魂を彩る世界で

Riwo氏

文字の大きさ
上 下
20 / 84

【制服狩り編3】共通の趣味や話題で盛り上がる仲間がいればそれはもうリア充と言えるのではないか

しおりを挟む
雑居ビルに入ると、30人あまりの男女がいた。
年齢は、下は高校生くらいだろうか?上は孫がいるような歳に見えるものもいる。

統一性はあまり感じないが、異様な空気を醸し出している。

「あら、新しいメンバーかしら?」

身なりのよさそうな婦人が灯里に話しかけてくる。

ストレートにここで何をしているのかを聞くと

「ここは暗黒の青春を葬るための会、『春葬会(しゅんそうかい)』よ」

と、微笑みながら言う。身なりの良さとは反して目には暗い光が宿っている。

「青春を台無しにされた人達が集まって、失ってしまった青春を供養しているの。」

隣にいた、スーツ姿で頭頂部の禿げ上がった中年が続ける。

「こうして、青春の象徴である制服を葬ることで光のなかった学生時代を供養しているのさ」


そう言うと近くに置いてある学生服を取り上げて、カッターで破き始めた。

中年は続ける。

「私の青春は、こっそりと好きな子の縦笛を舐めようとしたところを見つかってしまってから死んでしまったんだ…」

浪人生のような男も話に割り込む。

「僕は好きな子が忘れて帰った体操服を来ていたところを見つかった」

身なりの良さそうな婦人も話に参加する。

「私はバレンタインチョコに髪の毛と血を混ぜて渡したら居場所がなくなったわ」

そう言いながらセーラー服に火をつける。

全員、自業自得じゃないの…

とは突っ込みづらい雰囲気。


周りの人々も便乗して制服を取り上げてカッターで切りつけたり、ライターで火をつけたりし始める。

完全に狂気だ…

嫌な汗が流れる。

どう歪んだらこんな発想に至るのか、暗い笑い声と共に次々と制服が葬られていく。

どうやらこの、『青春の供養』とやらに使うために制服が集められていたのだろう。

早く止めないとこのままでは自分の制服も危ない、と言うのもあるが…

こいつらのくだらない儀式のせいで颯士が狙われたのが許せなかった。

狂気に満ちた空間を割くように声を上げる。

『首謀者を出せ!!』

ピタッ…

全員の手が止まる。まるで空洞のように闇に染まった視線が灯里へと集まる。

「なんて下品な子…」

「メシアに楯突く気かしら?」

「ここは充実した日を過ごしてる人がきていい場所ではない」

「この為にいくら払ってると思ってるの?」

ぞろぞろと亡者の群れのように集まってきて全員が灯里を追い出そうとしてきた。

いくら気が狂っている連中とはいえ、相手は普通の人達。

全然普通じゃないけど。

うっかり力加減を間違うと折れてしまうんじゃないかという老婆もいる。正直、傷つけるのは抵抗があった。

押し寄せてくる軍勢を、躱し、捌き、距離を取るも埒があかない。

多少手荒になるが仕方ないか…?

そう思った瞬間、奥の扉が開いた。

「なんだか騒がしいにゃあ~」

ふざけた語尾と共に現れたのは、黒い猫耳、黒で統一され胸元を強調したボンテージファッション、変態っぽく見える網タイツ、ムチでも持っていれば女王様と呼ばれそうな格好に、クマのように強調されたアイラインが悪魔のようにも見える女だった。

狂った連中が手を止め、口々に叫び始めた。

「綺羅々(きらら)さま!!」

「メシア!我らを解放したまえ!!」

「仇なすものに天罰を!」

どうやらこの変態女がここのトップらしい。
立ちはだかるのはいつも変態ばかりだ、と内心ため息をつきながら様子をみていると変態女は続けた。

「あなた、リア充っぽいにゃ。ここは青春を憎む人達の憩いの場なの。消えてくれないかにゃ?」

招き猫のような手で、しっし、とあっちいけのジェスチャーをされる。

しかし、こっちはそうはいかない。颯士の為、同じ被害を広げないため、ここでこの組織を潰すと決めた。

軍勢を躱し変態女へと近づくと、変態女は口を開いた。

「帰らないと言うなら…」

ペロッ、と手の甲をなめるジェスチャーをして続ける。

「痛い目にあってもらうかにゃ…」

間。

どう痛い目に遭わせようとしているのか、取り押さえるのが一番か、と、ほんの一瞬頭によぎった瞬間であった。

変態女…綺羅々様と呼ばれていたか、とにかくそいつの顔面が目の前にあった。

ギョッとしている間に、綺羅々様の振りかぶった腕が迫ってきている。
後ろに倒れ込むようにギリギリかわすも、フードに三本線の切り口が入る。

連想されたのは猫科の猛獣だった。
綺羅々様とやらの拳から巨大で黒い三本の爪が生えていた。
躱した体制からサマーソルトの原理で蹴りあげるが、こちらも猫のように反って躱される。

再び出来た距離で冷静に分析してみる。
あの武器、ベアクローって言うんだっけな?
まともに当たったら怪我では済まなそうだけど、見切れないスピードではない。
女の子を殴ったり蹴ったりするのは気が退けていたけどあっちもやる気ならこちらが容赦する道理もない。

先手必勝、今度はこちらから仕掛ける!

トップスピードを最初から出すイメージでエネルギーを爆発させる。

さっきのお返しと言わんばかりに綺羅々様の目の前に高速移動し、そのエネルギーを利用してそのまま双掌打を繰り出す。

腹部に衝撃を受けて軽く後方へ浮くところをさらに高速移動で背後に回り込み、背後に回し蹴りを叩き込む。

吹っ飛び壁に激突した綺羅々様にトドメを刺そうとさらに飛び込が、カウンター気味に綺羅々様のクローが顔へ伸びてきていた。

顔面に突き刺さる直前でなんとか回避するも頬を掠める。

このッ…!

体勢を崩しながらもそのまま前蹴りを繰り出し、綺羅々様から距離を取る。

普通の人なら最初の連撃でダウンしてもおかしくない威力を繰り出している。その状況で反撃までしてくるとは。

そんなことはお構い無しと言わんばかりに綺羅々様はユラリと立ち上がる。

「痛いのは嫌いじゃないにゃぁ~」

ニヤニヤと笑いながら立ち上がる。
ダメージなどなかったかのようにすら見える。

「けど、痛い目は、みて貰う方が好きにゃ」

にゅぅ、と伸びるように綺羅々様が飛びかかってくる。
異様な跳躍力、と思いきや

足から数メートルはあると思われる巨大な爪がグングン伸びて綺羅々様の身体を押し出している。

プツリと足から伸びきった爪を切り離したと思うと、そのまま飛び出した勢いで灯里の顔に蹴りを入れる。

頬が痛むがそれよりも、呆気に取られて油断してしまった。


まさか他にもいたとは。


「こいつも、能力者だ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

高校生とUFO

廣瀬純一
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

キンメッキ ~金色の感染病~

木岡(もくおか)
SF
ある年のある日を境に世界中で大流行した感染病があった。 突然に現れたその病は非常に強力で、医者や専門家たちが解決策を見つける間もなく広まり、世界中の人間達を死に至らしめていった。 加えてその病には年齢の高いものほど発症しやすいという特徴があり、二か月も経たないうちに世界から大人がいなくなってしまう。 そして残された子供たちは――脅威から逃れた後、広くなった地球でそれぞれの生活を始める―― 13歳の少年、エイタは同じ地域で生き残った他の子供達と共同生活を送っていた。感染病の脅威が収まった後に大型の公民館で始まった生活の中、エイタはある悩みを抱えて過ごしていた……。 金色の感染病が再び動き出したときにエイタの運命が大きく動き出す。

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜

華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日  この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。  札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。  渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。  この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。  一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。  そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。 この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。 この作品はフィクションです。 実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。

我らの輝かしきとき ~拝啓、坂の上から~

城闕崇華研究所(呼称は「えねこ」でヨロ
歴史・時代
講和内容の骨子は、以下の通りである。 一、日本の朝鮮半島に於ける優越権を認める。 二、日露両国の軍隊は、鉄道警備隊を除いて満州から撤退する。 三、ロシアは樺太を永久に日本へ譲渡する。 四、ロシアは東清鉄道の内、旅順-長春間の南満洲支線と、付属地の炭鉱の租借権を日本へ譲渡する。 五、ロシアは関東州(旅順・大連を含む遼東半島南端部)の租借権を日本へ譲渡する。 六、ロシアは沿海州沿岸の漁業権を日本人に与える。 そして、1907年7月30日のことである。

処理中です...