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39. 宣戦布告
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ゆりっちに宣戦布告するって、タクヤが言ってた。
2月の初めにバレンタインの話をしている時だった。
えっ、寝耳に水なんですけど、、、諦めたんじゃないの。
お正月の時の話と違うじゃないか。
「なにそれ、どう戦えばいいの?私、スキルないし」
「知らねぇ~、守りを固めればいいんじゃないですか」
「他人事みたいに言わないでよ。エスパーなんだから結界はって防いでくれないと」
「だから、そういうの使えないって言ったでしょ。それに、ゆりっちに肩入れしたらタクヤに悪いじゃん」
「ああ、ムカつく。面白がってるでしょ。だからモテる奴は嫌いなんだよ」
「信じてないんだね、俺のこと」
この声色、ちょっとヤバイ時のだ。
こじれると厄介なので慌てて否定する。
「違う、違うよ。だってカイは誰にでも優しいから心配だよ。それに男を相手に男を取り合ったこともないし」
「確かに、誰もレクチャーできないでしょ、それ」
バレンタイン当日はタクヤ君を招待してお好み焼きパーティを開いた。
帰宅したカイは貰ったチョコを紙袋に入れて、部屋の隅に置いた。
何個貰ったか知りたかったが、カイが教えてくれるまで黙っていることにする。
バレンタインのチョコ獲得数の最高記録は高校3年の時の34個らしい。
CMに出演予定のタレントが醜聞で謹慎することになり、代人を探していた。
渋谷駅で友達と待ち合わせをしていたカイが、たまたまスカウトの目に留まってしまった。
頑なに断り続けたが、今回の一度きりの約束で出演を承諾した。
その清涼飲料水のCMで主役の若手女優を食ってしまい、あの隣りの子は誰?と話題を独占してしまった。
個人情報はもとより名前すら伏せてあったのに、すぐに学校も特定された。
タクヤはじめ友達の協力もあり、なんとか学校には迷惑をかけずに済んだ。
だが、執拗な追っかけを撒くのに苦労したらしい。
「あのまま有名人になっちゃうかと思ったよ。それじゃなくても目立つのに全国区じゃ、ライバル多すぎ」
タクヤ君にしたら気がきではなかったと思う。
宣戦布告に関しても、問い質すと誤解だとわかった。
自分でプリンを作ってみたら、予想に反して美味しく出来たので、私のと比べてどっちをカイが選ぶかで勝負をつけたかったのだという。
「味はあんまり変わらないけど、差がつくとしたら滑らかな舌触りとか微妙な触感だよね」
「そうそう、茶こしで2回濾したら滑らかになって、あと火加減が大事!強火だとスが入るから」
「たかがプリン、されどプリン」
「おまえらパティシエにでもなるのか。早くそっちのもひっくり返せ」
広島風お好み焼きを器用にひっくり返しながら、カイが怒鳴っている。
食後に洗い物をしていたら、カイが手伝いに来た。
また、食器にかける布巾と拭き専用の布巾を間違えている。
「だから、こっち」
「わかったから蹴るな」
そんなやり取りを見ていたタクヤが、突然閃いたように叫んだ。
「やっぱ、そうだ。カイがMで百合さんがSなんで、うまくいってるんだ」
「さっき、百合さんの足蹴りを嬉しそうに受けてるカイを見て確信したわ」
「うそ、国宝級のイケメンに足蹴りになんてしないよ」
「よく言うよ、寝ながら蹴り入れられたことあるし、顎にアッパーとか言ってグーパン入れられたこともある。寝言の声もでかいから、夜中に飛び起きたことが何度もあるし」
「カイって石像のように動かないの。笑っちゃうほど寝相良すぎるって。時々、生きてるか確かめるわ」
「・・・ベットでの話やめてくれるかな、しんどい」
冗談だと思って茶化そうと思ったら、タクヤ君の様子がおかしい。
「ごめん、つい・・・」
ちょっと気まずい空気が漂う。
「ホントはもっと慣れなくちゃダメだと思うんだけど、カミングアウトしたら今まで我慢できてたことが抑えられなくて、どうしようもないんだ。ゴメン、わかってるのに、どうしようもない、、、ヘンな空気になっちゃって、ゴメン」
「・・・謝るな」
「もっと強くなるよ、強くなって乗り越える」
「強くなくちゃダメなのかなぁ。弱ったときや、どうしようもない時は膝抱えてうずくまればいいじゃん。しんどいなら、ちょっと休んで、それでも立ち上がれなかったら、いつだって手を貸す。傍にいて欲しいなら、いくらだって居てやるさ。我儘だって言えばいいだろ、友達なんだから。そういうのって恋人だって友達だって同じだろ」
「・・・そうだな」
これってメリバ(メリーバットエンド)だ。
どうしよう、私が幸せを独占している。
まずい、涙が、、、。
「顔にデュクシ、腹にデュクシ、急所にデュクシ」
「容赦ねぇな、弱ってるのにボコボコかよ」
「ゆりっち、泣かしたから」
「違う、花粉症だよ。今年は量が多いからもう飛んでるし」
「涙腺もいろんなところも緩んじゃうお年頃ですから、ねぇ~」
「あっ許さない、花粉症になれ、絶対発症しろ!」
「これって下ネタ?」
「ああ、タクヤ黙れ、殴られるぞ、黙れ!」
