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【VerΑ編第3章〜大竜星祭】
46話「敗北者の要塞」
しおりを挟む「敵はスルーでええから全力ダッシュや!」
爆弾が降り注ぐ中、地面のあちこちからまるで寝起きをたたき起こされたような様子で、さっき蔵人さんが倒したメカドラゴンが出現。
ミリーが言うようにいちいち相手していたらキリがない!
背後から亡者のように追ってくるドラゴンたちを引き連れながら全力疾走する私達がようやくあのボロボロ要塞の入口前の階段へと到達する。すぐ背後にはあのドラゴンの群れが迫っている。
「……? なんか嫌な匂いがする……」
「どうしたのミリー?」
「……そっちの脇道にいくで!」
先頭を走るミリーが突如方向転換し、入口の横にある脇道へと向かった。
「いきなりの方向転換はむり!」
ミリーの動きに反応して同じく直角にターンにする蔵人さんと違って、防具が重く急な動きに対応しきれない私は背後に迫るドラゴンの群れを引き連れたままそのまま直進。
「ミリー! ラノアが」
「しまっ——」
私が入口へと到達した瞬間。足下で細い糸か何かが切れるような感触。
次の瞬間に爆発。それは連鎖するように入口の中心から壁の方へと爆発していき、視界が赤く染まる。
「ぎゃああああ!!」
足下の爆発で吹き飛ばされる私と背後のドラゴンの群れ。
HPゲージが削れる音と、獣化ゲージが溜まる音が聞こえる中、私は要塞内部の床をゴロゴロと転がっていった。
「いたたた……」
幸いHPは7割ほど減ったけど、何とか生きている。
と思ったら。
「あ、やば」
先ほどの爆発で左右の壁と天井が崩れて、巨大な質量がこの空間自体を潰そうと落ちてくる。
それだけではなく、先ほどの爆発でも死なないドラゴン達が目を赤く光らせながらこちらへと殺到。
あれ、これ私さん早速大ピンチ?
迫る崩れた壁と天井。目の前には殺気溢れるドラゴンの群れ。
今の防御力とHPでは受けきるの多分無理。
とすると、HPを回復させてガードで凌ぐか……
私は獣化ゲージを確認する。どうやらあの爆発は相当なダメージだったようだ。
その前の猿をいっぱい倒したかいもあって獣化ゲージは既に9割近く溜まっている。
ならもうやる事は一つだ。
ミリーの言葉が頭の中で再生される。
“出し惜しみは無しや。獣化出来るチャンスがあるならガンガン使ったらいい。使わんと死ぬほうがもったいない。喰らいボム感覚でつこたらええ”
「焦らず、かつ迅速に!」
私は腕輪のインベントリから素早く獣血剤を取り出し飲み込んだ。
目の前にドラゴンの爪、頭上には崩れた天井が迫る。
獣化を発動。視界が暗転。身体が膨らむような感覚と共に、衝撃。
天井や壁の塊が身体に当たり、ゲージが削れるが無視。
ありったけの力で、手に持った斧槍を薙ぎ払った。先ほどと比べ小さく感じるドラゴン達が千切れて吹き飛び、天井と壁が粉砕され粉塵が舞う。
なんとか間に合った。
「ギャルアア!!」
咆吼を上げ、無事を知らせる。
視界の端で、ドラゴン達を倒した事によって大量のポイントが手に入ったのが見えた。お、ラッキー
「嘘だろ!?」
ん? 今、上の方で誰かの声が……。
上を見ると、天井が崩れて吹き抜けとなった要塞のエントランスの上部に人影が見えた。
一瞬見えた、名前は【オビ1:ソーレス】
どうやらここは既に別の【群体】に占拠されていたようだ。
さっきの爆発は彼らが仕掛けた罠かもしない。
さて、無茶な使い方をしたせいで、スピちゃんのゲージも残り僅かだ。とりあえずミリー達と合流しないと。
私はスピノサウルスの姿のまま、一旦ミリー達が逃げた方向へと向かう。
走っている間に、獣化が解け、身体が元に戻る。もしかしたら襲ってくるかもしれないと背後を警戒していたけど、さきほどのオビ1という人の気配は今のところない。
「さてと、ミリー達はどこかな?」
このゲームには、ミニマップなんていう便利な物はない。なので、とにかく勘で進む。
「ってここどこ!?」
両脇に、中世の鎧にごちゃごちゃと機械のパーツを取り付けたような像が並ぶ廊下を私は叫びながら走る。
背後で、キュイーンという甲高い音と共に、金属が擦れ合う音。
嫌な予感しかしないので振り返らない。
しかし現実から目を逸らしても、廊下の先で動き始めたそのロボ鎧が兜の隙間から赤い光を漏らしながらこちらへと剣を向けているのは、無視出来ない。
「やっぱり敵はいるよねええ!!」
嘆いても仕方がないので、私は斧槍を構える。比較的幅の広い廊下なので長柄武器である斧槍の取り回しは問題なさそうだけど……。
私は、目の前で剣を振るロボ鎧に斧槍を振り抜く。
金属音と火花が散る。
私の一撃は、剣によって防がれていた。
背後に鎧が動く時のガシャガシャ音が迫る。
私は鍔迫り合いをしたまま突進。剣で防ぐロボ鎧を吹き飛ばす。
自分にもダメージが入るし、与えるダメージも少ない攻撃スキルである【突進】
ただし、上手く当てると強制ノックバックが入るのが特長で、硬直状態を防ぐには使えるスキルだ。
このまま留まって背後からも攻撃される方が危険だ!
前後左右をロボ鎧に囲まれる前に何とかこの廊下を突破したい。
「みんなぁどこおおおお!」
私の叫びはしかし、ロボ鎧の波に飲み込まれた。
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