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アタック・オブ・ザ・キラードーナツ
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「こんばんはぁ。お邪魔してます」
柔らかな声に、恵叶と紗美はその場で固まった。
我が家のリビングに、二人の女性がいた。
一人はチョコのかかったドーナツをもぐもぐして、くつろいでいる。
口元に笑みを湛えていて、優しそうなお姉さんといった印象を受けた。
もう一人は髪も肌も真っ白で、天使の絵画からそのまま飛び出してきたかのようだ。浮き世離れした美しさがあるが、
「あー帰ってきちゃったぁ……最悪。マジ最悪ですよぅ……」
と何故かずっと怯えているせいで、色々と台無しである。
……これが天使ね。
紗美から聞いていた、凄腕のトップ4。
自分で『天使』を名乗るなんて、ちょっとアレだと思っていたが、生で見ると言い得て妙だ。
確かに二人とも人間というより、天使っぽい凄みと美しさがある。
ドーナツを食べ終えた女性は立ち上がると、二人に向かって丁寧にお辞儀した。
「お邪魔していますー。私はラファエル。そっちの椅子に隠れようとしているのが、ガブリエル。よろしくねぇ」
ほわほわした話し方だった。
「私は恵叶。こっちは紗美」
「うん。ショウね」
ほわほわしているのに、そこは譲りたくないらしい。
「エージェントネーム、ショウって言うの?」
「そうよ」
今度何かに使おうと、記憶に留めておくことにする。もちろん、エッチなことに。
「……ドーナツは美味しかった?」
訊ねながら、恵叶は神経を研ぎ澄ませた。
三人いるようだが、警戒すべきはこのラファエル一人でよさそうだ。
隣の部屋にいるのは全くの素人だし、ガブリエルからは殺気を感じない。
「うん、美味しかった。あれはどこのメーカー? また補充しておいてね」
いいわよ、と恵叶は軽く応じてから、
「ところで、どうやって家に入ったの? 不法侵入なんてできないはずだけど」
そう、そのはずだ。だから、家に一度寄ったというのに。
ラファエルが壁に設置された、室内AIを指した。
「普通に玄関から入ったわ。ほらぁ、警報が出ていたから。緊急時には、第三者の介入が許されるのは知っているわよね? 家の者が事前に許可した、いわゆる『緊急連絡先』だけど……。ねえ、ヤナ?」
そういえば、警報鳴ってたっけ。色々ありすぎて忘れてた。
隣の部屋から、真っ青な顔色の女性が現れた。決して紗美のほうを見ようとせず、じっと俯いている。
紗美が少しだけ息をのむ気配がした。
……あれは優菜さん。
紗美の職場での友達だ。何度か一緒に、三人で出かけたことがある。
彼女が紗美を売って、天使を招き入れたということらしい。
友達として色々思うところはあるだろうが、紗美が何も言わなかったので、恵叶も黙っていた。
「ご、ごめんなさい、ショウ……」
消え入りそうな声で謝るヤナに、ラファエルの眉がぴくりと動いた。
「……それは、何に対して謝ってるの?」
先ほどとはまるで異なる、心臓が凍り付きそうな声色に、ヤナががたがた震えだした。
明らかに、天使たちの間には序列がある。
ところが、こちらに向き直ったラファエルは、仲間を脅した事実などなかったように、優しく笑っていた。
「ヤナを責めないであげてね。どのみちこうなった以上、下手にかばうことはできなかったはずだから」
CASにはいないタイプに、恵叶はぞっとした。
この人、怖いわ……。振り切れた性格してる。
「駄目じゃない、ショウ。仕事に情を挟んだら。それとも、最初から通じていたの?」
「違うわよ、馬鹿ね」
痛っ!
早業だった。
紗美に膝裏を蹴られた恵叶は、何が起こったかわからないまま、がくんと膝を突いた。
頭を押さえつけられ、床で額を打ち、ジンとした痛みが走る。また警報が鳴り響くかと思ったが、予想に反して家は静かだった。
「……?」
ああ、そっか。
『緊急連絡先』はすでに介入しているし、家の外では二人をカウンセリングに連れて行こうと、ロボが待機している。
確か、カウンセリングを受けさせるための、多少の強制行為は許されていたはずだ。AIはそれかもしれないと判断し、今のところは静観しているのだろう。
ということは、多少は暴れても大丈夫……。
考えていると、頭上から絶対零度の声が降ってきた。
「情なんて挟んでないわ。家の中で警報が鳴ったのは、こいつを殺そうとしたせいで」
「紗美っ……!」
恵叶は悔しそうに唇を噛んで、紗美を睨み付けるふりをする。
「異世界では手こずったけれど、こうしてあなたたちが迎えに来てくれてよかったわ。さあ、連れて行きましょう」
「ふ、ふふっ。やれるもんなら……やってみたらっ……!」
恵叶は挑発的に笑ってみせる。紗美がうっとおしそうに、頭をつかむ手に力を込めた。
紗美のポケットから、スマホが覗いている。恵叶はこっそり指を伸ばすと、パスポートの準備を始めた。伏せているので、天使二人からは見えていないはずだ。
「あー……じゃあ早く行きましょぉ……。もう嫌ですぅ。裏切り者の始末とか、最悪の仕事ですよ……。早く終わらせたいぃ……」
「ええ、行きましょ」
紗美が恵叶に立ち上がるよう促す。恵叶がパスポート起動のタイミングをうかがっていると、ラファエルが「仲悪いのね」とにこやかに笑った。
「でも……ねえ、ショウ」
「何?」
「鎖骨にキスマーク付いてるけど。異世界ではかなーり仲良くしてたんじゃない?」
「……」
時間が止まった。
紗美はみるみるうちに顔を赤くすると、何故か恵叶の頭をぶっ叩いてきた。
「いった! さっきより痛い!」
「恵叶が馬鹿みたいに付けるから!」
「だって、紗美が付けてっておねだりし……」
「してない!」
言い争っていると、「仲良しねぇ」とラファエルがほわほわ笑った。
「さてさて。捕まえる動きなら、AIは暴力と判定しないようね。やりやすくて良かったわぁ」
ラファエルはテーブルクロスを引き抜くと、ばたりとはためかせた。布の一端を持って、こちらに投げつけてくる。
たたき落とそうと反射的に手が出てしまい、布が手首に絡みついた。
ぐいと引かれて体勢を崩されそうになるが、恵叶はその前に拘束から抜け出す。
と、ラファエルが指先をぴんと揃えて素早く突きを繰り出してきた。払いながら後退していると、急にラファエルの体が沈んだ。
ぐっとかがみ込んで半身をひねり、勢いを付けている。固く握った拳が突き上げるように動くのが見えた。
裏拳……!
避けようとしたが、どん、と背中に何かが当たった。
食器棚だ。これ以上は退がれない。
横から、紗美がラファエルに掌底を打とうと動いた。ラファエルがさっと避けて、恵叶はその間に場所を移動する。
「……これのどこが捕まえる動きよ」
呆れたように言うと、ラファエルが肩をすくめた。
「あなたが対応しちゃうからねぇ。だから、AIも大したことないと判断してるのよ」
「ガバガバ判定すぎない?」
「臨機応変に判定しているのよ、きっと」
だったら、こっちも臨機応変に逃げないと。
紗美に向かってこくりと頷く。二人で廊下に向かって走り出した。
リビングを出たところで、ガブリエルがうずくまっていた。現状を呪って、ぶつぶつと呪詛を吐いている。
「あーもう……最悪です。最悪ですよ……。来るんじゃなかったぁ……」
全然やる気が感じられないし、立ち上がる気配もない。放っておこうと、恵叶は走り続ける。だが、
「恵叶、駄目! その子は……」
ガブリエルを飛び越そうとした、そのときだった。一瞬で彼女の姿が消えた。
はっ!?
