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24:密輸を見破る男

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「これだけあると一つ一つ確認するのは大変だが」
「倉庫から船着き場へと動きのあるところから先に確認すればいい」
「なぜ、動いていると分かる」
「……でなきゃわざわざあたしらを尾行しないさ。それにまだ昼間だというのに……

 船着き場にある倉庫街をガリルとドライゼが歩く。普段であればもっと騒がしいはずなのにその倉庫街は静かだった。まるで人払いがされたような……そんな雰囲気だった。

「見られたら困る場所があるってことか」
「そういうことだな……ん? 微かに火薬の匂いがするな」
「……あちらの倉庫がにわかに騒がしいぞ。行ってみよう」

 二人がとある倉庫へと走る。いくつも木箱が慌ただしく運ばれていく。

「おっと……困りますねえ。この先は作業中なので通ってもらうわけにはいかないんですよ」

 倉庫の影から現れたのは武装したゴブリン達だった。その内の数人が銃を二人へと向けていた

「ふむ……あれは【イェーガー2】か」
「軍の払い下げか? しっかり監視するように言っていたんだけどな。あたしの詰めが甘かったか」
「早かれ遅かれ銃は普及するさ」

 ガリルの言葉にドライゼはため息をついていた。自分の考えの甘さと想像力の無さを思い知った。

 自分達を無視して話しだす二人を見て苛立ったゴブリンがガリルに銃を突きつけた。

「お前ら、こっちに来い」

 その態度を見てガリルがドライゼに小声で伝えた。

「……ド……じゃなかった……ライゼ。
「あん? 。――いやーん怖ーい!!」

 腕に飛び付いてくるドライゼの胸の感触に気付かない振りをしてガリルはゴブリン達に倉庫の中へと連れていかれた。

 倉庫内では、多数のゴブリン達がせわしなく働いていた。何やら鉄の部品を木箱の底に詰めて、その上に板を敷く。そうするとまるでその木箱が空のように見えた。更にそこへ重そうな壺を詰めていく。

「二重底か……ぐはっ!」

 そちらを注視していたガリルの頭をゴブリンが銃で殴り、油断していたガリルは床へと倒れる。ドライゼはさりげなく力を入れて、彼が頭を床に打たないように支えつつ倒れたガリルへとすがりつく。

「ガリルさん! 大丈夫!?」
「女、てめえはこっちだ!」

 にやつくゴブリン数人に無理矢理引き離されたような振りをするドライゼが倉庫の奥へと連れていかれた。

「きゃーたすけてー」

 演技が下手くそだな……と内心思うガリルだったが口にしない。

「さて、女はしばらく生かして楽しませてもらうが、お前には残念ながら死んで魚の餌になってもらう」

 そう言ってガリルを見下ろすゴブリンは、管理局にいたイルサルだった。

「……あの二重底の下に詰めていたのは……
「やっぱり知ってやがったか。しかし魔王は無能だな。せめて自分の身ぐらいは守れる奴を送りこんでくればいいもの……女共々運がねえな」
「あの壺の中身は……火薬だな」
「魔界最新式の銃と火薬は高く売れるんだよ……おっとこれは言っちゃいけなかったな」
「……
「頭だけは回るようだな。じゃあ――死んどけ」

 銃口がガリルの頭へと突きつけられた。

「それ……撃鉄を上げないと――!」

 一瞬、撃鉄の方へと気を取られたイルサルへ、ガリルは素早く腰から【ペッパーミル】を抜き、発砲。

「っ!? ぎゃっ!!」

 弾はイルサルの肩に命中し、彼は思わず銃を取りこぼしてしまう。

「て、てめえ!!」

 取り囲んでいたゴブリン達が銃を構えると同時に、ガリルは立ち上がりイルサルの背後へと回り込んだ。

「あ、ちょ、撃つな――ぎゃあああ!!」

 一斉に発砲したゴブリン達の銃弾がイルサルへと命中する。ガリルはゴブリン経ちが旧式の銃しか持っていない事を把握しており、貫通力がない事も分かっていた。

 イルサルはなんとまだ生きていた。ろくに訓練していないゴブリン達の構えも照準もいい加減だったせいで、銃弾が急所に当たらなかったせいだ。

 ガリルはイルサルを盾にしながら、その頭に【ペッパーミル】を突きつける。

「た、隊長を!! 貴様卑怯な!! 女がどうなっても良いのか!!」

 吼えるゴブリン達。

「……お前らの敗因は一つだけ――自らの君主の拙い変装と演技を見破れなかった事、それだけだ。俺はむしろ、彼女を連れていったお前らの仲間のが気の毒だよ。発砲音を聞き付けて……

 ガリルが不敵に笑うと同時に、ドライゼが連れていかれた付近から轟音。倉庫の天井すらも貫通する赤い光が見え、起こった衝撃波で倉庫のガラス窓が割れていく。

「な、なんだ!? 何が起こった!」

 あわてふためくゴブリン達の背後から、歪なシルエットが迫る。

「ほら……

 彼らが振り返って最後に見た光景は、両手に持つ長い銃身をまるで剣のように振り回し、全てを薙ぎ払う魔王の姿だった。
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