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三人台本↓
「きこりと嘘と」(比率:不問3)約20分。
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神:♂♀
若者、通行人、斧、先生:♂♀
N、友達、小野:♂♀
※所要時間:約20分
ーーーーー
N「むかーしむかし、あるところに、一人の若者がおりました」
若者「若者だよ!」
N「若者は『きこり』だったので、森に一本の斧を持って木を伐採しにいきました」
若者「伐採だよ!」
N「いつもの如く、カンコンコンカンと木を叩いていました」
若者「へいへいへい!」
N「すると、手汗で斧が滑り飛んでいってしまって、近くの湖に『ボチャァン!』若者は、斧が無ければ仕事ができません。どうしたものかと困っていると……湖が急に光り輝き出しました!」
若者「はっ⁈ 聞いたことがあるぞ! 世界の何処かには、物を落とすと神様が出てきて『ビーフorチキン?』みたいな感じで、どっち落としたか聞いてくる湖があるって! もしかして、ここの湖が⁈」
神様が、湖から出てくる。
神様「たらりらたらりら……!」
若者「はっ⁈ 誰か出てきた! あなたは、もしかして……!」
神様「若者よ。あなたが落としたのは……この、落ち葉ですか? それとも、赤い木の実ですか?」
若者(斧、持ってかれたぁぁぁ!)
神様「ん? なんですか? その『どっちも違うんですけどぉぉぉ!』みたいな顔は?」
若者「どっちも違うんですけどぉぉぉ! あ、あの! 私が落としたのは、落ち葉でも木の実でもありません! 斧なんです!」
神様「……斧?」
若者「はい! 斧です!」
神様「斧……。そうか……貴様か……!」
若者(あれ? なんか不穏な空気が……。私の聞いた話だと、正直に答えたらいいことがあるって話だったんだけど……)
神様「お前のせいで……お前のせいで……!」
若者「あ、あの、一体なにがあったんですか……?」
神様「聞きたいか……? 貴様のせいで、私たちがどんな思いをしたか……聞かせてやるよ……!」
回想。湖の中で、神様と友達が楽しそうに追いかけっこをしている。
神様「うふふ~! こっちだよ~!」
友達「待て待て、このやろ~!」
神様「あははは~!」
友達「うふふふ~! つーかまえたっ!」
神様「うわぁ~! 捕まっちゃったぁ~!」
友達「追いかけっこ、楽しいね~!」
神様「楽しいね~! よーし、今度は私が追いかけ──」
通行人「きゃぁぁぁぁ!」
神様「え?」
友達「な、なんだ⁈」
通行人「斧よぉぉぉぉ! 斧が降ってきたわぁぁぁぁ!」
神様「な、なんだって⁈」
友達「くそぉ! また人間のやつが落としたのか! なんでまた斧なんて危ないもんを!」
通行人「逃げろぉぉぉ!」
友達「お、おい! 俺たちも逃げるぞ!」
神様「う、うん!」
神様(M)私たちは、必死に斧から逃げた。でも、斧はなぜか私たちを追いかけてくる。
神様「はぁ、はぁ……! な、なんで、どうして⁈」
友達「くそぉ! 水の中だからか、流れに乗って不規則に動きやがる! どこに行くのか、全く予測できねぇ!」
斧が、回転しながら迫ってくる。
斧「ブォンブォンブォォン!」
神様が、水草に躓いてしまう。
神様「うわぁ⁈」
友達「か、神ぃ!」
神様「あいたたた……! んもぉ、なんでこんなところに水草が生えてんのよぉ! 躓いちゃったじゃん! もぉ~最悪~! マジ最悪~!」
神様めがけて、斧が回転して迫ってくる。
斧「ブォンブォンブォォン!」
友達「神ぃぃぃ! よけろぉぉぉ!」
神様「え?」
神様が、視線を上げる。斧は、すぐそこまで迫ってきている。
斧「ブォンブォォォン!」
神様「ま、まじ、さいあ──」
友達「神ぃぃぃぃ!」
斧「ぶろぼしゃぁ!(切り裂く音)」
ーーー
湖の中の病院。神様は友達が眠っている部屋の前で、俯き座っている。
部屋から先生が出てくる。
先生「ガラガラガラ」
神様「せ、先生! と、友は大丈夫ですか⁈」
先生「斧で背中を『ぶろぼしゃぁ!』と、やられてしまったんだ……」
神様「友は大丈夫ですよね! 大丈夫なんですよね⁈」
先生「……」
神様「先生……なんとか、なんとか言ってくださいよ!」
先生は歯をぐっと食いしばり、拳をぎゅっと握りしめ、眉間にしわを寄せ、こういった。
先生「……な、なんとか……!」
神様「せ、先生……!」
部屋から、友達の声が微かに聞こえて来る。
友達「か、神……近くにいるのか……?」
神様「はっ⁈ と、友! 友ぉぉぉ!」
神様は力任せに扉を開け、ぐったりと横になっている友達へと駆け寄る。
神様「友! しっかりしろ! 友ぉ!」
友達「ははは、お前はいつも元気だなぁ……。こっちまで、元気になっちまうよ……」
神様「元気に、元気になれよぉ……! 私はもう一度、お前と一緒に遊びてぇよ、追いかけっこしてぇよ……! だから……だから……!」
友達「なぁ、神……。お前は、俺と出会った日のこと、思い出せるか……? 俺は今、鮮明に思い出せるぜ……。なんでだろうなぁ……? お前との思い出が、一つ、また一つと……頭の中に、鮮明に映し出されていく……。ははは……もうすぐ、俺は──」
神様「なにバカなこと言ってんだよ! 助かるよ! 友は助かる! 絶対に助かる! だから、諦めんなよ!」
友達「自分のことは自分がよくわかってる……。だから、そんな優しい言葉投げてくんな……。もっと、お前と遊びたくなんだろうが……」
神様「と、友……」
友達「俺は……お前と出会えて……本当に、幸せだった……ぜ……」
先生「ピーーーー!(命が尽きてしまう音)」
神様「お、おい……友……? 返事しろ、友!」
先生「神様、やめなさい」
神様「先生! なにボーッと突っ立ってるんですか⁈ 心臓マッサージをお願いします! 早く!」
先生「やめなさい」
神様「なにしてるんですか⁈ 早くしてくださいよ! あなたは医者なんでしょ! 人の命を救うのが医者だろ! 動けよ! 早く動けよぉぉぉ!」
先生「やめろと言ってるのが聞こえんのか!」
神様「っ⁈」
先生「神よ、私は医者だ。医者というやつらは、死の底へと沈みかけている人に手を伸ばし、引っ張り上げるのが仕事だ」
神様「だ、だったら──」
先生「死の底へと沈んでしまった人は、我々が手を伸ばしてもどうにもできん。死者を生き返らせるのは、医者の仕事ではない」
神様「そ、そんな……!」
先生「すまんな。医者は、そういう生き物なんだよ……」
神様「うぅぅぅ……うわぁぁぁぁ!」
神様(M)別れは、突然やってくる。
神様(M)その日から、友との楽しかった思い出は、悲しい思い出に変わってしまった。思い出せば思い出すほど、楽しかった思い出は私の心を傷つけていく。私から笑顔を奪っていく。
神様(M)周りは『元気出せよ』と『笑え』と『そんなんじゃ、友が悲しむぞ』と、そんなことばかり言ってくる。元気なんて出るわけがない……笑えるわけがない……! 友が、大切な友達が死んでるんだぞ!