「上よ!」
見上げると、階段の上に真っ白なかたまりがいた。
どうやって移動したのか、見当も付かない。こちらに向かって、大きなモーションで蹴りを入れようとしている。
速すぎる。この私が目で追えなかった。
大技でなかったら、対処できなかったかもしれない。
一撃を払うと、恵叶はがら空きの胴に蹴りをめり込ませた。
鈍い音がする。
ぎゃふ、とガブリエルが呻き声を上げて、階段に激突した。
「痛いぃ……。もう嫌です。早く終わらせて帰りたいぃ……」
ガブリエルが膝を抱えて、いじけ出す。廊下のど真ん中にいるので、非常に邪魔である。
何だったの、今の。なんて考える暇はなかった。
「きゃっ」という紗美の悲鳴に、恵叶は動けなくなる。
「……だからねぇ、ガブリエル。早く帰りたいからって、一撃必殺を使っても、当たらなければ意味ないのよ」
振り返ると、紗美がガブリエルに捕まっていた。手を背中に回されて、身動きできないでいる。
「はい、それじゃ二人とも。抵抗しないでねー」
ラファエルがちょいちょい手招きする。
「私に構わなくていいから」と紗美は訴えていたが、恵叶は素直に従った。
紗美を人質に取られたら、もう終わりだ。
私が下手に動いたら、紗美に危害が及ぶ。そんなことはさせない。たとえ、何があっても、私は紗美を守るため、絶対に妙な行動は取らな……。
「恵叶、聞いて……。私……」
紗美がそっと口を開く。
「私、ラファエルとキスしたことあるの。もちろん仕事で」
パカーン!
「うぎゃっ」
考える前に、体が動いていた。
膝を上げて一時静止し、そこから垂直に蹴り上げた。いい音がして、蹴りがラファエルの顎にヒットする。
ラファエルもまさかそんな暴挙に出るとは思っていなかったらしく、こちらがびっくりするほど綺麗に入ってしまった。
「紗美!」
「待て、このっ……! ガブリエル、動いて!」
「やああぁ……。逃げられちゃう、ラファエルに怒られるぅ……。うええん」
「いや泣いてないで!」
紗美の手を引いて、廊下を走り出す。刺客から十分な距離を取ると、二人で異世界にジャンプした。
柔らかな声に、恵叶と紗美はその場で固まった。
我が家のリビングに、二人の女性がいた。
一人はチョコのかかったドーナツをもぐもぐして、くつろいでいる。
口元に笑みを湛えていて、優しそうなお姉さんといった印象を受けた。
もう一人は髪も肌も真っ白で、天使の絵画からそのまま飛び出してきたかのようだ。浮き世離れした美しさがあるが、
「あー帰ってきちゃったぁ……最悪。マジ最悪ですよぅ……」
と何故かずっと怯えているせいで、色々と台無しである。
……これが天使ね。
紗美から聞いていた、凄腕のトップ4。
自分で『天使』を名乗るなんて、ちょっとアレだと思っていたが、生で見ると言い得て妙だ。
確かに二人とも人間というより、天使っぽい凄みと美しさがある。
ドーナツを食べ終えた女性は立ち上がると、二人に向かって丁寧にお辞儀した。
「お邪魔していますー。私はラファエル。そっちの椅子に隠れようとしているのが、ガブリエル。よろしくねぇ」
ほわほわした話し方だった。
「私は恵叶。こっちは紗美」
「うん。ショウね」
ほわほわしているのに、そこは譲りたくないらしい。
「エージェントネーム、ショウって言うの?」
「そうよ」
今度何かに使おうと、記憶に留めておくことにする。もちろん、エッチなことに。
「……ドーナツは美味しかった?」
訊ねながら、恵叶は神経を研ぎ澄ませた。
三人いるようだが、警戒すべきはこのラファエル一人でよさそうだ。
隣の部屋にいるのは全くの素人だし、ガブリエルからは殺気を感じない。
「うん、美味しかった。あれはどこのメーカー? また補充しておいてね」
いいわよ、と恵叶は軽く応じてから、
「ところで、どうやって家に入ったの? 不法侵入なんてできないはずだけど」
そう、そのはずだ。だから、家に一度寄ったというのに。
ラファエルが壁に設置された、室内AIを指した。
「普通に玄関から入ったわ。ほらぁ、警報が出ていたから。緊急時には、第三者の介入が許されるのは知っているわよね? 家の者が事前に許可した、いわゆる『緊急連絡先』だけど……。ねえ、ヤナ?」
