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7. アップルパイ
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頂いた紅玉でアップルパイを焼いた。
引っ越しの日にウーバーイーツでアップルパイを頼んでいたので、
甘いものは嫌いじゃないはず。
薄い壁に感謝。
料理は得意だ。ただ才能を発揮する機会がないだけ。
隣人の在宅は確認済。洗濯機を回して鼻歌を口ずさんでいた。
ご機嫌なのは好都合、ぞんざいな扱いを受けると心が折れる。
ピンポーーーン
キョトンとした顔も可愛い。
「あれ、お隣の綺麗なおねえさん」
いえいえ、正しくは優しいおねえさんですよね。
「頂いた林檎でアップルパイを焼いたので、いかがかと思って」
「うそっ、うそ、好き!好き、アップルパイ好きです」
お姉さんは好きという言葉に免疫がありません。
やたら連発するのはやめてください。心の臓によろしくない。
「いま、紅茶入れます。あがってください」
上がる前提ですか、ほかに選択肢はないのでしょうか。
仕方なく案内されたテーブルについた。
こじんまりした丸テーブルに2客の椅子。
必要最低限の数を揃えているらしい食器が棚に並んでいた。
小さな冷蔵庫に電子レンジ。
奥の部屋には”人をダメにするクッション”が鎮座していた。
「ダージリンとアールグレイ、どっちにしますか」
「ダージリンで」
即答してしまった。が、この顔面と向き合うのはムリ。
ましてや、狭い部屋で同じテーブルで何かを頂くなんてムリに決まってる。
「ごめんなさい。用事を思い出しました」
いつも冷静な隣人が驚いて、皿にセットしたフォークを落とした。
「そんなに急ぎの用事なの、今すぐじゃなきゃダメなの」
ああ、優しいお姉さんに、そんな声で甘えるのはご法度です。
かなり余裕がありません。身震いが止まりません。
「じゃあ、急いで食べます」
彼のお褒めの言葉も、ダージリンもパイの味もわからなかった。
いたたまれなくて、早送りでやり過ごしたけど、
出来ることなら巻き戻したいくらいの幸せな時間だった。
甘いアップルパイに<レベル85>
引っ越しの日にウーバーイーツでアップルパイを頼んでいたので、
甘いものは嫌いじゃないはず。
薄い壁に感謝。
料理は得意だ。ただ才能を発揮する機会がないだけ。
隣人の在宅は確認済。洗濯機を回して鼻歌を口ずさんでいた。
ご機嫌なのは好都合、ぞんざいな扱いを受けると心が折れる。
ピンポーーーン
キョトンとした顔も可愛い。
「あれ、お隣の綺麗なおねえさん」
いえいえ、正しくは優しいおねえさんですよね。
「頂いた林檎でアップルパイを焼いたので、いかがかと思って」
「うそっ、うそ、好き!好き、アップルパイ好きです」
お姉さんは好きという言葉に免疫がありません。
やたら連発するのはやめてください。心の臓によろしくない。
「いま、紅茶入れます。あがってください」
上がる前提ですか、ほかに選択肢はないのでしょうか。
仕方なく案内されたテーブルについた。
こじんまりした丸テーブルに2客の椅子。
必要最低限の数を揃えているらしい食器が棚に並んでいた。
小さな冷蔵庫に電子レンジ。
奥の部屋には”人をダメにするクッション”が鎮座していた。
「ダージリンとアールグレイ、どっちにしますか」
「ダージリンで」
即答してしまった。が、この顔面と向き合うのはムリ。
ましてや、狭い部屋で同じテーブルで何かを頂くなんてムリに決まってる。
「ごめんなさい。用事を思い出しました」
いつも冷静な隣人が驚いて、皿にセットしたフォークを落とした。
「そんなに急ぎの用事なの、今すぐじゃなきゃダメなの」
ああ、優しいお姉さんに、そんな声で甘えるのはご法度です。
かなり余裕がありません。身震いが止まりません。
「じゃあ、急いで食べます」
彼のお褒めの言葉も、ダージリンもパイの味もわからなかった。
いたたまれなくて、早送りでやり過ごしたけど、
出来ることなら巻き戻したいくらいの幸せな時間だった。
甘いアップルパイに<レベル85>
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