13 / 15
13話:一方的な攻防戦
しおりを挟む
「ありえない!! なぜ弓があの距離から届く!!」
草原の丘の上に陣地を敷いた騎士団の部隊長が唾を飛ばしながら叫ぶ。
「分かりません!! しかもやたら命中率が高い上に鎧を貫通します!!」
彼の部下が報告を上げるが無視して、眼下を注視する。
騎兵が銃を構えて村へと突撃しようとするが、銃の射程距離に入る前に何十と飛んでくる矢が行く手を阻み、中々近付けなかった。歩兵達は盾を構えて進むものの、矢がいとも簡単に盾や鎧を貫通してくるので、すぐに後ろへと下がってしまう。
「くそ! 大砲を使え!!」
本来は、攻城戦に使う物で、決してあんなチンケな村に使う物ではないが……部隊長は唇を噛みながら苦渋の決断をした。
「大砲用意……放て!!」
腹に響く轟音と共に砲弾が発射され、放物線を描き、村へと着弾――するはずだった。
しかし砲弾は村を覆う不可視の壁に阻まれ、跳ね返えり、牛歩の速度で進む歩兵達の列へと落ちた。
歩兵達が爆発によって吹き飛ばされた。
「ありえない!! なんだあれは!!」
「分かりません!! 大砲が効きません!」
「ええいこうなったら俺自ら斬り込むぞ!! 貴様らも続け!!」
そう言って部隊長は馬に乗って、ロングソードを掲げて走り出した。
「たかが狩人の矢を恐れるでない!! 我に続け勇猛なる帝国騎士団の猛者た――うわああ!!」
銃音が響き、馬の足下の地面へと命中。驚いた馬が跳ね上がり、部隊長が背中から飛ばされてしまった。
ありえない。どこから撃ったか分からないが、そんな射程距離の銃は帝国だって持っていない。そんな事を考えてながら部隊長は地面へと叩き付けられた。そして顔を上げると――眼前に何本もの矢が迫っていた。
「や、止め――」
結局帝国騎士団はこの日、犠牲者を多数出したものの、ついぞアミスラ村を攻める事が出来ず退却していったのだった。
「うおおおおおお!! やったぞ!!」
「見たかよあの帝国騎士団が手も足も出なかったぜ!!」
「砲弾が飛んできた時はひやひやしたが……流石はミネルヴァ様の加護」
「うむ……」
正直、ミネルヴァにも、なぜここまで出来たのか分からなかった。アーミスの加護があったとはいえ、矢があれほど遠くにしかもあの威力を持って飛ぶなど本来ありえない。更にいくら都市守護の神である自分の加護を得た村だからといって、砲弾をああやって弾くのはあまりにおかしい。
「神の加護って、本来天界から人へと授けられる物ですよね? それがこの場にいるミネルヴァ様から直接授けられたせいで、力が強化された……って仮説を立てたんですけど……どう思います?」
エミーリアの言う通りかもしれないとミネルヴァは思った。だが、結局のところ何も分からなかった。
「まあ……村も守れたし、帝国騎士団もここまでやられたらもう来ないだろう」
「来たとしても何度でも追い返してやりますよ! その為にもミネルヴァ様への祈りは欠かしませんとも!」
すっかり元気になった村長が力こぶを作りながらそう宣言した。
「我が村は未来永劫にミネルヴァ様に祈りを捧げる事を誓い、アーミス様とミネルヴァ様の神殿を守り続けましょう!」
「ああ……よろしく頼む。祈りがある限り私の加護は続くだろう」
「では……お前ら! 宴の準備じゃ! 聖女エミーリア様と我らが神ミネルヴァ様をもてなすのだ!!」
こうしてミネルヴァとエミーリアはその日、夜遅くまでアミスラ村の祝祭と称した宴に参加したのであった。
草原の丘の上に陣地を敷いた騎士団の部隊長が唾を飛ばしながら叫ぶ。
「分かりません!! しかもやたら命中率が高い上に鎧を貫通します!!」
彼の部下が報告を上げるが無視して、眼下を注視する。
騎兵が銃を構えて村へと突撃しようとするが、銃の射程距離に入る前に何十と飛んでくる矢が行く手を阻み、中々近付けなかった。歩兵達は盾を構えて進むものの、矢がいとも簡単に盾や鎧を貫通してくるので、すぐに後ろへと下がってしまう。
「くそ! 大砲を使え!!」
本来は、攻城戦に使う物で、決してあんなチンケな村に使う物ではないが……部隊長は唇を噛みながら苦渋の決断をした。
「大砲用意……放て!!」
腹に響く轟音と共に砲弾が発射され、放物線を描き、村へと着弾――するはずだった。
しかし砲弾は村を覆う不可視の壁に阻まれ、跳ね返えり、牛歩の速度で進む歩兵達の列へと落ちた。
歩兵達が爆発によって吹き飛ばされた。
「ありえない!! なんだあれは!!」
「分かりません!! 大砲が効きません!」
「ええいこうなったら俺自ら斬り込むぞ!! 貴様らも続け!!」
そう言って部隊長は馬に乗って、ロングソードを掲げて走り出した。
「たかが狩人の矢を恐れるでない!! 我に続け勇猛なる帝国騎士団の猛者た――うわああ!!」
銃音が響き、馬の足下の地面へと命中。驚いた馬が跳ね上がり、部隊長が背中から飛ばされてしまった。
ありえない。どこから撃ったか分からないが、そんな射程距離の銃は帝国だって持っていない。そんな事を考えてながら部隊長は地面へと叩き付けられた。そして顔を上げると――眼前に何本もの矢が迫っていた。
「や、止め――」
