「声劇台本置き場」

きとまるまる

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三人台本↓

「新聞部の新くん」(比率:男1・女2)約15分。

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・登場人物
 新 見聞あらた けんぶん:♂ 高2。ポンコツ。

 読売よみうり先輩:♀ 高3。新の部活の先輩。怒るとめちゃ怖い。

 朝日 夕奈あさひ ゆうな:♀ 高2。新と同じクラスのアイドル的存在。

・役表
新:♂
朝日:♀
読売先輩、女の子、男の子、N:♀


*所要時間:約15分



ーーーーー



 とある高校の二年生の教室。新が難しそうな顔をしながら椅子に座っている。


新(M)皆さま、初めまして。僕は、新見聞あらたけんぶんと申します。2年Aクラスに所属している、そこらへんにいる男子高校生です。

新(M)僕は今、とても焦っています。どれくらい焦っているかというと、もうすごく焦っています。『なぜ焦っているのか?』と聞かれたら、お答えしてあげましょう、皆々様に。ぜひ聞いてください。僕は新聞部に所属しているのですが……なんかめんどくさくなってきたので、後のことは回想にお任せしますね。それでは、続きをどうぞ。




 数週間前、新聞部の部室。


読売先輩「おい、新」

新「はい! 何か御用でしょうか、読売よみうり先輩!」

読売先輩「お前、この新聞なんだ?」

新「え? 新聞ですか?」

読売先輩「お前が作った新聞だ。なんだこれはと聞いている」

新「えっと、なんだこれはと聞かれましても、僕が書いた新聞だとしか──」

読売先輩「内容について聞いてるんだよ! 察しろ、このアホあらたが!」

新「ひぇぇぇ⁈ 怒鳴らないでくださいよぉぉぉぉ!」

読売先輩「お前、ふざけているのか?」

新「いえ、僕は真剣です」

読売先輩「ふざけていると言ってくれた方が、まだ救いはあったんだがな……」

新「え? なんでですか? 僕の新聞、そんなに酷いですか……?」

読売先輩「お前の新聞の一面『大スクープ! 学校の校内で、野良猫がクソをしていた!』」

新「とても大変な事件だったので『これはキタッ!』と思いましたね!」

読売先輩「アホか?」

新「いや、僕は──」

読売先輩「バカか?」

新「あの、読売先輩──」

読売先輩「このウンコ野郎」

新「先輩! 流石にそれは僕も怒りますよ!」


 読売先輩は、新の胸元を力任せに掴み上げる。


読売先輩「お前の新聞の出来に、私は怒り狂ってんだよ!」

新「ひぃぃぃぃ⁈ ごめんなさいごめんなさいぃぃぃぃ!」

読売先輩「お前が入部して一年が経ったが、毎度毎度このレベルの、まさしくクソレベルの新聞しか作ってこない。紙の無駄使いとはまさにこのことだ」

新「紙の無駄使いは言い過ぎだと思います、先輩」

読売先輩「お前、こんな糞みたいな記事書かれる紙の気持ちになったことあるか? 一度なってみろ」

新「……ほわぁ」

読売先輩「……なんだ、今のは?」

新「紙の気持ちになろうとしたんですが、上手く紙になれませんでした。一体どうしたら……?」


 読売先輩は、新の胸元を先ほどよりもさらに強く掴む。


読売先輩「お前は私をおちょくってんのかぁぁぁ!」

新「ひぇぇぇ⁈ 先輩がなってみろって言ったんじゃないですかぁぁぁぁ!」

読売先輩「新聞紙を口と鼻につっこんで窒息死させてやろうか⁈ あぁぁん⁈」

新「新聞紙を凶器にしないでくださいぃぃぃ!」

読売先輩「とにかくだ! これ以上こんな糞みたいな記事を書かれたら、たまったもんじゃない。つーことで、次また糞みたいな新聞作ったら……!」

新「つ、作ったら……?」

読売先輩「屋上から全裸でバンジージャンプな」

新「ネタをさがしてきまぁぁぁぁす!」


新(M)と、いうことがあったからである。全裸バンジーを回避するために、僕は必死にネタを探し回った。のだが……。


新「せんぱーい! これでどうでしょうか⁈」

