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25:尋問する男
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「さってと、イルサルだっけか? 誰の指示で銃の密輸を行っている? ベルラか?」
暴れると同時にドライゼは転移魔術によってアンデッド部隊を召喚、あっという間に倉庫を制圧した。
その後まだ生きていたイルサルを、ガリルとドライゼが尋問する。
「殺さないでくれ!」
「答えないと死ぬぞ?」
「ベルラだ! あいつが王国と繋がっていて、銃を密輸しているんだ!!」
イルサルが必死にそう言うのも、ドライゼは銃を下ろさない。
「証拠はあるか? お前は嘘をついて、ベルラを嵌めようとしているんじゃないか?」
「しょ、証拠ならある! ベルラは王国軍から多大な報酬を貰っている……ソルド金貨でだ!」
ソルド金貨。それは人間界で普及している貨幣であり、魔界では使わない物だ。もしそれを大量に所持しているのなら……証拠になり得るだろう。
「で、それはどこにある」
「局長室の金庫だ! ベルラは王国に亡命する気なんだ!」
「なるほど……すぐに治安部隊を向かわせよう。よし、こいつは牢獄にとりあえずぶち込んでおけ」
アンデットに拘束され連れて行かれるゴブリン達。
「管理局に向かうのか?」
「いや……港だ」
「港?」
「この騒ぎに気付かないほど、馬鹿でもないだろ。いつでも逃げ出せるように船を用意しているはずだ」
「確かにな」
「うっしじゃあ行くぞ」
ドライゼがガリルの手を取って、転移魔術を使う。
一瞬でガリルの前の光景が変わり、気付けばそこは港の端だった。
「ふふーん、怪しい船はさっき予め目星は付けておいたんだよねえ」
そこには魔力によって動く小型船が停まっており、船夫が何やら重そうな金庫を運び込んでいた。
「早く運べ!! すぐに出るぞ!」
そこには唾を飛ばしながら指示するベルラの姿があった。
「よーベルラ管理局長。そんなに急いでどこに行く?」
「あん? っ! お前らは! なぜここに!!」
「魔王殿、まだあんたの正体に気付いてないぞ」
歯を剥き出しにするベルラは、まだドライゼの正体に気付いていない。既にドライゼは元の姿に戻っており、変装も演技もしていない。
「……演技が無駄だった説ある?」
「ああ。元より魔王の顔なんて覚えていなかったんだな。管理局長でそれってどうなんだ?」
「んー魔族ってさ、みんなそれぞれ好き勝手やってるから、基本的にあたしあんまり口出さないのよねー。この街だって表立って来た事一回もないし。ま、知らないのは仕方ないのかも」
「何をぐちゃぐちゃ喋っている! お前ら、さっさと船を出せ!」
ベルラが船に乗り込み、船を出すようの指示する。
「逃げるぞ」
「あたしの射程圏内から逃れられねえよ」
「ふむ。生け捕りしなくてのいいか? 金貨も押収した方が」
「あー。全部沈めてやろうと思ったが確かにそうかもな」
二人が会話している間に船が離れていく。魔力を使って船を動かしている為に、最高速度こそ帆船には劣るが、初速は侮れない。放っておけばすぐに沖に出てしまうだろう。
「仕方ない。借りを作るのは気が進まないが……あいつに頼むか」
☆☆☆
離れていく岸を見つめて、ベルラはようやく安堵した。
「よし、このまま沖に出て、ラーチェス港に向かうぞ」
「王国の港ですが、大丈夫なんですか?」
人間である船夫達がベルラにそう聞くも、ベルラは自信ありげにこう返した。
「心配するな。話は付けてある。お前らも向こうで贅沢な暮らしが出来るぞ」
「それは良いんですが……魔族である貴方は王国で生きていけるのでしょうか?」
「なあに、王国にも魔族は住んでいる。俺と同じように魔界を見限った連中がね」
「ま、金が払われるなら、どこへでも行きますよ」
そう言って、自分達の仕事に戻る船夫達。ベルラは船室に積み込んだ金庫を見て満足そうに頷いた。
「まさか監査が来て実力行使に出るとはな……まあここまで逃げれば追ってこれまい。あとは全部イルサルのせいにして……」
なんて暢気を事をベルラが呟いていると、血相を変えた船夫がやってきた。
「ベルラ様!!」
「なんだ?」
「お、沖に! 海魔軍が!」
「馬鹿な!? 今日に限ってなぜ!」
ベルラが船室を飛び出した。
「う……そだ」
ベルラの船は、大型の海竜に取り囲まれていた。その海竜の背には船がくくりつけられており、大砲が向けられていた。
更に水中から、銛を持った魚と人を足して2で割ったような姿の兵士達が次々と飛び出してくる。
船は乗り込んでくる兵士達に為す術なく制圧され、ベルラは捕らえられた。
「なぜだ! なぜ海魔軍がいる!」
床へと押さえ付けられたベルラの前に一人の男が立った。青い鱗を纏った竜人だが、背には翼の代わりに背びれがあり、尻尾の先もヒレが付いていた。
「いやあ、珍しく魔王から協力を仰がれちゃってさ。ふふふ……ドライゼちゃんも嫌々言いながらも僕の事を無視出来ないんだ」
「お、お前は! 海魔軍総司令のヘッケラーか!」
「魔王が大層お怒りだよ? あたしの顔を知らないとは何事だ! ってさ」
「顔……? まさか……あのレッサードラゴンが!」
「というわけで、多分君、碌な目に合わないと思うけど……頑張ってね」
こうして銃の密輸を密かに行って亡命を企ていたベルラは無事捕縛されたのだった。
暴れると同時にドライゼは転移魔術によってアンデッド部隊を召喚、あっという間に倉庫を制圧した。
その後まだ生きていたイルサルを、ガリルとドライゼが尋問する。
「殺さないでくれ!」
「答えないと死ぬぞ?」
「ベルラだ! あいつが王国と繋がっていて、銃を密輸しているんだ!!」
イルサルが必死にそう言うのも、ドライゼは銃を下ろさない。
「証拠はあるか? お前は嘘をついて、ベルラを嵌めようとしているんじゃないか?」
「しょ、証拠ならある! ベルラは王国軍から多大な報酬を貰っている……ソルド金貨でだ!」
ソルド金貨。それは人間界で普及している貨幣であり、魔界では使わない物だ。もしそれを大量に所持しているのなら……証拠になり得るだろう。
「で、それはどこにある」
「局長室の金庫だ! ベルラは王国に亡命する気なんだ!」
「なるほど……すぐに治安部隊を向かわせよう。よし、こいつは牢獄にとりあえずぶち込んでおけ」
アンデットに拘束され連れて行かれるゴブリン達。
「管理局に向かうのか?」
「いや……港だ」
「港?」
「この騒ぎに気付かないほど、馬鹿でもないだろ。いつでも逃げ出せるように船を用意しているはずだ」
「確かにな」
「うっしじゃあ行くぞ」
ドライゼがガリルの手を取って、転移魔術を使う。
一瞬でガリルの前の光景が変わり、気付けばそこは港の端だった。
「ふふーん、怪しい船はさっき予め目星は付けておいたんだよねえ」
そこには魔力によって動く小型船が停まっており、船夫が何やら重そうな金庫を運び込んでいた。
「早く運べ!! すぐに出るぞ!」
そこには唾を飛ばしながら指示するベルラの姿があった。
「よーベルラ管理局長。そんなに急いでどこに行く?」
「あん? っ! お前らは! なぜここに!!」
「魔王殿、まだあんたの正体に気付いてないぞ」
歯を剥き出しにするベルラは、まだドライゼの正体に気付いていない。既にドライゼは元の姿に戻っており、変装も演技もしていない。
「……演技が無駄だった説ある?」
「ああ。元より魔王の顔なんて覚えていなかったんだな。管理局長でそれってどうなんだ?」
「んー魔族ってさ、みんなそれぞれ好き勝手やってるから、基本的にあたしあんまり口出さないのよねー。この街だって表立って来た事一回もないし。ま、知らないのは仕方ないのかも」
「何をぐちゃぐちゃ喋っている! お前ら、さっさと船を出せ!」
ベルラが船に乗り込み、船を出すようの指示する。
「逃げるぞ」
「あたしの射程圏内から逃れられねえよ」
「ふむ。生け捕りしなくてのいいか? 金貨も押収した方が」
「あー。全部沈めてやろうと思ったが確かにそうかもな」
二人が会話している間に船が離れていく。魔力を使って船を動かしている為に、最高速度こそ帆船には劣るが、初速は侮れない。放っておけばすぐに沖に出てしまうだろう。
「仕方ない。借りを作るのは気が進まないが……あいつに頼むか」
☆☆☆
離れていく岸を見つめて、ベルラはようやく安堵した。
「よし、このまま沖に出て、ラーチェス港に向かうぞ」
「王国の港ですが、大丈夫なんですか?」
人間である船夫達がベルラにそう聞くも、ベルラは自信ありげにこう返した。
「心配するな。話は付けてある。お前らも向こうで贅沢な暮らしが出来るぞ」
「それは良いんですが……魔族である貴方は王国で生きていけるのでしょうか?」
「なあに、王国にも魔族は住んでいる。俺と同じように魔界を見限った連中がね」
「ま、金が払われるなら、どこへでも行きますよ」
そう言って、自分達の仕事に戻る船夫達。ベルラは船室に積み込んだ金庫を見て満足そうに頷いた。
「まさか監査が来て実力行使に出るとはな……まあここまで逃げれば追ってこれまい。あとは全部イルサルのせいにして……」
なんて暢気を事をベルラが呟いていると、血相を変えた船夫がやってきた。
「ベルラ様!!」
「なんだ?」
「お、沖に! 海魔軍が!」
「馬鹿な!? 今日に限ってなぜ!」
ベルラが船室を飛び出した。
「う……そだ」
ベルラの船は、大型の海竜に取り囲まれていた。その海竜の背には船がくくりつけられており、大砲が向けられていた。
更に水中から、銛を持った魚と人を足して2で割ったような姿の兵士達が次々と飛び出してくる。
船は乗り込んでくる兵士達に為す術なく制圧され、ベルラは捕らえられた。
「なぜだ! なぜ海魔軍がいる!」
床へと押さえ付けられたベルラの前に一人の男が立った。青い鱗を纏った竜人だが、背には翼の代わりに背びれがあり、尻尾の先もヒレが付いていた。
「いやあ、珍しく魔王から協力を仰がれちゃってさ。ふふふ……ドライゼちゃんも嫌々言いながらも僕の事を無視出来ないんだ」
「お、お前は! 海魔軍総司令のヘッケラーか!」
「魔王が大層お怒りだよ? あたしの顔を知らないとは何事だ! ってさ」
「顔……? まさか……あのレッサードラゴンが!」
「というわけで、多分君、碌な目に合わないと思うけど……頑張ってね」
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