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32.アルファに戻ったのに……※
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「ああっ、……ルシファー様っ」
魔王城の我の寝室のベッドで、緑色の髪の男娼がうっとりとこちらを見つめ甘い声を上げた。
ほぐされた入り口から狭い蜜壺へ我の男性器をぬちゅうと奥まで突き刺して、ゆっくりと抜き差しを始め、徐々にそのスピードを上げる。
「あはぁんっ」
演技なのかわずかな刺激にも感じるタチなのかわからないが、男娼は動きに合わせて大げさなほど声を発する。
「いいですっ、……ああっ」
ねっとりと温かな肉癖が我の精液を搾り取ろうとキュウゥと締まる。
「くっ……」
我は今、挿入する側だというのに、後ろに挿れられたリヒトの太いものを締め上げる感覚を体が勝手に思い出して奥が疼いた。
「んんぅっ、どうぞ中で……」
我の背中に巻き付いた男娼の手がぎゅうっと強く抱き締めようとするが、我は射精寸前の肉棒を体内からずるりと引き抜き、白く柔らかな腹の上へぶちまけた。
「ああっ、ルシファー様ぁっ」
首に手を回して口づけをねだられたが、その手を振り払って衣服を整えた。
この男娼もなかなかに顔立ちの整った美男子だった。
けれどそれがリヒトを思い出させて余計に心がもやもやした。
「もう、ルシファー様ったらクールなんだから。そういうところも僕は好きですよ」
「無駄口を叩いていないで、さっさと帰れ。我は忙しい」
濡れた股間や腹の上の我の体液を拭いている男娼の帰り支度を急かした。
こいつは売春宿に連絡を取って来てもらった適当な男だった。さっさと帰れと言われても男娼はにこにこ笑っていた。
「そうだ、僕どうしても一言お礼が言いたかったんです」
「なんだ?」
我はベッドの上にうやうやしく正座した男娼を見た。
「ルシファー様のおかげで僕らオメガはだいぶ生活が楽になったんですよ。僕なんてこの仕事は割と好きでやってるからいいけど、生活のため仕方なくやっていた仲間が男娼を辞めて真っ当な仕事に就いたり、僕がいるところみたいな小さな買春宿でもオメガの発情休暇が導入されたり、色々変わりました」
「そうか」
「ルシファー様は今やオメガの間じゃ大人気ですよ。歴代の魔王様の中で一番いい魔王様だってみんな言ってます。僕は恋のライバルが増えちゃって困ってますけどね」
「フン、魔王をお前らのような人気商売と同じにするな」
男娼は魔族特有の尖った舌をぺろりと出して緑の髪をかいた。
そいつが出ていた後、赤ワインをグラスに注いでバルコニーへ出た。
遠くに見えるサムガリア王国の街並みやエルフ族の住む森を眺めた。
「はーっ」
ここのところ気が付くとため息が出てしまう。
「……つまらん」
リヒトが消えた瞬間から我の体はアルファに戻った。
魔族医シルヴァを城へ呼んで調べさせたから間違いない。
あれからまもなく三ヶ月が経ち次の発情期が始まる頃だが、もちろんその兆候はなく、以前アルファだった頃と同じく常に頭は冴えわたり、バリバリと仕事をこなすことが出来ている。
エルフの森から魔王城へ帰った我はすぐさまオメガが生活しやすくなるように法律の一部を変えようと奔走した。
あんな強烈な発情期でも生活のために我慢して働いたり学校へ通ったりしなければならないオメガを思うと、早く制度を見直してやりたかったのだ。
ラピスもブライアンも我の考え方の変わりぶりに最初こそ驚いていた。
「あれだけ見下していたオメガのためにこんなにも必死になるなんてどういう風の吹き回しだろうか」
「まさか魔王様は偽者ではないだろうか?」
と警戒してさえいたが、我が真剣だと気づくと二人も全力で協力してくれた。
以前は父の作ったこの魔族世界を維持するため、父や我を批判する者を捕まえて牢獄へ入れ拷問することに情熱を注いでいたが、よりよい魔族世界を作ろうと努力しているとアンチなどの相手をしている時間が惜しいと感じるようになった。
「恐怖の暴君魔王」
「逆らうと拷問される」
と恐れられていただけの存在だった我が、
「歴代最高の魔王様」
とまで言われ慕われるようになった。
この状況を知ったら亡き父がどんなに喜ぶことだろう。
父に言われた「魔族の王として強くあれ」という言葉の本当の意味を我は知ることが出来たのだ。
理想の未来を掴んだはずだった。
けれど、我の心はどこか満ち足りていないのだ。
我は男娼を魔界の買春宿から呼んで抱くようになった。
アルファに戻ったのだからオメガを抱くことで満足できると思っていた。
あの男が自分にそうしたように自分もオメガの後ろへ性器を挿入したら最高に気持ちが良くてたまらないだろうと。
しかし、それは実際やってみるとお世辞にも最高なんて言える快感は得られなかった。
それどころか絶頂する瞬間には必ずあやつに抱かれた記憶を思い出している始末だ。
たまたま相性の悪い相手に当たったのだろうと他の者でも試したが結果は同じだった。
