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【VerΑ編第3章〜大竜星祭】
54話「部分獣化」
しおりを挟む「んー思ったより攻撃激しいなあ……なんとかこっちに攻撃を引けないかな?」
「任せなさい! せっかくだから、とっておきを見せてあげる!」
私の独り言にエンザさんがそう答えると、彼女の下半身が光に包まれた。
光が止むとそこには、先ほどまでの綺麗で長い足ではなく、白いもふもふの獣足になっていた。まるで、そこだけウサギになったような。
次の瞬間、エンザさんの立っていた場所の床が割れた。
私が上を見上げるとエントランスの三階部分のテラスの裏側に着地したエンザさんの姿が見えた。
一瞬であそこまで跳躍したの!?
「エンザの部分獣化だよ。足だけ獣化させて脚力を強化。ああなったエンザを捕まえるのは——不可能だ」
由犀君の言うとおり、エンザさんは文字通り飛び跳ねるように床、壁、天井を蹴って移動。その間にも矢を打っている。
そして、天井に近い、ボスの真上。毒液を避けた後にエンザさんが赤い光を放つ。
「いっけええええええ【アルテミスショット】!!」
エンザさんの矢が放たれた途端に極太の光の矢となって、ボスへと飛来。
それが毒液を吐いてる最中の口へと命中し、クリティカルヒットのエフェクトが見えた。
「グググゥ」
ボスのHPが削れるが、まだ残っている。しかしボスは直立した状態から力が抜け、その後私達のボスを挟んで向こう側で爆発が起きて——その反動でボスがこちらへと倒れてきた。
予定通り、ボスのダウンモーションになったら、こちらへと倒れてくるように爆弾を投げてくれたようだ。
これで思う存分——殴れる!
「うわあああああああ!!」
目の前に迫る巨大な質量に叫ぶ由犀君。
「じゃあいくよおおおおお」
私は斧槍を構えて先端が背後に来るように構えた。斧槍に付いている歯車が回り、蒸気が噴き出す。
「僕も負けるかあああああ」
由犀君がハンマーを腰の高さで構えて力を溜める。
同時に私達から赤い光を放たれる。
「うおおおおおおお!!【ビッグ・インパクト】!!」
「いっくよおおおお!!【水蒸機斬】!」
倒れてくるボスに向かって2人同時にスキルを発動。
くるんと一回転し、遠心力の乗った渾身の一撃を叩き込む由犀君。
私の斧槍が放つ巨大な刃と化した蒸気の斬撃。
「キュアァァ……」
同時に叩き込まれたスキルによってボスのHPゲージが割れて、私達に覆い被さったと同時にエフェクトを撒き散らし、消失。
【Ancient Dragon Slaughted】
という表示が出て、ボスを撃破出来たと実感。
「よっしゃあああああ! ってかポイントすげええええええ」
由犀君が雄叫びを上げた。
おお、見れば確かにこれまでとは桁の違うポイントが入っている。
更に、【古毒竜の牙】と【古毒竜の毒腺】もゲット!
新しい素材だ!
「予定通りとはいえ、かなりギリギリだったな」
そう言いながら蔵人さんが帰ってきた。HPゲージは減っているものの、平気そうだ。
「しっかし、あんた良くあのボスの猛攻避けれたわね。どういう運動神経してるのよ」
足が元に戻っているエンザさんが蔵人さんを呆れた顔で見つめながら着地。
「避けきれてはいない。何回かは掠ったからな。まだまだだ」
蔵人さんがそれに大真面目に答えていた。
「いやあ流石や! 重装備アタッカーもええな」
見ると、ミリー達がこちらへと駆け寄ってきている。
「ポイントは美味いが……やはり博打に近い」
「まあまあ。倒せたし、こっちは被害ないし~」
オビ1さんとカルナさんが会話しながらこちらへと向かってきた。
どうやら全員無事なようだ。
「あはは~ワガママに付き合わせてごめんね」
私は協力してくれた全員に改めてお礼を言ったのだった。
「さて……残念ながら時間はさほどない。まずは予定通り、【群体同盟】で一度話し合いをする」
「どこでやるんや?」
オビ1さんの言葉にミリーが答えた。
「本来なら顔をつきあわせたいところだが、ここまでイベントフィールドが危険だ各自安全なところからグループ通信が現実的だろう」
「なるほど。ほな、ボスも倒したし、ここでやるか?」
「ああ……だがその前に……」
「その前に?」
何するんだろ?
「その前に——罠を仕掛けなおさないと! 落ち着かん!」
オビ1さんは大真面目にそう言ったのでした。
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