結局帝国騎士団はこの日、犠牲者を多数出したものの、ついぞアミスラ村を攻める事が出来ず退却していったのだった。
「うおおおおおお!! やったぞ!!」
「見たかよあの帝国騎士団が手も足も出なかったぜ!!」
「砲弾が飛んできた時はひやひやしたが……流石はミネルヴァ様の加護」
「うむ……」
正直、ミネルヴァにも、なぜここまで出来たのか分からなかった。アーミスの加護があったとはいえ、矢があれほど遠くにしかもあの威力を持って飛ぶなど本来ありえない。更にいくら都市守護の神である自分の加護を得た村だからといって、砲弾をああやって弾くのはあまりにおかしい。
「神の加護って、本来天界から人へと授けられる物ですよね? それがこの場にいるミネルヴァ様から直接授けられたせいで、力が強化された……って仮説を立てたんですけど……どう思います?」
エミーリアの言う通りかもしれないとミネルヴァは思った。だが、結局のところ何も分からなかった。
「まあ……村も守れたし、帝国騎士団もここまでやられたらもう来ないだろう」
「来たとしても何度でも追い返してやりますよ! その為にもミネルヴァ様への祈りは欠かしませんとも!」
すっかり元気になった村長が力こぶを作りながらそう宣言した。
「我が村は未来永劫にミネルヴァ様に祈りを捧げる事を誓い、アーミス様とミネルヴァ様の神殿を守り続けましょう!」
「ああ……よろしく頼む。祈りがある限り私の加護は続くだろう」
「では……お前ら! 宴の準備じゃ! 聖女エミーリア様と我らが神ミネルヴァ様をもてなすのだ!!」
こうしてミネルヴァとエミーリアはその日、夜遅くまでアミスラ村の祝祭と称した宴に参加したのであった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃった件
楠富 つかさ
恋愛
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃうし、なんなら恋人にもなるし、果てには彼女のために職場まで変える。まぁ、愛の力って偉大だよね。
※この物語はフィクションであり実在の地名は登場しますが、人物・団体とは関係ありません。
傾国の魔女、王子の教育係になる ~愚王に仕立てようと育てたらなぜか有能になったんだけど、どうして……
虎戸リア
恋愛
千年の時を生きる魔女(国を亡ぼすのが趣味)のイルナが、次に目をつけたのは北の小国であるボーウィンだった。彼女は使い魔である鴉のザザと共に巧みに経歴を詐称し王家に取り入れると、ジーク王子の教育係になった。
まだ幼いジークは次期国王候補であり、今から堕落させて愚王に仕立てあげれば、きっと国が面白いように滅びていくだろうとアルナは期待を胸に、ジークや周囲に自分が魔女とバレないようにしつつ〝反教育〟を始めたのだが――
さくらと遥香
youmery
恋愛
国民的な人気を誇る女性アイドルグループの4期生として活動する、さくらと遥香(=かっきー)。
さくら視点で描かれる、かっきーとの百合恋愛ストーリーです。
◆あらすじ
さくらと遥香は、同じアイドルグループで活動する同期の2人。
さくらは"さくちゃん"、
遥香は名字にちなんで"かっきー"の愛称でメンバーやファンから愛されている。
同期の中で、加入当時から選抜メンバーに選ばれ続けているのはさくらと遥香だけ。
ときに"4期生のダブルエース"とも呼ばれる2人は、お互いに支え合いながら数々の試練を乗り越えてきた。
同期、仲間、戦友、コンビ。
2人の関係を表すにはどんな言葉がふさわしいか。それは2人にしか分からない。
そんな2人の関係に大きな変化が訪れたのは2022年2月、46時間の生配信番組の最中。
イラストを描くのが得意な遥香は、生配信中にメンバー全員の似顔絵を描き上げる企画に挑戦していた。
配信スタジオの一角を使って、休む間も惜しんで似顔絵を描き続ける遥香。
さくらは、眠そうな顔で頑張る遥香の姿を心配そうに見つめていた。
2日目の配信が終わった夜、さくらが遥香の様子を見に行くと誰もいないスタジオで2人きりに。
遥香の力になりたいさくらは、
「私に出来ることがあればなんでも言ってほしい」
と申し出る。
そこで、遥香から目をつむるように言われて待っていると、さくらは唇に柔らかい感触を感じて…
◆章構成と主な展開
・46時間TV編[完結]
(初キス、告白、両想い)
・付き合い始めた2人編[完結]
(交際スタート、グループ内での距離感の変化)
・かっきー1st写真集編[完結]
(少し大人なキス、肌と肌の触れ合い)
・お泊まり温泉旅行編[完結]
(お風呂、もう少し大人な関係へ)
・かっきー2回目のセンター編[完結]
(かっきーの誕生日お祝い)
・飛鳥さん卒コン編[完結]
(大好きな先輩に2人の関係を伝える)
・さくら1st写真集編[完結]
(お風呂で♡♡)
・Wセンター編[完結]
(支え合う2人)
※女の子同士のキスやハグといった百合要素があります。抵抗のない方だけお楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる