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しおりを挟む「ユート……どうして」
「逃げるカッシュを説得したのですが……力及ばず……せめて僕だけでも、僕だけでも王女様を助けたい。そう思ったのです」
ユートは私の方へ顔を向け、にこりと笑った。
そのまま強くダガーを振り切り、魔物を一時的に奥へと押しやる。
ユートは私に背を向けて守るように魔物に立ち塞がった。
「どうして……どうしてそうまでして私を……」
「……初めて会った時から僕は王女様が好きでした。微笑んでくれる姿が本当に魅力的で……カッシュに嫉妬してたんですよ。あなたの夫になることが我慢できないくらい」
「あ……」
「……僕の瞳キラキラして綺麗と言ってくれたこと……僕は例え……何度繰り返したって忘れやしません」
ユートは大きな声で叫ぶ。
「あなたを守りたい!」
「勇者パーティの腰巾着が嘗めたマネをしてくれるなぁ!」
魔王軍の四天王である魔物がユートに攻撃を加える。
ユートは支援職であり、単独戦闘は得意ではない。徐々に追い詰められていく。
それでも決して私の後ろへ下がらなかった。
私の前に立ち、私を守ろうと立ってくれた。
……私は守られているだけ?
お父様やソフラやユートが守ってくれて……私はただ見ているだけなの。
私には……あの血が流れているのに、何もできないの?
無敵の血統を持つのに……ただ手をこまねいてしまっているの?
気付けば私は観察眼を使用していた。ユートのスキルをもう一度確認したかった。
前に見た時にはなかった……スキルが追加されていた。
※全てのユニットの成長率アップ大
※全てのユニットの全能力を大幅アップ
※全てのユニットのレベルを20上げる
※全てのユニットのレベルアップボーナスが3倍となる
※全てのユニットのクリティカル率を極大
※愛した者の潜在能力が解放される
「ユート、私とパーティを組んで!」
「え?」
「早く!」
この時、ユートと私がパーティを組んだことでユートが持つバッファーとしての力が私の体の中に入り込んでくる。
今までの自分とは違うような強固な力が溢れ出てくるようだ。
私は右腕を上げた。
「来い! 【宝剣セーブ・ザ・クイーン】」
玉座の間の天井に吊された宝剣は私の願いを聞き受け、光輝いた。
ゆっくりと楔が解かれ、降りていく。私は宝剣を掴む。
「お、王女様……?」
「あなたはいったい……」
その神々しさに虚を突かれたように後ずさる魔王軍の総大将に剣を突き付けた。
「私の名はアリエヴィラール。父からは王家の血を引き継ぎ、母からは最強の戦闘民族サラダ人の血を引き継いだ……最強で最高の血統!」
私は5歳の時、1度のその力を解放したことがある。
その結果は悲惨たるもので、母を失った私は恐れ、その力を心の奥底に封印してしまった。
父が私を城から外へ出そうとしなかったのもこれが要因の1つである。
だが今、ユートのバフによりのその枷は解かれて……私の体に力が溢れに溢れてくる。
5歳の時に評された私の二つ名は……。
「バーサク・プリンセス」
全ての力を宝剣に込め、私は魔物相手に振り切った。
「吹き飛べぇぇぇ、プリンセスセイバーァァァァァァ!」
潜在能力全て解放した私の一撃は……ファブリス王国に巣くう魔物全てを吹き飛ばしてしまった。
それから……1ヶ月の時が過ぎた。
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