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10話:お誘い
しおりを挟む「そうか。そっちのメイドも平気そうだな。よし早くここから離れよう。面倒事はあんたも嫌だろ?」
「うん」
その時、血溜まりの中に倒れていた女性が微かに動いた気がした。
「っ! あの人助かるかも!」
私はその女性に駆け寄り、回復魔法を掛けた。
淡い緑の光がその女性の身体を包む。どうやらその女性はかろうじて生きていたようだ。
私の回復魔法によって傷が塞がると、その女性の呼吸が徐々に安定していった。
それから私は、既に事切れている男性へと祈りを捧げた。確かに彼は狂っていた。だけどもう彼は死んでしまったのだ。
「ビーチェ、あんた聖職者だったのか?」
私の魔法を見たレンザさんが驚いたような表情を浮かべていた。回復魔法などの聖属性魔法は、修行を重ねた聖職者のみが使える魔法であり、その辺りの町娘が気軽に使える物ではないのだ。
それを何気なく使ってしまったのを見られてしまった。
「え? あ! うん!」
怪しまれた?
「そうか。優しいな。あの男まで、ちゃんと浄化させてやったのか」
レンザさんはそう言って私の頭をぽんぽんと叩いてくれた。
「死んだら……関係ないよ」
「ま、下手に放置してアンデッドになられても困るしな」
「うん。じゃあ行こう」
私達は足早にそこを立ち去った。
その後、何事もなく、私達は城門入口へと辿り着いた。
「流石にここまで来たら迷わねえな」
「うん。じゃあ、私はこれで」
私はレンザさんに別れを告げ、踵を返した。ワイルド系剣士。不器用だけど、嫌いじゃなかったぜ……
しかしそんな事を考えていた私の背にレンザさんの声が掛かった。
「ビーチェ、明日の夜は空いているか?」
っ!! 向こうから誘ってきた!?
「俺、明日天覧試合で優勝するからさ。剣持って、会いに行くよ。ほんとは試合の後、女帝やら何やらと晩餐会をしなきゃいけないんだが、俺はそういう堅苦しいのは苦手でな……こっそりそこを抜け出してビーチェの店にいくさ。あんたのシチューとビールのが俺には合う気がするんだ」
レンザさんが頭をポリポリ掻きながら、恥ずかしそうにそう私に告げたのだった。
……いや、うん。
凄く嬉しいし、ちょっと胸がときめく感じもある。
だけど……
その抜け出す予定の晩餐会に私がいるんだよね……
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