ら変態にやられるわけないだろうが。舐めてんじゃ、ねぇぞぉぉ!」

男「は、速い! なんて速さだ!」

女「あの距離を、一瞬で!?」

マキアール「へへへへ! 僕に逆らったこと、後悔しろぉぉぉ!」


 マキアールは、右拳をサカモトの顔面へと振り抜く。
 が、拳は顔面に触れる前にサカモトの右手に受け止められてしまう。


マキアール「なっ!? なにぃぃ!?」

マキアール(ぼ、僕の拳を片手で受け止めただと!? な、なんだこいつ!?)

サカモト「おいおい坊っちゃん、軽すぎるぜ。優しい俺様が、パンチの仕方を教えてやるよ。パンチってのは……!」


 サカモトは左拳を握りしめ、マキアールの顔面に容赦なく振り抜く。


サカモト「こうやるんだよぉぉぉ!」

マキアール「ぶふぅおぉぉぉ!?」

男「な、なんてこった! あのマキアールが!」

女「見た目からは想像できないくらい強いわ、あのパンイチ男!」

マキアール「がはっ!? く、くそぉぉ……!」

サカモト「まだ終わらねぇぜ」

マキアール「なっ!?」

男「速い! あの男も、ものすごいスピードだ! 背中にジェットエンジンをつけているのかと疑いたくなるような速さだ!」

サカモト「歯ぁ食いしばれ! 次のパンチは……!」


 サカモトはもう一度拳を丸め、マキアールの顔面へと振り抜く。


サカモト「もっといてぇぞぉぉぉ!」

マキアール「ぐばぁぁぁ!?」

女「な、なんて強さなの! あのマキアールが、何もできないなんて!」

男「あの男、本当に勇者なのか……!?」

マキアール「ぐっ……クソがぁ……!」

サカモト「さっさと立てよ、クソ野郎。それとも、もう終わりなのか?」

男「く、くそぉぉ……! パンイチでなければ……パンイチでなければ、素直に応援できるのにぃ……!」

女「どうして、どうしてパンツ一丁なのよ……! どうしてなのよぉぉ……!」

マキアール「へへへ、なるほどなぁ。なんでパンツ一丁なのか気になっていたが……極限まで自身を軽くして、スピードを上げるためだったのか」

サカモト「……よくわかったな」

女「変な間があったわ! 間違いなく嘘よ! パンイチなのは別の理由よ!」

ハヅキ「ギャンブルで大負けして身ぐるみ剥がされただけでしょ。カッコつけるな、プー太郎」

男「お嬢さん、あんたは味方なんでしょ!? 追加攻撃してあげないで!」

マキアール「僕をここまでボコボコにできるなんて、さすが勇者様だね。でも、君の反撃もここで終わりだよ。君がいくら速くても、僕には勝てない。だって僕には……この力があるからねぇぇぇ!」

ハヅキ「な、なにあれ!? あいつの身体から、紫色の煙が!」

女「気をつけて! あれは毒霧よ!」

男「あれを身体に取り込めば、全身を突き刺すような痛みが襲い、身体がしびれて動けなくなります!」

サカモト「なんだと!?」

マキアール「へへへ! さぁ、近づいてこいよ! もう一度、僕を殴ってみろよ!」

サカモト「クソが! あれじゃ近づけねぇ! 一体どうすれば……!」

ハヅキ「突っ込め」

サカモト「え?」

男「え?」

女「え?」

マキアール「えぇ?」

サカモト「ハヅキさん、なんて言いました?」

ハヅキ「突っ込め、サカモト」

サカモト「ハヅキさん、さっきの説明を聞いてなかったんですか? 親切に、丁寧に、どうなるか言ってくださってましたよね? あっ、聞こえなかったんですね! すみません、もう一度説明してもらえますか!」

女「気をつけて! あれは毒霧よ!」

男「あれを身体に取り込めば、全身を突き刺すような痛みが襲い、身体がしびれて動けなくなります!」

サカモト「なんだと!?」

マキアール「へへへ! さぁ、近づいてこいよ! もう一度、僕を殴ってみろよ!」

サカモト「クソが! あれじゃ近づけねぇ! 一体どうすれば……! ハヅキ、どうする!?」

ハヅキ「いけ、サカモト! 突っ込め!」

サカモト「あれぇぇ!? 聞こえてた上であの選択肢を選んでたのぉぉぉ!? この子、巫女様なんだよね!? よくそんな選択肢を選べるな!」

ハヅキ「早く突っ込めよ、サカモト」

サカモト「突っ込めるわけないでしょうが! 毒霧の中に自ら突っ込むバカ、見たことあります!?」

ハヅキ「毒霧の中に突っ込むか、私のお仕置き受けるか……どっちがいいの?」

サカモト「うおぉぉぉぉ!」

男「行ったぁぁぁ! 毒霧の中に自ら行ったぁぁぁ!」

女「どんだけ嫌なの、この子のお仕置き!? 毒霧以上の痛みなの!?」

マキアール「嘘でしょぉぉぉ!? ちょっ、待て待て待て! この攻撃してる時めちゃくちゃ集中してるから、別のことできないの! 一歩も動けないの! だから──」


 サカモトは毒霧の中に突っ込み、マキアールを蹴り飛ばす。


サカモト「ふんぬらばぁぁぁ!」

マキアール「ちょべりぃぃぃ!?」

男「大丈夫なの!? あのパンイチ勇者、大丈夫なの!?」

ハヅキ「心配しないでください。あの人は、あぁ見えて勇者なんです。つまり、巫女である私の力を共有できるのです」

女「な、なるほど! 巫女様の力を共有し、巫女様の力で毒霧を無効化したのですね! だから突っ込ませたのですね!」

サカモト「ぐぉぉぉぉぉ!? 目がぁぁ!? 目がヒリヒリするぅぅぅ!?」

女「あっれぇぇ!? めちゃくちゃ痛がってますよぉぉぉ!? 全然無効化できてませんよぉぉぉ!」

ハヅキ「二割程度しか共有しなかったし、あんなもんでしょ」

男「二割!? 仲間を危険地帯に突っ込ませておいて、たったの二割!? 本当に巫女様ですか!? 巫女様の皮を被った悪魔ではないですか!?」

ハヅキ「サカモトー。その、アホミールだっけ? 浄化するから抑えといて」

男「まだ仕事させる気だよ! あんだけ痛がってんのに無視してまだ仕事させる気だよ!」

女「応援していいの!? 私たちは、この人たちを応援していいの!?」

マキアール「というか、僕はマキアールだ! 間違えるな、アホ巫女が!」

ハヅキ「アホ巫女だぁぁ!? 三回殺す! サカモト、羽交い締めなんて生ぬるい! 首を絞めろ!」

サカモト「へい、了解!」

マキアール「首を絞めろぉぉぉ!? 心、狭っ! 発言が巫女とは思えないエグさだよ! 悪魔だよ悪魔!」

サカモト「大人しくしてろ、アホバーカめ!」

マキアール「マキアールだっつってんだろうが! それ、もうただの侮辱ぶじょく……ぐぇぇぇ!? ぐるじぃぃぃ!」

ハヅキ「さてと『先見えぬ闇 希望照らす 一筋の光』」

マキアール「や、やめろぉぉ! 来るなぁぁ!」

ハヅキ「『黒を染め 悪を染め 道を照らせ』」

ハヅキ「『我 求めるは 光と闇の共存なり』」

ハヅキ「『つーことで、とっとと浄化されやがれ! ちちんぷいぷい、ほほいのほーいっ!』」


 ハヅキは、マキアールの頭を思い切りチョップする。


マキアール「おぶしぃ!?」

男「最後の一文、なに!? めちゃくちゃダッサァァ!」

女「しかもチョップよ! 光が包み込んで悪を浄化するっていうカッコいいのを想像してたのに、まさかまさかのチョップよ!」

マキアール「な、なんだ、これは!? 僕の中から、何かが抜けていく……! ぐわぁぁぁぁ!? ま、魔王様ぁぁぁ……!」

ハヅキ「よし、これで浄化完了。サカモト、お疲れ様」

サカモト「マジで疲れたわ……。もう二度とこんなことはしたくねぇな」

ハヅキ「とか言って、なんだかんだするんでしょ。私がいない間も女の子助けてるしさ」

サカモト「まぁ、これでも一応勇者だからな。与えられた仕事はキチッとこなしますよ」

男「あいつら、なんだかんだキチンと勇者と巫女っぽいことしているな」

女「えぇ。私たちを守ってくれたお礼、しなきゃですね」

男「あぁ、そうだな。あの、すみません」

ハヅキ「はい。なんですか?」


 ハヅキは、流れるようにサカモトに首輪をつけている。


男「……なんで首輪つけてるんですか?」


サカモト「え? ぬぉぉぉ!? いつの間に!? おい、てめぇぇ! 外しやがれ、こんちくしょうが!」

ハヅキ「指定した額をお支払いください。あと、先ほどの料金もキチッと請求しますので」

サカモト「ふざけんな! このアホ巫女が!」

ハヅキ「あぁん……! 誰がアホ巫女だ、ごら……! パンツ剥ぐぞ……!」

サカモト「それだけはご勘弁を! すみませんが、早く外してくださいませ! ほら見て、周りの冷たい視線を! お前はこんな冷ややかな目で見られて辛くないのか!? 嫌じゃないのか!?」

ハヅキ「もう慣れた。ほら、いくわよサカモト。早く動いて」

サカモト「助けてぇぇぇ! 誰でもいいから、助けてくださぁぁぁい! ぐえぇぇ!? 苦しいぃぃぃ! 引っ張らないでぇぇぇ!」



ーーー





 魔王の城、内部。
 倒れている勇者を巫女が必死に呼びかけている。


巫女「しっかりして! お願いだから目を覚まして!」

魔王「弱い。弱すぎる。ここまで来たから期待していたのだが……その程度か。面白くない」

巫女「ひぃ!? こ、来ないでぇ!」

魔王「……いいだろう。私は優しい魔王様だ。お前たちにもう一度チャンスをやろう。次ここに来る時は、私を楽しませてくれよ。」

魔王「とっとと私の前から去れ。下等生物が。」


 巫女たちは、手下に引きづられていく。


巫女「あ、あぁぁ!? やめて! 離してぇぇぇ! 嫌ぁぁぁ!」

手下「けけけけ! せっかく手下たちが城の外まで運んでやるってのに『離してぇぇ!』ですって! ぎゃひひひ!」

魔王「……」

手下「あれ? どうしました、魔王様?」

魔王「……退屈だ。つまらん。」

手下「今回の巫女と勇者もクソ雑魚でしたからねぇ。あの程度なら魔王様でなくてもボコボコにできるレベルですよ。全く、ここ最近の巫女も勇者も弱いやつばっかりですよね~」

魔王「……早く、早く出てこい……! 私を楽しませてくれる巫女よ、勇者よ……! 千年の眠りで私は渇きに渇いているのだ。早く、早く私を潤してくれ……! 早くしなければ、この世界を闇に染めてやるぞ……! んふふふ……はははは! はははははは!」


 唾が気管に入り込み、魔王は勢いよくむせる。


魔王「はがぁっ!? がはっ!? ごほっ! ごほっ!!」

手下「魔王様!? どうなされました!?」

魔王「つ、唾が、変なところに、ごほっ! ごほっ! ごほっ!」

手下「魔王様、しっかりしてください!」

魔王「ごほっ! がはっ! がはっ!?」

手下「魔王様ぁぁぁぁ! 唾なんかに負けないでぇぇ!」



ーーー



 マキアールを倒したお礼として宿に泊めてもらったハヅキたち。
 大浴場で入浴を済ませたハヅキは、スキップしながら部屋へと戻っていく。


ハヅキ「ふんふんふ~ん♪ あ~気持ちよかった! 大浴場、最高! めちゃくちゃ気持ちよかった~! 気分スッキリ! 明日からまた頑張れるぞ~!」

ハヅキ「助けてくれたお礼としてタダで宿に泊めてもらえるし、お金も貰えたし! 今日くらい贅沢してもいいよね? よーし、なんか甘いものでも食べちゃお~! せっかくだし、サカモトさんにも声かけるか!」

ハヅキ「サッカモトさ~ん! 今から甘いもの食べにいくんだけ、ど……。あ、あれ? いない!? どこに行った!? ちゃんと鎖で繋いどいたはずなのに! どこに……はっ!? ま、まさか……!」



ーーー



 街の賭博場。


ディーラー「さぁ、賭けた賭けた! この板の裏側は、黒か? 赤か? さぁ、どっち!?」

サカモト「赤ぁぁ!」

ディーラー「よっと! 残念っ! 黒!」

サカモト「んだとぉぉ!? てめぇ、イカサマしてんだろ!」

ディーラー「イカサマなんてしてねぇよ! 確かめてみるか?」

サカモト「あたりめぇだろうが! 負けたまんまで終われるか!」

ディーラー「お客さん、威勢いせいがいいねぇ~! おっ、後ろのお嬢ちゃん! あんたも賭けてくか!?」

サカモト「え? 後ろの、お嬢ちゃん……?」

ハヅキ「あれ~サカモトさ~ん! こんなところで、なにしてるの~?」

サカモト「……ふっ! 見てわからねぇのか、ハヅキ。今、俺様の手で、世界の経済を回しているのさ!」

ハヅキ「へぇーそうなんだー。で、サカモトさん……」


 ハヅキは、懐から拳銃を取り出す。


ハヅキ「死ぬ覚悟、できてます?」

サカモト「お、おいおいおいおい……。それ、おもちゃの銃ですよね? おもちゃですよね?」

ハヅキ「試し撃ち、してみます?」

サカモト「ハ、ハヅキちゃんにそんな物騒なものは似合わないよ~! ほらほら、ハヅキちゃんは可愛いんだからさ~! ね? だから、その物騒なものはしまって──」

ハヅキ「最後の言葉は、それでいいですか?」

サカモト「待て待て待て! マジで待って! お前、マジで撃つなよ!? 撃つなよ!?」

ハヅキ「いっぺん死んで、人生やり直してこいやぁぁぁぁ!」

サカモト「ぎゃぁぁぁぁ!?」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

フリー声劇台本〜1万文字以内短編〜

摩訶子
大衆娯楽
ボイコネのみで公開していた声劇台本をこちらにも随時上げていきます。 ご利用の際には必ず「シナリオのご利用について」をお読み頂ますようよろしくお願いいたしますm(*_ _)m

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

フリー台詞・台本集

小夜時雨
ライト文芸
 フリーの台詞や台本を置いています。ご自由にお使いください。 人称を変えたり、語尾を変えるなどOKです。 題名の横に、構成人数や男女といった表示がありますが、一人二役でも、男二人、女二人、など好きなように組み合わせてもらっても構いません。  また、許可を取らなくても構いませんが、動画にしたり、配信した場合は聴きに行ってみたいので、教えてもらえるとすごく嬉しいです!また、使用する際はリンクを貼ってください。 ※二次配布や自作発言は禁止ですのでお願いします。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...