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2章 8月下旬
034 全員集合
しおりを挟む陸上部の練習も終え、時刻は夕方17時前、日がそろそろ落ちてくるかなって時間だ。
今日も陸上部のマネージャーとして参加してくれた月夜が隣にいる。
「だいぶ勘も取り戻してきたね」
「本当ですか! じゃあ次の試合楽しみですね~。優勝を期待して応援しにいきます」
「いや、表彰台とか上ったことないから。最高のコンディションでも予選落ちだよ」
そう簡単に表彰状もらったり、県大会行ったりなどできたら苦労はしない。
勝ち抜きができるのは硬式女テニの北条さんや水泳のオリンピック候補の世良さんぐらいのものだ。
僕と月夜は談笑しながら校舎の中へ入っていく。今日はいつものグループで待ち合わせをしている。
年に1度しかない大行事。この学校の生徒もこれがあるから休む人が少ない。
そして話かけずに後ろでニヤニヤしながらついてくる女達がいる。うっとうしい。
「2人とも微妙な距離で離れてるのやめてくれない?」
「あ、北条先輩、ひーちゃん!」
同じクラスの北条火澄さんと天野日和さんだ。
北条さんはテニスの練習、天野さん……【Ice】というアイドルグループに所属している愛称ひーちゃんは何で一緒なんだろう。部活は入ってないはずだし。
ひーちゃんがアイドルの衣装ではなく、恒宙学園の制服を着ているのがいいよね。
ファンなら落涙ものだろう。僕は同じグループのみーちゃんという女の子を推しているのでそこまで感動はないけど。
「ひーちゃんとはそこで会ったんだよ。補習なんだって」
「補習!? ひーちゃん成績よくないの?」
月夜の問いかけにひーちゃんは言いづらそうに撫でやかな金髪に触れる。
「アイドル活動で出席日数少ないから登校日に勉強してけって言われて……」
それは仕方ないよね。
僕達は所属している2年5組の教室へと入った。すでに文化部の星矢、弓崎さん、水里さん、瓜原さんがいた。僕達が4人だからあと2人かな。
「ごめん遅れた!」
「遅刻して悪かったね」
集合時間を過ぎて世良さんと九土さんが現れた。これで全員揃ったって感じだね。
「太陽さん、楽しみですね!」
「そうだね……このメンバーでいく【夏祭り】きっと楽しいんだろうな」
いつも8月最後の全校登校日の夜に最も大きな祭りがある。自然公園では屋台が立ち並び…‥ちょうど同時開催で花火大会もあるので、高台に上るとよく見えるのだ。
夏で一番楽しい日と言われている。
みんなで一緒に行くってのがこの教室で集まった趣旨だが、九土さんがまた何か楽しい……よからぬことを考えてるようでお金持ちのお嬢様のお戯れに庶民はついていくことにしましょう。
「でも……なかなか移動できませんね」
「まったく、騒がしい」
「そうだねぇ」
月夜、星矢、僕は3人は壁際に立って話をする。7月下旬のあの事件以来、初めて全員で集まるので会話に花が咲くのだ。
「いつもグループチャットしてるんですけど」
口で話すのとはまた違うんだろうな。このグループも計10人いるが小さいグループに分かれてくる。
僕と星矢の男子グループ、月夜、世良さん、瓜原さんの1年生グループ。残り5人も九土さんと北条さんは仲がよく、弓崎さんとひーちゃんは仲が良い。
そして水里さんはその2グループどちらとも仲がよいのだ。
「そろそろ行かないとまずいな」
星矢は言う。
確かに車は混んでいるだろうし、早めに制服から着替えないとな。花火の1時間前には公園に到着しておきたい。
「おい、そろそろ行くぞ」
星矢は声をあげるが女性陣の声にかき消されてしまった。女の子の喋り声って強い。
さてと……みんなを集めるのであれば注目するようなことを言えばいい。このグループの核……それはこの男、神凪星矢。
この核を刺激してやればいい。
僕は声を張り上げた。
「お~い星矢を大好きなハーレム達! 早く行こっ」
全員がびくっとこっちを見た。
「その言い方やめろ!」
そして僕は星矢に怒られた。
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