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16:更なる銃を開発した男

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「……痛くも……痒くも……ねえな!」
「強がりを……ほら!」
「……っ!!」
「ほら!!」
「ぐぅ……!」

 【竜の爪牙】、独房。

 魔力の流れを阻害する鎖で縛られたドライゼが、ゲオルスによって電撃を浴びせられていた。

「お前みたいなレッサードラゴンの癖に特別扱いされる奴がよ、俺は一番嫌いなんだよ!!」
「……クズが」
「貴様ああああ!!」

 何度も電撃を受けたおかげで服や肌が焦げているが、ドライゼは至って冷静だった。捕らえられてからもう1週間は経った。

 一体何が起きているのか。考えられる可能性はいくつかあるが、どれも根拠がない。

 ドライゼに執拗に電撃を浴びせるゲオルスの元に、一人の兵士が現れた。
 
「ゲオルス様。人間の軍と思わしき集団が門に来ているとの報告が」
「ああ……そいつらは仲間だ入れてやれ」
「はっ。あとスチールダウンに潜伏している人間とドワーフが何やら色々と買い込み作成していたようですが」
「銃って武器だろうさ。俺ら竜族には効かない鉄くずだ。捨て置け」
「……やっぱりお前は馬鹿だな、ゲオルス」

 ドライゼがゲオルスを笑った。自ら情報をバラすとは、愚かな。なるほど、どうやらゲオルスは独断で王国側に寝返ったようだ。そして反対する者を捕らえた。長老が動かないところを見ると……それはそういう事なのだろう。

「まだ喋る元気があるのか!! 黙れクソレッサードラゴンが!!!」
「くっ!!」

 再び電撃を浴びせられたドライゼの身体が跳ねる。

「ああ、そうだ。良い事を思い付いた。こいつの首は勇者にやるとして、その人間とドワーフはこいつの目の前で例の銃とやらで殺してやろう」
「……やめとけ……あいつらは……お前の手に負えないぞ……まじで」
「強がりもそれぐらいにしておけ。おい、すぐに部隊をスチールダウンへと送れ。相手はたかが人間とドワーフだ。すぐに制圧できるだろう」
「……だといいな……ご冥福を祈るさ」
「くどいぞ貴様!!」

 電撃を浴びながら、ドライゼは二人の技術者の心配をしていたのだった。


☆☆☆
 

「完成……したが……」
「本人がいないとね……流石にこれは僕でも撃てないよ」
「……こいつはとんでもない物が出来ちまったな」
「かっこいい!!」

 発掘現場で見付けてきたパーツと、ミスリルや他の機巧を使い、ガリルがグロックとイサカの協力を得て1週間かけて作り上げたそれは――銃と呼ぶにはあまりに巨大かつ複雑な機巧を宿していた

「これは魔王殿専用だが……小型化できれば……更に銃は進化するぞ」
「んーやっぱりミスリルがネックだなあ」
「ミスリルは外へは出さねえからな」
「うむ……」

 そんな時に外がにわかに慌ただしくなった。それに素早くグロックが反応し、布でその完成した銃を覆った。

「……そろそろかと思っていたが……お前ら、こっちだ」

 グロックがガリル達を裏庭へと案内する。

 すると工房へと、竜人の兵士が雪崩れ込んできた。

「何処にいる!?」
「探せ!!」

 裏庭から裏道へと出たイサカが、先を走るグロックの背中へと声を投げた。

「何が起こっているの!?」
「ドライゼに、万が一があった場合の指示を受けていてな。おそらくこうなったって事は……ドライゼは囚われている。もしくは……死んでいるかもな」
「あの魔王がか? 悪い冗談だ」
「とにかく、こうなった以上はスチールダウンにいるのは危険だ。上を目指すぞ!」

 グロックを先頭に昇降機乗り場へと走る。しかし、その途中で兵士に遭遇してしまった。

「いたぞ!! 死なない程度に痛め付けてやれ!」

 兵士が、雷を纏う槍を構えてこちらへと向かってくる。

「ち、ここは俺が食い止める。だからお前らは上――」

 グロックがそう言ったと同時に、ガリルとイサカが携えていた銃の引き金を引いた。それはこれまでの銃と同じ見た目だが、レバーハンドルが付いているのが大きな特徴だった。

 轟音と共に放たれた円錐状の銃弾は回転しながら、兵士の鱗へと着弾。しかし弾芯を鋼鉄で覆っているこの銃弾はそのまま鱗を貫通し、深々と兵士の身体の内部へと刺さっていく。

「ギャッ!!」
「馬鹿な!? 我らの鱗を貫――ギャイ!!」

 ガリルとイサカは腰のポーチに入れていた銃弾――弾、火薬、雷管を一つにまとめた物――を取り出すと、銃についていたレバーハンドルを引いてそこへ再装填。再び引き金を引くと轟音。

 次は頭部へと命中し、兵士達が倒れた。

「……お前らほんとに技術者か?」
「二人ともかっこいい!! お姉様みたい!」

 再装填しながら兵士の死体を乗り越えて走るガリルとイサカを見て、グロックは呆れた声を出し、コルトは喜んでいた。

「試し撃ちは嫌と言うほどやってるからな。嫌でも扱いは慣れる」
「しかし、ガリル。やっぱりこれ、凄い」
「ああ。貫通力も素晴らしいが、やはり一体型の薬莢と後装式に変えたのが良かったな。素晴らしい出来だ」
「まさか竜族の鱗を貫通するとは……半信半疑だったが……」
「ライフリングと命名したこの銃身加工と専用弾のおかげだな」

 四人が昇降機へと乗り込む。すぐに昇降機は上昇を続けた。

「とりあえずドライゼを助けるぞ。おそらくだが、ろくでもない事にこの街はなっている可能性がある」
「分かった。場所に心当たりは?」
「おそらく【竜の爪牙】だ。案内する。上に行ったらコルトは隠れておけ」
「嫌! コルトもお姉様助けるもん!」
「いや、しかしだな……」

 そうこうしているうちに、昇降機が停まった。

 扉の向こうには、最下層と比べ物にならないほど綺麗で整った空間が広がっており――

「いたぞ!! 捕らえろ!! 我々王国軍も協力する!!」

 そこには銃を装備した人間――王国軍の兵士達がいたのだった。
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