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【制服狩り編8】質疑応答はどちらかが多少の我慢を強いられることがよくある
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「おい!こら!ここから出すニャ!!」
ゴンゴンゴンゴンゴンゴン!
アイアンメイデンの中から綺羅々様の声と、脱出しようと内部を叩く音が響いてくる。
灯里は大の字に倒れたまま
「颯士、あと任せた」
と、颯士に託した。
颯士はアイアンメイデンにノックし、話す意思表示をした。
「ちょっといいか?」
アイアンメイデンを叩く音が消え、返事が返ってくる。
「なんだニャ」
当然といえば当然だが、酷く不機嫌な声だ。
「いくつか質問に答えて貰いたい」
「…言うだけ言ってみろニャ」
意外にも拒否しないのは、立場を理解しているからだろう。
こちらがその気になればメイデンごと海へボチャン、も可能だからだ。
「1つ目、この集まりは何だ?何を目的としている?」
「…」
顔は見えないが言いたくなさそうな間を感じる。が、拒否権はないと観念したのかポツポツと語り始める。
「…この集まりは『春葬会(しゅんそうかい)』」
ふぅ…、とため息が聞こえ、その後にまた続く。
「学生時代に青春できなかった金持ちのおっさんやおばさん、リア充を憎む学生なんかが集まって、リア充へのヘイトを発散させる会ニャ」
「な、なにそれ」
「リア充爆発しろってことニャ」
そんな要約されても、と思いながらも根気を持って質問を続ける。
「それと制服狩りとで何の関係が?」
「春葬会のメンバーは青春にコンプレックスはあっても社会的地位やお金がある人達ばかりニャ。リア充を直接襲ったら犯罪になるから、リア充の私物、青春の象徴である制服や体操服を燃やしたり破いたりして暗い青春の供養をしているニャ」
それのどこが供養なんだよ、と思ったがスムーズに話を続けるために颯士はぐっと言葉を飲み込む。
「制服狩りされた側は直接被害を受けてるんだけど…俺も剥ぎ取られたし。」
「ここにいるメンバーはどうやって入手したかは知らないニャ。とにかく、リア充の制服を持ってこいと調達係りには伝えてるニャ。十分に買取り資金は与えているから本来は被害者なんていないハズだったニャ。」
「つまり、狩りをしている奴等は春葬会の人間ではなく、制服が高く売れると知って集めてきている余所者、と考えていいのか?」
「そーゆーことニャ。」
声色からドヤ顔が窺える。
原因の一端には変わりないのだが…
ま、まぁ良い。次だ。
「2つ目の質問。その爪を出す能力はどうやって手にいれた?」
灯里だけの突然変異ではないことが分かった今、もしかしたら能力の発現のキッカケが分かるかもしれない。
「…どうしても言わないとダメかニャ?」
声が真面目なトーンになる。真面目な時もニャとか言うのかよ、と内心突っ込みつつ。
「無理強いはしないけど、良かったら教えて欲しい」
しばらく沈黙が続いたが、意を決したように話し始めた。
「綺羅々には気になる人がいたニャ…」
意外にも純情そうな言い回しに颯士は驚いたが、そこはどうでもいいので
「それで?」
と話を続けさせる。
「…その人が他の女と仲良さそうに歩いてたニャ」
気まずい雰囲気になってきた。颯士はこんな時にうまく慰めるようなことが言えないデリカシーがないところがある。
返答に困っていると溢れ出すように綺羅々様は続ける。
「あの女をぶっ殺してやりたいと思った!!あの人は綺羅々のものなのに!!仲を引き裂いて切り裂いてやりたいと思った!!!」
いきなりのヒートアップに颯士は完全に飲み込まれる。
「そしたら…引き裂くための爪が出てきたの…」
悲しみから発現したのか、と少し同情すると、綺羅々様は続けた。
「逃げ惑う二人を見ると快感だったにゃぁ」
同情して損した、やっぱり変態だ。むしろ被害者は無事なのだろうか。と、颯士の中でモヤモヤが残るが話を進める。
そこからは要約すると、能力を神の力として売り込み、春葬会を作り、信者を集めていたとのことだった。
アイアンメイデンは少ないエネルギーで絞り出したもの、いつ消えてもおかしくない。
颯士もそれを意識してか、最後の質問へと入った。
「それと最後に、制服狩りをした連中に心当たりはないのか?」
結果として春葬会は直接狩りをしていたわけではなかった。
他にどんなところから制服を仕入れていたのか知れば絞り込めるかもしれない。
「正直、下に任せていたし、個人も団体もどっちからも広く買い取っていたからにゃぁ~…」
考え込むような声、恐らく嘘ではないのだろう。
「後でまとめて送るから連絡先教えるにゃ」
「えぇ…?えーっと…」
正直なところ教えたくない。個人情報教えるとロクなことになる気がしない。どこぞの被害者のように関わると追い回されるかもしれない。
そう瞬時に思った颯士の横に、倒れていた灯里が起き上がってきた。
「それなら、私のを教えるわ」
スッ…と手で払いのけるようにアイアンメイデンを解除する。
中から出てきた綺羅々様に、QRコードを出してみせて
「はい、追加して。」
と言うと
「男が良いにゃぁ~」
と、不満を吐く綺羅々様に颯士はゾッとし、灯里はムカッとしたが強行して連絡先を交換させた。
「あと、制服返して。」
先程、制服を売った12万を束でポンと渡すと、制服の山にズンズンと歩いていった。
「逞しい…」
と、呟く颯士に
「あんたが来るまではそうでもなかったんだけどニャ」
と、呆れながら言うのであった。
ゴンゴンゴンゴンゴンゴン!
アイアンメイデンの中から綺羅々様の声と、脱出しようと内部を叩く音が響いてくる。
灯里は大の字に倒れたまま
「颯士、あと任せた」
と、颯士に託した。
颯士はアイアンメイデンにノックし、話す意思表示をした。
「ちょっといいか?」
アイアンメイデンを叩く音が消え、返事が返ってくる。
「なんだニャ」
当然といえば当然だが、酷く不機嫌な声だ。
「いくつか質問に答えて貰いたい」
「…言うだけ言ってみろニャ」
意外にも拒否しないのは、立場を理解しているからだろう。
こちらがその気になればメイデンごと海へボチャン、も可能だからだ。
「1つ目、この集まりは何だ?何を目的としている?」
「…」
顔は見えないが言いたくなさそうな間を感じる。が、拒否権はないと観念したのかポツポツと語り始める。
「…この集まりは『春葬会(しゅんそうかい)』」
ふぅ…、とため息が聞こえ、その後にまた続く。
「学生時代に青春できなかった金持ちのおっさんやおばさん、リア充を憎む学生なんかが集まって、リア充へのヘイトを発散させる会ニャ」
「な、なにそれ」
「リア充爆発しろってことニャ」
そんな要約されても、と思いながらも根気を持って質問を続ける。
「それと制服狩りとで何の関係が?」
「春葬会のメンバーは青春にコンプレックスはあっても社会的地位やお金がある人達ばかりニャ。リア充を直接襲ったら犯罪になるから、リア充の私物、青春の象徴である制服や体操服を燃やしたり破いたりして暗い青春の供養をしているニャ」
それのどこが供養なんだよ、と思ったがスムーズに話を続けるために颯士はぐっと言葉を飲み込む。
「制服狩りされた側は直接被害を受けてるんだけど…俺も剥ぎ取られたし。」
「ここにいるメンバーはどうやって入手したかは知らないニャ。とにかく、リア充の制服を持ってこいと調達係りには伝えてるニャ。十分に買取り資金は与えているから本来は被害者なんていないハズだったニャ。」
「つまり、狩りをしている奴等は春葬会の人間ではなく、制服が高く売れると知って集めてきている余所者、と考えていいのか?」
「そーゆーことニャ。」
声色からドヤ顔が窺える。
原因の一端には変わりないのだが…
ま、まぁ良い。次だ。
「2つ目の質問。その爪を出す能力はどうやって手にいれた?」
灯里だけの突然変異ではないことが分かった今、もしかしたら能力の発現のキッカケが分かるかもしれない。
「…どうしても言わないとダメかニャ?」
声が真面目なトーンになる。真面目な時もニャとか言うのかよ、と内心突っ込みつつ。
「無理強いはしないけど、良かったら教えて欲しい」
しばらく沈黙が続いたが、意を決したように話し始めた。
「綺羅々には気になる人がいたニャ…」
意外にも純情そうな言い回しに颯士は驚いたが、そこはどうでもいいので
「それで?」
と話を続けさせる。
「…その人が他の女と仲良さそうに歩いてたニャ」
気まずい雰囲気になってきた。颯士はこんな時にうまく慰めるようなことが言えないデリカシーがないところがある。
返答に困っていると溢れ出すように綺羅々様は続ける。
「あの女をぶっ殺してやりたいと思った!!あの人は綺羅々のものなのに!!仲を引き裂いて切り裂いてやりたいと思った!!!」
いきなりのヒートアップに颯士は完全に飲み込まれる。
「そしたら…引き裂くための爪が出てきたの…」
悲しみから発現したのか、と少し同情すると、綺羅々様は続けた。
「逃げ惑う二人を見ると快感だったにゃぁ」
同情して損した、やっぱり変態だ。むしろ被害者は無事なのだろうか。と、颯士の中でモヤモヤが残るが話を進める。
そこからは要約すると、能力を神の力として売り込み、春葬会を作り、信者を集めていたとのことだった。
アイアンメイデンは少ないエネルギーで絞り出したもの、いつ消えてもおかしくない。
颯士もそれを意識してか、最後の質問へと入った。
「それと最後に、制服狩りをした連中に心当たりはないのか?」
結果として春葬会は直接狩りをしていたわけではなかった。
他にどんなところから制服を仕入れていたのか知れば絞り込めるかもしれない。
「正直、下に任せていたし、個人も団体もどっちからも広く買い取っていたからにゃぁ~…」
考え込むような声、恐らく嘘ではないのだろう。
「後でまとめて送るから連絡先教えるにゃ」
「えぇ…?えーっと…」
正直なところ教えたくない。個人情報教えるとロクなことになる気がしない。どこぞの被害者のように関わると追い回されるかもしれない。
そう瞬時に思った颯士の横に、倒れていた灯里が起き上がってきた。
「それなら、私のを教えるわ」
スッ…と手で払いのけるようにアイアンメイデンを解除する。
中から出てきた綺羅々様に、QRコードを出してみせて
「はい、追加して。」
と言うと
「男が良いにゃぁ~」
と、不満を吐く綺羅々様に颯士はゾッとし、灯里はムカッとしたが強行して連絡先を交換させた。
「あと、制服返して。」
先程、制服を売った12万を束でポンと渡すと、制服の山にズンズンと歩いていった。
「逞しい…」
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「あんたが来るまではそうでもなかったんだけどニャ」
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