というわけで、私の不機嫌度はピークです。
乙女心を蹂躙する言動は、絶対に許しません。
<レベル15>
2月の初めにバレンタインの話をしている時だった。
えっ、寝耳に水なんですけど、、、諦めたんじゃないの。
お正月の時の話と違うじゃないか。
「なにそれ、どう戦えばいいの?私、スキルないし」
「知らねぇ~、守りを固めればいいんじゃないですか」
「他人事みたいに言わないでよ。エスパーなんだから結界はって防いでくれないと」
「だから、そういうの使えないって言ったでしょ。それに、ゆりっちに肩入れしたらタクヤに悪いじゃん」
「ああ、ムカつく。面白がってるでしょ。だからモテる奴は嫌いなんだよ」
「信じてないんだね、俺のこと」
この声色、ちょっとヤバイ時のだ。
こじれると厄介なので慌てて否定する。
「違う、違うよ。だってカイは誰にでも優しいから心配だよ。それに男を相手に男を取り合ったこともないし」
「確かに、誰もレクチャーできないでしょ、それ」
バレンタイン当日はタクヤ君を招待してお好み焼きパーティを開いた。
帰宅したカイは貰ったチョコを紙袋に入れて、部屋の隅に置いた。
何個貰ったか知りたかったが、カイが教えてくれるまで黙っていることにする。
バレンタインのチョコ獲得数の最高記録は高校3年の時の34個らしい。
CMに出演予定のタレントが醜聞で謹慎することになり、代人を探していた。
渋谷駅で友達と待ち合わせをしていたカイが、たまたまスカウトの目に留まってしまった。
頑なに断り続けたが、今回の一度きりの約束で出演を承諾した。
その清涼飲料水のCMで主役の若手女優を食ってしまい、あの隣りの子は誰?と話題を独占してしまった。
個人情報はもとより名前すら伏せてあったのに、すぐに学校も特定された。
タクヤはじめ友達の協力もあり、なんとか学校には迷惑をかけずに済んだ。
だが、執拗な追っかけを撒くのに苦労したらしい。
「あのまま有名人になっちゃうかと思ったよ。それじゃなくても目立つのに全国区じゃ、ライバル多すぎ」
タクヤ君にしたら気がきではなかったと思う。
宣戦布告に関しても、問い質すと誤解だとわかった。
自分でプリンを作ってみたら、予想に反して美味しく出来たので、私のと比べてどっちをカイが選ぶかで勝負をつけたかったのだという。
「味はあんまり変わらないけど、差がつくとしたら滑らかな舌触りとか微妙な触感だよね」
「そうそう、茶こしで2回濾したら滑らかになって、あと火加減が大事!強火だとスが入るから」
「たかがプリン、されどプリン」
「おまえらパティシエにでもなるのか。早くそっちのもひっくり返せ」
広島風お好み焼きを器用にひっくり返しながら、カイが怒鳴っている。
食後に洗い物をしていたら、カイが手伝いに来た。
また、食器にかける布巾と拭き専用の布巾を間違えている。
「だから、こっち」
「わかったから蹴るな」
そんなやり取りを見ていたタクヤが、突然閃いたように叫んだ。
「やっぱ、そうだ。カイがMで百合さんがSなんで、うまくいってるんだ」
「さっき、百合さんの足蹴りを嬉しそうに受けてるカイを見て確信したわ」
「うそ、国宝級のイケメンに足蹴りになんてしないよ」
「よく言うよ、寝ながら蹴り入れられたことあるし、顎にアッパーとか言ってグーパン入れられたこともある。寝言の声もでかいから、夜中に飛び起きたことが何度もあるし」
「カイって石像のように動かないの。笑っちゃうほど寝相良すぎるって。時々、生きてるか確かめるわ」
「・・・ベットでの話やめてくれるかな、しんどい」
冗談だと思って茶化そうと思ったら、タクヤ君の様子がおかしい。
「ごめん、つい・・・」
ちょっと気まずい空気が漂う。
「ホントはもっと慣れなくちゃダメだと思うんだけど、カミングアウトしたら今まで我慢できてたことが抑えられなくて、どうしようもないんだ。ゴメン、わかってるのに、どうしようもない、、、ヘンな空気になっちゃって、ゴメン」
「・・・謝るな」
「もっと強くなるよ、強くなって乗り越える」
「強くなくちゃダメなのかなぁ。弱ったときや、どうしようもない時は膝抱えてうずくまればいいじゃん。しんどいなら、ちょっと休んで、それでも立ち上がれなかったら、いつだって手を貸す。傍にいて欲しいなら、いくらだって居てやるさ。我儘だって言えばいいだろ、友達なんだから。そういうのって恋人だって友達だって同じだろ」
「・・・そうだな」
これってメリバ(メリーバットエンド)だ。
どうしよう、私が幸せを独占している。
まずい、涙が、、、。
「顔にデュクシ、腹にデュクシ、急所にデュクシ」
「容赦ねぇな、弱ってるのにボコボコかよ」
「ゆりっち、泣かしたから」
「違う、花粉症だよ。今年は量が多いからもう飛んでるし」
「涙腺もいろんなところも緩んじゃうお年頃ですから、ねぇ~」
「あっ許さない、花粉症になれ、絶対発症しろ!」
「これって下ネタ?」
「ああ、タクヤ黙れ、殴られるぞ、黙れ!」
というわけで、私の不機嫌度はピークです。
乙女心を蹂躙する言動は、絶対に許しません。
<レベル15>
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