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10:西部攻略に貢献した男
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「なんだあれ! 凄えな!!」
イサカの放った一撃を上から見ていたドライゼが興奮しながらバンバンとガリルの肩を叩いた。
「痛いぞ魔王殿」
「悪ぃ悪ぃ。あれはなんだ? あとボーンライダーに持たせた銃も。明らかに一発しか撃ってないのに弾丸の数がエグかったぞ」
ドライゼの目には見えていたが、ボーンライダー達が撃った銃弾もイサカが放った銃弾と大きさは違うが同じだった。銃口から出た瞬間に破裂し、無数の極小弾を撒き散らしていたのだ。
「あれは散弾だ。ただですら命中率に難がある銃を騎乗したまま使うと、実戦投入出来ないレベルで命中率が下がってしまう。それを補う為に、大して狙いを付けなくても当たる銃弾を開発したんだ」
「つまり――弾の中に小さな銃弾を詰め込んで、銃口から出たと同時に破裂させる。すると前方の広い範囲へと弾が飛び散るので、命中率が上がると。痛みやら音やらでちょっとでも集中が途切れると魔法が中断される魔術師相手に撃つには最適な銃だな」
「難点は、弾一発を作成するコストが大きい事と量産の目処が立っていない事、なにより射程が短い点だが……」
「それが騎兵であれば相手に素早く近付く事が出来るから、相殺できる……見事だな。んで、イサカが吹っ飛んだあの化け物みたいな銃はなんだ! あたしあれ欲しい!!」
ドライゼが子供のようにはしゃぎながら、起き上がって銃の点検をしているイサカを見ていた。
「……あれは、失敗作だ」
「あん? なんでだよ。やべーじゃんあの火力」
「見ただろ? ドワーフの超人的な筋力を持ってしても、あれほどの反動が起きるんだ。それに銃身も長すぎて取り回しが悪すぎる。携行兵器としては使い物にならない」
「あたしなら余裕で使えるが? なんなら二丁持てるが?」
胸を張って答えるドライゼにガリルはため息をついた。確かにこの化け物みたいな魔王なら楽々扱えるのかもしれないなとガリルは納得した。
「それは……そうかもしれないな」
「だろ? ガリルよ、お前はまだまだ視点が人間的過ぎる」
「……次回からはそれも考慮しよう。確かに……人間が使う事を前提に考えていたのは認める」
「魔族はさ、少数精鋭なんだ。それぞれに人間とは違う大きな特徴がある。今回は人間に比較的近いアンデッドだったから人間用の銃で良かったが、違う部隊になればまた――違う銃が求められるぞガリル」
その言葉に、ガリルは嬉しそうに笑ったのだった。
「銃には無限の可能性がある。人という制限から外れていいのなら――いくらでも作ってやるさ」
「あーそうだ。ついでによ、あたし専用の銃を作ってくれよ。さっきの奴みたいな、飛びっきりやべえ奴をさ」
「……考えておこう。アイディアはいくつかある」
ガリルがニヤリと笑った。それを見てドライゼは満足げに頷いたのだった。
「楽しみだよ。しかし、これであたしらが西部は取ったも同然だな」
「俺は開発室に戻るぞ。課題が山ほど出来たからな」
こうして大陸西側に広がるローサ丘陵の戦いは魔王軍の大勝利で終わり、王国軍は撤退せざるを得なくなってしまった。
これまで、侵略を進めていた王国軍をここで初めて魔王軍は食い止める事が出来たのだ。更に王国軍の敗退を受けて、大陸西側にあった都市は次々と降伏していき、魔王の領土は一気に拡大したのであった。
後に第一次人魔戦争と呼ばれる戦争が本格的に始まろうとしていた。
☆☆☆
ソルド王国、謁見の間。
「どういう事だ勇者よ!!」
「知らねえよ俺に言われてもさー。あっちは賢者の管轄だし」
激怒する王の前で、耳穴をほじる勇者がやる気無い声で答えた。彼は手に布に包んだ細長い物体を持っている。
「それでは困るのだ! 賢者は何をしておる!」
「あー。あいつ多分再起不能だよ、こっぴどくやられてやんの。ダセえよなあ」
「貴様の仲間だろうが……」
王の言葉に、勇者が眉をひそめた。
「仲間……? おいおい、勘弁してくれ。あんな魔法しか使えないクズが仲間なわけねえだろ。あいつは完全に敵の力を見誤った。驕りが過ぎた男の末路があれだと思うと憐れで仕方ないよ」
「だが勇者よ。西部を取り返さないと奴らは勢い付いて攻め込んでくるぞ」
「どうだろうねえ。新しい玩具を手に入れてはしゃいでいるのは良いが、急な領土拡大は危険を伴うからな。すぐにどうこう出来るとは思えない。それよりもそろそろ東部が陥落する。そうすれば一気に攻め入る事が出来るぞ」
「それは良いのだが……このままでは西部より王国が攻撃を受ける可能性が」
「グレートウォールがあるから大丈夫だろ。元より西部は辺境の地だから捨て置いていい。どーせ大した資源もないしな。それより魔界の東部は資源が豊富にある土地だ。取れるとでかいし、何より奴らの武器を封じる事が出来る」
「武器?」
「ああ。これだよ」
そう言って、勇者は手に持つ物体から布を外した。
そこには――ガリルがかつて作成した物と類似したフォルムの銃があった。
「それは……あの武器職人の作った奴ではないのか?」
「ああ。どうやら魔王軍はそれを量産させたらしい。馬鹿だよなあ。これは人間が使ってこそ生きる武器なのに」
「……なぜあの時奴を殺しておかなかった!」
「賢者に言えよ。アイツの悪い癖が出て、結果こうなったんだ。だけど王、心配するな。俺はちゃんと対策をしていた」
勇者が邪悪な笑みを浮かべた。
「王よ。敵が銃を使うなら、こっちも使うべきだ。さあ、量産しようぜ。何、使い方も構造も全て分かっている」
イサカの放った一撃を上から見ていたドライゼが興奮しながらバンバンとガリルの肩を叩いた。
「痛いぞ魔王殿」
「悪ぃ悪ぃ。あれはなんだ? あとボーンライダーに持たせた銃も。明らかに一発しか撃ってないのに弾丸の数がエグかったぞ」
ドライゼの目には見えていたが、ボーンライダー達が撃った銃弾もイサカが放った銃弾と大きさは違うが同じだった。銃口から出た瞬間に破裂し、無数の極小弾を撒き散らしていたのだ。
「あれは散弾だ。ただですら命中率に難がある銃を騎乗したまま使うと、実戦投入出来ないレベルで命中率が下がってしまう。それを補う為に、大して狙いを付けなくても当たる銃弾を開発したんだ」
「つまり――弾の中に小さな銃弾を詰め込んで、銃口から出たと同時に破裂させる。すると前方の広い範囲へと弾が飛び散るので、命中率が上がると。痛みやら音やらでちょっとでも集中が途切れると魔法が中断される魔術師相手に撃つには最適な銃だな」
「難点は、弾一発を作成するコストが大きい事と量産の目処が立っていない事、なにより射程が短い点だが……」
「それが騎兵であれば相手に素早く近付く事が出来るから、相殺できる……見事だな。んで、イサカが吹っ飛んだあの化け物みたいな銃はなんだ! あたしあれ欲しい!!」
ドライゼが子供のようにはしゃぎながら、起き上がって銃の点検をしているイサカを見ていた。
「……あれは、失敗作だ」
「あん? なんでだよ。やべーじゃんあの火力」
「見ただろ? ドワーフの超人的な筋力を持ってしても、あれほどの反動が起きるんだ。それに銃身も長すぎて取り回しが悪すぎる。携行兵器としては使い物にならない」
「あたしなら余裕で使えるが? なんなら二丁持てるが?」
胸を張って答えるドライゼにガリルはため息をついた。確かにこの化け物みたいな魔王なら楽々扱えるのかもしれないなとガリルは納得した。
「それは……そうかもしれないな」
「だろ? ガリルよ、お前はまだまだ視点が人間的過ぎる」
「……次回からはそれも考慮しよう。確かに……人間が使う事を前提に考えていたのは認める」
「魔族はさ、少数精鋭なんだ。それぞれに人間とは違う大きな特徴がある。今回は人間に比較的近いアンデッドだったから人間用の銃で良かったが、違う部隊になればまた――違う銃が求められるぞガリル」
その言葉に、ガリルは嬉しそうに笑ったのだった。
「銃には無限の可能性がある。人という制限から外れていいのなら――いくらでも作ってやるさ」
「あーそうだ。ついでによ、あたし専用の銃を作ってくれよ。さっきの奴みたいな、飛びっきりやべえ奴をさ」
「……考えておこう。アイディアはいくつかある」
ガリルがニヤリと笑った。それを見てドライゼは満足げに頷いたのだった。
「楽しみだよ。しかし、これであたしらが西部は取ったも同然だな」
「俺は開発室に戻るぞ。課題が山ほど出来たからな」
こうして大陸西側に広がるローサ丘陵の戦いは魔王軍の大勝利で終わり、王国軍は撤退せざるを得なくなってしまった。
これまで、侵略を進めていた王国軍をここで初めて魔王軍は食い止める事が出来たのだ。更に王国軍の敗退を受けて、大陸西側にあった都市は次々と降伏していき、魔王の領土は一気に拡大したのであった。
後に第一次人魔戦争と呼ばれる戦争が本格的に始まろうとしていた。
☆☆☆
ソルド王国、謁見の間。
「どういう事だ勇者よ!!」
「知らねえよ俺に言われてもさー。あっちは賢者の管轄だし」
激怒する王の前で、耳穴をほじる勇者がやる気無い声で答えた。彼は手に布に包んだ細長い物体を持っている。
「それでは困るのだ! 賢者は何をしておる!」
「あー。あいつ多分再起不能だよ、こっぴどくやられてやんの。ダセえよなあ」
「貴様の仲間だろうが……」
王の言葉に、勇者が眉をひそめた。
「仲間……? おいおい、勘弁してくれ。あんな魔法しか使えないクズが仲間なわけねえだろ。あいつは完全に敵の力を見誤った。驕りが過ぎた男の末路があれだと思うと憐れで仕方ないよ」
「だが勇者よ。西部を取り返さないと奴らは勢い付いて攻め込んでくるぞ」
「どうだろうねえ。新しい玩具を手に入れてはしゃいでいるのは良いが、急な領土拡大は危険を伴うからな。すぐにどうこう出来るとは思えない。それよりもそろそろ東部が陥落する。そうすれば一気に攻め入る事が出来るぞ」
「それは良いのだが……このままでは西部より王国が攻撃を受ける可能性が」
「グレートウォールがあるから大丈夫だろ。元より西部は辺境の地だから捨て置いていい。どーせ大した資源もないしな。それより魔界の東部は資源が豊富にある土地だ。取れるとでかいし、何より奴らの武器を封じる事が出来る」
「武器?」
「ああ。これだよ」
そう言って、勇者は手に持つ物体から布を外した。
そこには――ガリルがかつて作成した物と類似したフォルムの銃があった。
「それは……あの武器職人の作った奴ではないのか?」
「ああ。どうやら魔王軍はそれを量産させたらしい。馬鹿だよなあ。これは人間が使ってこそ生きる武器なのに」
「……なぜあの時奴を殺しておかなかった!」
「賢者に言えよ。アイツの悪い癖が出て、結果こうなったんだ。だけど王、心配するな。俺はちゃんと対策をしていた」
勇者が邪悪な笑みを浮かべた。
「王よ。敵が銃を使うなら、こっちも使うべきだ。さあ、量産しようぜ。何、使い方も構造も全て分かっている」
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