セーブとロードを操る王女、婚約者の勇者が死ぬと同時にループする~クズ勇者が支援係を追放した後死ぬので全力で食い止めざまぁする~

鉄人じゅす

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 それから幾多の時が過ぎる。

 やっぱりしょうもない理由でユートが追放されることが何度もあり、そのたび私は頭を悩ませることになる。

 最速1時間半で死に戻りした時は詰みを覚悟した。あれは本当に大変だったと思う。
 他にも14日分遡った時はやる気が激減してしまった。あれも大変だった。

 現実の時間ではほんの数ヶ月だというのに私は年以上生きている感覚に陥る。
 年は取らずに心の年が増えていく感じだ。


 だけど……忙しくも楽しかったと今でも思う。
 勇者への恋心は完全に消え失せ、いかにして婚約破棄に持って行くか最近の課題だと思っている。


 そんな時、予想もできない事件が起きた。




「ファブリス王国が……燃えている」

 魔王軍の侵攻による、大軍がファブリス王国に押し寄せてしまったのだ。

 すでに市街地は魔物で溢れており、罪の無い市民達は犠牲になっていく。

 父である国王が率いる王国軍が魔王軍に対抗しているが劣勢だと聞く。

 ……聞きたくない言葉が耳に入ってくる。

「どうやら国王様は戦死されたそうだ」
「ファブリス王国は終わりだな」

「バカ、王女様の前で言うな!」

 ……父が死んだ?
 優しくて格好良くて……子煩悩なお父様が……?
 信じられない言葉に私は自室で引きこもってしまう。

 大丈夫……勇者がくれば敵を倒せる。未だ連戦全勝なのだから。この前も魔王四天王の1人を討伐したのだ。
 例え、もし敗れたとしてもセーブした5日前に戻ることができる。
 戻りさえすればお父様も復活する。そうすればその5日間で魔王軍の強襲を防ぐ準備をすることができる。

「王女様! お逃げ下さい!」

 部屋の中に入ってきたのは侍女のソフラだった。
 頭から血を流し、こちらにやってくる。
 私は思わず飛び出し彼女に触れる。背中をばっさりと斬られていて……誰が見ても致命傷だと分かった。

「ソフラ! あなた……ケガを!」

「すみません、私はもう助かりません」

「いやよ! 子供の頃から一緒に育ったじゃない! お父様もソフラもいなくなるなんていやぁ!」

「玉座の間は手薄です……もしかしたら逃げ切れるかもしれません。王女様さえいれば……いつかファブリス王国を……」

「ソフラ……? お願い、目を覚ましてよ!!」

 いつも私の味方になってくれた最愛の侍女を失い、私は涙ながらも最期の言葉を信じ、玉座の間へ向かう。
 さっきまでは人の声でうるさかった城内も次第に……声が静まっていく。

 かすかな希望を抱いて……私は玉座の間へと来た。

【宝剣セーブ・ザ・クイーン】は天井より吊され、輝いている。


「お願いセーブ・ザ・クイーン! 私を5日前に帰して! 今戻れば……全部、全部……復活させることができる」

 だが……無情にも宝剣は反応しない。
 それでも私は訴えた。

「だったら……あの男を勇者にここに呼んでよ! 魔王の大群の恐れを成して逃げてしまったあの勇者を!」

 勇者はファブリス王国に到着していたらしい。
 だが、魔王軍のあまりの物量に助けることをせず逃げ帰ってしまったのだ。
 まわりの兵士がその光景を見ており、私自身も千里眼でその様子を見ていた。

 許せなかった。あれだけ王国に世話になっておきながら……全てを捨て去ったあの男を。

 私は願う……全ての回帰を。

「おやぁ……ここにいるには誰かなぁ」

 ばっと後ろを振り向く……。その姿には見覚えがあった。魔王軍四天王の1人であり、この大軍の大将であった。
 紳士の姿をした人型の魔物なのに顔だけが醜悪で、とてつもない魔力を持っている。

「これはアリエヴィラール王女ではありませんか。王は死に、勇者が逃げた今、こんなところで何をしているですか」

「うぅ……」

 怖い……。
 私は玉座の間の奥へと走る。
 だけど……それもつかの間、魔物は一歩一歩近づいてきた。

「抵抗するのであれば人質とするのもありなのですが、もう滅ぶ間際ですからね。一思いに死なせて差し上げましょう」

 魔物の腕が鋭い刃へと姿を変える。
 私は恐怖で足がすくみ……逃げることすらもできない。
 勇者が死ねば……私は宝剣の力で過去へ遡る。では私が死ねばどうなる? 恐らく何も変わらない。私の死はセーブ・ザ・クイーンの力に影響されないのだ。
 だから私が死ねばセーブ・ザ・クイーンは力を発揮できない。今までのセーブも関係ない、全て現実となる。

 全て終わりだ。

 私は思わず両手を頭に添え、目を強く瞑った。

 ……いつまで経っても痛みは発生しない。おそるおそる目を開くと……必死な形相で魔物の刃をダガーで食い止める少年の姿があった。

「ユート……」

「すいません、お待たせしました……!」

 勇者パーティの一人、ユートがギリギリの所で駆けつけてくれたのだ。
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