18 / 113
彼女の片想い**
イヤ、絶対。3
しおりを挟む
キツく抱きしめられて、何が楽しいのか執拗に耳を食べられて。
飽き足らずに首筋まで存分に味見をされた。
チクリとした感覚があったから、さすがに抗議の視線を送ってみたけど……
「キレイについたよ」
笑顔で返された。
『何が?』なんて聞かなくてもわかる。
「跡……つけないで……」
しかも、見えるところに。
ちゃんと不機嫌そうに言えてるだろうか。
恋人同士なら、恥ずかしくてもうれしい所有の証。
今の関係ではとてもよろこべるはずないのに……その痛みさえ、本当はうれしいなんて。決して悟られてはいけない。
坂本くんの機嫌はだいぶ良くなったようだったのに、首筋のキスの跡をたしなめた途端にまた急降下した。
「だれか、見られたくない人でもいるの?」
『だれか』?そんなの決まってる。
『だれにも』見られたくない。
恥ずかしいのはもちろん、ずっと彼氏がいないと公言しているのに。
『だれに』つけられたかを詮索されては困る。
坂本くんだなんて知れたら、この関係が終わってしまう。
力が入らずに、壁にもたれたまま崩れ落ちてしまいそうだったのを、両足の間に陣取った坂本くんの片足が支えている。
もはや坂本くんの差し入れられた太ももにまたがって軽く座っているような有り様だ。
背中に回した片手は、坂本くんのアウターの後ろ身ごろをしわくちゃにしてしまったと思う。
もう片方の手は変わらず、恋人のように指を交互に重ねて繋がれたたままだ。
力を入れすぎて少しだけしびれている。
「ねえ、だれに見られたくないの?」
坂本くんがなぜか辛そうに眉根を寄せた。
そう見えたけど、そのまま顔を近づけて、おデコをくっつけてきたので近すぎて焦点が合わなくなってしまった。
互いの鼻もすり合わさって……今まですごくドキドキしていたのに、心臓がもっと早く動けるんだと知った。
唇も、触れてしまいそう。
少し顔を傾けて鼻の障害を抜けたら、きっと唇も合わさってしまう。
「さ……かもと……くん、もう少し、はなれ……」
「キスしたい」
やっと合った焦点で見つめ返した瞳が、真剣な色をたたえてる。
『イヤ』って言わなきゃ。
『イヤ』って。
『好きな人がいい』って。
1番近くで視線が絡んで私を見てるのに、りこちゃんを想うなんてイヤだから。
「……美夜ちゃん。好きな人がいるって本当?」
その言葉に、胸のあたりが縮んだ気がした。
ああ、きっと。二次会で先輩たちから聞いたんだ。
詮索を煩って口を滑らせた自分を呪った。
「そいつとなら……キスするの?」
違う。その人は違う人が好きだから。
「そいつとなら……朝まですごす?」
違う。勘違いしてしまうから。
「そいつなら、跡つけても嫌がられない?」
違う。だって、その人は坂本くんなの。
数センチの距離で一度、キュッと目をつぶって坂本くんが体を少し離す。
目を開けて、視線を合わせて、顔を傾けて……
大好きな人が、また近づく。
キスされると思って、今度は私が目をギュッと閉じたけど……唇が注がれたのは、頬だった。
さっきと同じで、かなり唇に近い位置に心臓が跳ねた。
そのまま横に唇を滑らせて。
また、首筋の同じところをキツく吸われた。
その甘い痛みに、しばらく、髪を絶対にあげられないって覚悟した。
そして、心の奥で歓喜してる自分に……絶望した。
飽き足らずに首筋まで存分に味見をされた。
チクリとした感覚があったから、さすがに抗議の視線を送ってみたけど……
「キレイについたよ」
笑顔で返された。
『何が?』なんて聞かなくてもわかる。
「跡……つけないで……」
しかも、見えるところに。
ちゃんと不機嫌そうに言えてるだろうか。
恋人同士なら、恥ずかしくてもうれしい所有の証。
今の関係ではとてもよろこべるはずないのに……その痛みさえ、本当はうれしいなんて。決して悟られてはいけない。
坂本くんの機嫌はだいぶ良くなったようだったのに、首筋のキスの跡をたしなめた途端にまた急降下した。
「だれか、見られたくない人でもいるの?」
『だれか』?そんなの決まってる。
『だれにも』見られたくない。
恥ずかしいのはもちろん、ずっと彼氏がいないと公言しているのに。
『だれに』つけられたかを詮索されては困る。
坂本くんだなんて知れたら、この関係が終わってしまう。
力が入らずに、壁にもたれたまま崩れ落ちてしまいそうだったのを、両足の間に陣取った坂本くんの片足が支えている。
もはや坂本くんの差し入れられた太ももにまたがって軽く座っているような有り様だ。
背中に回した片手は、坂本くんのアウターの後ろ身ごろをしわくちゃにしてしまったと思う。
もう片方の手は変わらず、恋人のように指を交互に重ねて繋がれたたままだ。
力を入れすぎて少しだけしびれている。
「ねえ、だれに見られたくないの?」
坂本くんがなぜか辛そうに眉根を寄せた。
そう見えたけど、そのまま顔を近づけて、おデコをくっつけてきたので近すぎて焦点が合わなくなってしまった。
互いの鼻もすり合わさって……今まですごくドキドキしていたのに、心臓がもっと早く動けるんだと知った。
唇も、触れてしまいそう。
少し顔を傾けて鼻の障害を抜けたら、きっと唇も合わさってしまう。
「さ……かもと……くん、もう少し、はなれ……」
「キスしたい」
やっと合った焦点で見つめ返した瞳が、真剣な色をたたえてる。
『イヤ』って言わなきゃ。
『イヤ』って。
『好きな人がいい』って。
1番近くで視線が絡んで私を見てるのに、りこちゃんを想うなんてイヤだから。
「……美夜ちゃん。好きな人がいるって本当?」
その言葉に、胸のあたりが縮んだ気がした。
ああ、きっと。二次会で先輩たちから聞いたんだ。
詮索を煩って口を滑らせた自分を呪った。
「そいつとなら……キスするの?」
違う。その人は違う人が好きだから。
「そいつとなら……朝まですごす?」
違う。勘違いしてしまうから。
「そいつなら、跡つけても嫌がられない?」
違う。だって、その人は坂本くんなの。
数センチの距離で一度、キュッと目をつぶって坂本くんが体を少し離す。
目を開けて、視線を合わせて、顔を傾けて……
大好きな人が、また近づく。
キスされると思って、今度は私が目をギュッと閉じたけど……唇が注がれたのは、頬だった。
さっきと同じで、かなり唇に近い位置に心臓が跳ねた。
そのまま横に唇を滑らせて。
また、首筋の同じところをキツく吸われた。
その甘い痛みに、しばらく、髪を絶対にあげられないって覚悟した。
そして、心の奥で歓喜してる自分に……絶望した。
0
お気に入りに追加
1,179
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
秘密 〜官能短編集〜
槙璃人
恋愛
不定期に更新していく官能小説です。
まだまだ下手なので優しい目で見てくれればうれしいです。
小さなことでもいいので感想くれたら喜びます。
こここうしたらいいんじゃない?などもお願いします。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる