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13:地下へと潜っていく男
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「あんたは……ドライゼだな。そっちは人間か?」
「うちの優秀な技術者だ。ガリル、それを見せてやれ」
ドラヴァリア、境界門。
都市への入口は地面の下にあるようで、地下へと続く門へと向かった3人は、翼のない竜人によって検問を受けていた。
訝しげな目でガリル達を見つめる竜人に、ガリルは持っていた銃を手渡した。
「ほお……随分と緻密な機巧を施しているな……これは、何かを打ち出す武器か?」
ためつすがめつ銃を検分する竜人の手つきは、まるで技術者のようだ。ガリルはそれだけで銃の本質を見抜いた竜人に感心していた。
「そこまで分かるのか。これは銃という武器だ」
「銃……初めて聞く。面白いな。お前達が作ったのか?」
「そうだよ。僕はドワーフで彼は人間さ」
「なるほど、ドワーフも関わっているのか。長老から、ドライゼが来たら通すようにと言われている。本来なら竜族以外は通さないが……技術者ならまあ良いだろう」
「サンキュー。じゃあ行かせてもらうぜ」
ドライゼがスタスタと門から下へと続く階段を降りていき、検問をしていた竜人は門の横にある機械に何やら喋りかけていた。
あっさりと通れた事に驚いたガリルとイサカだったが、ドライゼは当然とばかりに先を進んでいく。
「竜族は、お前らみたいな奴が多いのさ」
ドライゼがとある扉の前で立ち止まった。
「俺達みたいな……そうか技術者か」
「僕、竜族ってそんなイメージなかったけど」
不思議に思いながらガリルとイサカが扉の前で待っていると、機械音が下からせり上がってきて、それが止まると目の前の扉が開いた。
「これは?」
「昇降機だよ。竜族の遺産さ。さ、乗った乗った。最下層まで行くから時間かかるぞ」
その昇降機は大人4人が立つのがやっとというほど、狭い箱だったが、ガリルとイサカは目を輝かせながらそれに乗った。
扉が閉まり、機械音と共に昇降機が下がっていく。
「おお! 凄いな」
「これ、どういう動力を使っているんだろ……?」
「あたしも詳しい事は知らねえ。まあ後で適任の奴を紹介してやるからそいつに聞いてくれ。ほら――見えてきたぞ」
ドライゼの言葉と共に、昇降機に光が差し込んできた。昇降機の横の壁は透明なガラスになっており、谷の光景が見えるのだ。
「見た事のない物ばかりだ! イサカ、あの機巧はなんだと思う?」
「なんだろう……何か重い物を吊し上げるものかな?」
「あれは…荷物を乗せて自動で動いているな」
二人は見える物全てに興味を抱きながら、まるで子供のように感想を言い合っていた。それを見てドライゼは満足げに頷いていた。
このドラヴァリアには、今では考えられないほどの文明をかつて持っていた竜族の、遺産とも言うべき技術や設備が残されていた。今でもそれらは発掘修繕され、使われている。
「竜族はな、ああいう機械だとか機巧だとかが大好きなんだよ。門にいた奴ですら、最低限の知識を持っている。竜族は生まれた時から鉄くずに囲まれて、それらを弄りながら育つのさ。ま、あたしは別だけどな」
「知らなかった。ドワーフよりも凄いや」
イサカが感心したようにその光景を見つめていた。
「そうでもないさ。確かに使っている技術は凄いが、全部元々あった物を使っているだけだ。ドワーフや人間のように新しい何かを生み出す力は、竜族にはないんだ。だからいつまで経っても旧態依然としている。くだらねえ」
思うところがあるのか、ドライゼはそう吐き捨てた。
しばらくすると昇降機が停まり、扉が開いた。
途端に熱気が3人を襲う。
「暑いな」
「まるで、火炉の近くにいるみたいだね」
「すぐ下にマグマの川があるからな。さ、行くぞ」
ドライゼが昇降機から出ると、先へと続いているパイプが這い回った鉄の通路を進む。
通路を抜けた先には、鋼鉄が支配する地下都市が広がっていた。鋼とパイプによって構成された建物が無造作に増築を繰り返して出来たような街並だ。ところどころから蒸気が噴き出しており、低い機械音が鳴り響いていた。
「ここはドラヴァリアでも最下層に位置する【スチールダウン】って街でな。あたしの故郷でもあるんだ」
「ほお……」
「見てガリル。空があんなに遠い」
イサカに言われてガリルは上を見上げると、都市と巨大回廊の向こうに小さく空が見えた。それほどまでにここは地下深くに位置するのだ。
そうして空を見上げる二人へと小さな影が向かってくる。
それは作業着を着たポニーテールの少女で、ドライゼとよく似た、黒曜石のような鱗で覆われた尻尾と小さな角を生やしていた。
「ん? おお」
気付いたドライゼが満面の笑みを浮かべた。
その少女はガリルとイサカの横を通り過ぎると、ドライゼの胸へと飛び込んだ。
「お姉様!! お帰りなさい!!」
「ただいま。元気そうで何よりだよ、コルト」
そのやり取りを見たガリルとイサカは顔を見合わせて、同時に言葉を発した。
「妹!?」
「うちの優秀な技術者だ。ガリル、それを見せてやれ」
ドラヴァリア、境界門。
都市への入口は地面の下にあるようで、地下へと続く門へと向かった3人は、翼のない竜人によって検問を受けていた。
訝しげな目でガリル達を見つめる竜人に、ガリルは持っていた銃を手渡した。
「ほお……随分と緻密な機巧を施しているな……これは、何かを打ち出す武器か?」
ためつすがめつ銃を検分する竜人の手つきは、まるで技術者のようだ。ガリルはそれだけで銃の本質を見抜いた竜人に感心していた。
「そこまで分かるのか。これは銃という武器だ」
「銃……初めて聞く。面白いな。お前達が作ったのか?」
「そうだよ。僕はドワーフで彼は人間さ」
「なるほど、ドワーフも関わっているのか。長老から、ドライゼが来たら通すようにと言われている。本来なら竜族以外は通さないが……技術者ならまあ良いだろう」
「サンキュー。じゃあ行かせてもらうぜ」
ドライゼがスタスタと門から下へと続く階段を降りていき、検問をしていた竜人は門の横にある機械に何やら喋りかけていた。
あっさりと通れた事に驚いたガリルとイサカだったが、ドライゼは当然とばかりに先を進んでいく。
「竜族は、お前らみたいな奴が多いのさ」
ドライゼがとある扉の前で立ち止まった。
「俺達みたいな……そうか技術者か」
「僕、竜族ってそんなイメージなかったけど」
不思議に思いながらガリルとイサカが扉の前で待っていると、機械音が下からせり上がってきて、それが止まると目の前の扉が開いた。
「これは?」
「昇降機だよ。竜族の遺産さ。さ、乗った乗った。最下層まで行くから時間かかるぞ」
その昇降機は大人4人が立つのがやっとというほど、狭い箱だったが、ガリルとイサカは目を輝かせながらそれに乗った。
扉が閉まり、機械音と共に昇降機が下がっていく。
「おお! 凄いな」
「これ、どういう動力を使っているんだろ……?」
「あたしも詳しい事は知らねえ。まあ後で適任の奴を紹介してやるからそいつに聞いてくれ。ほら――見えてきたぞ」
ドライゼの言葉と共に、昇降機に光が差し込んできた。昇降機の横の壁は透明なガラスになっており、谷の光景が見えるのだ。
「見た事のない物ばかりだ! イサカ、あの機巧はなんだと思う?」
「なんだろう……何か重い物を吊し上げるものかな?」
「あれは…荷物を乗せて自動で動いているな」
二人は見える物全てに興味を抱きながら、まるで子供のように感想を言い合っていた。それを見てドライゼは満足げに頷いていた。
このドラヴァリアには、今では考えられないほどの文明をかつて持っていた竜族の、遺産とも言うべき技術や設備が残されていた。今でもそれらは発掘修繕され、使われている。
「竜族はな、ああいう機械だとか機巧だとかが大好きなんだよ。門にいた奴ですら、最低限の知識を持っている。竜族は生まれた時から鉄くずに囲まれて、それらを弄りながら育つのさ。ま、あたしは別だけどな」
「知らなかった。ドワーフよりも凄いや」
イサカが感心したようにその光景を見つめていた。
「そうでもないさ。確かに使っている技術は凄いが、全部元々あった物を使っているだけだ。ドワーフや人間のように新しい何かを生み出す力は、竜族にはないんだ。だからいつまで経っても旧態依然としている。くだらねえ」
思うところがあるのか、ドライゼはそう吐き捨てた。
しばらくすると昇降機が停まり、扉が開いた。
途端に熱気が3人を襲う。
「暑いな」
「まるで、火炉の近くにいるみたいだね」
「すぐ下にマグマの川があるからな。さ、行くぞ」
ドライゼが昇降機から出ると、先へと続いているパイプが這い回った鉄の通路を進む。
通路を抜けた先には、鋼鉄が支配する地下都市が広がっていた。鋼とパイプによって構成された建物が無造作に増築を繰り返して出来たような街並だ。ところどころから蒸気が噴き出しており、低い機械音が鳴り響いていた。
「ここはドラヴァリアでも最下層に位置する【スチールダウン】って街でな。あたしの故郷でもあるんだ」
「ほお……」
「見てガリル。空があんなに遠い」
イサカに言われてガリルは上を見上げると、都市と巨大回廊の向こうに小さく空が見えた。それほどまでにここは地下深くに位置するのだ。
そうして空を見上げる二人へと小さな影が向かってくる。
それは作業着を着たポニーテールの少女で、ドライゼとよく似た、黒曜石のような鱗で覆われた尻尾と小さな角を生やしていた。
「ん? おお」
気付いたドライゼが満面の笑みを浮かべた。
その少女はガリルとイサカの横を通り過ぎると、ドライゼの胸へと飛び込んだ。
「お姉様!! お帰りなさい!!」
「ただいま。元気そうで何よりだよ、コルト」
そのやり取りを見たガリルとイサカは顔を見合わせて、同時に言葉を発した。
「妹!?」
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