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1話:お飾り君主は嫌なんです!
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「何か、私に出来る事はないか? 何でも申せ。私は民の為ならば、どんな事も喜んでやろう」
玉座に座る私の言葉にしかし、仕立ての良い貴族服を着た青年は優しい笑みを浮かべて首を横に振るだけだった。
「ございません、美しきベアトリス様。ベアトリス様は玉座に座っていらっしゃるだけで、全てが正しく進むのです。これまでのように。そしてこれからも」
この青年の名はシリウス・ロスロ。彼はこの国の宰相であり、この城で働く女給仕達や社交界の淑女達そして貴族界の女性達からも絶大な人気があるそうだ。
身体付きは細いながらも剣士としても一流であり、物腰も柔らかく、金髪碧眼の甘いルックスに女性達はメロメロなんだとか。
だけど、私だけは知っている。シリウスはとてつもなく頑固者で、私がどんな甘い声でお願いしようと聞き入れてくれない事を。
「いや、しかしだな。ここに座っているだけというのは……」
「ダメですよベアトリス様。その貴きお姿が玉座から消えた日に……帝国は崩壊するでしょう」
「大袈裟では……」
「いいえ。絶対です」
「そこを何とか」
「ダメです」
「……もうよい」
終始こんな感じだ。
私は渋々自室に戻り、全身鏡を覗いた。そこに映っているのは我ながら言うのもなんだが美しい女性だった。燃えるような真っ赤な髪の上に、小さな王冠。整った顔立ちに、髪と同じ赤い瞳。
白を基調としたシンプルながらも高級感あふれるドレスは、ボディラインを強調していて、実は下品過ぎないか心配しているが家臣達が絶賛するので着ている。
それは間違いなく【紅き女帝】と呼ばれている私だ。だけど昔から私だってこうだった訳じゃない。
帝国の地方領主の一人娘に過ぎなかった私は努力した。民の幸せを願い、圧政を強いていた周辺国や堕落する一方の帝国を何とかしようと、剣術や魔術、経済学や政治を全て努力し身に付けた。
何なら皇子を誘惑して王妃になってでも帝国を動かそうと考え、女としての自分も磨いた。
だけど、とある従者のせいで、私が働かなくても物事が全て上手く進むようにと、有望な人材が次々と私の下に集まってきてしまい、結果、私は何をする事も無く、20歳の時に大陸制覇を達成してしまい君主となってしまった。
「またシリウスに丸め込まれたんだねベアトリス」
声がしたので私が鏡から目を離すと、私がこうなってしまった原因である従者が、私のベッドで寝そべって本を読んでいた。
それは、白黒のメイド服に身を包んだ金髪ショートカットの中性的な顔立ちの従者――ベルフェだった。
「はあ……あいつほんと頑固。でもいないと国は回らないしなあ……」
「諦めなよ~。君臨すれど統治せず。それが一番、怠惰しようよ~」
「私のこれまでの努力が……民を助けたいだけだったのに……」
「まあ、ここにいる限り上がってくる問題は全部シリウス達が解決しちゃうからね~」
「ここにいる限り?」
「……しまった」
「良い事を言ったわねベルフェ! そうよ! 私自らが行けば良いのよ! 民の元へ!」
民を助けたいしついでにラブロマンス……身分を超えた禁断の恋……とかあれば最高! そんな邪な気持ちを持ちつつ私はベルフェを巻き込んで城下町である帝都にカフェを作る事にしたのだった。
玉座に座る私の言葉にしかし、仕立ての良い貴族服を着た青年は優しい笑みを浮かべて首を横に振るだけだった。
「ございません、美しきベアトリス様。ベアトリス様は玉座に座っていらっしゃるだけで、全てが正しく進むのです。これまでのように。そしてこれからも」
この青年の名はシリウス・ロスロ。彼はこの国の宰相であり、この城で働く女給仕達や社交界の淑女達そして貴族界の女性達からも絶大な人気があるそうだ。
身体付きは細いながらも剣士としても一流であり、物腰も柔らかく、金髪碧眼の甘いルックスに女性達はメロメロなんだとか。
だけど、私だけは知っている。シリウスはとてつもなく頑固者で、私がどんな甘い声でお願いしようと聞き入れてくれない事を。
「いや、しかしだな。ここに座っているだけというのは……」
「ダメですよベアトリス様。その貴きお姿が玉座から消えた日に……帝国は崩壊するでしょう」
「大袈裟では……」
「いいえ。絶対です」
「そこを何とか」
「ダメです」
「……もうよい」
終始こんな感じだ。
私は渋々自室に戻り、全身鏡を覗いた。そこに映っているのは我ながら言うのもなんだが美しい女性だった。燃えるような真っ赤な髪の上に、小さな王冠。整った顔立ちに、髪と同じ赤い瞳。
白を基調としたシンプルながらも高級感あふれるドレスは、ボディラインを強調していて、実は下品過ぎないか心配しているが家臣達が絶賛するので着ている。
それは間違いなく【紅き女帝】と呼ばれている私だ。だけど昔から私だってこうだった訳じゃない。
帝国の地方領主の一人娘に過ぎなかった私は努力した。民の幸せを願い、圧政を強いていた周辺国や堕落する一方の帝国を何とかしようと、剣術や魔術、経済学や政治を全て努力し身に付けた。
何なら皇子を誘惑して王妃になってでも帝国を動かそうと考え、女としての自分も磨いた。
だけど、とある従者のせいで、私が働かなくても物事が全て上手く進むようにと、有望な人材が次々と私の下に集まってきてしまい、結果、私は何をする事も無く、20歳の時に大陸制覇を達成してしまい君主となってしまった。
「またシリウスに丸め込まれたんだねベアトリス」
声がしたので私が鏡から目を離すと、私がこうなってしまった原因である従者が、私のベッドで寝そべって本を読んでいた。
それは、白黒のメイド服に身を包んだ金髪ショートカットの中性的な顔立ちの従者――ベルフェだった。
「はあ……あいつほんと頑固。でもいないと国は回らないしなあ……」
「諦めなよ~。君臨すれど統治せず。それが一番、怠惰しようよ~」
「私のこれまでの努力が……民を助けたいだけだったのに……」
「まあ、ここにいる限り上がってくる問題は全部シリウス達が解決しちゃうからね~」
「ここにいる限り?」
「……しまった」
「良い事を言ったわねベルフェ! そうよ! 私自らが行けば良いのよ! 民の元へ!」
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