読売先輩「……新」

新「なんでしょうか!」


 読売先輩は、ビニール紐を新にみせる。


読売先輩「バンジーの紐、これでいいか?」

新「いいわけないでしょ! ビニールでできた紐でバンジーとか、死の未来しか見えません! もう一度だけチャンスをくださいぃぃぃぃ!」



新「せんぱーい! 次こそはぁぁぁ!」

読売先輩「……新」

新「はい!」

読売先輩「校長の許可は取ってあるから、安心しろよ」

新「あぁぁぁ⁈ もう一度だけぇぇぇぇぇ!」



新「せんぱ~い!」

読売先輩「よーし新、服脱げ。屋上に行くぞ~」

新「一生のお願いをここで使わせてくださいぃぃぃぃ!」



新(一生のお願いを使った僕に、もう次はない。新聞できたら屋上に呼び出せと言われている……あの人はマジでやる気だ……! 全裸バンジーだけは、どうしても回避しなければ!)


新(M)全裸バンジーという社会的な死からまぬれるために、僕が次のネタにしようとしているのは……あれである。


朝日「みんな、おはよ~!」


新(M)彼女の名前は、朝日夕奈あさひゆうな。学年一かわいいと言われている。とてもかわいいかわいい女の子である。みんなのアイドルである。

新(M)彼女の周りには、僕とは違い人が溢れかえっている。毎日毎日彼女の周りでは『祭りが開催されているのか?』って思ってしまうくらい人で溢れている。人気者なのである。


女の子「朝日さん、今日も可愛いなぁ~!」


新(M)女の子からもこのような反応されるほど、愛されているのである。


男の子「ゆ、ゆ、ゆうなちゃん! マジかわゆす!」


新(M)男からはあんな感じである。親衛隊しんえいたいという『いつの時代だよ!』ってツッコミを入れたくなる存在もいる。とにかく人気なのである。

新(M)あれほどの人気がある彼女のことが新聞に書かれていたら、誰だって新聞を読むことだろう。そう、だから僕は彼女に目をつけたのだ!

新(M)人間誰しも裏の顔というのが存在する。彼女にも、きっとそれがある。普段は可愛くてちやほやされている彼女だが、きっと裏の顔は……!


 新の妄想。朝日がタバコを吸っている。


朝日「あ~学校とかめんどくさ……。つーか、毎回毎回私の周りでピーチクパーチク騒ぎやがって……餌をねだってる小鳥かっつーの!」


新(みたいなことを言いながら、タバコ吸ってる人に違いない!)

新(ふふふ、待っていろ朝日夕奈! 僕が貴様の裏の顔を暴き、全裸バンジーを回避してやるぅぅぅ!)

N「全裸バンジーを回避するために学年一の美少女を生贄にしようとしている最低な男、新見聞であった」

N「放課後の帰り道」


 朝日の後ろを、新がこっそりとつけている。


朝日「バイバイ、また明日ね!」

新「ふふふ、ようやく一人になったか朝日夕奈……! さぁ、裏の顔をさらけ出すんだ。僕が後ろからこっそり写真を撮って音声を録音して学校中にばらまいてやる……!」

N「完全にストーカーである」

新「さぁ、僕の全裸バンジー回避の生贄となりやがれ!」

N「もう一度言うが、最低な男である」

新「……ん? あれ? なんか近づいてきてない? あれ?」


 朝日は顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに話しかけてくる。


朝日「あ、あ、あの!」

新「え⁈ あ、はい!」

朝日「え、えっと、あ、あ、あ、新くん! わ、私に、何か用か、かな?」

新「え?」

新(ま、まさかの気づかれてた⁈ これはやばい! このままだと、僕は学年一の美少女の後ろをつけていたストーカー野郎になってしまう! 全裸バンジーしたあとに刑務所行きという、地獄のフルコースだよ! どうしよう⁈)

N「自業自得である」

新「え、えっとね、そ、そ、そのぉ……い、いつから気づいてたの……?」

朝日「きょ、教室出てから」

新(はやっ! そこから⁈ スタートして一瞬じゃん! めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど!)

朝日「も、も、もしかして、私に何か、は、は、話が……?」

新「そ、そうなんだよ! は、話があって! どうしても二人きりになってから伝えたいことがあってね! その、一人になるのをね! あははは~!」

朝日「ふ、ふ、二人きりで⁈ も、も、も、もしかして、こ、こ、こく、は……⁈」

新(告白なわけないでしょ。何言ってんだこの子は? 僕みたいな学年一の地味男じみおと言われてもいい人間が、学年一の美少女の君に告白するわけないでしょ。少し考えてから発言してほしい)

N「この時だけとても冷静だった、新見聞であった」

新(し、しかしだ! このままではストーカー認定されてしまう! 今回は流れに身を任せよう!)

新「じ、実は、そうなんだ……! 僕、ずっと朝日さんのことが好きで……つ、付き合ってください!」

朝日「え……? え、えぇぇぇぇぇぇ⁈」

新(さて、これからどうしようか? とりあえず、ストーカーと疑われることはこれでないだろう。しかし『学年一の美少女に学年一の地味男が告白! 結果は当然のことながら撃沈!』みたいな笑い話が明日から学校中に広まると思うと……あっ、これをネタにすればいいのではないだろうか? それでいこうかな? そうしようそうしよう。というか、早く振ってくれないかな? 結果はもうわかってるから、もったいぶらないで早くズバッと『無理!』って言ってほしいんだけど)


 新は顔を上げる。朝日はなぜか泣いてる。


朝日「うぅ……ぅぅ……!」

新「……え?」

新(なんで泣いてるの? ねぇ、なんで? 僕に告白されるの、泣くほど嫌だったの? え? そういうことなの?)

新「あ、朝日さん、な、なんで泣いてるの……?」

朝日「ご、ごめんね……ごめんね……!」

新(いや、僕が謝りたいんだけど。というか、こんなところ誰かに見られたら、僕は明日血祭りにされるんじゃないかな? 早く泣き止んでほしいんだけど……)

朝日「すごく嬉しい時って……涙が出てくるんだね……!」

新「……ん?」

N「この時、新見聞の脳内は緊急警報を鳴らした。『このままここにいては大変なことになってしまう』と。『早くこの場から離れろ』と」

新「あ、ごめん。このあと用事があったんだ。じゃあね!」

N「しかし、彼女は彼を逃さなかった。彼の手をガッチリと両の手で掴むと、潤んだ瞳でジッと新を見つめ……そして──」

朝日「私もね、新くんのこと、大好きなの」

新「……え?」

朝日「わ、私も! 新くんのことが! 大好きです!」

新「……え?」

N「学年一の美少女に告白されたら、男なら飛び上がるほどに喜びを爆発させるだろう。しかし、新見聞は喜ばない。喜べない」

N「一つは、彼が彼女のことを『全裸バンジー回避の生贄』としか考えてないからである。愛は全くない。もう一つは、彼女は人気者である。ファンがたくさんいるのである。単刀直入に言おう」

新(このままじゃ、火あぶりの刑になる!)

N「そういうことである。彼は平穏な学校生活を失うことになるのである。だから、喜べないのである」

新「え? ちょっ、え? 本当に? それ本当なの? 誰かと間違えてない? 朝日さん、間違えてない?」

朝日「間違えるわけないよ! だって私、ずっと新くんのこと……ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと──」

新(待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って、待って! ずっとの数が多すぎるよ! どんだけ僕のこと前から好きだったの⁈ え、こわっ! 怖いんだけど!)

新「あ、あの……朝日さんは、いつから……?」

朝日「中学の時から、です……!」

新「あ、そうなんだ~! 中学の時からか~! へぇ~!」

新(僕らが出会ったのって、高校からじゃなかったっけ⁈)

朝日「中学は別だったから、新くんは私のこと知らないだろうけど……」

新(だよね!)

朝日「信じてもらえないかもだけど、本気で好きだったから……ずっと後、つけてたんだよ?」

新(それは信じたくない!)

朝日「高校もね、新くんがここに入るってわかったから……えへへへ♡」

新(ひぇぇぇぇ! あ、あ、あ、朝日さんって、もしかして……⁈)

朝日「新くんから告白されちゃった♡ これからは、コソコソ隠れて新くんを見つめなくていいんだ……♡ コソコソ隠れて写真撮らなくていいんだ……♡ コソコソ隠れて、新くんが着替えた服を……うふふふふふ♡」

新(だ、だ、だ、大スクープやぁぁぁぁ!)

N「新見聞のこれからは、どうなってしまうのやら」




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