142 / 162
エピローグ
140 風邪引き姫にできること②
しおりを挟むそれから数時間が経ち、手を握りっぱなしだとトイレに行けないので時々は離していた。
でも基本的には月夜の側からは離れないようにしている。学校は休み時間だろうか、グループの面々からメッセージが送られてきた。みんな月夜が心配なんだな。
正直な所、暇すぎる。たまに可愛すぎる月夜の顔じっと見ていたりしていたがなかなか時間というのは進まない
月夜の部屋の棚に置いている本を手に取り、時間潰しに読んでいた。
「ん?」
ミュージックプレイヤーが見える。そういえば吟画山で撮った僕の音声があれに入ってたんだっけ。立ち上がって手に取った。
冬に見た時は2000近くの再生回数だったけど……今どれだけ増えているんだろう。まぁ交際したからさすがにあれほどの伸びは……。
「4156再生……」
1日20回以上聞かないとこの数値にならないよな。
「み、見ないでください!」
「おわっ!」
いきなり叫ばれてびっくりした。
月夜が起きたようだ。僕は慌ててミュージックプレイヤーを元の場所に戻す。
月夜は紅くなっているが……でも熱はかなり下がったようだ。声に力が入っている。
「彼氏だからってプライベートのチェックは駄目です」
「わ、悪かったよ」
月夜の寝ているベットの横にぺたんと座る。月夜のピンクのパジャマと同じくらい頬を紅くしてぶつぶつ言っていた。
「あのボイス、そんなに聞いてるの?」
「太陽さんの声が好きなんです。好きな人の声を聞いていたいのは当たり前じゃないですか」
当たり前かな。僕、月夜の声大好きだけど……データとしては持ってないぞ。
今度録音させてもらおう。
「朝起きた時、ごはんを食べる時、勉強するとき、寝る前に、1人でする時……」
「1人でする時?」
「……ちちちちち違いますから、私、えっちな子じゃないし!」
そんな自爆しなくてもいいよ。
自分の声が使われるのは恥ずかしいが……男だってやってることは一緒だしな。そこを追求するのはやめておこう。
ぐぅぅぅぅ……なんて音が月夜のお腹から鳴る。
当然月夜はお腹を押さえてしまった。恥ずかしそうにしてる姿もカワイイ。
「うぅ……また腹ペコキャラって思われてしまう」
「ずっと思ってたから今更だよ!」
「ひどい!」
月夜の部屋から離れて、キッチンに足を運ぶ。
あらかじめ準備していたレトルトおかゆの封を切って鍋に入れる。
卵ぐらい入れてあげようか。
月夜ほど美味しいおかゆはできないだろうけど……。
出来たおかゆに塩などトッピングをして、器に移して月夜の元へ持って行った。
「おかゆできたよ」
「ありがとうございます!」
僕も弁当を食べるかな。
「何かしてほしいことがあれば言っていいよ。今日は月夜のためならできること何でもすると」
「ほ、本当に何でもしてくれますか?」
「まぁ全裸で野外とか、ポルノ写真とかはやめて頂けると」
「わざと言ってるでしょ、もう!」
からかうように声をかけて月夜を明るくさせてみる。
この感じだとひどい風邪ではなさそうだな。
月夜はお盆に乗せたおかゆを僕に渡した。
「食べさせてください」
仕方ないなぁ。
レンゲを使って、おかゆをすくう。かなり熱いので軽く息を吹きかけて、冷まして月夜の口元に持っていく。
「あーん」
月夜の口の中にレンゲをいれてあげた。
レンゲの中のおかゆを全て吸い取り、やはり熱かったのか顔を別の方へ向けて悶えた。
次の1回分を用意するか。
「熱い……。でもいい塩加減でおいしいです」
「おかゆはそんなに作ったことがないから上手く出来てよかったよ。はい、2回目」
もう1度のレンゲを月夜の口へ入れていく。
これを何とか繰り返して、食事は終了した。
あらっ。
「月夜、口元にごはんがついてるよ」
「ほんとですか? 取ってください」
僕が手で取ろうとしるとその手は払われた。
「ちゃんと取ってください」
月夜は少しだけ口を突き出した。
……口で取れということか。まったく……もう。
僕はお盆を床において、目を瞑って待つ月夜にゆっくり顔を近づける。
あの誕生日の時に月夜がやってくれたように……僕は月夜の口元についたごはんつぶを吸い取り、そのままその場所に唇をつけた。
うん、思ったより恥ずかしいなぁ。
「うへへ、じゃあ次は」
「まだあるのか……」
「飲みものが飲みたいです」
だったら星矢が用意してくれたスポーツドリンクのペットボトルがそこにある。
手に取り、月夜に渡すとそれも手を交差させてNGにされてしまった。
また、月夜は唇を突き出す。
「く、口で?」
「はい!」
そ、それはどうなんだろう。
いや、月夜が望むならいいだろう。僕はペッドボトルの蓋を開けて、中のスポーツドリンクを口に含む。
そのまま月夜の唇を通じて、ドリンクを行き渡らせた。もちろんそれで終わるわけがない。
口移しをしてそのまま舌を絡め合い、濃厚な方のキスを続ける。
気分が昂ってしまうとどうしてもこうなってしまう。
「ふぅ……」
「満足ぅ」
結局3回ほど口移しをさせられた。僕の方が気疲れしちゃうんだけど……
満足した月夜はにっこりと笑う。でもまだ少し熱っぽい。
うーん、どうするのが1番なんだろう。
0
お気に入りに追加
169
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
JC💋フェラ
山葵あいす
恋愛
森野 稚菜(もりの わかな)は、中学2年生になる14歳の女の子だ。家では姉夫婦が一緒に暮らしており、稚菜に甘い義兄の真雄(まさお)は、いつも彼女におねだりされるままお小遣いを渡していたのだが……
ヤンデレ男に拐われ孕まセックスされるビッチ女の話
イセヤ レキ
恋愛
※こちらは18禁の作品です※
箸休め作品です。
表題の通り、基本的にストーリーなし、エロしかありません。
全編に渡り淫語だらけです、綺麗なエロをご希望の方はUターンして下さい。
地雷要素多めです、ご注意下さい。
快楽堕ちエンドの為、ハピエンで括ってます。
※性的虐待の匂わせ描写あります。
※清廉潔白な人物は皆無です。
汚喘ぎ/♡喘ぎ/監禁/凌辱/アナル/クンニ/放尿/飲尿/クリピアス/ビッチ/ローター/緊縛/手錠/快楽堕ち
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる