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5:解説をする男
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「……魔王様……前線基地、制圧完了しました。こちらの損害はほぼゼロです……」
ローサ丘陵の頂上に作られた仮説の陣地にいたドライゼへとベネリが報告する。
「アハハ! 凄えな! 何あれ? やばすぎだろ!」
「あの遠距離からの狙撃……制圧能力。規格外です……」
「お前をスカウトして良かったぞガリル!」
上機嫌のドライゼが酒杯を傾けながら、現場指揮官のスケルトンロードから銃の使用感を聞いていたガリルとイサカへと話を振った。
「……やはり、効率が悪いか」
「弾込めがやっぱり課題だね。狙撃精度はそれこそ狙い通りって感じだけど」
しかしドライゼの声が聞こえていないのか二人はブツブツと改善点を挙げあっていた。
「おーいお前ら、あたしを無視すんな」
「ああ、すまない。成果が上がって何よりだ。課題は沢山あるので早速帰って改良型を作成する」
「お、おう。なんつうかもうちょい喜べよ……」
呆れた顔をするドライゼだったが、ガリルは首を振って否定した。
「まだまだ開発途中の武器だからな」
「それは分かるけどよ、あたしに分かりやすく教えてくれよ。今回の戦いで使用した武器とその力についてよ。前の作戦会議の時はぶっちゃけ良く分からんから話し半分だったんだ」
ドライゼはそれを酒のつまみにしようとばかりに酒杯を空け、また酒を注ぎ足した。
「ふむ、まあ確かに説明義務はあるな。まず、スケルトンロード達に持たせたのは試作59号だ」
「付けた名称は【イェーガー2・スナイプカスタム】だね。射程を伸ばす為に銃身を長くして、更に内部に螺旋状の溝を刻む事で回転力を加えて命中精度を上げているんだ」
「ほー。射程距離はどれほどなんだ?」
「今は500メートルぐらいかな?」
「凄いな。だが、それ以上の距離から撃っていたのではないか?」
ドライゼの言う通りで、スケルトンロード達は丘の上とはいえ、前線基地からは500メートル以上離れた位置から狙撃をしていた。
「俺が答えよう。狙撃の命中精度は銃の性能に左右されるが、外的要因によっても大きく変わる。例えば、空気の温度や湿度、風の有無、射角。更に狙撃者の呼吸、心拍、手の震えなども大きく関わってくる」
「なるほど。今日は無風だ。湿度もさして高くないしな。それにそうか……それがアンデッドの利点か」
ドライゼはようやく、なぜスケルトンロードに狙撃させたかを理解した。
「そう。アンデッドは我々生者のように、呼吸もしないし鼓動もない。当然、手の震えもない。よって狙撃手としては最適とも言える」
「更に、アンデッドは命令通りにしか動けないのが弱点の一つなんだけど、逆に言えば必ず命令通りに動く分、その動作は正確でブレが少ない。よって、銃を装備したアンデッド部隊よる制圧能力は……見て分かったろ? 決して怯まない、恐れない、死んでも痛くない。最高の兵士の出来上がりさ」
ガリルとイサカの言葉に、その場の全員が頷いた。武器もさることながら、その運用方法も的確であった事にドライゼは深く満足した。
「素晴らしい……素晴らしいよ。正直、予算と資源を湯水のように使うから、これ失敗したらやべえなあって思っていたが……結果オーライだな! よし、褒美をやろう! 何が欲しい!」
「資源と予算を追加だ。まだまだ改善点はある」
「うん。あとは、開発室に射撃場を併設して欲しいかな?」
「お、おう……うし、じゃあ早速手配する。ベネリ、お前はこのまま【銃死隊】を率いて戦線を維持しろ。賢者が来るって噂もある。油断は決してするな」
「前線基地は……どうしましょう……?」
「破壊しろ。徹底的にな」
「御意」
こうして、ローザ丘陵地帯の戦線はガリル達のおかげで大きく押し返したのだった。
ローサ丘陵の頂上に作られた仮説の陣地にいたドライゼへとベネリが報告する。
「アハハ! 凄えな! 何あれ? やばすぎだろ!」
「あの遠距離からの狙撃……制圧能力。規格外です……」
「お前をスカウトして良かったぞガリル!」
上機嫌のドライゼが酒杯を傾けながら、現場指揮官のスケルトンロードから銃の使用感を聞いていたガリルとイサカへと話を振った。
「……やはり、効率が悪いか」
「弾込めがやっぱり課題だね。狙撃精度はそれこそ狙い通りって感じだけど」
しかしドライゼの声が聞こえていないのか二人はブツブツと改善点を挙げあっていた。
「おーいお前ら、あたしを無視すんな」
「ああ、すまない。成果が上がって何よりだ。課題は沢山あるので早速帰って改良型を作成する」
「お、おう。なんつうかもうちょい喜べよ……」
呆れた顔をするドライゼだったが、ガリルは首を振って否定した。
「まだまだ開発途中の武器だからな」
「それは分かるけどよ、あたしに分かりやすく教えてくれよ。今回の戦いで使用した武器とその力についてよ。前の作戦会議の時はぶっちゃけ良く分からんから話し半分だったんだ」
ドライゼはそれを酒のつまみにしようとばかりに酒杯を空け、また酒を注ぎ足した。
「ふむ、まあ確かに説明義務はあるな。まず、スケルトンロード達に持たせたのは試作59号だ」
「付けた名称は【イェーガー2・スナイプカスタム】だね。射程を伸ばす為に銃身を長くして、更に内部に螺旋状の溝を刻む事で回転力を加えて命中精度を上げているんだ」
「ほー。射程距離はどれほどなんだ?」
「今は500メートルぐらいかな?」
「凄いな。だが、それ以上の距離から撃っていたのではないか?」
ドライゼの言う通りで、スケルトンロード達は丘の上とはいえ、前線基地からは500メートル以上離れた位置から狙撃をしていた。
「俺が答えよう。狙撃の命中精度は銃の性能に左右されるが、外的要因によっても大きく変わる。例えば、空気の温度や湿度、風の有無、射角。更に狙撃者の呼吸、心拍、手の震えなども大きく関わってくる」
「なるほど。今日は無風だ。湿度もさして高くないしな。それにそうか……それがアンデッドの利点か」
ドライゼはようやく、なぜスケルトンロードに狙撃させたかを理解した。
「そう。アンデッドは我々生者のように、呼吸もしないし鼓動もない。当然、手の震えもない。よって狙撃手としては最適とも言える」
「更に、アンデッドは命令通りにしか動けないのが弱点の一つなんだけど、逆に言えば必ず命令通りに動く分、その動作は正確でブレが少ない。よって、銃を装備したアンデッド部隊よる制圧能力は……見て分かったろ? 決して怯まない、恐れない、死んでも痛くない。最高の兵士の出来上がりさ」
ガリルとイサカの言葉に、その場の全員が頷いた。武器もさることながら、その運用方法も的確であった事にドライゼは深く満足した。
「素晴らしい……素晴らしいよ。正直、予算と資源を湯水のように使うから、これ失敗したらやべえなあって思っていたが……結果オーライだな! よし、褒美をやろう! 何が欲しい!」
「資源と予算を追加だ。まだまだ改善点はある」
「うん。あとは、開発室に射撃場を併設して欲しいかな?」
「お、おう……うし、じゃあ早速手配する。ベネリ、お前はこのまま【銃死隊】を率いて戦線を維持しろ。賢者が来るって噂もある。油断は決してするな」
「前線基地は……どうしましょう……?」
「破壊しろ。徹底的にな」
「御意」
こうして、ローザ丘陵地帯の戦線はガリル達のおかげで大きく押し返したのだった。
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