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エピローグ

159 Last Episode あの花畑で月夜と共に⑫

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「誕生日が終わって、しばらく月夜と会わなかったよね」
「バレンタインデーの準備をしてましたからね」

 あの雪山の星空の下で月夜はバレンタインデーで告白すると言っていた。
 あれから登校も別だったしなぁ。

「九土先輩の家でみんなでチョコ作りをしたんですよ」
「へっ、そうなの?」
「みんなで手作りチョコを作ろうって。ほらっ、料理できるの私と水里ちゃんだけじゃないですか」

 体育祭の時、みんな手作り弁当を持って星矢に食べさせてたけど見るも無惨だったよなぁ。
 完璧超人の九土さんもどうやら料理は不得意のようだ。
 それで料理上手の2人がレクチャーして、月夜は僕のためのチュコを、他は星矢のためにチョコを作ったんだな。

「結局星矢へのプレゼントはどうだったの?」
「ちゃんと受け取ってましたよ。さすがの兄も心がこもったチョコですからね。頭を悩ませていました」

 祖父が倒れた件もあって、星矢のバレンタインデーに関われていないんだよなぁ。
 6人のかわいい女の子に次々と渡されてさぞ大変だっただろう。

「僕は本当に月夜だけでよかったよ」
「本当に私以外に本命はないんですよね?」
「この人生に1度もないよ。月夜だけにもらえればいいさ。去年の義理チョコだって泣いて喜んだんだよ」

 去年の2月はすでに星矢の朝起こしに行く担当になってたからそこそこの交流はあった。
 僕は想いを隠しつつも星矢の妹という扱いで交流してたんだよな。
 一応義理チョコという形で去年も月夜からもらったんだよ。大げさにもらう演技をして、家では心の底からの浮かぶ喜びをかみしめていた。

「だから去年月夜からもらった時、本当に嬉しかったんだよ」
「ああ、惜しいことしたなぁ。あの時は本当に日常のお礼ぐらいしか考えてなかったんです」

 好きな子から義理とはいえチョコをもらうことの嬉しさ。
 そしてその好きな子と結ばれて、こうやって抱きしめている嬉しさ……たまらないね。

「そしてバレンタインデーでの月夜の爆発」
「うっ」

 月夜は思い出して顔を俯ける。
 あの吐き出しは僕の心に届くすごいものだけど、吐く方の人間からしたら恥ずかしいよね。

「私の人生であそこまで乱れたことなかったです」
「月夜って平常時はニコニコしつつも冷静だもんね」
「私がこの1年で相当感情を揺さぶられましたよ。恋も怒りも乱れも全部太陽さんのせいです!」
「ごめんよ、月夜」

 良いも悪いもあるだろう。けどこうやって最後は共にいる。
 だからこそ僕達の関係においてきっと必要だったんだと思う。

「月夜が逃げ出した後は水里さんや世良さん、瓜原さんといたんだよね」
「あの時は全力であてもなく走って、悲しさと怒りと恐れで動けなくなって、道に座り込んじゃいました。そこを水里ちゃんに見つけられて」

 全力で走る月夜を追いかけるのは大変だっただろう。この子って学年トップクラスの足の速さらしいし。

「水里ちゃんが海ちゃんや木乃莉を呼んでくれたんです」
「あの2人にも世話になったね」
「本当に大親友です。夜の12時まわってたのにすぐ来てくれて励ましてくれました」
「その後はどうしたの? 時間的にファミレスとかもいけないでしょ?」
「コンビニでたくさんお菓子買って水里ちゃんの家でパーティしてました」
「意外に楽しそうだな」

 なんとなく内容は聞きたくない。女子4人が集まって言うことなんて……僕への愚痴がほとんどな気がするし。

「後でお兄ちゃんも来ましたけど、朝からバイトがあるからってすぐ帰っていきました。あの時太陽さんと話してたんですよね」

 月夜が水里さんといる時、僕は星矢とずっと話してたっけ。こっちは2人だから穏やかなもんだよ。

「木乃莉は浮気だ浮気って連呼するから心配になりましよ」
「あの子マジで一回引っ叩いてみたいな」

 男揃うとそっちの方向に話を持って行くやつ何とかならないのかな。
 月夜は話を続ける。

「あの時、お兄ちゃんが言ったんですよ。【太陽さんが私と話したい】って」
「うん」
「それで聞くんです。【おまえは好きな男が自分の想像通りじゃなきゃ捨てる女か?】」

 すっごいこと聞くな。過去の記憶をたぐり寄せた後、星矢と僕で話をした時のことか。
 僕が恐れている、月夜が僕を好きな魔法が解けた時に捨てられるんじゃないかという恐れ。

「私はブチ切れました。そんなわけない! この気持ちはそんなに柔じゃない! って怒ってやりました」
「ああ、ありがとう」
「ふふ、お兄ちゃんも同じこと言ってましたよ」

 僕は月夜を抱きしめながらその肩に顎を置き、月夜の頬に自分の頬を寄せる。

「前にも言いましたけど、太陽さんに何かあっても私がちゃんと養ってあげますから!」
「駄目男にならないように……月夜の隣にちゃんと立って、頑張って学校でも一緒に手をつなげるように頑張るから」
「別に無理しなくてもいいですよ。もう私達は恋人同士なんですから。足りない所は補いあえばいいんです」
「月夜に足りない所なんて……ないだろ」

 月夜は一度体を、僕と正面に戻した。

「全然足りないです。私はさみしがり屋でかんしゃく持ちで嫉妬深くて、可愛げの無い女です。
 だからもっともっと太陽さんに愛して欲しい。大好きなあなたにもっと愛してるって言ってほしいです」

 正面から月夜を抱きしめて、僕はありったけの愛をかき集めて月夜の唇に最後にもう1度キスをした。

「誰よりも君を愛してるよ」
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