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10話:合祀

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「えっと……つまり、ここを守りに来た聖女様と……護衛?」
「そういうことです」
「あの凶暴な聖獣を一瞬で手懐けられたのは……?」

 銀熊のカリストは、帝国軍が再び戻ってこないかを見にいかせていた。

 村の狩人が不思議そうな顔でそう指示を出したミネルヴァを見つめて思わずそう呟いてしまったのだ。
 ただの護衛と言ってもおそらく納得しないだろうと考え、エミーリアは事実を少しだけ変えて伝える事にした。

「彼女は……アーミス様の姉であるミネルヴァ様の化身なのです! つまりアーミス様の聖獣であれば当然ミネルヴァ様の事は周知であり、服従するのは当然! 何もおかしくありません!」
「なんとかのミネルヴァ様の化身か! まさか……我らを罰する為に……?」
「あ、いや、そうではなくて」

 否定しようとしたミネルヴァの言葉を遮ってエミーリアが一歩狩人達へと近付いた。

「そうではありません! ですが、既にアミスラ村はアーミス様の加護が薄れ、更に信仰も無くなったと聞きます」
「あ、ああ。イコンと像は昔から習慣で特に何も思わずそのままにしているが……正直きちんと祈った事はない」

 ちらちらと、怒られないかな? といった表情でミネルヴァを見つめる狩人達。

「正直に話そう。例え君らがどれだけ一生懸命祈りを捧げても……もはやそれはアーミスには届かない。そして仮に届いたとしても……加護を授けられる事はないだろう」
「……そうですか」
「聖女の私が言うのもなんですが……加護は、あくまで神から授かり物。あれば少し足しになるが、本来無くても人は生きられる」
「そうだな……俺達も加護が無くなって最初は焦ったけど、練習したら元通りだ。まあ前ほど獣は捕れなくなったが……生活は出来る」

 狩人達が頷きあっていた。それを見て、エミーリアはさてどうしたものかと考えていた。

 出来れば、彼らには元通り信仰を取り戻して欲しいと思う反面、見返り無しに信仰を強要するのは難しい事だとエミーリアは分かっていたし、そもそも強要された信仰なんてなんの意味もない。

「ふむ……しかし、神殿内部はまだアーミスの神力が満ちているな」

 ミネルヴァは神殿内部へと入っていき、奥の祭壇にあるアーミス像とその下に飾られているとある物を見付けた。

「それは……アーミス様の弓?」
「間違いない。あいつ、無くしたとか言っていたが……下界に落としていたのか」
「それは、古に我々の始祖に授けたという伝承が残っています。昔はこの弓に狩りの成就を祈ったみたいですが……」

 狩人がそう説明した。

「なるほど……ミネルヴァ様。……は可能性ですか?」
「ん? ああ、可能だと思うが……しかし」

 合祀ごうしとは、簡単に言えば、二つの神を一緒にする事だ。一回の祈りで二柱分に祈れると人が勝手に始めた事だが……。

「じゃあ、ここをアーミス様との神殿にしましょう!! これだけ神力が残っていれば、ミネルヴァ様も加護を与えられるのでは?」
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