神様「あぁ、憎い……憎い憎い憎い! 私から笑顔を奪った、友を殺した、斧を落とした人間が! 人間が憎い! 憎い! 憎い憎い憎い! 私のためにも、友のためにも、人間は一人残らず──」
どこからか、友達の声が聞こえてくる。
友達「神、やめろ」
神様「と、友……? この声は、友の声! 間違いない! どこだ⁈ どこにいるんだ⁈」
友達「憎しみに染まるんじゃない、神。憎しみは視野を狭める。周りをしっかりと見ろ」
神様「ま、周りを……?」
友達「神、お前は人間が憎いか?」
神様「あぁ、憎い! とても憎い! 私から笑顔を奪った、友を殺した人間が憎い!」
友達「なぁ、本当に人間が憎いのか?」
神様「そうだと言っている! 私は人間が──」
友達「お前が憎いのは、斧を落とした人間だろ?」
神様「お、斧を、落とした……?」
友達「あぁ。俺が死んじまったのも、お前がこんなことになっちまったのも、斧を落とした人間が悪いんだ。人間全員が悪いわけじゃない。そうだろ?」
神様「そ、それは……」
友達「いい人間だっているだろ? 忘れちまったのか? たった一人のクソ野郎で、その子たちを塗りつぶしてやるなよ」
神様「……」
友達「神、上を見ろよ。誰かが湖の下を眺めてるぜ。なにか落としたんじゃないか?」
神様「え?」
友達「早く行ってやれよ。落とした物を拾ってやるのが、お前の仕事だろ?」
神様「と、友……」
友達「神、人間を恨むなよ。憎むなよ。憎むのは人間じゃない、斧を落とした人間だ。わかったな?」
神様「……うん、わかった。ありがとう、友」
友達「お礼なんていいよ。お礼はいらねぇから、またこっちに化けて出たら、追いかけっこしてくれや」
神様「うん。待ってるよ」
神様「ってことがあったんだ」
若者「湖の中とこっちじゃ、時間の流れがだいぶ違うみたいですね」
神様「ようやく見つけた、斧を落とした人間を……! 私が憎むべき相手、今すぐここで──」
若者「あーー待ってください待ってください!」
神様「命乞いなど聞かん! 大人しく──」
若者「い、命乞いではなくて! めちゃくちゃ勘違いさせて申し訳ないんですけど~! 私が落としたのは、斧は斧でも、オノって名前をつけた別のものでして! あの、きこりたちがよく使ってるキレッキレの斧じゃないですよ~! あははは~!」
神様「……本当か?」
若者「本当です!」
神様「……そうか、わかった。では、湖の中に斧ではないオノが落ちてきているか確認してくる。しばし、そこで待っておれ」
神様は、湖へと沈んでいく。
若者「うわぁ、危ねぇ……! 斧落としただけなのに、大変なことになっちまったよぉ……! い、今のうちに逃げよ」
神様が上がってくる。
神様「若者よ、お前が落としたのは──」
若者「うげぇぇ、戻ってくるの早ぁい」
神様「なんか言ったか?」
若者「なんでもございません」
若者(くそう! こうなったら、次持ってきた物を私のだと言ってとっとと退散しよう! 嘘吐いてもきっとバレないだろうし、大丈夫大丈夫!)
神様「では、改めて。若者よ、お前が落としたのは……」
湖の中から、十字架に磔られた小野が上がってくる。
神様「この、小野か?」
小野「うぅ……こ、ここは……? ここはどこだ……?」
若者(誰っ⁈)
小野「はっ⁈ こ、ここは、地上! 私は、ついに湖から出れるのか⁈」
神様「出れるかどうかは、あの若者の返答次第だ。おい、若者。お前が落としたのは──」
小野「あぁぁぁ! そうだそうだ! この若者と一緒にふざけて遊んでいた時に、こいつが私を湖へ『ボチャァァン!』と落としたんだ! そうだそうだ、思い出した! そうだよねぇ⁈」
神様「黙れ、小野。貴様には聞いてない」
神様が力を込める。十字架が、強く小野を縛り上げる。
神様「ふんっ!」
小野「ぐわぁぁぁ⁈ 手首を縛っている縄が、えらいこっちゃ食い込むぅぅぅ! 痛い痛い、早く助けてぇぇぇぇ!」
若者(あの人は、一体なにをして湖に沈められていたんだろうか……? とにかく『はい、そうです』って言ってさっさと立ち去ろ。この小野って人に、助けたお礼としてたんまりお金もらって、それで新しい斧を買えばいいし)
若者「はい、そ──」
神様「ちなみに嘘吐いたら、お前が小野の代わりに湖の底で死ぬまで労働してもらうからな」
若者「そんなやつ、毛ほども知りません。別のオノを落としました」
小野「貴様ぁぁぁ! 空気を読め、空気を! 今すぐに貴様を八つ裂きにして──」
神様「黙れ、小野」
神様が力を込める。十字架が強く小野を縛り上げる。
神様「ふんっ!」
小野「ぐわぁぁぁ⁈ ごめんなさい、許してぇぇぇぇ!」
神様「ふむ。懐に忍ばせてきた嘘発見器も反応しない。本当のことだな」
若者「え? 嘘発見器?」
神様「正直者のお前のために、もう一度探してきてやる。待っていろ」
小野「やだぁぁぁぁ! もう湖の底になんて──」
神様と小野は、湖の底へと沈んでいく。
小野「ぶぼろろろろろろろ⁈」
若者「やべぇ、やべぇよ。嘘発見器はやべぇって。さっさとこの場から──」
神様と小野が上がってくる。
神様「おい、若いの」
若者「だから早いって~」
神様「小野が、お前に言いたいことがあるらしいぞ」
若者「なんですか? 私はあなたのことなど毛ほども知りません。湖の底へとお帰りください」
小野「若者、私が聞きたいのはお前さんのことだ。お前さん、きこりだろ?」
若者は、驚いてしまう。
若者「きこりっ⁈」
小野「その驚き方! 『ぎくりっ⁈』ではなく『きこりっ⁈』と驚いてしまうのが、何よりの証!」
神様「貴様、きこりなのか?」
若者「な、な、なにをおっしゃいますか! 私は、きこりではありません! ただの若者です!」
小野「その掌にできた硬そうなマメは、長年斧を振り続けた、きこりの証! 神様、奴は間違いなくきこりです! 元きこりの私が保証します!」
神様「その言葉に、嘘偽りはないだろうな? 金の斧がほしいからと、金の斧を落としたと嘘を吐いたお前の言葉だ。そう簡単には信じないぞ。」
小野「嘘発見器を確認してみてください! 反応していないでしょう⁈」
神様「いや、さっきから私の懐でぶるぶる震えている」
小野「なんでぇぇぇ⁈」
若者(私がきこりじゃないって嘘吐いたからだ。ごめんね☆)
若者「ではでは、私はこれにて失礼しま~す!」
小野「あぁぁぁあ⁈ 待て、貴様ぁぁぁぁ!」
若者「もう待ちませ~ん!」
小野「あぁぁぁぁ⁈ 神様、見てください! あの木! あの木、明らかに斧で切り倒そうとしてた傷がありますよ! ほら!」
神様「あ、ほんとだ」
若者「きこりっ⁈」
小野「この湖の周りには、やつしかいません! あの傷は、どう見てもついさっきできたものです! つまりあいつは、きこりで間違いありません!」
神様「おい、若いの」
若者「さようならぁぁぁ!」
神様「止まれぇぇぇい!」
神様が一喝すると、若者の動きが止まる。
若者「うぎゃぁぁぁ⁈ か、身体が動かなくなったぁぁぁぁ⁈ 助けてぇぇぇぇ!」
神様「おい、若いの。お前は、きこりなんだな?」
若者「……は、はい……」
神様「もう一つ問おう。貴様、仕事道具の斧はどうした?」
若者「……」
神様「なるほど、そうかそうか。小野よ、よくやった。代わりの労働者が見つかったから、お前は今日限りで解放してやろう」
小野「え、マジで⁈ やったぁぁぁ!」
神様「嘘を吐いた罰は、とても重いぞ……! 憎き相手にする予定だった、お尻ペンペン10回よりも恐ろしい罰だ……! 覚悟しておけ!」
若者「うわぁぁぁぁ! 正直に言ったほうが、めちゃくちゃ罪軽かったぁぁぁぁ!」
神様「さっさと湖の中に、こいぃぃぃぃ!」
神様が一喝すると、若者が勢いよく湖へと吸い込まれていく。
若者「うぎゃぁぁぁ⁈ 吸い込まれるぅぅぅ⁈」
N「皆さんも、嘘を吐くのはやめましょうね」
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