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2話:廃教会
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ミネルヴァが意識を取りもどしたのは、古い、廃墟と化した教会の中だった。天井も崩れているが、曇っているせいで昼なのに妙に薄暗い。
「……アーミス……なぜ」
分かっている。自分が愚かにも妹を信じたせいで、こんな事になったのだと。祭壇の割れた鏡を覗けば、あれだけ長かった髪が、肩の上までしかない。
金色の瞳に、凜々しい顔付きも相まって普段であればより男っぽい雰囲気になるのだろうが、その表情はなぜかさっぱりとしていた。
「これももう着なくていいのは清々するな」
天界で着る事を強要されていた露出の多いこのローブももう不要だ。
前々から感じていた事だ。自分のような男性不信の処女神にあの色恋と情事がドロドロと絡み合う天界は合わない。
「せっかく下界に来たのだ。ゆっくり旅でもしようか」
髪の毛がある程度残されたのはアーミスの慈悲だろう。多少ならば神力も使えるようだ。これでも自分は戦と都市守護の神なのだ、身を守る事ぐらいは出来るし人間相手に後れを取る事はないだろう。
「ミネルヴァ! だから僕は反対したんだよ! 言ったろ! あのクソ妹の言う事なんて信じるなって!」
空から聞き覚えのある少年の声が聞こえ、ミネルヴァが見上げると、1匹の白いミミズクが降りてきてミネルヴァの右肩に止まった。
「グラウ! どうしてここに!」
それはミネルヴァの使い魔であるミミズク――グラウだった。
「どうもこうも……僕はミネルヴァの使い魔だからね!」
「だが、私は……もう」
神ではない。そうミネルヴァが言いかけたのをグラウは遮った。
「それだけ髪があれば神でなくたって十分だよ! でもその服は流石に下界では目立つなあ。戦の女神なんだからやっぱりこう全身フルアーマーで……」
「流石に怪しいと思うが……」
「じゃあ、あれが良いんじゃない? かっこいいし」
ミネルヴァは言われるままにグラウが器用に翼で指し示した先、祭壇に建てられた女神の像を見上げた。その像は、男装の麗人のような姿で貴族服の上から白銀の胸甲を付けており、右手にはサーベルを、左手にはなぜかマスケット銃を握っていた。
文字を読むにどうもこれは自分の像らしい事に気付いたミネルヴァ。こんな格好をした覚えも、銃を使った記憶もないのだが、まあ下界ではそう伝わっているのかもしれないと気を取り直し、その姿を自分で復元した。
「うんうん、短い髪も似合っててグッドだよ」
「ありがとうグラウ」
「どういたしまして。さてと……うん?」
グラウがその廃教会の入口へと顔を向けた。
「はあ……はあ……ほんとしつこい!」
ミネルヴァもそちらに視線を向けると、そこに一人の少女が飛び込んできた。長い金色の髪に碧玉のような色の瞳。白に金の刺繍が入ったワンピースに編み紐のブーツを履いた少女はしかし、全身傷だらけであり、額からも血を流していた。
満身創痍といった感じだが、しかしその少女は可愛らしい顔でキッと入口の方を睨んでいる。
「大変だ! あの子凄い怪我をしている!」
「……アーミス……なぜ」
分かっている。自分が愚かにも妹を信じたせいで、こんな事になったのだと。祭壇の割れた鏡を覗けば、あれだけ長かった髪が、肩の上までしかない。
金色の瞳に、凜々しい顔付きも相まって普段であればより男っぽい雰囲気になるのだろうが、その表情はなぜかさっぱりとしていた。
「これももう着なくていいのは清々するな」
天界で着る事を強要されていた露出の多いこのローブももう不要だ。
前々から感じていた事だ。自分のような男性不信の処女神にあの色恋と情事がドロドロと絡み合う天界は合わない。
「せっかく下界に来たのだ。ゆっくり旅でもしようか」
髪の毛がある程度残されたのはアーミスの慈悲だろう。多少ならば神力も使えるようだ。これでも自分は戦と都市守護の神なのだ、身を守る事ぐらいは出来るし人間相手に後れを取る事はないだろう。
「ミネルヴァ! だから僕は反対したんだよ! 言ったろ! あのクソ妹の言う事なんて信じるなって!」
空から聞き覚えのある少年の声が聞こえ、ミネルヴァが見上げると、1匹の白いミミズクが降りてきてミネルヴァの右肩に止まった。
「グラウ! どうしてここに!」
それはミネルヴァの使い魔であるミミズク――グラウだった。
「どうもこうも……僕はミネルヴァの使い魔だからね!」
「だが、私は……もう」
神ではない。そうミネルヴァが言いかけたのをグラウは遮った。
「それだけ髪があれば神でなくたって十分だよ! でもその服は流石に下界では目立つなあ。戦の女神なんだからやっぱりこう全身フルアーマーで……」
「流石に怪しいと思うが……」
「じゃあ、あれが良いんじゃない? かっこいいし」
ミネルヴァは言われるままにグラウが器用に翼で指し示した先、祭壇に建てられた女神の像を見上げた。その像は、男装の麗人のような姿で貴族服の上から白銀の胸甲を付けており、右手にはサーベルを、左手にはなぜかマスケット銃を握っていた。
文字を読むにどうもこれは自分の像らしい事に気付いたミネルヴァ。こんな格好をした覚えも、銃を使った記憶もないのだが、まあ下界ではそう伝わっているのかもしれないと気を取り直し、その姿を自分で復元した。
「うんうん、短い髪も似合っててグッドだよ」
「ありがとうグラウ」
「どういたしまして。さてと……うん?」
グラウがその廃教会の入口へと顔を向けた。
「はあ……はあ……ほんとしつこい!」
ミネルヴァもそちらに視線を向けると、そこに一人の少女が飛び込んできた。長い金色の髪に碧玉のような色の瞳。白に金の刺繍が入ったワンピースに編み紐のブーツを履いた少女はしかし、全身傷だらけであり、額からも血を流していた。
満身創痍といった感じだが、しかしその少女は可愛らしい顔でキッと入口の方を睨んでいる。
「大変だ! あの子凄い怪我をしている!」
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