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4章 3学期

111 月夜の誕生日⑥

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 話が終わり、少しだけ場が無音になる。この機会に聞いてみるか……。

「すごい聞きにくいことなんだけどいいかな」
「どしたの?」
「月夜は……その好意ってのは分かるんだけど、僕には自分自身、そこまで魅力があると思ってなくて……そりゃ星矢みたいに性格悪くても顔が良いなら分からなくもないけど」
「おまえ、俺を下げてるのか上げてるのかどっちだ」

 星矢の訴えは無視することにする。

「みんなだって……僕と月夜は釣り合ってないって思ってるだろ」
『え?』

 全員が呆けたように声を一致させた。
 正直この反応は意外だった。今までこのグループ内でも冗談の口調だったが月夜は最上クラスの男性に相応しい人って話が随時上がっていた。
 実際その通りだと思うし、星矢のような男、もしくは少女漫画の王子様のような男こそ月夜に相応しいと思っている。日本のどこかに何人か存在しているはずだ。
 何の取柄のない僕が学園のかぐや姫に相応しいだなんて誰も思っていないのだ。
 水里さんが息を吐いた。

「私もね。月夜ちゃんが持つ可愛さ、スタイル、頭脳……それ相応の人がいつか現れるって思ってたよ」
「うん」
「でも私達は太陽くんが月夜ちゃんに相応しくないなんて思ったことは一度もないよ」
「えっ、そうなの?」

 僕はまわりを見渡す。水里さんも九土さんもひーちゃんも弓崎さんも北条さんも同じように頷いた。

「より良い人が現れるかもって言っただけ。それも8,9月の時点の話だよ。今は……いや初詣の時もみんなで応援したよね。月夜ちゃんと太陽くんがお似合いだと思ったから……2人が幸せになって欲しいから応援してるんだよ」

 僕は予想もしなかった内容に言葉を失う。
 北条さんが言葉を繋げた。

「さっきも話してたけど、相応しくないと思ってる人間の所に月夜を送るわけないだろ。あんたはどう思ってるか知らないけど、月夜との仲を応援したい気持ち……そろそろ分かってほしいな」
「……」
「あんただって私達にとっては大事な友人の1人なんだよ。あんたが私達の手助けをしてきたことをみんな知ってるからね。友達なんだからお返しして当然だろ」
「実際、月夜ちゃんが本当はどう思ってるかは私達には分からないし、それを私達が勝手に言うのは間違ってる。あとはもう太陽くんと月夜ちゃん次第なんだよ」

 立て続けに話す水里さんの言葉に僕の胸中はまだ揺れる。
 星矢を好きで集まったこのグループ。僕はどこかで余所者のイメージを持っていた。男である以上、深入りはしてはいけない……そう思っていた。

 そして、誰も僕には興味がないから、誰からも好かれる月夜が僕に好意を持つことを賛成しないって思い込んでいた。月夜の好意を受け入れてはいけない。それは月夜のためにならない……そんなことを思っていた。

 駄目だ、頭がまわらない。

「なぁ……太陽、おまえ、もしかして」
「あ、もう17時前です! そろそろ準備しないと」

 弓崎さんの言葉に全員が立てかけられている時計に目が行く。これから月夜の誕生日会のイベントの準備をしないといけない。
 当の本人はのぼせて倒れているけど。
 話はいったんここで打ち切り、僕達は大浴場を出て、更衣室へと向かった。
 浴衣に着替える最中、星矢に声をかける。

「そういえばさっき何か言いかけなかったか?」
「今はいい。余計なお世話かもしれんからな」
「なんだよ。気になるじゃないか」
「喋ってる暇はない。行くぞ」

 釈然としなかったが……僕達はそのまま先へ進むことにした。

 僕は大きな勘違いをしていたのかもしれない。
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