紅茶と夢現

春瀬 幹蜜

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紅茶と夢現

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 学校に行けず不貞寝の昼寝から目が覚めた。もう既に部屋は闇に包まれていた。まるで私の心模様のようだった。それはそれとして、今は何時だ?

 手元のスマホが指す時間は、丑三つ時であった。このまま再び寝てしまおうか……、とも思ったが、夜型の家人に一言入れておいた方が良いだろう。部屋の扉に向かうべく、テーブルに手を付き起き上がり、床に足を付けた瞬間、突如床が此方に近付き、目の前は闇に閉ざされた。



 ふと気付くと、そこは先程まで私が寝ていたベッドの上だった。そうか、今のは夢か。落ち着いて分析して、テーブルにあるペットボトルに入った昨夜の紅茶を軽く胃に入れ、少し胃が痛む。

 あたりは先程より断然明るい。そうだよな、寝ていたのは昼寝とは言えど午前中だし、流石の私でもそんな長時間ぶっ続けで寝ていられるとは思えない。笑い飛ばした。ふと見た時計は正午前を指していた。

 どうしようか。やる事もない、これから学校に行こうにも午後から行く気もない。飯を食う気にもならないし、二度寝も考えた。休む旨を伝えて機嫌の悪い家人に顔を見せる気分でもないしな、とスマホを構えながら枕と真逆の方に倒れる。案の定SNSのタイムラインに友人は誰もいなかった。当たり前だ。今はまだ授業中だ。



 ……目を開けるとそこは、自分の寝ているベッドであった。さっき枕と逆の方向で寝ていた筈が、しっかりと枕を使って寝ていた。……また夢なのか?

 もしかしたら自分で寝ている間に体勢を変えたのかもしれない。非常に身体が重いため漸く腕を動かしスマホを見る。時間は先程と同じくらいの時間だった。

 大して時間が経っていない。じゃあ、これもまた夢なのか。
 全て一つの夢だとして、全て記憶に残っている。この焦燥感も全て。短くも、体感では長い時間に思えた。

 ふと目が覚める前に飲んでいた紅茶の存在を確認する。減っていれば繋がっている。元に戻っていれば先程のは夢だ、と分かる。
 恐る恐る、紅茶の容器に目をやると、紅茶の量は、“元に戻っていた”。

 _不気味だ。怖い。夢からいつ覚めるのか。初めて見る明晰夢がこんな悪夢なのか。こんな形で明晰夢なんて見たくなかった。私は布団で丸まり恐れた。気分も最悪だし、どうしてこんな目に合わねばならないんだ。感情を掻き乱され、毛布が少し冷たくなっている事を感じ、そこで意識は途切れた。



 ……また、目が覚めた。もう夢かどうかも分からなかった。もう起き上がるどころか動くのも億劫で、ずっと天井を見つめていた。

 暫くすると、スマホの通知が鳴った。通知を入れている友達の投稿通知だろうか。
 重い身体を横にしてスマホを手に取る。表示された時間は、丁度下校時間の15時30分ほどだった。

 ふと窓の外を見ると、確かに少しだけ薄暗かった。時間が進んでいる。紅茶は減っていない。
 夢から覚めたのか、時間が進んだだけでまだ夢の中なのか自分にはもう分からないが、SNSに投稿もできた。友人からの反応もあった。取り敢えずこれは現実だよな、という事にしておいた。
 
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