5 / 162
1章 8月中旬
004 雨宿り
しおりを挟む
「クッソー!」
あんなに晴れていたというのに図書館を出た途端に雲が空を覆って大雨になった。
夏の気候は本当に変わりやすい。日本大丈夫なの? って思うくらい異常気象多いよな。
「あそこ、バス停があります!」
そして一緒にずぶ濡れなのは僕の親友の妹である神凪月夜だ。図書館から同じタイミングで外に出たので当然同じ状態。
今日は天気予報も晴れだったのでお互い傘を持っておらず走るハメになってしまったのだ。
僕と妹ちゃんは屋根のあるバス停のベンチに腰を下ろした。
「もうーびしょびしょ」
「折りたたみ傘を持っていけばよかったよ」
お互い後悔の言葉を吐く。くー、パンツまで濡れてんなこれ。ラフなTシャツを絞って水気を抜く。半パン、サンダルで本当によかった。さらに防水のカバンでよかった。中の本は無事だろう。妹ちゃんもカバンからハンカチを取り出し栗色の髪を拭く。
背中まで伸びた髪が水を得て、輝いているように見える。背中に張り付いている所も珍しくてイイ。
風呂上がりって感じだろうか。なんだか色気を感じるな。
「太陽さん?」
「なんでもないよ」
凝視しすぎたようだ。しゃーないじゃん、かわいいだもん。
目の保養と思えば雨で濡れることも悪くない。
「ハンカチもってないんですか?」
「恥ずかしながら忘れてたよ……」
普段持ち歩かないんだよな。トイレ行っても服で拭くし。ズボラな性格は良くないな。濡れた髪や顔は夏の風で勝手に乾くものだ。
こんな風にハンカチを当て……。
「ちょ!」
「動かないでください」
妹ちゃんがハンカチで僕の顔を優しく拭いていく。そ、それよりだいぶ顔が近いんだけど……。目がくりくりしてて、まつげが長くて……唇もきっと柔らかいんだろうな。 って駄目だ、顔をみているとまずい!
別のところを見よう。僕は視線を下ろす。妹ちゃんの白のブラウスが透けて……ピンクの中身が見えてしまう。
「や、やば!」
「ちゃんとまっすぐにしてください」
妹ちゃんはスタイルが良いのは知っている。夏始めにみんなで遊びに行った時にその大きさを目に焼き付けたのは記憶に新しい。
美人でスタイルいいとか完璧か! 他にも頭が良かったり、声が綺麗だったり、性格も優しくて……パーフェクトか!
ただ、下着として見たわけではなかったのでこの刺激はさすがにきつい。ただ……友人として、この女の子の兄の親友として……言わないといけない。
「さっきから目を瞑ってどうしたんですか」
「そ、その……、服透けてるから……あまりね」
「透けて……? ひゃっ!」
もう目を開けて良さそうだ。妹ちゃんは両手で胸を庇い、背を向けてしまった。背中のも透けてんだけどそれはいいか。
「拭いてくれてありがとう。大丈夫だよ」
「うぅ……、太陽さん……えっちです」
そんな涙目で言わないでよ。むしろその表情の方がえっちだよ。じとりと後ろ目で見られるがそんな表情も実に絵になる。でも少し居たたまれなくなり、僕たちは無言になった。会話のきっかけがどうにも見つからない。雨は相変わらず止む気配がない。バスもしばらく来ないみたいだし……、このままかなぁ。
この気まずい空間を破る声が出た。
「クシュン」
くしゃみ? そうか雨で濡れて冷えたのか。
「大丈夫?」
「はい、少し冷えただけなんで」
妹ちゃんも薄着のブラウスだ。当然脱ぐことはできない。何か上から羽織るものでもあれば……。あ、完全に忘れてた。
僕はカバンからそれを取り出し、妹ちゃんの体にかけた。
「太陽さん?」
「図書館が寒かった時のことを考えて上着持ってきてたの忘れてたよ。肩を冷やしたら駄目だからね」
「で、でも太陽さんが寒いんじゃ」
「ふっ、僕は運動部だからね。鍛えてるのさ」
「先日まで入院してたじゃないですか」
ぐっ、それを言われると何も言えない。まだ復帰できてないんだよな。でも女の子に風邪を引かすわけにはいかないしなぁ。
強がりで腕を組んで仁王立ちしてみた。
「太陽さんのにおいがする……」
え、そんなくさい?
洗濯したてではないけど、汗とかやばかったかな。
嗚咽とかされたら自害しかねないんだけど……、恐る恐る妹ちゃんの様子を見る。想定してた嫌そうな顔ではなかった。
顔を綻ばせ、目が柔らかくなっている感じがした。僕の上着を大事そうに両手で抱えて、誰にも渡さないようにしっかりと掴む。
「太陽さんの上着……」
私ね……太陽さんのこと好きになったかもしれない。
親愛でそんな顔をするのかよ。
僕には……分からない。でも胸が熱くなって、顔が熱くなって、上着なんていらないよ。
あんなに晴れていたというのに図書館を出た途端に雲が空を覆って大雨になった。
夏の気候は本当に変わりやすい。日本大丈夫なの? って思うくらい異常気象多いよな。
「あそこ、バス停があります!」
そして一緒にずぶ濡れなのは僕の親友の妹である神凪月夜だ。図書館から同じタイミングで外に出たので当然同じ状態。
今日は天気予報も晴れだったのでお互い傘を持っておらず走るハメになってしまったのだ。
僕と妹ちゃんは屋根のあるバス停のベンチに腰を下ろした。
「もうーびしょびしょ」
「折りたたみ傘を持っていけばよかったよ」
お互い後悔の言葉を吐く。くー、パンツまで濡れてんなこれ。ラフなTシャツを絞って水気を抜く。半パン、サンダルで本当によかった。さらに防水のカバンでよかった。中の本は無事だろう。妹ちゃんもカバンからハンカチを取り出し栗色の髪を拭く。
背中まで伸びた髪が水を得て、輝いているように見える。背中に張り付いている所も珍しくてイイ。
風呂上がりって感じだろうか。なんだか色気を感じるな。
「太陽さん?」
「なんでもないよ」
凝視しすぎたようだ。しゃーないじゃん、かわいいだもん。
目の保養と思えば雨で濡れることも悪くない。
「ハンカチもってないんですか?」
「恥ずかしながら忘れてたよ……」
普段持ち歩かないんだよな。トイレ行っても服で拭くし。ズボラな性格は良くないな。濡れた髪や顔は夏の風で勝手に乾くものだ。
こんな風にハンカチを当て……。
「ちょ!」
「動かないでください」
妹ちゃんがハンカチで僕の顔を優しく拭いていく。そ、それよりだいぶ顔が近いんだけど……。目がくりくりしてて、まつげが長くて……唇もきっと柔らかいんだろうな。 って駄目だ、顔をみているとまずい!
別のところを見よう。僕は視線を下ろす。妹ちゃんの白のブラウスが透けて……ピンクの中身が見えてしまう。
「や、やば!」
「ちゃんとまっすぐにしてください」
妹ちゃんはスタイルが良いのは知っている。夏始めにみんなで遊びに行った時にその大きさを目に焼き付けたのは記憶に新しい。
美人でスタイルいいとか完璧か! 他にも頭が良かったり、声が綺麗だったり、性格も優しくて……パーフェクトか!
ただ、下着として見たわけではなかったのでこの刺激はさすがにきつい。ただ……友人として、この女の子の兄の親友として……言わないといけない。
「さっきから目を瞑ってどうしたんですか」
「そ、その……、服透けてるから……あまりね」
「透けて……? ひゃっ!」
もう目を開けて良さそうだ。妹ちゃんは両手で胸を庇い、背を向けてしまった。背中のも透けてんだけどそれはいいか。
「拭いてくれてありがとう。大丈夫だよ」
「うぅ……、太陽さん……えっちです」
そんな涙目で言わないでよ。むしろその表情の方がえっちだよ。じとりと後ろ目で見られるがそんな表情も実に絵になる。でも少し居たたまれなくなり、僕たちは無言になった。会話のきっかけがどうにも見つからない。雨は相変わらず止む気配がない。バスもしばらく来ないみたいだし……、このままかなぁ。
この気まずい空間を破る声が出た。
「クシュン」
くしゃみ? そうか雨で濡れて冷えたのか。
「大丈夫?」
「はい、少し冷えただけなんで」
妹ちゃんも薄着のブラウスだ。当然脱ぐことはできない。何か上から羽織るものでもあれば……。あ、完全に忘れてた。
僕はカバンからそれを取り出し、妹ちゃんの体にかけた。
「太陽さん?」
「図書館が寒かった時のことを考えて上着持ってきてたの忘れてたよ。肩を冷やしたら駄目だからね」
「で、でも太陽さんが寒いんじゃ」
「ふっ、僕は運動部だからね。鍛えてるのさ」
「先日まで入院してたじゃないですか」
ぐっ、それを言われると何も言えない。まだ復帰できてないんだよな。でも女の子に風邪を引かすわけにはいかないしなぁ。
強がりで腕を組んで仁王立ちしてみた。
「太陽さんのにおいがする……」
え、そんなくさい?
洗濯したてではないけど、汗とかやばかったかな。
嗚咽とかされたら自害しかねないんだけど……、恐る恐る妹ちゃんの様子を見る。想定してた嫌そうな顔ではなかった。
顔を綻ばせ、目が柔らかくなっている感じがした。僕の上着を大事そうに両手で抱えて、誰にも渡さないようにしっかりと掴む。
「太陽さんの上着……」
私ね……太陽さんのこと好きになったかもしれない。
親愛でそんな顔をするのかよ。
僕には……分からない。でも胸が熱くなって、顔が熱くなって、上着なんていらないよ。
0
お気に入りに追加
169
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる