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瀝青上の考察
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暑い。
濛々と熱気が立ち込め、日中はゆうに30℃を上回る気温だと天気予報に書いてあった。
夏バテなのか、何をしようにも気分が乗らない。 悩み事があると陰っていくのが心の常だが、ここのところ極めてそれが顕著だ。
当てつけがましく、窓から覗く陽はどんどん強さを増していく。
どうもこの部屋は空気が悪い。
特に考えず外に出た。
すでに干からびたような躰に、大きく穴を開けるような日がさした。どこへ行こうか。
そういえば、年明けに財布を落としたことがあった。 確か涼しげな森林だった。そこへ行こう。
いそいそとバイクを引き摺り出し、木陰まで逃げる。 しかし暑すぎる。
荷物はどうする、どこで休憩しよう、死にはしないだろうが、大丈夫だろうか。
考え巡らすが、頭と体は別に、足はキックアームを押さえつけた。
甲高い音と共に煙を吐き出す。当たる風もあつい。 火にいる夏の虫のように、陽炎に構え走っていく。
***
大分きただろうか。
ヘルメットの中は当然、全身から汗が湧いてくる。 意識も遠くなりそうだ、この天下では全てが晒されてしまう。
何故無為にガソリンやオイル、付随して消耗するもの、体力、時間、全てを減らしてまでバイクに乗っているんだろう。
馬鹿馬鹿しい。本当に無駄で仕方ない。 何が自分の動力になっているのだろう。
長く緩いカーブの続く道を抜け、しばらく走らせているとナビは右折を促した。 民家はあるものの、とても狭い道だ。
一旦バイクを停め確認すると、目的地はもうすぐだった。この道をゆけば着くだろうと思いナビは切った。
見えていた民家はフィルアウトのように途切れていき、木々が囲む尤もらしい山道となった。
山の空気だ。
都会とはまるで違う、空気が、時間が、流れている。
気温はほとんど変わらず暑いままだった。
しかし、低く淀んだあの自室よりも、明らかに空気が良い。
気分も相応に晴れ、元々何で悩んでいたかすらも忘れてしまうほどだった。
意味はあったのかもしれない。
無為ではなかったのかもしれない。
またここに逃げてくるだろう。
何かを何かで忘れるために。
濛々と熱気が立ち込め、日中はゆうに30℃を上回る気温だと天気予報に書いてあった。
夏バテなのか、何をしようにも気分が乗らない。 悩み事があると陰っていくのが心の常だが、ここのところ極めてそれが顕著だ。
当てつけがましく、窓から覗く陽はどんどん強さを増していく。
どうもこの部屋は空気が悪い。
特に考えず外に出た。
すでに干からびたような躰に、大きく穴を開けるような日がさした。どこへ行こうか。
そういえば、年明けに財布を落としたことがあった。 確か涼しげな森林だった。そこへ行こう。
いそいそとバイクを引き摺り出し、木陰まで逃げる。 しかし暑すぎる。
荷物はどうする、どこで休憩しよう、死にはしないだろうが、大丈夫だろうか。
考え巡らすが、頭と体は別に、足はキックアームを押さえつけた。
甲高い音と共に煙を吐き出す。当たる風もあつい。 火にいる夏の虫のように、陽炎に構え走っていく。
***
大分きただろうか。
ヘルメットの中は当然、全身から汗が湧いてくる。 意識も遠くなりそうだ、この天下では全てが晒されてしまう。
何故無為にガソリンやオイル、付随して消耗するもの、体力、時間、全てを減らしてまでバイクに乗っているんだろう。
馬鹿馬鹿しい。本当に無駄で仕方ない。 何が自分の動力になっているのだろう。
長く緩いカーブの続く道を抜け、しばらく走らせているとナビは右折を促した。 民家はあるものの、とても狭い道だ。
一旦バイクを停め確認すると、目的地はもうすぐだった。この道をゆけば着くだろうと思いナビは切った。
見えていた民家はフィルアウトのように途切れていき、木々が囲む尤もらしい山道となった。
山の空気だ。
都会とはまるで違う、空気が、時間が、流れている。
気温はほとんど変わらず暑いままだった。
しかし、低く淀んだあの自室よりも、明らかに空気が良い。
気分も相応に晴れ、元々何で悩んでいたかすらも忘れてしまうほどだった。
意味はあったのかもしれない。
無為ではなかったのかもしれない。
またここに逃げてくるだろう。
何かを何かで忘れるために。
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