そんなセックスをするたび虚しさで心がいっぱいになった。
魔王城の我の寝室のベッドで、緑色の髪の男娼がうっとりとこちらを見つめ甘い声を上げた。
ほぐされた入り口から狭い蜜壺へ我の男性器をぬちゅうと奥まで突き刺して、ゆっくりと抜き差しを始め、徐々にそのスピードを上げる。
「あはぁんっ」
演技なのかわずかな刺激にも感じるタチなのかわからないが、男娼は動きに合わせて大げさなほど声を発する。
「いいですっ、……ああっ」
ねっとりと温かな肉癖が我の精液を搾り取ろうとキュウゥと締まる。
「くっ……」
我は今、挿入する側だというのに、後ろに挿れられたリヒトの太いものを締め上げる感覚を体が勝手に思い出して奥が疼いた。
「んんぅっ、どうぞ中で……」
我の背中に巻き付いた男娼の手がぎゅうっと強く抱き締めようとするが、我は射精寸前の肉棒を体内からずるりと引き抜き、白く柔らかな腹の上へぶちまけた。
「ああっ、ルシファー様ぁっ」
首に手を回して口づけをねだられたが、その手を振り払って衣服を整えた。
この男娼もなかなかに顔立ちの整った美男子だった。
けれどそれがリヒトを思い出させて余計に心がもやもやした。
「もう、ルシファー様ったらクールなんだから。そういうところも僕は好きですよ」
「無駄口を叩いていないで、さっさと帰れ。我は忙しい」
濡れた股間や腹の上の我の体液を拭いている男娼の帰り支度を急かした。
こいつは売春宿に連絡を取って来てもらった適当な男だった。さっさと帰れと言われても男娼はにこにこ笑っていた。
「そうだ、僕どうしても一言お礼が言いたかったんです」
「なんだ?」
我はベッドの上にうやうやしく正座した男娼を見た。
「ルシファー様のおかげで僕らオメガはだいぶ生活が楽になったんですよ。僕なんてこの仕事は割と好きでやってるからいいけど、生活のため仕方なくやっていた仲間が男娼を辞めて真っ当な仕事に就いたり、僕がいるところみたいな小さな買春宿でもオメガの発情休暇が導入されたり、色々変わりました」
「そうか」
「ルシファー様は今やオメガの間じゃ大人気ですよ。歴代の魔王様の中で一番いい魔王様だってみんな言ってます。僕は恋のライバルが増えちゃって困ってますけどね」
「フン、魔王をお前らのような人気商売と同じにするな」
男娼は魔族特有の尖った舌をぺろりと出して緑の髪をかいた。
そいつが出ていた後、赤ワインをグラスに注いでバルコニーへ出た。
遠くに見えるサムガリア王国の街並みやエルフ族の住む森を眺めた。
「はーっ」
ここのところ気が付くとため息が出てしまう。
「……つまらん」
リヒトが消えた瞬間から我の体はアルファに戻った。
魔族医シルヴァを城へ呼んで調べさせたから間違いない。
あれからまもなく三ヶ月が経ち次の発情期が始まる頃だが、もちろんその兆候はなく、以前アルファだった頃と同じく常に頭は冴えわたり、バリバリと仕事をこなすことが出来ている。
エルフの森から魔王城へ帰った我はすぐさまオメガが生活しやすくなるように法律の一部を変えようと奔走した。
あんな強烈な発情期でも生活のために我慢して働いたり学校へ通ったりしなければならないオメガを思うと、早く制度を見直してやりたかったのだ。
ラピスもブライアンも我の考え方の変わりぶりに最初こそ驚いていた。
「あれだけ見下していたオメガのためにこんなにも必死になるなんてどういう風の吹き回しだろうか」
「まさか魔王様は偽者ではないだろうか?」
と警戒してさえいたが、我が真剣だと気づくと二人も全力で協力してくれた。
以前は父の作ったこの魔族世界を維持するため、父や我を批判する者を捕まえて牢獄へ入れ拷問することに情熱を注いでいたが、よりよい魔族世界を作ろうと努力しているとアンチなどの相手をしている時間が惜しいと感じるようになった。
「恐怖の暴君魔王」
「逆らうと拷問される」
と恐れられていただけの存在だった我が、
「歴代最高の魔王様」
とまで言われ慕われるようになった。
この状況を知ったら亡き父がどんなに喜ぶことだろう。
父に言われた「魔族の王として強くあれ」という言葉の本当の意味を我は知ることが出来たのだ。
理想の未来を掴んだはずだった。
けれど、我の心はどこか満ち足りていないのだ。
我は男娼を魔界の買春宿から呼んで抱くようになった。
アルファに戻ったのだからオメガを抱くことで満足できると思っていた。
あの男が自分にそうしたように自分もオメガの後ろへ性器を挿入したら最高に気持ちが良くてたまらないだろうと。
しかし、それは実際やってみるとお世辞にも最高なんて言える快感は得られなかった。
それどころか絶頂する瞬間には必ずあやつに抱かれた記憶を思い出している始末だ。
たまたま相性の悪い相手に当たったのだろうと他の者でも試したが結果は同じだった。
そんなセックスをするたび虚しさで心がいっぱいになった。
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