転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

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第一章『死の谷』

24話 異世界と学校制

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 転生についての説明を終えると、マイナ先生は半眼でこちらを見ていた。

「つまり、レイスに襲われて傷ついた魂を、天使様が前世の魂で補ったと。それで前世の記憶を一部思い出した?」

「うん、そう」

 わかる範囲の事は全部説明したけど、先生はまだ半信半疑に見える。

「で、前世は異世界の“ガッコウに通うガクセイ”で、17歳だった。ちなみに天使様の3つの願いは、一つ目がイント君を助けた事で、二つ目が馬車の下のリナちゃんを探すための灯り、三つ目があたしを助けるために前世の教科書の召喚したって事?」

「うん、そう」

 マイナ先生は頭をグシャグシャと掻いた。艶のある栗色の髪が乱れて、ジト目で、でもやっぱりかわいい。

「上位聖霊との契約だよ? 一つ目はわかるけど、二つ目と三つ目は何? 助けてもらっておいて何だけど、他にも願いようはあったと思うんだ」

 それは当時は神術がどういうものかわかっていなかったからだ。いや、今もわかっていないけど。

「そうは言われても……」

「聖霊神術士としてまともに使えるのが『灯り』の神術だけ。まぁ、イント君は仙術士でもあるから、神術なんかいらなかったのかもしれないけど……」

 ん?ちょっと違和感がある発言があった。

「え? 僕が仙術士? なんで?」

 思わず聞き返すと、マイナ先生はちょっと呆れた顔で、探るように僕の目を見る。

「馬と同じ速度で長時間走って、身体強化した飛猿を倒して、仙術士の村人を置き去りにする速さで走って、大人でも簡単には振り回せない棍を振り回す。それはイント君が仙術士だからでしょ?」
 
 確かにこちらの世界の人間は凄いなと思う。でも多分、魔物と対抗するためにそう進化したんだろう。

「僕は普通ですよ。僕の家族は人外な気はしますけど」

 妹は試合中気を抜けば消えるし、父上はいつも笑顔で手加減されるし、神術士の義母さんにも勝てたことは一度もない。コンストラクタ家最弱なのが僕である。

「んんん? そっか。イント君はこっちの世界じゃコンストラクタ村とシーゲンの街しかしらないんだっけ? まぁここしか知らないんじゃ仕方ないか」

 よくわからないが、どうやらマイナ先生は納得したらしい。

「その話はまた今度するとして、前の世界の学校だけど、どういう仕組みだったの?」

 先生は学校の話が気になるようだ。まぁ、ちゃんと説明すれば納得してもらえるだろう。そうだ、説明するついでに、こちらの世界の大学について教えてもらおう。

「6歳までの子どもは幼稚園か保育園に預けられてて、6歳から12歳までは小学校、13歳から15歳までは中学校に通うんだ。小中学校までは義務教育っていって、国民全員が教育を受けるの」

 頷きながら聞いていたマイナ先生が、国民全員と言ったあたりで目を剥いた。

「え? 全員? 平民も?」

 やっぱり、こちらの世界は勝手が違うらしい。前世なら「平民も?」という質問は来ないだろう。

「前世には平民とか貴族って仕組みはなかったよ。昔はあったらしいんだけど」

「え? じゃあホントに国民全員? それってお金大丈夫なの? 教師は何人いるの?」

 マイナ先生が早口になっていく。質問も重ねられる。

「あー。お金はだいたい国が負担してくれるんだ。教師はだいたい35人ぐらいを1クラスにしてて、その単位で授業を受けるから……」

 小学生の時は担任と副担任、音楽専門の先生に授業によっては大学生のボランティアさんが入っていたけど、最終的な人数はよくわからない。中学生は科目制だから、先生はもっと多いだろう。首をひねっていると、マイナさんに肩を掴まれた。

「国が? それはすごい。国民全員が9年も教育を受けるって、いったいどんな国になるのかしら!」

 マイナ先生は勘違いをしている。学校は中学校で終わりではない。

「義務教育は9年だけど、その後にほとんどの生徒が高校という学校に3年通うんだ。で、さらにその後は全体の半分ぐらいの生徒が、大学って学校で4年間勉強するんだ」

 僕が喋り終えると、マイナ先生の表情が抜け落ちた。ちょっと怖い。

「ということは、大学まで行ったとすると、合計17年?その頃には22歳?すごいけど、人生の半分を勉強に費やすってどうなってるの? 結婚や子どもはどうしてたの?」

 22歳で人生の半分とか、世界間ギャップだなぁ……。前世の世界でも昔は平均寿命は短かったらしいから、そう感じるのかもしれない。

「いや、国民だいたい80歳ぐらいまでは生きてたし、結婚はその後20歳代から30歳代ぐらいでしてたんじゃないかなぁ……」

「それはすごく長生きね。でも、人間種の発情時期は10歳代中盤だから、きっと子どもの人数が減るんじゃない?」

 発情って……まぁ第二次性徴期というやつか。そのあたりはよくわからない。

「それはあったかも。子どもは少なくなってたらしいし」

 今度はマイナ先生の鼻息が荒くなってきた。興奮した様子もカワイイ。
 
 顔がどんどん近づいてきて焦る。

「すごい、すごいわ」

 マイナ先生は妄想の世界にトリップしてしまった。実際のところ、学校の勉強がどれほど社会に出て役に立つかは謎だ。だが、大学には行ってみたい。

「ところで、こっちの世界って大学はーーー」

 カンカンカンカン!

 マイナ先生にこの世界の大学について教えてもらおうとしたところで、急に見張りの鐘の音が割り込んできた。小物の魔物では鐘は鳴らされないそうなので、何か大物が出たのだろう。

「鎧竜のスケルトンだ! やばいぞ! 群れだ!」

 見張りの声が響いてくる。さっきアブスさんが言っていた魔物だろう。

 遠く谷の奥の方で火柱が上がるのが見えた。ということは、その魔物たちは義母さんたちから逃げてきているに違いない。

 僕はため息を一つついて、稜線に向かった。このやたら重い棍、振り回すと疲れるんだよな。

 飛猿の時もそうだったけど、義母さんたち、いちいち魔物の大移動を引き起こさないで欲しい。
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