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「主様ぁ!!」
なんて過去を思い出していると目の前に突然、獣耳を生やした少女が現れ、俺の胸へと飛び込んできた。
「クカ……か」
「うわーんもっとびっくりしてくださいよ主様~せっかくスキルで【次元遮断】までして隠れていたのに!」
狐のような耳に、モフモフの尻尾。なぜか他次元にあった星の民族衣装の一つである旗袍をそのスレンダーな身体に纏っている。それは真っ赤な色に染まっておりで、龍と呼ばれる生き物の金の刺繍が入っていた。
彼女の名はクカ。元の姿から考えれば想定内の姿だが、その衣装は本人の趣味か?
クカは隠密行動や情報収集が得意なので、彼女だけは先行してこの世界に潜入させていたのだが……。
俺は【次元操作】を使えば、かなり広い範囲の生命体を探知出来る。なのにクカには気付かなかった。
何より気になるワードがあった。
「クカ、スキルを使ったと言ったな」
スキルについては他の世界にも似た物はあったが、その世界から離れると無くなってしまう。おそらくその世界特有のルールだからだろう。俺のスキルだけはどうやら例外というか、他次元にいても、この世界にいる扱いになるので消えなかったようだ。
なので、他次元出身のクカがスキルを使うというのは本来ありえないのだ。
「なんかですね、この世界来てしばらくしたらいきなりふっとスキルの知識がですね」
「他次元から来ても適用されるのか……それで、なんてスキルだ?」
「えっとですね【遮断】ってスキルと【毒】ってスキルですね! 毒はともかく【遮断】は便利ですよ~。どうもあらゆる物を遮断出来るっぽいです! 主様の探知に引っかからずにここまで来れましたし! えへへ~」
褒めて~とばかりにスリスリしてくるクカの頭を撫で、俺は思わず笑みを浮かべてしまった。
「まさかお前達にもスキルが発現するとはな……」
ただですら有能な部下が更に強化されるとは、ラッキーだ。世界は本当に俺を排除したいのか疑問だなこれは。
「さて、じゃあエルメアで今後の行動について作戦会議を行う。クカ、収集した情報を教えてくれ」
「はいはーい。あのね、ここからさほど離れていないところに――奴がいました」
クカから殺気が漏れ出す。瞳の瞳孔が縦長になり、血のように赤く染まった。
「ほお……どいつだ」
既に情報共有を済ませている。俺の記憶については部下全員がまるで自分の事のように感じているはずだ。
痛みも悲しみも怒りも全て彼女ら全員が体験しているのだ。
クカもおそらくそいつを見付けた時には、憎くて憎くて殺したくてたまらなかったはずだ。良く自制してこうして帰ってきたものだ。
「――【竜騎士】」
「ならばまずはそいつからだ」
こうして最初の哀れな犠牲者が決まった。
世界の【抑止力】の一人であり、俺の村を燃やした張本人――【竜騎士】だ。
なんて過去を思い出していると目の前に突然、獣耳を生やした少女が現れ、俺の胸へと飛び込んできた。
「クカ……か」
「うわーんもっとびっくりしてくださいよ主様~せっかくスキルで【次元遮断】までして隠れていたのに!」
狐のような耳に、モフモフの尻尾。なぜか他次元にあった星の民族衣装の一つである旗袍をそのスレンダーな身体に纏っている。それは真っ赤な色に染まっておりで、龍と呼ばれる生き物の金の刺繍が入っていた。
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俺は【次元操作】を使えば、かなり広い範囲の生命体を探知出来る。なのにクカには気付かなかった。
何より気になるワードがあった。
「クカ、スキルを使ったと言ったな」
スキルについては他の世界にも似た物はあったが、その世界から離れると無くなってしまう。おそらくその世界特有のルールだからだろう。俺のスキルだけはどうやら例外というか、他次元にいても、この世界にいる扱いになるので消えなかったようだ。
なので、他次元出身のクカがスキルを使うというのは本来ありえないのだ。
「なんかですね、この世界来てしばらくしたらいきなりふっとスキルの知識がですね」
「他次元から来ても適用されるのか……それで、なんてスキルだ?」
「えっとですね【遮断】ってスキルと【毒】ってスキルですね! 毒はともかく【遮断】は便利ですよ~。どうもあらゆる物を遮断出来るっぽいです! 主様の探知に引っかからずにここまで来れましたし! えへへ~」
褒めて~とばかりにスリスリしてくるクカの頭を撫で、俺は思わず笑みを浮かべてしまった。
「まさかお前達にもスキルが発現するとはな……」
ただですら有能な部下が更に強化されるとは、ラッキーだ。世界は本当に俺を排除したいのか疑問だなこれは。
「さて、じゃあエルメアで今後の行動について作戦会議を行う。クカ、収集した情報を教えてくれ」
「はいはーい。あのね、ここからさほど離れていないところに――奴がいました」
クカから殺気が漏れ出す。瞳の瞳孔が縦長になり、血のように赤く染まった。
「ほお……どいつだ」
既に情報共有を済ませている。俺の記憶については部下全員がまるで自分の事のように感じているはずだ。
痛みも悲しみも怒りも全て彼女ら全員が体験しているのだ。
クカもおそらくそいつを見付けた時には、憎くて憎くて殺したくてたまらなかったはずだ。良く自制してこうして帰ってきたものだ。
「――【竜騎士】」
「ならばまずはそいつからだ」
こうして最初の哀れな犠牲者が決まった。
世界の【抑止力】の一人であり、俺の村を燃やした張本人――【竜騎士】だ。
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