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35.この写真を見せられたくなければ……※

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「リヒトはどうもしていない。俺が聞きたいリヒトのこととは、お前とリヒトの関係だ。お前たちは番じゃなかったのかよ? あれからもう三ヶ月経っているというのに、お前に発情期が来ていないなんておかしいじゃないか」

 ウォズは我を険しい表情で見つめた。

「ははっ、そんなものはリヒトがついた嘘だ。我々は番にはなっていない。それどころか我はリヒトがいなくなったこの世界で元のようにアルファの体に戻ったのだ。……騙されて悔しいか?」

 怒り狂うかと思ったのに、ウォズはふふと小さく笑い、

「そうか、それならそれでいい。……お前を再びオメガにする楽しみが出来た」

 と我の腕を強い力で掴んだ。

「な、何をっ!」

 我は驚いて魔法でバリアを出してウォズの体を突き飛ばそうとした。
 アルファに戻った今なら、こやつと互角に戦える自信があった。

 しかしウォズは、

「俺を拒んでいいのか?」

 と言って、服の内ポケットから一枚の写真を取り出した。

 それはあの祭りのステージを写したものだった。
 リヒトのひざの上で大きく足を開いて後ろに奴のモノを咥えこみながらしぶきを放っている我の姿だった。
 我もリヒトも恍惚の表情をしている。

「この時はすごかったな。魔王であるお前がまるでメスのように人間に抱かれるこの屈辱的な姿に、俺は今までにないほど興奮した」

 絶句する我にウォズがニヤニヤと妖しい笑みを浮かべて言った。

「なっ、なぜだっ! あの祭りは口外厳禁だと説明したのは貴様だっ!」

「確かに口外すると処罰される。しかし写真を持ち歩いてはいけないなんて決まりはない。部下にこの写真を見せられたくなければ大人しく俺に従え」

 美しい顔で笑いながら、ウォズは魔法で黒い革製の手かせを出した。

「くっ……」

「ほら、両手を出せ。それとも写真を誰かに見せてもいいのか?」

 我は大人しく両手首を差し出すしかなかった。

「おのれっ……」

 左右が鎖で繋がっているそれで我の両手首は拘束された。
 この前の口かせと同じだろう。左右の手を引っ張ってみるが外れそうにない。

「魔力封じだ。ちょっとやそっとのことでは取れない。無駄な抵抗はするな」

「くそがっ……」

 睨みつけると、ベッドへ突き飛ばされた。
 頭がポスッとベッドへ沈み、奴に上から覗き込まれた。

 素早い手つきでマントと腰につけていた鎧を外された。淡い紫の茂みと萎えた性器が露わになった。
 手を拘束されている我に隠すすべなんてない。

「こんなこと、やめろぉっ! 我も貴様もアルファ同士だぞっ!」

「ああ? アルファ同士? ははっ、アルファに戻った今でも、男に抱かれることを望んでいるお前がよく言うぜ」

「我は男に抱かれることなど望んでおらぬっ!」

 大声を上げて訴えたが、ばたつかせていた両足を掴まれ大きく開かれた。
 秘部に奴の視線が突き刺さった。

「見るなっ」

「見られたくない? それはおかしいなあ、ここは俺に見られて嬉しそうにヒクヒクしてるぜ」

 我には視線を逸らすことしか出来ない。恥ずかしさに柔らかいままのペニスの先がピクピクと疼いた。
 奴は我の蕾へ二本の指を突き刺して、閉ざされていたそこをくぱっと開いた。
 空気に晒されヒヤッとする感覚に我はぴくっと背筋を震わせた。

「おのれっ、触るなっ」

「ははっ、魔法で奥まできれいにしてあるようだな」

「なんのことだっ」

「とぼけても無駄だ」

 ウォズはニヤニヤと笑いながらベッドの横の引き出しに長い指先をかけた。

 まさか……、その引き出しを開けるなんて。
 我の全身から血の気が引いた。

「や、やめろっ! 勝手にそこを開けるなっ!」

 我の叫びを無視して、奴は無言で開いた引き出しの奥から蛍光ピンクの棒を取り出した。
 柔らかな素材で出来た太い男根を模したそれをウォズはクスクスと笑いながら眺めた。

 それは先日、マスクと帽子で変装し魔界の性具店へ買いに行ったバイブだった。
 男娼を抱くことでは満足出来ない我はどうしても後ろを刺激したくて、恥を忍んで購入したのだ。

 それをこやつに見られてしまうなんて。
 あまりのショックで気絶してしまいそうなほど強烈なめまいを感じた。

 奴がスイッチを入れるとブイィィッ、ブイィィッと音を立て、くねくねとうねり出した。

「うわ、やらしい動き……」

 これ見よがしにウォズは我の頬にうねる淫具を押しつけた。

「もう、よしてくれっ」

「昨夜もこれで一人遊びをしていたな。ナカを突かないと気持ち良くなれないんだろう?」

 昨夜も風呂上がりにベッドの上へ仰向け寝転がり、我は足を大きく開きローションで後ろをほぐした後このバイブでクチュクチュとナカを擦りながら片方の手で乳首をクニクニと弄り回し、ほとんど肉棒へ触れることなく腹の上に温かな白濁を飛ばした。

 こやつはそんな我の自慰をこそこそと覗き見ていたというのか。

「……くっ!」

 恥ずかしさを通り越して我は怒りを感じ始めていた。

 魔法道具で覗き見をされないように、念のため我の部屋には結解を張ってあったというのに……。
 それをかいくぐる強力な魔術で盗み見られていたという事実も悔しかった。

 魔王の我よりもこやつの方が我より魔力が上だというのか? そんなはずはあるまいっ!
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