108 / 162
4章 3学期
106 月夜の誕生日①
しおりを挟む
天気は快晴。スキーウェアを着ているとちょっと暑いくらいかもしれない。
2月7日土曜日、いつものメンバーは車で数時間、県外の雪山に来ていた。
金曜日の夜移動で土曜日の朝には到着。眠たい目をこすって、さっそくスキー及びスノボーで遊ぶ準備をする。
「私、スノーボードは初めてなんで楽しみです!」
カラフルなスキーウェアに身を包み、ニット帽からはみ出す栗色の髪は今日もとってもキュートだ。
ニコリと笑う月夜に僕はさっそく写真を撮った。ウェア写真もゲットだ。
隣で一緒に歩く月夜と会話を楽しむ。
「太陽さんは経験あるんですか?」
「ウチは昔からスキー旅行よく行くんだよ。スキーでもスノボでも滑られるよ」
「本当ですか! すごい、教えてほしいです」
こんなかわいい女の子に教える日が来るなんて……。
ありがとう、父さん、母さん、毎年連れてきてくれて本当に感謝です。
この前のスケートのお返しがさっそくできるな。あの時かっこ悪い所を見せたから、いいとこ見せてやりたい。
月夜はボードはレンタル、他の装備は九土さんが用意してくれたらしい。かわいい月夜くんにレンタルなど着せられるか……だそうだ。あの人ほんと何でもできるよな。
「じゃあ、星矢くんとひーちゃんは私が教えるねー」
東北育ちの水里さんは実家近くに雪山があるらしく、ウィンタースポーツは手馴れているようだ。あの人、運動神経もいいからうまいんだろうな。
星矢も雪山は初挑戦。意外ながらひーちゃんもらしい。遊ぶ時間全てアイドル活動に使ってるからだろうか。
「初心者だったら向こうに混ざる?」
ふいに月夜に聞いてみる。2人で講師する方が早く上達するかもしれない。
しかし、月夜は首を横に振った。
「私は太陽さんに教えてもらいたいです。2人きりじゃ……嫌ですか?」
「そ、そんなことないよ」
小動物にように小さな声でねだる月夜に胸がきゅっとなってしまう。
こんなかわいいこと言われたら2人で行くしかないじゃないか。まぁあっちはあっちで何とかなるでしょう。
「じゃあ行こうか」
「はい!」
集団から離れ、初心者コースへ移動した。
それからスノーボードの履き方や走行の注意点をレクチャーし、手取り足取り教えていく。
1時間ほど教えればうまくいくかと思いきや……。
「きゃっ!」
月夜はバランスを崩して尻もちをついてしまう。
僕はさっと駆け寄り、手を伸ばして月夜の手を掴んだ。
「ごめんなさい……へたくそで」
「最初はそんなもんだよ。僕だってここまで滑られるようになるまでかなりかかったし」
月夜の手を掴んで持ち上げて、直立させてあげる。
ただね……。
「わっと!」
月夜は直立のままバランスを崩して、そのまま僕の方に倒れてきた。当然避けるわけにはいかないので両手を使って受け止める。
この場合、月夜に抱きしめられる恰好となるのだ。お互いスキーウェアを着ているため肉感を感じることはできないが僕の胸の中に月夜がいて、ニット帽からもれる栗色の髪にふれると月夜はとても嬉しそうな顔をする。
最初の1,2回はかなり慌てて、出来る限り抱きしめられる感触を楽しんでいたが……。
「月夜、10回目なんだけど……わざとじゃないよね?」
「ええーどうかなー」
僕の胸板に顔を擦り付けてくる月夜に何も言えやしない。
それからも教えるたびに月夜は僕に抱きついてきた。
◇◇◇
少し滑られるようになったため、リフトを使って中腹の方まで移動する。
このスキー場は僕も何度か行っており、どこの昼ご飯がうまいかよく分かっている。今回、グループバラバラに行動しているため、僕と月夜は2人きりのままだった。
「そういえば弓崎や瓜原さんの姿が見えないけどどこ行ったの?」
「寒いの苦手なので先に旅館に行って創作してるって言ってましたよ」
「あの2人雪山に何しに来たんだ……?」
あの2人、運動神経はあまりだろうし、気持ちは分からなくもないけど……。
だからといって創作はないような気もする。
っと、リフトがそろそろ終わるな。
「リフトから降りる時が一番緊張しますね」
「慣れてしまえばそう怖くはないけど……スピードもあるし、急だからね」
月夜が転んでもカバーできるように僕は側から離れないようにする。
今日は月夜の誕生日だ。できる限り彼女をフォローしてあげないと……。
危なげなくリフトから降りて、片足滑りで斜面近くまで移動する。
「やっほー!」
これから滑ろうと準備した時、知った声がして、僕と月夜はそっちの方に顔を向ける。
ゴーグルで顔はよく見えないが、見知ったスキーウェアを着ており、3人がこちらに現れた。あっちのコースは上級だっけ。
「海ちゃん!」
「月夜、うまくなってる?」
「うん、太陽さんが教えてくれるおかげだね」
現れたのは世良さん、北条さん、九土さんの3人だ。運動神経抜群の3人だ。経験者であればお手の物だろう。
「月夜と2人きりだなんて……学校中の男共が泣いて悔しがるだろうね」
「指導を任せて、私達だけで楽しませてもらってすまないな」
北条さんと九土さんが続けて声を上げる。
北条さん、九土さんは自前のボード、ウェアを持っているだけあって、相当上手い。
世良さんはボードはレンタルだけど、この子も負けていない。
「気にしないでよ。気分転換はしないといけないしね」
「ふぅ……練習付けの毎日だからね。あー、ほんと雪山ってきもちー!」
北条さんは手を上げて、大きな声で大空に向けて叫びだした。
体育科の2人は本当に毎日練習している。各々、その競技が好きなんだろうけど、たまには違う競技で汗を流したいってのは分かる気がする。
九土さんもそれに付き合ってる感じかな。
そのまま3人は僕達に手を振って斜面を下って行った。
さてと僕達も先へ進むとしますか。
月夜に声をかけようとしたら……少し表情が暗いように見えた。
どうしたのかな。
2月7日土曜日、いつものメンバーは車で数時間、県外の雪山に来ていた。
金曜日の夜移動で土曜日の朝には到着。眠たい目をこすって、さっそくスキー及びスノボーで遊ぶ準備をする。
「私、スノーボードは初めてなんで楽しみです!」
カラフルなスキーウェアに身を包み、ニット帽からはみ出す栗色の髪は今日もとってもキュートだ。
ニコリと笑う月夜に僕はさっそく写真を撮った。ウェア写真もゲットだ。
隣で一緒に歩く月夜と会話を楽しむ。
「太陽さんは経験あるんですか?」
「ウチは昔からスキー旅行よく行くんだよ。スキーでもスノボでも滑られるよ」
「本当ですか! すごい、教えてほしいです」
こんなかわいい女の子に教える日が来るなんて……。
ありがとう、父さん、母さん、毎年連れてきてくれて本当に感謝です。
この前のスケートのお返しがさっそくできるな。あの時かっこ悪い所を見せたから、いいとこ見せてやりたい。
月夜はボードはレンタル、他の装備は九土さんが用意してくれたらしい。かわいい月夜くんにレンタルなど着せられるか……だそうだ。あの人ほんと何でもできるよな。
「じゃあ、星矢くんとひーちゃんは私が教えるねー」
東北育ちの水里さんは実家近くに雪山があるらしく、ウィンタースポーツは手馴れているようだ。あの人、運動神経もいいからうまいんだろうな。
星矢も雪山は初挑戦。意外ながらひーちゃんもらしい。遊ぶ時間全てアイドル活動に使ってるからだろうか。
「初心者だったら向こうに混ざる?」
ふいに月夜に聞いてみる。2人で講師する方が早く上達するかもしれない。
しかし、月夜は首を横に振った。
「私は太陽さんに教えてもらいたいです。2人きりじゃ……嫌ですか?」
「そ、そんなことないよ」
小動物にように小さな声でねだる月夜に胸がきゅっとなってしまう。
こんなかわいいこと言われたら2人で行くしかないじゃないか。まぁあっちはあっちで何とかなるでしょう。
「じゃあ行こうか」
「はい!」
集団から離れ、初心者コースへ移動した。
それからスノーボードの履き方や走行の注意点をレクチャーし、手取り足取り教えていく。
1時間ほど教えればうまくいくかと思いきや……。
「きゃっ!」
月夜はバランスを崩して尻もちをついてしまう。
僕はさっと駆け寄り、手を伸ばして月夜の手を掴んだ。
「ごめんなさい……へたくそで」
「最初はそんなもんだよ。僕だってここまで滑られるようになるまでかなりかかったし」
月夜の手を掴んで持ち上げて、直立させてあげる。
ただね……。
「わっと!」
月夜は直立のままバランスを崩して、そのまま僕の方に倒れてきた。当然避けるわけにはいかないので両手を使って受け止める。
この場合、月夜に抱きしめられる恰好となるのだ。お互いスキーウェアを着ているため肉感を感じることはできないが僕の胸の中に月夜がいて、ニット帽からもれる栗色の髪にふれると月夜はとても嬉しそうな顔をする。
最初の1,2回はかなり慌てて、出来る限り抱きしめられる感触を楽しんでいたが……。
「月夜、10回目なんだけど……わざとじゃないよね?」
「ええーどうかなー」
僕の胸板に顔を擦り付けてくる月夜に何も言えやしない。
それからも教えるたびに月夜は僕に抱きついてきた。
◇◇◇
少し滑られるようになったため、リフトを使って中腹の方まで移動する。
このスキー場は僕も何度か行っており、どこの昼ご飯がうまいかよく分かっている。今回、グループバラバラに行動しているため、僕と月夜は2人きりのままだった。
「そういえば弓崎や瓜原さんの姿が見えないけどどこ行ったの?」
「寒いの苦手なので先に旅館に行って創作してるって言ってましたよ」
「あの2人雪山に何しに来たんだ……?」
あの2人、運動神経はあまりだろうし、気持ちは分からなくもないけど……。
だからといって創作はないような気もする。
っと、リフトがそろそろ終わるな。
「リフトから降りる時が一番緊張しますね」
「慣れてしまえばそう怖くはないけど……スピードもあるし、急だからね」
月夜が転んでもカバーできるように僕は側から離れないようにする。
今日は月夜の誕生日だ。できる限り彼女をフォローしてあげないと……。
危なげなくリフトから降りて、片足滑りで斜面近くまで移動する。
「やっほー!」
これから滑ろうと準備した時、知った声がして、僕と月夜はそっちの方に顔を向ける。
ゴーグルで顔はよく見えないが、見知ったスキーウェアを着ており、3人がこちらに現れた。あっちのコースは上級だっけ。
「海ちゃん!」
「月夜、うまくなってる?」
「うん、太陽さんが教えてくれるおかげだね」
現れたのは世良さん、北条さん、九土さんの3人だ。運動神経抜群の3人だ。経験者であればお手の物だろう。
「月夜と2人きりだなんて……学校中の男共が泣いて悔しがるだろうね」
「指導を任せて、私達だけで楽しませてもらってすまないな」
北条さんと九土さんが続けて声を上げる。
北条さん、九土さんは自前のボード、ウェアを持っているだけあって、相当上手い。
世良さんはボードはレンタルだけど、この子も負けていない。
「気にしないでよ。気分転換はしないといけないしね」
「ふぅ……練習付けの毎日だからね。あー、ほんと雪山ってきもちー!」
北条さんは手を上げて、大きな声で大空に向けて叫びだした。
体育科の2人は本当に毎日練習している。各々、その競技が好きなんだろうけど、たまには違う競技で汗を流したいってのは分かる気がする。
九土さんもそれに付き合ってる感じかな。
そのまま3人は僕達に手を振って斜面を下って行った。
さてと僕達も先へ進むとしますか。
月夜に声をかけようとしたら……少し表情が暗いように見えた。
どうしたのかな。
0
お気に入りに追加
169
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる