4 / 11
4:ジークの気持ち
しおりを挟むジークはすっかりイルナに心を開いていた。彼女が、ジークが苦手で嫌いだった勉強から解放してくれたからだ。
たったそれだけなのに、ジークは随分と明るくなった。勉強しなければ良い王にはなれない。そういう重圧が、幼い彼の心を蝕んでいたのだ。
勉強と礼儀作法。そして剣の訓練。どれも、それだけを見れば嫌いじゃなかった。だけども、良い王にならなければならないという両親や周りからの視線が途端にそれらを怪物に仕立て上げていた。
それが苦しかった。
それが辛かった。
だから勉強にも身が入らず、訓練も疎かになった。
だけど、今は違う。
〝そんな物はくだらない。貴方は貴方のままでいれば、立派な王になる〟とイルナは力強く言ってくれた。
それで、どれだけ救われたか。
更に彼女は、教科書や図書館にあるような本には決して載っていない知識を沢山持っていた。それらは、全てジークの知識として蓄えられていった。
ジークはもはや全幅の信頼をイルナに置いていた。
そして淡いながらも……彼女に恋心を抱いてしまったのも致し方ないことだった。
「今日は、鍛冶師のマルクさんのところに行ってみようかな!」
イルナには好きに遊んで良いと言われたので、ジークはイルナの魔法を使ってこっそり城を抜け出すと城下町へと出掛けた。
勿論、実はイルナの監視である一羽のスズメが常に近くにいて、危険がないか監視しているのだが、彼は当然気付いていない。
変装も何もしていないが、元々あまり衆前に出ていないジークの正体に気付く者はほとんどいない。精々、どこかの貴族か大商人の子息としか思われないだろう。
そんなジークの最近のお気に入りの場所は、王国一と謳われる鍛冶師のマルクの営む工房だった。
マルクはしかし、職人にありがちな頑固さがあり、弟子も取らず独りでひたすら鉄を打っていた。
「こんにちは!」
「またお前か。火傷しないうちに帰れ」
鉄を打つマルクが振り向きすらせず、ぶっきらぼうに答えた。昔のジークならそれだけで怖じ気づいていただろうか、慣れたものとばかりにジークが周囲を興味深そうに見渡した。
剣やら鎧やらが無造作に置かれている中、見慣れない物があった。
「ねえねえこれ何?」
ジークが脇に置いてあった、細長い鉄で出来て筒を見つけて声を上げた。
「ああん? ああ、それか。セベールんとこの馬鹿息子の特注品だよ。西大陸の最新鋭の武器だとか。ったく馬鹿みたいな精度を求めやがって……」
「へえ……これが武器になるんだ」
ジークにはこの筒がどう武器になるのか見当も付かなかった。この筒で殴るのだろうか?
「興味あるなら、本人に聞くといい。丁度今、大通りの酒場にいるぞ。まあ、目立ち過ぎて色んな奴に狙われているらしいから、近付けないかもしれないがな。」
「へえ……行ってみようかな」
セベール家といえば、この国でも有数の商人である。面白い話を色々聞けるかもしれない。
普通の商人なら見知らぬ子供に特注品の話なんて聞かれてもするわけがないのだが、ジークはまだまだ世間知らずであり、そして無邪気であった。
「また来まーす」
「もう来んな」
ジークが裏通りから大通りへと抜けていく。彼は城下町の地理を大体把握するまでに至っていた。
「あれかな?」
大通りに面した酒場の前が何やら騒ぎになっている。
「衛兵を連れて来い! あと医者だ!! すぐに!!」
「なんだろう?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました
まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」
あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。
ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。
それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。
するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。
好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。
二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる