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41.リヒトとの再会
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「放さないよー、ちょっとぐらい、いいじゃん、ミカちゃん」
背を向けて逃げようとする我を男が後ろから抱きしめ、あろうことか我のバスローブの前を大きく開いた。
そして露出した我の胸筋をムニムニと揉んだ。
「あは、……ミカちゃんのおっぱい、柔らかーい」
「んっ、よせっ」
こんな見知らぬ男に体を触られるなんて嫌なのに、我の乳首はどんどん硬く尖っていく。
その時、路地の方から誰かの話し声がして、我は焦った。
こんなところを誰かに見られるなんて嫌だった。
「よせと言っている、我は魔王であるぞっ!」
バスローブがはだけてほとんど裸みたいな状態で、我は叫んだ。
「え、魔王……?」
そう言ったのは我の胸を揉んでいる男ではなく、路地から出てきた人物だった。
「うそっ……、ルシファー……?」
立ち止まってこちらを見ていたその人物はリヒトだった。
隣にいる女は奴が立ち止まっていることを不思議そうに見ていた。
リヒトはすぐに我のそばへ駆け寄り、酔っぱらいを突き飛ばした。道端へ倒れた男はそのままグーグーいびきをかき始めた。
「……」
我は目を丸くして奴を見ていた。奴もじっと我を見つめながら、テカテカと光る魚みたいなジャケットを脱いで、我に羽織らせてくれた。
「嘘みたい、でもやっぱりルシファーだ」
泣きそうな顔で我を見つめ、ギュッと抱きしめた。
優しいリヒトの声、匂いと体温に我は安堵し、我も奴の腰へ腕を回した。肩口に顔を埋めると、我を抱く腕にさらに力が入った。
「ねえ、ちょっと急に何なの?」
リヒトの後ろで巻き髪の女が言った。怒っているみたいだ。
この前ミラージュが見せてくれた映像の女とはまた別の女のようだった。一体こやつの周りにはどれだけ女がいるのだろうと我はため息をつきたくなった。
「ごめん。この人は俺の大事な人で……、ほら、前に話さなかったかな、俺、好きな人が出来たんだって」
我の体を抱きしめたまま奴は女に答えた。
「は? それ、夢の中の話だって言ってたじゃん。何なの、相手は男ってことはレイちゃんってゲイだったの? 私のことずっと騙してたのね」
「いや、別に騙してたつもりなんてないけど……」
女がいくら怒っても、リヒトは我を放さない。
「もういいわ。始発動く時間だから。私、帰るっ!」
とうとう女は一人で歩いて行ってしまった。
「追わなくていいのか? 貴様は色恋を売りものにして商売しているのだろう? 大丈夫なのか」
奴は我をギュッと抱きしめたままで女を追おうとしない。
「いいんだよ。俺にはルシファーの方が大事だから」
優しく甘い声で囁かれた。
「体、冷たいね。俺のマンションはすぐそこだから行こう」
我の片手を強く握り、リヒトは歩き出した。
車やバイクが通りを走って行く様子に我はいちいちビクビクした。
自動販売機が話しかけてきたり、店の自動ドアが勝手に開いたりする様子に驚いた。
この世界は魔法もないというのにどういう仕組みなのか、と町の中の色々なものをきょろきょろ見回す我の手を引き、
「その格好じゃ目立つから、とりあえず早くうちへ行こう」
とリヒトは足早にマンションの一室へ我を連れ込んだ。
マンションの入り口のガラスに映った自分の姿を見て、我は自分の頭を触った。
「我の大事なツノがないっ!」
頭頂部にあった芸術品のように絶妙な角度でうねった二本のツノがきれいさっぱりなくなっていたのだ。
まさかウォズが乱暴に引っ張ったから抜けてしまったのかと、ぞっとした。
「ふふ、この世界じゃツノが生えている人なんていないからね。魔族もいないし、オメガもアルファもないんだ」
そういえば運命の番クラスの相性のリヒトにあうと我の体はオメガになるはずなのに、今のところ発情は起きていない。
この世界にはオメガバースは存在しないから、我もリヒトもただの「男」なのだろう。発情はキツいからその点は助かった。
ツノのない自分の頭部を見るのはショックだったが、きっと向こうの世界に帰ればツノが戻ると信じるしかなかった。
背を向けて逃げようとする我を男が後ろから抱きしめ、あろうことか我のバスローブの前を大きく開いた。
そして露出した我の胸筋をムニムニと揉んだ。
「あは、……ミカちゃんのおっぱい、柔らかーい」
「んっ、よせっ」
こんな見知らぬ男に体を触られるなんて嫌なのに、我の乳首はどんどん硬く尖っていく。
その時、路地の方から誰かの話し声がして、我は焦った。
こんなところを誰かに見られるなんて嫌だった。
「よせと言っている、我は魔王であるぞっ!」
バスローブがはだけてほとんど裸みたいな状態で、我は叫んだ。
「え、魔王……?」
そう言ったのは我の胸を揉んでいる男ではなく、路地から出てきた人物だった。
「うそっ……、ルシファー……?」
立ち止まってこちらを見ていたその人物はリヒトだった。
隣にいる女は奴が立ち止まっていることを不思議そうに見ていた。
リヒトはすぐに我のそばへ駆け寄り、酔っぱらいを突き飛ばした。道端へ倒れた男はそのままグーグーいびきをかき始めた。
「……」
我は目を丸くして奴を見ていた。奴もじっと我を見つめながら、テカテカと光る魚みたいなジャケットを脱いで、我に羽織らせてくれた。
「嘘みたい、でもやっぱりルシファーだ」
泣きそうな顔で我を見つめ、ギュッと抱きしめた。
優しいリヒトの声、匂いと体温に我は安堵し、我も奴の腰へ腕を回した。肩口に顔を埋めると、我を抱く腕にさらに力が入った。
「ねえ、ちょっと急に何なの?」
リヒトの後ろで巻き髪の女が言った。怒っているみたいだ。
この前ミラージュが見せてくれた映像の女とはまた別の女のようだった。一体こやつの周りにはどれだけ女がいるのだろうと我はため息をつきたくなった。
「ごめん。この人は俺の大事な人で……、ほら、前に話さなかったかな、俺、好きな人が出来たんだって」
我の体を抱きしめたまま奴は女に答えた。
「は? それ、夢の中の話だって言ってたじゃん。何なの、相手は男ってことはレイちゃんってゲイだったの? 私のことずっと騙してたのね」
「いや、別に騙してたつもりなんてないけど……」
女がいくら怒っても、リヒトは我を放さない。
「もういいわ。始発動く時間だから。私、帰るっ!」
とうとう女は一人で歩いて行ってしまった。
「追わなくていいのか? 貴様は色恋を売りものにして商売しているのだろう? 大丈夫なのか」
奴は我をギュッと抱きしめたままで女を追おうとしない。
「いいんだよ。俺にはルシファーの方が大事だから」
優しく甘い声で囁かれた。
「体、冷たいね。俺のマンションはすぐそこだから行こう」
我の片手を強く握り、リヒトは歩き出した。
車やバイクが通りを走って行く様子に我はいちいちビクビクした。
自動販売機が話しかけてきたり、店の自動ドアが勝手に開いたりする様子に驚いた。
この世界は魔法もないというのにどういう仕組みなのか、と町の中の色々なものをきょろきょろ見回す我の手を引き、
「その格好じゃ目立つから、とりあえず早くうちへ行こう」
とリヒトは足早にマンションの一室へ我を連れ込んだ。
マンションの入り口のガラスに映った自分の姿を見て、我は自分の頭を触った。
「我の大事なツノがないっ!」
頭頂部にあった芸術品のように絶妙な角度でうねった二本のツノがきれいさっぱりなくなっていたのだ。
まさかウォズが乱暴に引っ張ったから抜けてしまったのかと、ぞっとした。
「ふふ、この世界じゃツノが生えている人なんていないからね。魔族もいないし、オメガもアルファもないんだ」
そういえば運命の番クラスの相性のリヒトにあうと我の体はオメガになるはずなのに、今のところ発情は起きていない。
この世界にはオメガバースは存在しないから、我もリヒトもただの「男」なのだろう。発情はキツいからその点は助かった。
ツノのない自分の頭部を見るのはショックだったが、きっと向こうの世界に帰ればツノが戻ると信じるしかなかった。
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