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【復讐編20】一応の決着と新たなる謎
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「バ…カな…」
胴体とお別れした女の頭が地面へと落ちる。
「さすがに、首だけでは動けないようだな。」
見下ろすように椿は言い放った。
「魂さえあればこんなメスガキどもに…!!」
女は首だけで悪態をつくものの、何もできない。
椿は女に背を向けると、灯里の方へと歩いて行く。
「すまない灯里ちゃん、すっかり迷惑をかけてしまった。颯士君も。」
いやいや、と手と首を振る颯士。
「それより今のは…?」
気が付いたら女の首が落ちていた。
そうとしか言いようがない。
「ただ抜刀して、斬って、納刀した。それだけさ。」
「全く見えなかった…それに、あの人を斬れる能力を身に付けたんですね!」
信じられない、と言った表情の颯士に椿は付け加える。
「いや、私1人の力ではなかった。」
椿が刀を抜いて見せると刀身から出た僅かな白い煙が揺らいでいる。
「先程、灯里ちゃんが力を貸してくれていたんだ。」
残った僅かなエネルギーで刀身を包んでいたのだろう。
「まだ、私だけの技量ではあの女を斬ることはできなかっただろう」
そう言って女の方を振り向くと…
女の頭部を持ち上げて逃走しようとしている新島がいた。
「あ、やべっ」
話し込んでいる間に逃げるつもりだったのであろう。
新島は女の頭を抱えて入り口へ走り出した。
「逃がすか!」
椿が追いかけるが新島は能力で数本の紺色ナイフを作り出し、投げつけながら走って行く。
ナイフは刀で弾くものの、なんとも走りづらい。
「まだ力を失いたくはないんで!」
そう言うと新島は全力で逃げに入る。
完全に逃げに徹されるとなかなか追い付くのは難しい。
「それではまた!」
思いの外身軽な新島は、そのまま女を担いだまま去ってしまった。
「くそっ!油断した!」
椿は悔しがっていたが颯士は内心ホッとしていた。
逃げた、と言うことは今日はこれ以上の戦いはないことを示していた。
・
・
・
その後、灯里は少し寝たら意識を取り戻した。
女から受けた攻撃よりも完全なエネルギー切れがキツかったらしい。
「いやー、面目ない!ご心配お掛けしました!」
明るく言い放つ灯里に一同はホッとしながらも、各々がバツの悪い気持ちになる。
他人を巻き込んでしまった椿。
最後まで戦い抜けなかった灯里。
最後は女子頼りになった颯士。
なんとか敵を追い返したものの、完全勝利と言う気分にはなれなかった。
しばらく気まずい雰囲気が流れた後、椿がスッと口を開いた。
「改めて、今回は力を貸してくれたこと、非常に感謝している。」
そう言って、手をついて頭を下げた。
「「いえいえ、こちらこそ」」
椿の畏(かしこ)まった態度に二人は圧倒され、思わず手をついて頭を下げ返してしまう。
「正直、二人の手助けがなければ今ごろは魂を取られて死人同然になっていたことだろう。」
「私なんて魂取られちゃったしね」
灯里がバツの悪そうに茶化すが、その後、急に真顔になる。
「魂を取られた時に思ったのだけど」
椿と颯士は同時に頷く。
「あの女の人、多分…何と言うか、『既に死んでいる』と思ったのよね」
うーん、と唸ってから颯士は言いづらそうに、
「死んでるどころか不死身すぎだと思うけど…」
などとツッコミのようなものを入れるが、椿は思い当たるフシがあるようだ。
「聞かせてくれ。」
続きを催促する椿に今度は灯里が頷く。
「普段、能力で具現化したものは固さも変えられるし、壊すこともできるのだけど」
スッ、とワイングラスを具現化し、それで地面を強めに叩いて見せる。
地面で割れた様子を見せると、『回収』をして消して見せる。
「今度はこっちを見て欲しい」
灯里は自分の胸の辺りに手を当てると、『んっ…』と少し苦しそうにして『白く光った玉』を取り出す。
「ちょっ、それ魂じゃ…」
颯士が青ざめて言うが、
「そう、魂を少しだけ『そのまま』取り出してみたの」
地面にそっと魂を置く。
「椿ちゃん、ちょっとこれ、刀で斬ってみて。」
灯里の額に汗が滴る。
「え?大丈夫なのか?」
椿は躊躇するが
「とにかくやって見て」
と、真剣な灯里に押されるように刀を抜く。
「ふっ…」
短く呼吸をしながら斬りつけるが玉に刃は通らない。
「この感触は…」
コロコロと転がる玉を拾い、胸からスッと体内に入れ込むと
「そう、無加工の魂は他人が形を変えたり壊したりはできない」
と、話を続ける。
椿も合点がいったようだ。
「つまりあの女は…」
「そう、『魂だけ』で存在している。」
胴体とお別れした女の頭が地面へと落ちる。
「さすがに、首だけでは動けないようだな。」
見下ろすように椿は言い放った。
「魂さえあればこんなメスガキどもに…!!」
女は首だけで悪態をつくものの、何もできない。
椿は女に背を向けると、灯里の方へと歩いて行く。
「すまない灯里ちゃん、すっかり迷惑をかけてしまった。颯士君も。」
いやいや、と手と首を振る颯士。
「それより今のは…?」
気が付いたら女の首が落ちていた。
そうとしか言いようがない。
「ただ抜刀して、斬って、納刀した。それだけさ。」
「全く見えなかった…それに、あの人を斬れる能力を身に付けたんですね!」
信じられない、と言った表情の颯士に椿は付け加える。
「いや、私1人の力ではなかった。」
椿が刀を抜いて見せると刀身から出た僅かな白い煙が揺らいでいる。
「先程、灯里ちゃんが力を貸してくれていたんだ。」
残った僅かなエネルギーで刀身を包んでいたのだろう。
「まだ、私だけの技量ではあの女を斬ることはできなかっただろう」
そう言って女の方を振り向くと…
女の頭部を持ち上げて逃走しようとしている新島がいた。
「あ、やべっ」
話し込んでいる間に逃げるつもりだったのであろう。
新島は女の頭を抱えて入り口へ走り出した。
「逃がすか!」
椿が追いかけるが新島は能力で数本の紺色ナイフを作り出し、投げつけながら走って行く。
ナイフは刀で弾くものの、なんとも走りづらい。
「まだ力を失いたくはないんで!」
そう言うと新島は全力で逃げに入る。
完全に逃げに徹されるとなかなか追い付くのは難しい。
「それではまた!」
思いの外身軽な新島は、そのまま女を担いだまま去ってしまった。
「くそっ!油断した!」
椿は悔しがっていたが颯士は内心ホッとしていた。
逃げた、と言うことは今日はこれ以上の戦いはないことを示していた。
・
・
・
その後、灯里は少し寝たら意識を取り戻した。
女から受けた攻撃よりも完全なエネルギー切れがキツかったらしい。
「いやー、面目ない!ご心配お掛けしました!」
明るく言い放つ灯里に一同はホッとしながらも、各々がバツの悪い気持ちになる。
他人を巻き込んでしまった椿。
最後まで戦い抜けなかった灯里。
最後は女子頼りになった颯士。
なんとか敵を追い返したものの、完全勝利と言う気分にはなれなかった。
しばらく気まずい雰囲気が流れた後、椿がスッと口を開いた。
「改めて、今回は力を貸してくれたこと、非常に感謝している。」
そう言って、手をついて頭を下げた。
「「いえいえ、こちらこそ」」
椿の畏(かしこ)まった態度に二人は圧倒され、思わず手をついて頭を下げ返してしまう。
「正直、二人の手助けがなければ今ごろは魂を取られて死人同然になっていたことだろう。」
「私なんて魂取られちゃったしね」
灯里がバツの悪そうに茶化すが、その後、急に真顔になる。
「魂を取られた時に思ったのだけど」
椿と颯士は同時に頷く。
「あの女の人、多分…何と言うか、『既に死んでいる』と思ったのよね」
うーん、と唸ってから颯士は言いづらそうに、
「死んでるどころか不死身すぎだと思うけど…」
などとツッコミのようなものを入れるが、椿は思い当たるフシがあるようだ。
「聞かせてくれ。」
続きを催促する椿に今度は灯里が頷く。
「普段、能力で具現化したものは固さも変えられるし、壊すこともできるのだけど」
スッ、とワイングラスを具現化し、それで地面を強めに叩いて見せる。
地面で割れた様子を見せると、『回収』をして消して見せる。
「今度はこっちを見て欲しい」
灯里は自分の胸の辺りに手を当てると、『んっ…』と少し苦しそうにして『白く光った玉』を取り出す。
「ちょっ、それ魂じゃ…」
颯士が青ざめて言うが、
「そう、魂を少しだけ『そのまま』取り出してみたの」
地面にそっと魂を置く。
「椿ちゃん、ちょっとこれ、刀で斬ってみて。」
灯里の額に汗が滴る。
「え?大丈夫なのか?」
椿は躊躇するが
「とにかくやって見て」
と、真剣な灯里に押されるように刀を抜く。
「ふっ…」
短く呼吸をしながら斬りつけるが玉に刃は通らない。
「この感触は…」
コロコロと転がる玉を拾い、胸からスッと体内に入れ込むと
「そう、無加工の魂は他人が形を変えたり壊したりはできない」
と、話を続ける。
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「そう、『魂だけ』で存在している。」
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