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19話 あなたと初めて出会ったあの思い出
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父である剣聖爵、アルバートに連れられてやってきた王族主催のパーティ。
王家所有の会場はとても広く、ファンヌは圧倒された。
好奇心豊かなファンヌは会場を抜け出して……外の数々の草場で彩られた庭園へ足を踏み入れたのだ。
「えぐっ……ひっく……」
探検をしたのはいいものの、あまりに広く、帰り道が分からなかった。
まったく見知らぬ所に1人、7歳であるファンヌは活発な性格でありながら姉的存在であるエリエスにべったりなほどさみしがり屋で怖がりであった。
幾度も進めど庭園から抜け出すことはできない。
ファンヌは疲れてしまい、庭園の通路に座り込んでしまった。
「パパ……ママ……」
「どうしたんだい?」
目をこすっていたファンヌはゆっくりと手をあげる。
そこには金の髪のとっても凜々しい顔立ちをした少年が立っていたからだ。
「もしかして迷子かな?」
「……ん」
「ここは広いからね。今、パーティが開かれているのはあそこかな。おいで……僕が連れてってあげるよ」
ファンヌは泣き止み、その優しげな目に吸い込まれてしまっていた。
少年はファンヌの手を引き、ゆっくりと庭園の中を進んでいく。
「ここ……くわしいのですか?」
使い慣れていない辿々しい敬語を使う。
そんなファンヌの言葉に少年はくすりと笑った。
「うん、庭師に頼んで僕も手を出させてもらっているんだ」
「すごい……」
「まだ大したことはできないけどね」
少年は一つずつ草花の種類、花言葉をファンヌに伝えていて歩いて行く。
少年の教えてくれるような優しげな声にファンヌはずっと耳を開いていた。
ファンヌはなぜこうまで少年は草花について説明しているんだろうと疑問に思っていた。
「この花たちはみんな……君を出迎えてくれていたんだ。……だから怖がらないあげて欲しい」
少年に言われてファンヌは自分が少年に背中に隠れるようにして歩いていることにようやく気付いた。
ファンヌはこの庭園に迷い、草花に恐怖を覚えてしまっていたのだ。
だから少年に助けてもらった時に手を握るだけではなく、草花達から身を守るような格好になってしまった。
「ごめんなさい」
「はは、気にしないでいいよ」
(こんなにも優しくて、かっこいい人……お名前は何ていうのだろう)
ファンヌは前を歩き、手を引いてくれる少年に情愛を頂いてしまう。
顔が熱くなり……ずっと手を引いていて欲しいそんな気にもなってくる。
目的地に到着し、大人達の笑い声が響き渡る。
その中には大好きなファンヌの父の声も混じっていた。
迷った時間は長時間なのに……少年と歩いた時間はほんのわずかであった。
心残りにファンヌは足を止める。
「どうしたの?」
「……」
少年の声にファンヌは応えない。
立ち止まるファンヌに少年は草花の一つを摘み取る。
「はいこれ」
「え」
「この花ルビナスって言うんだ」
紫色の一輪の花。少年はファンヌに手渡した。
「君の黒髪に良く似合っている。とても美しいよ」
とても優しい言葉だった。
少年のその優しい目つきと顔立ちにファンヌの胸が何度も鳴り響く。
父、母、メイドのエリエスには親愛の情はあってもこんなに胸が鳴り響くことはなかった。
ファンヌはぐっと胸を押さえる。
「お名前を!」
「えっ……」
「教えてください!」
少年は少し考え込む。
そして……呟いた。
「……エ……いや、僕はヴェイロン。ヴェイロン・ヒュッセ・セルファード」
「ヴェイロン様……!」
「おお、ファンヌぅ! ここいたかぁ」
「あ、パパ! えっとね、えっとね……この方に助けて頂いたの、アレ?」
そこには先ほど名乗った少年の姿はなかった。
ほんの一瞬のことだ。ファンヌの父に視線を向けた先のことだった。
キョロキョロと当たりを見渡すが何も見つからない。
「ファンヌ、おまえに婚約者が決まったぞ! この国の第一王子、ヴェイロンだ!」
「え……? あの方と婚約できるの……!」
ファンヌの表情がぱぁっと明るくなる。
先ほどの少年とまた会える。
ファンヌはもらったルビナスの花を両手で抱えた。
「今度会えたら……いっぱいお礼言わなくちゃ……」
「ファンヌ! 大丈夫か!?」
「あ……エクセル様」
気が遠くなり意識を失いかけたファンヌは昔を思い出していた。
確かにあの時……金髪の少年は自分のことをヴェイロンと名乗った。
でも……あの優しい目つきは間違いなく第二王子エクセルと同じものだったのだ。
「おまえの話だと聞いていない。俺はファンヌ・タルアートに聞いている」
「兄上はいつだってそうだ……。全てを奪っていく! ファンヌは絶対渡さない。ファンヌは俺、俺達……エストリアの生徒会長なのだから!」
(そう……私は生徒会長。それも紛れもない事実。あの笑顔が誰のものであるのか、証明するため……私はエクセル様を副会長に選んだ。だから……)
「ファンヌ、おまえの意見を聞こう。言え、許可してやる」
「お・こ・と・わ・り・です!」
そんな陽気な言葉にヴェイロンだけじゃない、エクセルもじっとファンヌを見つめるルロワーゼも反応した。
ファンヌ・タルアートは一刺し指を立てて突き付けた。
「魅力的なお話ですがお断りさせて頂きます」
「なぜだ? 俺の陣営に来ればさらに上を目指すこともできる。思うままの生活も可能だ。これ以上はあるまい」
「……わたくしは楽な生活には興味がなく、踏み台を超えて高見を目指すタイプなのです。下に見られたエストリアがセルファートを超える様を見たいのですよ。だからね」
ファンヌはエクセルの腕を掴む。
「エストリア魔法学園生徒会はセルファート魔法学園生徒会に宣戦布告をします。わたくしとエクセル様が……ヴェイロン様を必ず打ち破ります!」
「ああ、その通りだ。……兄上。あなたに勝ってみせる!」
「ほぅ……」
ファンヌとエクセルの強い言葉にヴェイロンは嬉しそうに笑みを浮かべた。
その笑みは新しいおもちゃを手に入れたような愉悦がおおいに含まれた笑みであった。
「いいだろう。俺をがっかりさせるなよ」
こうしてエストリア魔法学院とセルファート魔法学院の最初の対決は終わりをつげたのであった。
このエピソードは生徒会交流会最初の勝負となる。
この後……この4人は幾度となく刃を交えることになるのだ。
そんな中を走り近づいてくる一つの影。
「アヒャヒャヒャヒャヒャ……」
卑しい笑い方でどしどし音を立てて近づいてくる影。
知らない者が見ればその美しさに恍惚な表情を浮かべてしまうだろう。
しかしこの場にいる大半の人間はその人物の顔を見ると顔を引き攣らせる。それは第一王子であってもだ。
「こんなところで何してるんですかぁ! ティーも混ぜてください!」
「ティー様いたんですね……」
「はい! あ、ヴェイロンくん、ダメじゃないですか交流会遅刻したら! ティーのイイトコ見てくれてなかったんですね」
「どうでもいいだろうそんなこと」
「ティーは知っています! ヴェイロンくんは最近ひきこもって何かをやってるって……」
ティートリアは指をつきつけた。
「ヴェイロンくん、さては引きこもりのオタクになったんでしょ! ねっ! 知ってます! キモオタ!」
「ぷっ」
ルノワーゼはたまらず吹き出してしまう。
ティートリアの普段の言動を知らない人間には耐えられなかったのだろう。
この第一王女に物怖じという言葉は存在しない。
王ですらその才覚に畏怖するヴェイロンにこんなことを言えるのは間違いなくこのティートリアだけであった。
「くっ、頭が痛くなる」
頭に手をやるヴェイロンにファンヌは声をかけた。
「ティー様ならそちらの生徒会にあげますよ」
「いらん、そちらで厳重に管理していろ」
こうして最初の交流会はうまく締まらないまま終わることになった。
パーティも無事終え、夜は大人達のみのパーティが始まることとなり、学生達は帰されることとなる。
ファンヌは制服に着替え……セルファート魔法学園を後にする。
「ファンヌ……ちょっといいだろうか」
そう来るとは思っていた。
ファンヌは予測していたように頷く。
同じく制服姿のエクセルがファンヌを呼びつけたのだ。
王家所有の会場はとても広く、ファンヌは圧倒された。
好奇心豊かなファンヌは会場を抜け出して……外の数々の草場で彩られた庭園へ足を踏み入れたのだ。
「えぐっ……ひっく……」
探検をしたのはいいものの、あまりに広く、帰り道が分からなかった。
まったく見知らぬ所に1人、7歳であるファンヌは活発な性格でありながら姉的存在であるエリエスにべったりなほどさみしがり屋で怖がりであった。
幾度も進めど庭園から抜け出すことはできない。
ファンヌは疲れてしまい、庭園の通路に座り込んでしまった。
「パパ……ママ……」
「どうしたんだい?」
目をこすっていたファンヌはゆっくりと手をあげる。
そこには金の髪のとっても凜々しい顔立ちをした少年が立っていたからだ。
「もしかして迷子かな?」
「……ん」
「ここは広いからね。今、パーティが開かれているのはあそこかな。おいで……僕が連れてってあげるよ」
ファンヌは泣き止み、その優しげな目に吸い込まれてしまっていた。
少年はファンヌの手を引き、ゆっくりと庭園の中を進んでいく。
「ここ……くわしいのですか?」
使い慣れていない辿々しい敬語を使う。
そんなファンヌの言葉に少年はくすりと笑った。
「うん、庭師に頼んで僕も手を出させてもらっているんだ」
「すごい……」
「まだ大したことはできないけどね」
少年は一つずつ草花の種類、花言葉をファンヌに伝えていて歩いて行く。
少年の教えてくれるような優しげな声にファンヌはずっと耳を開いていた。
ファンヌはなぜこうまで少年は草花について説明しているんだろうと疑問に思っていた。
「この花たちはみんな……君を出迎えてくれていたんだ。……だから怖がらないあげて欲しい」
少年に言われてファンヌは自分が少年に背中に隠れるようにして歩いていることにようやく気付いた。
ファンヌはこの庭園に迷い、草花に恐怖を覚えてしまっていたのだ。
だから少年に助けてもらった時に手を握るだけではなく、草花達から身を守るような格好になってしまった。
「ごめんなさい」
「はは、気にしないでいいよ」
(こんなにも優しくて、かっこいい人……お名前は何ていうのだろう)
ファンヌは前を歩き、手を引いてくれる少年に情愛を頂いてしまう。
顔が熱くなり……ずっと手を引いていて欲しいそんな気にもなってくる。
目的地に到着し、大人達の笑い声が響き渡る。
その中には大好きなファンヌの父の声も混じっていた。
迷った時間は長時間なのに……少年と歩いた時間はほんのわずかであった。
心残りにファンヌは足を止める。
「どうしたの?」
「……」
少年の声にファンヌは応えない。
立ち止まるファンヌに少年は草花の一つを摘み取る。
「はいこれ」
「え」
「この花ルビナスって言うんだ」
紫色の一輪の花。少年はファンヌに手渡した。
「君の黒髪に良く似合っている。とても美しいよ」
とても優しい言葉だった。
少年のその優しい目つきと顔立ちにファンヌの胸が何度も鳴り響く。
父、母、メイドのエリエスには親愛の情はあってもこんなに胸が鳴り響くことはなかった。
ファンヌはぐっと胸を押さえる。
「お名前を!」
「えっ……」
「教えてください!」
少年は少し考え込む。
そして……呟いた。
「……エ……いや、僕はヴェイロン。ヴェイロン・ヒュッセ・セルファード」
「ヴェイロン様……!」
「おお、ファンヌぅ! ここいたかぁ」
「あ、パパ! えっとね、えっとね……この方に助けて頂いたの、アレ?」
そこには先ほど名乗った少年の姿はなかった。
ほんの一瞬のことだ。ファンヌの父に視線を向けた先のことだった。
キョロキョロと当たりを見渡すが何も見つからない。
「ファンヌ、おまえに婚約者が決まったぞ! この国の第一王子、ヴェイロンだ!」
「え……? あの方と婚約できるの……!」
ファンヌの表情がぱぁっと明るくなる。
先ほどの少年とまた会える。
ファンヌはもらったルビナスの花を両手で抱えた。
「今度会えたら……いっぱいお礼言わなくちゃ……」
「ファンヌ! 大丈夫か!?」
「あ……エクセル様」
気が遠くなり意識を失いかけたファンヌは昔を思い出していた。
確かにあの時……金髪の少年は自分のことをヴェイロンと名乗った。
でも……あの優しい目つきは間違いなく第二王子エクセルと同じものだったのだ。
「おまえの話だと聞いていない。俺はファンヌ・タルアートに聞いている」
「兄上はいつだってそうだ……。全てを奪っていく! ファンヌは絶対渡さない。ファンヌは俺、俺達……エストリアの生徒会長なのだから!」
(そう……私は生徒会長。それも紛れもない事実。あの笑顔が誰のものであるのか、証明するため……私はエクセル様を副会長に選んだ。だから……)
「ファンヌ、おまえの意見を聞こう。言え、許可してやる」
「お・こ・と・わ・り・です!」
そんな陽気な言葉にヴェイロンだけじゃない、エクセルもじっとファンヌを見つめるルロワーゼも反応した。
ファンヌ・タルアートは一刺し指を立てて突き付けた。
「魅力的なお話ですがお断りさせて頂きます」
「なぜだ? 俺の陣営に来ればさらに上を目指すこともできる。思うままの生活も可能だ。これ以上はあるまい」
「……わたくしは楽な生活には興味がなく、踏み台を超えて高見を目指すタイプなのです。下に見られたエストリアがセルファートを超える様を見たいのですよ。だからね」
ファンヌはエクセルの腕を掴む。
「エストリア魔法学園生徒会はセルファート魔法学園生徒会に宣戦布告をします。わたくしとエクセル様が……ヴェイロン様を必ず打ち破ります!」
「ああ、その通りだ。……兄上。あなたに勝ってみせる!」
「ほぅ……」
ファンヌとエクセルの強い言葉にヴェイロンは嬉しそうに笑みを浮かべた。
その笑みは新しいおもちゃを手に入れたような愉悦がおおいに含まれた笑みであった。
「いいだろう。俺をがっかりさせるなよ」
こうしてエストリア魔法学院とセルファート魔法学院の最初の対決は終わりをつげたのであった。
このエピソードは生徒会交流会最初の勝負となる。
この後……この4人は幾度となく刃を交えることになるのだ。
そんな中を走り近づいてくる一つの影。
「アヒャヒャヒャヒャヒャ……」
卑しい笑い方でどしどし音を立てて近づいてくる影。
知らない者が見ればその美しさに恍惚な表情を浮かべてしまうだろう。
しかしこの場にいる大半の人間はその人物の顔を見ると顔を引き攣らせる。それは第一王子であってもだ。
「こんなところで何してるんですかぁ! ティーも混ぜてください!」
「ティー様いたんですね……」
「はい! あ、ヴェイロンくん、ダメじゃないですか交流会遅刻したら! ティーのイイトコ見てくれてなかったんですね」
「どうでもいいだろうそんなこと」
「ティーは知っています! ヴェイロンくんは最近ひきこもって何かをやってるって……」
ティートリアは指をつきつけた。
「ヴェイロンくん、さては引きこもりのオタクになったんでしょ! ねっ! 知ってます! キモオタ!」
「ぷっ」
ルノワーゼはたまらず吹き出してしまう。
ティートリアの普段の言動を知らない人間には耐えられなかったのだろう。
この第一王女に物怖じという言葉は存在しない。
王ですらその才覚に畏怖するヴェイロンにこんなことを言えるのは間違いなくこのティートリアだけであった。
「くっ、頭が痛くなる」
頭に手をやるヴェイロンにファンヌは声をかけた。
「ティー様ならそちらの生徒会にあげますよ」
「いらん、そちらで厳重に管理していろ」
こうして最初の交流会はうまく締まらないまま終わることになった。
パーティも無事終え、夜は大人達のみのパーティが始まることとなり、学生達は帰されることとなる。
ファンヌは制服に着替え……セルファート魔法学園を後にする。
「ファンヌ……ちょっといいだろうか」
そう来るとは思っていた。
ファンヌは予測していたように頷く。
同じく制服姿のエクセルがファンヌを呼びつけたのだ。
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