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13話:一方的な攻防戦

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「ありえない!! なぜ弓があの距離から届く!!」

 草原の丘の上に陣地を敷いた騎士団の部隊長が唾を飛ばしながら叫ぶ。

「分かりません!! しかもやたら命中率が高い上に鎧を貫通します!!」

 彼の部下が報告を上げるが無視して、眼下を注視する。
 
 騎兵が銃を構えて村へと突撃しようとするが、銃の射程距離に入る前に何十と飛んでくる矢が行く手を阻み、中々近付けなかった。歩兵達は盾を構えて進むものの、矢がいとも簡単に盾や鎧を貫通してくるので、すぐに後ろへと下がってしまう。

「くそ! 大砲を使え!!」

 本来は、攻城戦に使う物で、決してあんなチンケな村に使う物ではないが……部隊長は唇を噛みながら苦渋の決断をした。

「大砲用意……放て!!」

 腹に響く轟音と共に砲弾が発射され、放物線を描き、村へと着弾――するはずだった。
 しかし砲弾は村を覆う不可視の壁に阻まれ、跳ね返えり、牛歩の速度で進む歩兵達の列へと落ちた。
 歩兵達が爆発によって吹き飛ばされた。

「ありえない!! なんだあれは!!」
「分かりません!! 大砲が効きません!」
「ええいこうなったら俺自ら斬り込むぞ!! 貴様らも続け!!」

 そう言って部隊長は馬に乗って、ロングソードを掲げて走り出した。

「たかが狩人の矢を恐れるでない!! 我に続け勇猛なる帝国騎士団の猛者た――うわああ!!」

 銃音が響き、馬の足下の地面へと命中。驚いた馬が跳ね上がり、部隊長が背中から飛ばされてしまった。

 ありえない。どこから撃ったか分からないが、そんな射程距離の銃は帝国だって持っていない。そんな事を考えてながら部隊長は地面へと叩き付けられた。そして顔を上げると――眼前に何本もの矢が迫っていた。


「や、止め――」


 結局帝国騎士団はこの日、犠牲者を多数出したものの、ついぞアミスラ村を攻める事が出来ず退却していったのだった。

「うおおおおおお!! やったぞ!!」
「見たかよあの帝国騎士団が手も足も出なかったぜ!!」
「砲弾が飛んできた時はひやひやしたが……流石はミネルヴァ様の加護」
「うむ……」

 正直、ミネルヴァにも、なぜここまで出来たのか分からなかった。アーミスの加護があったとはいえ、矢があれほど遠くにしかもあの威力を持って飛ぶなど本来ありえない。更にいくら都市守護の神である自分の加護を得た村だからといって、砲弾をああやって弾くのはあまりにおかしい。

「神の加護って、本来天界から人へと授けられる物ですよね? それがこの場にいるミネルヴァ様から直接授けられたせいで、力が強化された……って仮説を立てたんですけど……どう思います?」

 エミーリアの言う通りかもしれないとミネルヴァは思った。だが、結局のところ何も分からなかった。

「まあ……村も守れたし、帝国騎士団もここまでやられたらもう来ないだろう」
「来たとしても何度でも追い返してやりますよ! その為にもミネルヴァ様への祈りは欠かしませんとも!」

 すっかり元気になった村長が力こぶを作りながらそう宣言した。

「我が村は未来永劫にミネルヴァ様に祈りを捧げる事を誓い、アーミス様とミネルヴァ様の神殿を守り続けましょう!」
「ああ……よろしく頼む。祈りがある限り私の加護は続くだろう」
「では……お前ら! 宴の準備じゃ! 聖女エミーリア様と我らが神ミネルヴァ様をもてなすのだ!!」

 こうしてミネルヴァとエミーリアはその日、夜遅くまでアミスラ村の祝祭と称した宴に参加したのであった。
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