そういえば、警報鳴ってたっけ。色々ありすぎて忘れてた。
隣の部屋から、真っ青な顔色の女性が現れた。決して紗美のほうを見ようとせず、じっと俯いている。
紗美が少しだけ息をのむ気配がした。
……あれは優菜さん。
紗美の職場での友達だ。何度か一緒に、三人で出かけたことがある。
彼女が紗美を売って、天使を招き入れたということらしい。
友達として色々思うところはあるだろうが、紗美が何も言わなかったので、恵叶も黙っていた。
「ご、ごめんなさい、ショウ……」
消え入りそうな声で謝るヤナに、ラファエルの眉がぴくりと動いた。
「……それは、何に対して謝ってるの?」
先ほどとはまるで異なる、心臓が凍り付きそうな声色に、ヤナががたがた震えだした。
明らかに、天使たちの間には序列がある。
ところが、こちらに向き直ったラファエルは、仲間を脅した事実などなかったように、優しく笑っていた。
「ヤナを責めないであげてね。どのみちこうなった以上、下手にかばうことはできなかったはずだから」
CASにはいないタイプに、恵叶はぞっとした。
この人、怖いわ……。振り切れた性格してる。
「駄目じゃない、ショウ。仕事に情を挟んだら。それとも、最初から通じていたの?」
「違うわよ、馬鹿ね」
痛っ!
早業だった。
紗美に膝裏を蹴られた恵叶は、何が起こったかわからないまま、がくんと膝を突いた。
頭を押さえつけられ、床で額を打ち、ジンとした痛みが走る。また警報が鳴り響くかと思ったが、予想に反して家は静かだった。
「……?」
ああ、そっか。
『緊急連絡先』はすでに介入しているし、家の外では二人をカウンセリングに連れて行こうと、ロボが待機している。
確か、カウンセリングを受けさせるための、多少の強制行為は許されていたはずだ。AIはそれかもしれないと判断し、今のところは静観しているのだろう。
ということは、多少は暴れても大丈夫……。
考えていると、頭上から絶対零度の声が降ってきた。
「情なんて挟んでないわ。家の中で警報が鳴ったのは、こいつを殺そうとしたせいで」
「紗美っ……!」
恵叶は悔しそうに唇を噛んで、紗美を睨み付けるふりをする。
「異世界では手こずったけれど、こうしてあなたたちが迎えに来てくれてよかったわ。さあ、連れて行きましょう」
「ふ、ふふっ。やれるもんなら……やってみたらっ……!」
恵叶は挑発的に笑ってみせる。紗美がうっとおしそうに、頭をつかむ手に力を込めた。
紗美のポケットから、スマホが覗いている。恵叶はこっそり指を伸ばすと、パスポートの準備を始めた。伏せているので、天使二人からは見えていないはずだ。
「あー……じゃあ早く行きましょぉ……。もう嫌ですぅ。裏切り者の始末とか、最悪の仕事ですよ……。早く終わらせたいぃ……」
「ええ、行きましょ」
紗美が恵叶に立ち上がるよう促す。恵叶がパスポート起動のタイミングをうかがっていると、ラファエルが「仲悪いのね」とにこやかに笑った。
「でも……ねえ、ショウ」
「何?」
「鎖骨にキスマーク付いてるけど。異世界ではかなーり仲良くしてたんじゃない?」
「……」
時間が止まった。
紗美はみるみるうちに顔を赤くすると、何故か恵叶の頭をぶっ叩いてきた。
「いった! さっきより痛い!」
「恵叶が馬鹿みたいに付けるから!」
「だって、紗美が付けてっておねだりし……」
「してない!」
言い争っていると、「仲良しねぇ」とラファエルがほわほわ笑った。
「さてさて。捕まえる動きなら、AIは暴力と判定しないようね。やりやすくて良かったわぁ」
ラファエルはテーブルクロスを引き抜くと、ばたりとはためかせた。布の一端を持って、こちらに投げつけてくる。
たたき落とそうと反射的に手が出てしまい、布が手首に絡みついた。
ぐいと引かれて体勢を崩されそうになるが、恵叶はその前に拘束から抜け出す。
と、ラファエルが指先をぴんと揃えて素早く突きを繰り出してきた。払いながら後退していると、急にラファエルの体が沈んだ。
ぐっとかがみ込んで半身をひねり、勢いを付けている。固く握った拳が突き上げるように動くのが見えた。
裏拳……!
避けようとしたが、どん、と背中に何かが当たった。
食器棚だ。これ以上は退がれない。
横から、紗美がラファエルに掌底を打とうと動いた。ラファエルがさっと避けて、恵叶はその間に場所を移動する。
「……これのどこが捕まえる動きよ」
呆れたように言うと、ラファエルが肩をすくめた。
「あなたが対応しちゃうからねぇ。だから、AIも大したことないと判断してるのよ」
「ガバガバ判定すぎない?」
「臨機応変に判定しているのよ、きっと」
だったら、こっちも臨機応変に逃げないと。
紗美に向かってこくりと頷く。二人で廊下に向かって走り出した。
リビングを出たところで、ガブリエルがうずくまっていた。現状を呪って、ぶつぶつと呪詛を吐いている。
「あーもう……最悪です。最悪ですよ……。来るんじゃなかったぁ……」
全然やる気が感じられないし、立ち上がる気配もない。放っておこうと、恵叶は走り続ける。だが、
「恵叶、駄目! その子は……」
ガブリエルを飛び越そうとした、そのときだった。一瞬で彼女の姿が消えた。
はっ!?
「上よ!」
見上げると、階段の上に真っ白なかたまりがいた。
どうやって移動したのか、見当も付かない。こちらに向かって、大きなモーションで蹴りを入れようとしている。
速すぎる。この私が目で追えなかった。
大技でなかったら、対処できなかったかもしれない。
一撃を払うと、恵叶はがら空きの胴に蹴りをめり込ませた。
鈍い音がする。
ぎゃふ、とガブリエルが呻き声を上げて、階段に激突した。
「痛いぃ……。もう嫌です。早く終わらせて帰りたいぃ……」
ガブリエルが膝を抱えて、いじけ出す。廊下のど真ん中にいるので、非常に邪魔である。
何だったの、今の。なんて考える暇はなかった。
「きゃっ」という紗美の悲鳴に、恵叶は動けなくなる。
「……だからねぇ、ガブリエル。早く帰りたいからって、一撃必殺を使っても、当たらなければ意味ないのよ」
振り返ると、紗美がガブリエルに捕まっていた。手を背中に回されて、身動きできないでいる。
「はい、それじゃ二人とも。抵抗しないでねー」
ラファエルがちょいちょい手招きする。
「私に構わなくていいから」と紗美は訴えていたが、恵叶は素直に従った。
紗美を人質に取られたら、もう終わりだ。
私が下手に動いたら、紗美に危害が及ぶ。そんなことはさせない。たとえ、何があっても、私は紗美を守るため、絶対に妙な行動は取らな……。
「恵叶、聞いて……。私……」
紗美がそっと口を開く。
「私、ラファエルとキスしたことあるの。もちろん仕事で」
パカーン!
「うぎゃっ」
考える前に、体が動いていた。
膝を上げて一時静止し、そこから垂直に蹴り上げた。いい音がして、蹴りがラファエルの顎にヒットする。
ラファエルもまさかそんな暴挙に出るとは思っていなかったらしく、こちらがびっくりするほど綺麗に入ってしまった。
「紗美!」
「待て、このっ……! ガブリエル、動いて!」
「やああぁ……。逃げられちゃう、ラファエルに怒られるぅ……。うええん」
「いや泣いてないで!」
紗美の手を引いて、廊下を走り出す。刺客から十分な距離を取ると、二人で異世界にジャンプした。
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