上 下
14 / 15

14話:夜、ベッドにて

しおりを挟む
 
 夜。
 村長の家にある客室のベッドで、エミーリアとミネルヴァが横になっていた。ベッドは二つあるが、なぜかエミーリアは一緒に寝ると言ってきかなかったので、渋々ミネルヴァは了承した。
 
 二人とも薄い生地で出来た寝間着を着ており、さほど広くないベッドなので、密着せざるを得なかった。

「ミネルヴァ様」

 エミーリアがミネルヴァの手を握りながらそう話しかけた。既にランプは消しており、部屋は暗い。まだ外では若い村人が酒を飲んで騒いでおり、その楽しそうな声が微かに聞こえてくる。

「ん? なんだエミーリア」
「結果的に村は救えて、ミネルヴァ様の信仰が増えて良かったなあと思いまして」
「そうだな。アーミスの神力が混ざったのは予想外だが……」
「ふふふ、ミネルヴァ様、気付いていないかもしれませんが、髪、少しだけ伸びていますよ?」
「そうなのか? 自分では分からないな」
「きっと信仰が増えたおかげですよ。それでね、あたし考えたんです。今、この大陸中でこの村と同じような事が起きています。帝国は神への信仰は古き時代の遺産で、全て破壊すべきだと言っていて、あたしにはそれが許せません。だから、ミネルヴァ様と共に大陸各地にある聖地を巡礼して、加護を取り戻すのはどうかって」
「なるほど。私が元々あった神の神力を取り込んで、自分の加護と合わせて授け、信仰を増やすと」
「そうです! そうすれば、いずれ、大陸中の人々がミネルヴァ様を信仰するようになるのです!」

 エミーリアがキラキラとした目でミネルヴァを見つめた。
 ミネルヴァとしては、特に自分の信仰を増やしたいと強くは思っていない。だが、天界の神々から勝手に見放されたこの下界を救うにはそれしかないのかもしれないと、エミーリアの言葉を聞いて思ったのだ。

「私の信仰を増やすのはともかく、今日のようなやり方で人々を救うのは良いかもしれないな」
「でしょ!? じゃあ決まりですね! 聖地を巡り、各地にある神の力を取り込んで、アルティメットミネルヴァ様を完成させてこの世界を支配しましょう!!」
「いや、支配はちょっと……」

 ミネルヴァが顔を逸らせると、彼女の上へと馬乗りになったエミーリアが笑みを浮かべた。

「冗談ですよ……さてと……ミネルヴァ様!!」
「うわああ!!」

 エミーリアが突然、ミネルヴァの豊かな胸へ顔を押し付けてきた。

「柔らかすぎる……ここが天国か……ああ、凄く良い匂い……あたしこれも持って帰るぅ」
「こら、エミーリア、離れるんだ!!」
「絶対に嫌です……」
「匂いを嗅ぐな!」

 赤面しながらバタバタと暴れるミネルヴァとエミーリアのじゃれ合いはそのあと夜遅くまで続いた。

 翌日。

「行ってしまわれるのですか、エミーリア様、ミネルヴァ様」
「ええ。次の聖地が危機に晒されているかもしれません」
「そうですか。どうか良き旅路を……ささやかながら、これは村を救っていただいたお礼です」

 見送りに来た村人達代表として村長がズシリと重い革袋をエミーリアへと渡した。

「これは……金貨ではないですか! いけません。これは村と神殿復興の為に使ってください!」
「良いのです。それらについては元々アーミス様に捧げる為にずっと置いてあった物です。ミネルヴァ様達に使っていただける方が金貨も幸せでしょう」
「そうか……ではありがたく頂くとしよう。さあ、行こうかエミーリア」
「はい! ミネルヴァ様!

 革袋を受け取ったミネルヴァとエミーリアは仲良く手を繋ぎ、アミスラ村の村人達に盛大に見送られながら、次の聖地を目指したのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

乙男女じぇねれーしょん

ムラハチ
青春
 見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。 小説家になろうは現在休止中。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

さくらと遥香

youmery
恋愛
国民的な人気を誇る女性アイドルグループの4期生として活動する、さくらと遥香(=かっきー)。 さくら視点で描かれる、かっきーとの百合恋愛ストーリーです。 ◆あらすじ さくらと遥香は、同じアイドルグループで活動する同期の2人。 さくらは"さくちゃん"、 遥香は名字にちなんで"かっきー"の愛称でメンバーやファンから愛されている。 同期の中で、加入当時から選抜メンバーに選ばれ続けているのはさくらと遥香だけ。 ときに"4期生のダブルエース"とも呼ばれる2人は、お互いに支え合いながら数々の試練を乗り越えてきた。 同期、仲間、戦友、コンビ。 2人の関係を表すにはどんな言葉がふさわしいか。それは2人にしか分からない。 そんな2人の関係に大きな変化が訪れたのは2022年2月、46時間の生配信番組の最中。 イラストを描くのが得意な遥香は、生配信中にメンバー全員の似顔絵を描き上げる企画に挑戦していた。 配信スタジオの一角を使って、休む間も惜しんで似顔絵を描き続ける遥香。 さくらは、眠そうな顔で頑張る遥香の姿を心配そうに見つめていた。 2日目の配信が終わった夜、さくらが遥香の様子を見に行くと誰もいないスタジオで2人きりに。 遥香の力になりたいさくらは、 「私に出来ることがあればなんでも言ってほしい」 と申し出る。 そこで、遥香から目をつむるように言われて待っていると、さくらは唇に柔らかい感触を感じて… ◆章構成と主な展開 ・46時間TV編[完結] (初キス、告白、両想い) ・付き合い始めた2人編[完結] (交際スタート、グループ内での距離感の変化) ・かっきー1st写真集編[完結] (少し大人なキス、肌と肌の触れ合い) ・お泊まり温泉旅行編[完結] (お風呂、もう少し大人な関係へ) ・かっきー2回目のセンター編[完結] (かっきーの誕生日お祝い) ・飛鳥さん卒コン編[完結] (大好きな先輩に2人の関係を伝える) ・さくら1st写真集編[完結] (お風呂で♡♡) ・Wセンター編[不定期更新中] ※女の子同士のキスやハグといった百合要素があります。抵抗のない方だけお楽しみください。

【百合】男装の麗人にして悪役令嬢ですが困ってます

鯨井イルカ
恋愛
 乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった彼女が、日々ヒロインに悩まされる短い話。  ※基本的にコメディですが、百合ものです。  ※かなりの不定期更新になる予定です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

神様のミスで女に転生したようです

結城はる
ファンタジー
 34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。  いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。  目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。  美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい  死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。  気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。  ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。  え……。  神様、私女になってるんですけどーーーー!!!  小説家になろうでも掲載しています。  URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

処理中です...