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【VerΑ編第2章〜古竜の寝所】
29話「機獣とエクスプロージョン」
しおりを挟む「っ! 気ぃ付けて、そっちから来てる!」
「ちっ、こいつらダメージが通りづらい」
「とりゃあ」
崩れた廊下を走る。時々、通路は二手に分かれているが、大概そこからは敵がこちらに向かってきているので、逃げるようにまっすぐ進む。
「というかなんなんこいつら!」
ミリーが叫ぶ。
私は天井から襲ってくる敵の攻撃を躱し、その金属製の頭を手斧の背で叩き割った。
それは、簡単に言えばトカゲだった。だけど、頭や手足の一部が機械化している。機械と生身が融合しているような姿で、私は強烈な違和感を覚えた。
これまで出てきた魔獣はそりゃあ現実にはいない物だけど、少なくともここまでリアルとはかけ離れていなかった。
「刀や爪による斬撃ダメージが通りづらいぞ!」
蔵人さんそう叫びながら、刀の柄で飛びかかってくる機械トカゲの顎をアッパー気味に叩いた。
「らちがあかんな! いったん装備を調える為に安全地帯にいこ!」
ミリーの声に私達は頷き合い、機械トカゲ達を追い払いながら先に進む。
進んだ先は広い空間だった。
元々あった広い洞窟を無理矢理部屋にしたような感じだ。ところどころ、岩壁が露出しており、血のように赤い結晶が生えている。
床も壁も一部は不明な素材で出来ているし、所々からパイプや歯車が露出している。明らかに人工物だ!
「っ! あそこに階段があるぞ! 高所にあがろう!」
蔵人さんが指差す先には金属製の階段があった。それはこの部屋の右側にあり、その先には通路がある。
「賛成!」
私達は後ろからガシャガシャと音を響かせながらこちらに向かってくる機械トカゲの群れに追われるようにその広い空間に突入した。
先行する二人が階段を上がっていく。
「二人とも先に行って! ちょっと試したい事あるから!」
「は? いくらラノアでもソロは無理よ!」
私はそういって、階段を少し上がったところで、後ろを振り向いた。機械トカゲが、5、6匹こちらに向かってきている。
「大丈夫! すぐに追い掛けるから!」
「——ミリー行くぞ」
「すぐ来なきゃ、置いてくからね!」
二人が駆け上る音が背後から聞こえる。ふぅー。
私は腕輪から素早くアイテムを出す。
これ、試したかったんだよね。通路内だと狭いし危ないから使わなかったけど
「えい!」
私が手の中のその円筒状の物を軽く投げた。つもりだった。
「ギャギ!?」
それは、まるでレーザービームのような速さで一体の機械トカゲにぶつかり、その金属製の頭を凹ませ——爆発した。
「ぎゃあああああ!!」
「ばぎゃgygh!!」
私の悲鳴と共にオレンジ色の爆炎が目の前一杯に広がり、機械化トカゲたちのHPゲージが全て削れた。
私はそれだけを確認するとそのままくるりと反転し階段を上る。
なにあれ、威力やばい。すごくびっくりした!
「ラノア!!」
私が階段を上りきると、通路からミリーと蔵人さんが慌てた様子で飛び出してきた。
「なんだ今の音は!? 敵の攻撃か!?」
「メカっぽいしミサイルとか!?」
「あーいやあ」
「あれ、でもHP減ってないやん」
慌てふためく二人になんだか申し訳ないので、私は照れ笑いを浮かべながらさっき投げたアイテムをもう一個取り出した。
「ええっと、さっきの爆発はこれを私が投げたから、かな?」
「……なにこれ」
「俺も実物は見たことはないが……手榴弾に見える」
私が取り出したアイテム。それは、錬金術で偶然できた産物だった。錬金といいながら、割と何でも出来るので面白がってやっていたら、何やら変なアイテムがいっぱい出来たのだ。
なので一部使えそうなのを持ってきたのだけど……。
【投擲爆弾】
“投擲アイテム。相手に命中した際に力ステータス依存のダメージ(小)と炎属性と物理属性混合のダメージ(大)を半径5m内に与える。
「あたし……このゲームってどちらかと言えばファンタジーよりだと思ってた……認識改めあかんかも」
「同意だ。こんなもんまで作れるのかラノアは?」
「あはは……いやあほら、採掘するのに発破とかするのにいるかなあって……」
まあ、追ってきて機械トカゲも撃退できたし?
おーるおっけー的な?
「あの【失敗作45号】って魔獣、斬撃耐性はあるけど、炎や衝撃には弱いんかな? それとも、そのアイテムの威力が単純にえぐいか」
「ラノア、それはあといくつあるんだ?」
「ええっとあと2個かな?」
「そうか……ならそれは切り札にとっておけ。道中の雑魚ですらこれだ。ボスにも効くかもしれない」
蔵人さんがそう言うので、そうする事に
「敵は周りにいなさそうだけど、とりあえず装備変える?」
「そうだな。斬撃が効きにくいので戦い辛い」
私達はこそこそと通路と階段の間で装備を換装した。
「うっし、これで次来たらボコるぞあのメカトカゲ」
ミリーには、ナックルを渡した。分厚い黒い金属で出来た籠手をミリーがガツンと打ち合わせた。
「えっと蔵人さんは、これで良いですか?」
私が渡したのはアダマンタイトで作った杖だった。
あの、なんか天狗とかが持ってそうな、錫杖? とかいうやつらしい。
「……相変わらず攻撃力が凄いなこれ……。ああ、これでいい。棒術も嗜んでいる。これなら殴打属性になるからいけるだろ」
「で、ラノアが……はは、それ凄いね」
「えへへーかっこいいでしょ?」
私が取り出したのは巨大なハンマーだった。角錐がハンマーの両側から棘のように生えており、これで叩かれたら間違いなく痛い。
「っ! ミリー、ラノア! 来たぞ!」
通路の奥から機械音が聞こえる。
「うっしほな反撃開始!」
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