12 / 13
12話:本気を出すみたいです
しおりを挟むレンザは私が厄介事に巻き込まれないように嘘を付いてくれていたようだ。なんて義理堅い男だ。さてしかしどうしたもんか……。
「……私としては、問題はないかと思うのですが、ベアトリス様のご意向を一応お聞きしておこうかと思いまして」
シリウスの言葉に私は安堵しながら頷いた。ま、問題ない事は私が一番良く知っているから答えは一つだ。
「な、ならば問題なかろう。かの剣士はかなり強い。剣筋も見事だった。明日の天覧試合、楽しみだぞ」
私はそれで話は終わりだとばかりに切り上げて部屋に戻ろうとしたが、そこでシリウスの雰囲気が変わった。……あれ?
「……どこかで彼の剣術をご覧に?」
あっ。
「先の戦争の時に遠目でな」
ってレンザが言ってた!
「ベアトリス様が褒めるなんてよほどですね……私とどちらが強いと思いますか」
うわーめんどくさい質問。シリウスってこんな負けず嫌いだっけ。
「あー。互角ではないかな? どちらも強い。それで良いじゃないか」
「……良くありません。私も明日の天覧試合出るのですから。帝国の名誉の為にも勝たなければならないと、今改めて心に深く刻みました」
決意をした男の表情を浮かべるシリウス。
あれ、こないだ聞いた時はあくまで形式上やるだけで、本気ではやらないとか何とか言ってなかったっけこの人。
「えっと、まあ、ほどほどで……良いんじゃないかな?」
「……いえ、帝国の剣士の代表として、負けるわけにはいきません! それでは、ちょっと剣を振って参ります。夜分に失礼しました!」
そう言ってシリウスが走って去っていった。
「……なんか火を付けちゃった?」
私は首を傾げながら部屋へと戻った。そこでベルフェがにやにやしながら待ち受けていた。
「あーあ。明日の天覧試合荒れるかもねえ……」
「そういう事言わないの! でも、それで怪我とかしたらどうしよう……」
「癒やしてあげればいいじゃん。膝枕と回復魔法で」
「膝枕の必要性は!?」
「分かってないなあ男心が……」
「どうせ分かってないですよーだ」
私はふてくされて、ベッドへとダイブした。
「はあ……明日、なんか気まずいなあ……」
私はしかし、結局そのまま寝てしまったのだった。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説


女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

邪魔しないので、ほっておいてください。
りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。
お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。
義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。
実の娘よりもかわいがっているぐらいです。
幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。
でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。
階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。
悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。
それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

執着系逆ハー乙女ゲームに転生したみたいだけど強ヒロインなら問題ない、よね?
陽海
恋愛
乙女ゲームのヒロインに転生したと気が付いたローズ・アメリア。
この乙女ゲームは攻略対象たちの執着がすごい逆ハーレムものの乙女ゲームだったはず。だけど肝心の執着の度合いが分からない。
執着逆ハーから身を守るために剣術や魔法を学ぶことにしたローズだったが、乙女ゲーム開始前からどんどん攻略対象たちに会ってしまう。最初こそ普通だけど少しずつ執着の兆しが見え始め......
剣術や魔法も最強、筋トレもする、そんな強ヒロインなら逆ハーにはならないと思っているローズは自分の行動がシナリオを変えてますます執着の度合いを釣り上げていることに気がつかない。
本編完結。マルチエンディング、おまけ話更新中です。
小説家になろう様でも掲載中です。
皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる