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14話:夜、ベッドにて
しおりを挟む夜。
村長の家にある客室のベッドで、エミーリアとミネルヴァが横になっていた。ベッドは二つあるが、なぜかエミーリアは一緒に寝ると言ってきかなかったので、渋々ミネルヴァは了承した。
二人とも薄い生地で出来た寝間着を着ており、さほど広くないベッドなので、密着せざるを得なかった。
「ミネルヴァ様」
エミーリアがミネルヴァの手を握りながらそう話しかけた。既にランプは消しており、部屋は暗い。まだ外では若い村人が酒を飲んで騒いでおり、その楽しそうな声が微かに聞こえてくる。
「ん? なんだエミーリア」
「結果的に村は救えて、ミネルヴァ様の信仰が増えて良かったなあと思いまして」
「そうだな。アーミスの神力が混ざったのは予想外だが……」
「ふふふ、ミネルヴァ様、気付いていないかもしれませんが、髪、少しだけ伸びていますよ?」
「そうなのか? 自分では分からないな」
「きっと信仰が増えたおかげですよ。それでね、あたし考えたんです。今、この大陸中でこの村と同じような事が起きています。帝国は神への信仰は古き時代の遺産で、全て破壊すべきだと言っていて、あたしにはそれが許せません。だから、ミネルヴァ様と共に大陸各地にある聖地を巡礼して、加護を取り戻すのはどうかって」
「なるほど。私が元々あった神の神力を取り込んで、自分の加護と合わせて授け、信仰を増やすと」
「そうです! そうすれば、いずれ、大陸中の人々がミネルヴァ様を信仰するようになるのです!」
エミーリアがキラキラとした目でミネルヴァを見つめた。
ミネルヴァとしては、特に自分の信仰を増やしたいと強くは思っていない。だが、天界の神々から勝手に見放されたこの下界を救うにはそれしかないのかもしれないと、エミーリアの言葉を聞いて思ったのだ。
「私の信仰を増やすのはともかく、今日のようなやり方で人々を救うのは良いかもしれないな」
「でしょ!? じゃあ決まりですね! 聖地を巡り、各地にある神の力を取り込んで、アルティメットミネルヴァ様を完成させてこの世界を支配しましょう!!」
「いや、支配はちょっと……」
ミネルヴァが顔を逸らせると、彼女の上へと馬乗りになったエミーリアが笑みを浮かべた。
「冗談ですよ……さてと……ミネルヴァ様!!」
「うわああ!!」
エミーリアが突然、ミネルヴァの豊かな胸へ顔を押し付けてきた。
「柔らかすぎる……ここが天国か……ああ、凄く良い匂い……あたしこれも持って帰るぅ」
「こら、エミーリア、離れるんだ!!」
「絶対に嫌です……」
「匂いを嗅ぐな!」
赤面しながらバタバタと暴れるミネルヴァとエミーリアのじゃれ合いはそのあと夜遅くまで続いた。
翌日。
「行ってしまわれるのですか、エミーリア様、ミネルヴァ様」
「ええ。次の聖地が危機に晒されているかもしれません」
「そうですか。どうか良き旅路を……ささやかながら、これは村を救っていただいたお礼です」
見送りに来た村人達代表として村長がズシリと重い革袋をエミーリアへと渡した。
「これは……金貨ではないですか! いけません。これは村と神殿復興の為に使ってください!」
「良いのです。それらについては元々アーミス様に捧げる為にずっと置いてあった物です。ミネルヴァ様達に使っていただける方が金貨も幸せでしょう」
「そうか……ではありがたく頂くとしよう。さあ、行こうかエミーリア」
「はい! ミネルヴァ様!
革袋を受け取ったミネルヴァとエミーリアは仲良く手を繋ぎ、アミスラ村の村人達に盛大に見送られながら、次の聖地を目指したのだった。
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