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15:発掘する男

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「なるほど……面白えな。俺ら竜族じゃ、思いも付かねえ武器だ」

 工房で、銃をバラしながら説明するガリルとそれを見つめるグロック。イサカはコルトと一緒に街の見学兼買い出しに行っている。

「だが、まだまだ完成形にはほど遠い。例えば、人間のような柔い物体なら簡単に破壊出来るが、竜族の持つ鱗はおそらく表面を削る程度で終わるだろう」
「まあ、竜族の鱗は魔法も矢も弾くからな。物理で突破するしかないが、それこそ既存の技術じゃ無理だ。有効なのは、鱗の下まで届く雷撃だな」
「雷撃か……中々難しいな。個々の素質に依存する武器はあまり意味がない。勿論専用に作るなら有効だが」
「色々と面白い物がある。ちょっとこっち来てみろ」

 そういってグロックが工房の裏にある庭へと案内した。
 そこには錆びた鉄くずやら部品やらが山のほうに積み重なっていた。

「俺が発掘したもんもあるし、安値で買い叩いた物もある。使いもんになるか分からねえが、自由に使ってくれて構わない」
「良いのか!? 気になる物が沢山あるんだが」
「構わねえ。その代わり、俺もその銃とやらを作ってみてえ。手伝ってくれねえか?」
「勿論だ。後は、その発掘とやらも気になるな」
「なら、コルト達が戻ってきたら連れていってやるよ。良いモノが見付かるかもしれねえな」

 そうして二人が、鉄くずを吟味してああでもないこうでもないと議論としていると、イサカ達が帰ってきた。

「ガリル、これ見て!!」

 目を輝かせたイサカが手に持つ鉱石をガリルへと見せ付けた。

「なんだこれは? 鉄……ではないな。何やら不思議な光沢を放っているが」
「ミスリルだよ!! 別名、魔鉱石! 凄いよ! 普通に売っているんだもん!」
「ミスリルは外では貴重だが、ここじゃあ未だに採れる量は多い」
「どういう特徴があるんだ?」

 ガリルがそう聞くと、イサカは作業用の厚手のグローブを嵌めてミスリルを手に持つと、それに魔力を込めはじめた。
 すると、ミスリルが光を放ち――火が起きた。

「ほお……魔力を火に変換するのか」
「そうだけど、そうじゃないんだよね。はい、グロッグさん」
「おう」

 イサカの手から離れた途端にミスリルを纏っていた火が消えた。そしてグロックが魔力を込める今度はミスリルから風が発生しはじめた。

「どういうことだ?」
「ミスリルは魔力に反応するんだが、個々の魔力によって反応が変わるんだ。まあ種族によって偏りはあるみたいだが」
「ドワーフは火が多いし、竜族は風だったかな? 人間はほんとにバラバラって聞くけどね」
「コルトとお姉様は雷だよ! バリバリーって」

 コルトの言葉にガリルが頷いた。

「ふむ……これは使。専用銃だけにだが」
「でしょ? 他にも面白い物がいっぱいあったよ!!」
「興味深いな……全部検証してみよう」
「それも良いが……行ってみるか? 発掘現場へ」

 グロックの言葉に、ガリルとイサカは同時に頷いた。


☆☆☆


「凄い……まるで化石みたいだ」
「まあ言い得て妙だな。こりゃあ全部機械の化石だ」

 グロックに案内されたその場所はまさに発掘現場という名にふさわしい場所だった。いくつもの作業台があり、壁面はまだら模様になっている。良く見ればそれがただの地層の違いによって生じた模様でないことが分かる。

 壁面には、無数の鉄の残骸が埋まっていたのだ。

「今あるドラヴァリアは全盛期の姿の一割にしか過ぎない。残りはこうやって山の中に埋まっているのさ」

 グロックの説明を聞いてガリルは納得した。

「なるほど。だからこうして発掘しているわけか」
「そうだ。そして見付けたもんは見付けた奴のものだ。掘り出すのは手伝ってやるから、探してみるといい」
「面白い機巧があれば銃に組み込めるかもしれないね。僕はあっちを探してみよう」

 イサカが駆け出す。その目は爛々と輝いており、まるで獲物を狙う肉食獣のようだ。

「俺らはどうする?」
「ふむ……」

 ガリルはゆっくりと壁面を観察していった。用途不明の物が多いが、銃に使えそうな物は少ないように見える。

「イメージは大体出来ているんだが……ん?」

 ガリルは発掘現場から少し離れた場所に、通路がある事に気付いた。

「ああ、そこは昔の坑道だな。掘り尽くされているから、良い物は残ってねえぞ。
「そうか……なあ、グロック。銃は竜族の遺産にもないのか?」
「ん? ああそうだな。俺は見たことがねえ」
「であれば、もし仮に銃がこのまま埋まっていたら、あんたらは興味を持つか?」
「……いや、そんな細長い鉄くずは掘り出さねえな。俺らが掘るのは専らデカい機械だ」

 それを聞いてガリルがやはりな、と呟いた。
 銃を知らない者にとって、これは細長い鉄くずにしか見えないのだ。であれば……。

 ガリルは坑道へと入っていく。やはり、大した物は見付からなかった。しかし、一番奥まで言った時にガリルはとある物を見付けた。

 そこは広い空間になっており、中央に何かが朽ちていた。

「これは……?」
「ああ、これか……こりゃあ多分、古の竜を象った機械像だな。中に機巧も詰まっていると思うが俺らは手を出さねえ。竜体の形をしている物は壊さない方がいいんだ」

 グロックの言う通りそれは錆びた鉄で出来た竜だった。

 足はもがれているし、尻尾も壊れている。だが何よりガリルの目を惹いたのは、その機械竜の左右の肩から伸びている細長い物体だ。それは背中に付いている翼のような機械に接続されており、その先端は銃口のように見える。

「グロック。あの肩の奴と背中の奴を持って帰りたい」
「んー壊すのは気が引けるが……」
「あれは取り外しできるはずだ」
「外すだけならいいか……しかしよ、あれはなんか角とか翼とかを模した物で役に立つと思えないが……」
「いや、あれから感じる物があるんだ」

 こうしてガリルはグロックの手を借りて、機械竜のパーツを持ち帰ったのだった。
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